なぜCAC Paybackは素晴らしい指標なのか?
GROWTH UNHINGED「Your guide to CAC payback period」の一部を日本語で紹介したものです。全分はリンク先をご覧ください。
SaaSビジネスの健全性を見るKPIとしてよく利用される、「CAC Payback(顧客獲得コストの回収期間)」の重要性について、わかりやすく解説した記事。日本では、CAC PaybackよりLTV/CACの方が重視されがちですが、その欠点も解説しているので参考になる記事だと思います。
CAC PaybackはLTV/CACよりも優れている
CAC単体は、顧客の質(実際に購入しているか、長期的に使っているか、いくら使っているかなど)を考慮していません。また、LTV/CACは、チャーンの低いSaaSの場合、LTVが無限大になる可能性がある問題があります。そのため、顧客の質、ビジネスの経済合理性・健全性を測る上で、CAC Paybackは、より優れた指標と言うことができます。
CAC PaybackとNRRを結び付けて考える
CAC Payback単体だと、顧客のコミットメントの高さを理解することができません。セールスサイクルの長さや解約率は、顧客属性(SMB、エンタープライズなど)によって異なります。つまり、「優れたCAC Payback」は、ビジネスによって異なるため、NRR別で考える必要があります。
- NDR100%未満: CAC Payback 12ヶ月未満
- NDR100~120%: CAC Payback 12~18ヶ月
- NDR 150%超: 現預金とプロダクトの粘着性により、CAC Paybackが長くても問題ない可能性あり
CAC PaybackとNRRが「成長率」と「Rule of 40」をドライブする
SaaSスタートアップをCAC Payback×NDRのコホートで分析すると、売上成長率とRule of 40の結果と大きく相関していることが分かります。これは、直観的にも非常に理にかなっています。他社に比べて低コストで顧客を獲得できる企業は、より低コストでより速いスピードで成長することができます。獲得した顧客を他社よりも、うまく維持・拡大できる企業は、さらに効率的な成長モデルを持ちます。この2つを組み合わせれば、市場環境に関係なく、一貫した成長を促進する能力を手にすることができるのです。
顧客獲得ファネルの“クロージング”に集中せよ
Mark Suster氏による「Why Successful People Focus on the Bottom End of the Funnel」の一部を日本語で紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
SaaS分野での元連続起業家のVC Mark Suster氏による記事。SaaSビジネスにおいて、「The Model」のようにファネルに切って考えることは非常に重要です。しかし、SaaSビジネスで成功するためには、全てのファネルに対して均一に意識を向けるべきではなく、ファネルの最後である「クロージング」により多くの意識を向けるべきだと指摘しています。なぜならば、SaaSビジネスは、ファネルの最後でしか評価されない上に、リード獲得のような “オープニング” より、“クロージング” の方が一般的に難易度が高いからです。一方で、現実ではカンファレンスに参加するなどの “オープニング” 部分に意識を向けすぎていると同氏は指摘しています。ビジネスの成功には、「最も重要なことに執着し、粘り強く取り組む」ことの重要性を強調しています。
Snowflakeに学ぶ、カテゴリリーダーになるためのセールスメソッド
Missives「Ryan Lieber, Snowflake: selling in stealth, category creation and expansion」の一部を日本語で紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
Snowflakeは、これまで企業がオンプレミスで保管していたデータをクラウド上で管理する「クラウド・データウェアハウス」のカテゴリを作った企業です。SaaSスタートアップは、企業の業務や経営のあり方に変革を加えるプロダクトを開発しますが、それをきちんとお客さまが理解・共感するためのデリバリー力も必要になってきます。本記事は、2014年に最初のSDRとしてSnowflakeにジョインしたRyan Lieber氏が、Snowflake最初期の状況を振り返りながら、どのように現在のポジションを築き上げていったか方法について解説したインタビューになります。本記事で特に参考になると感じた部分を一部抜粋しご紹介します。(Deeplにて翻訳後、一部修正)
最初期のお客さまに実施したこと
- まずは、Snowflakeが持つテクノロジーの重要性と意義を理解している個人を見つけ最初期のチャンピオンにしました。そのような個人や企業を特定するために、企業内でどのような役割の人がSnowflakeから最大の価値を受け取るのか、また、課題に最も苦しんでいるのはどの業界なのかについて、何度も確認をしました。何千回もの電話やEメールのやり取りを経て、メディア業界、広告業界、ゲーム業界であるというパターンに気づきました。
- 初期のセールス・ディレクターの1人が、新しいカテゴリーに売り込む方法を要約したセリフを私にくれました。それは「宗教と聖書を売ろうとするな」ということです。当時、AWSはすでに「クラウド」という宗教を売ろうとしていました。これを解釈すると、もし私がクラウドを信じていない人と話していたとしたら、彼らはクラウド上に構築されるテクノロジーを活用することを決して信じないはずです(クラウド(=宗教)を信じている人に初めてSnowflake(=聖書)は売れるということ)。この言葉はどんな業界にも適用できると思います。
SDRがより高いパフォーマンスをするために必要なこと / 実施したこと
- 前提として、全員がハンターであり、コーチングができるというのは大事な素養です。
- CROのChris Degnan氏は、初期の頃(そして現在も)、セールスの成功の指標としていたのは、週に8回のセールスコールをこなすことでした。
- 報酬面において、Snowflakeのリーダーシップが下した重要な決定は、お客さまの使用料ベースの報酬モデルを採用することでした。このモデルによって、お客さまがサクセスすればするほどセールスにも報酬が入り、双方の成功に繋がりました。
- 2015年半ば、Salesforceのパイプライン管理とトラッキングに重点を置き始めました。この時期は、MQLやSQLという言葉を採用し始めた時期でした。顕著だったのは、お客さまと会話できた割合が、SDRと一緒に働くセールスレップの関係に直接相関していることでした。多くの場合、セールスレップはSDRの教育や適切な期待値の調整に十分な時間を費やしていません。SQLの数が最も多く、最も成功したSDRは、連携しているセールスレップと事前に合意していた最も関連性の高いICPをターゲットにしていたことです。
グローバルへの進出
- SnowflakeでEMEAのVice Presidentを務めていた人間が、「カルチャー・マップ」という本を薦めてくれました。この本は、それぞれの国の明確な文化の違いを学び、認識するのに非常に役に立ちました。それぞれの国や文化が、会議の終わりにSnowflakeのプロダクトを見て「興味深い」という言葉を使いますが、これにもニュアンスに違いがあります。このことを理解することさえ、些細なことですが、重要なことでした。
スケールするVertical SaaSに共通する 5 つの特徴
Linear: A Vertical Software Newsletter「#042: Common Traits of Successful Venture-Scale vSaaS Co's, What To Do If Your TAM Is Too Small?」の一部を日本語で紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
(1)GTM はマーケティング主導またはプロダクト主導
- 基本的にはマーケティング、プロダクト主導でGTMすることが多い。
- ただし、2U、Veeva、Palantir は平均契約金額が 7 桁($ 1million)だったため、セールス主導の動きで成功しました。
(2)プロダクトは最終的にその業界のプラットフォームとなり、それを囲むサードパーティのエコシステムが形成される
- Vertical SaaSが大きくなるためには業界の主要なオペレーティング システムになる必要がある。
(3)会社は早期に多製品化を進める
- 業界の規模を考慮すると、単一サービスで大きなビジネスを構築することが難しいため、1 つの問題と 1 つの解決策だけに集中することはできません。
(4)初期段階であっても、全体とロゴのリテンションは常に非常に良好
- 初期の製品が悪かったとしても、継続率は高いことが多い。その他の選択肢の方がはるかに悪いことの方が多いため。
(5)顧客のお金の流れを独占する
- オペレーティングシステムを提供するということは、決済に不可欠なものとなることと同義であり、システムから離脱することが難しくなる。
- そしてこのことはTAMを拡張することも繋がり、その業界のGDPの何%を占めうるのかという話になる。
開発者向けのコラボレーションSaaSを提供するSaaS上場企業 Atlassianが、非同期動画メッセージSaaS Loomを$975M(約1,500億円)で買収交渉
オーストラリア発の米NASDAQ上場SaaS企業Atlassianが、Loomの買収を発表しました。Loomは2,500万人以上のユーザー数を抱え、毎月500万以上の動画メッセージを扱っています。AtlassianはLoomの顧客基盤とこの動画データを貴重なアセットと考え、特にJiraとConfluenceにとって有用なコラボレーションツールになると発表しています。Loomは2021年5月のシリーズCで$1.3B(約2,000億円)の評価額で資金調達しており、評価額を下げての買収です。今回の買収資金はAtlassianの手元資金により実行する計画で、2024年第3四半期には取引が完了する見込みです。
サイバーセキュリティ×プロセスマイニングSaaS Gutsy、シードで$51M(約77億円)を調達
Gutsyは、2019年にPalo Alto Networksに買収されたクラウドセキュリティSaaSスタートアップTwistlock 創業者3人が1年前に創業したスタートアップ。Gutsyは、通常ビジネスプロセスに利用されるプロセス・マイニングの手法を、初めてサイバーセキュリティに応用しています。ビジネスプロセスのさまざまなパターンを、データを分析し、セキュリティ目標を達成できない理由や原因を特定します。本シードラウンドでは、YL Ventures、Mayfieldなどから資金調達を実行しました。
データのオブザーバビリティ(可観測性)SaaS Observe、Sutter Hill Venturesから転換社債で$50M(約75億円)を調達
オブザーバビリティ(可観測性)は、システムやアプリの状態を監視、測定、理解することを支援するソフトウェア分野で、今後成長が期待されています。Observeは、機械が生成したデータやログを保存・管理・分析するSaaSを提供する、2017年に設立されたスタートアップ。同社は、New Relic、Splunk、Datadogのような監視・ログ分析ツール、Grafana、Chronosphereのようなオブザーバビリティ分野のスタートアップと競合しています。Observeはオブザーバビリティ・タスクを迅速化するために幅広い生成AI機能を提供しています。Snowflakeの創業を支援した米VC Sutter Hill Venturesからコンバーティブル・デット(転換社債)にて資金調達しました。
企業がデータを変換するためのローコード開発プラットフォーム Prophecy、シリーズBで$35M(約53億円)を調達
Prophecyは、データを要約・分析し、データ構造をクエリするためのオープンソースシステムであるApache HiveのPMを務めていた、MicrosoftやNvidia出身のラジ・ベインズ氏が設立したデータ変換に特化したSaaSスタートアップ。Prophecyの「ビジュアル開発」ソリューションは、ドラッグ・アンド・ドロップで、顧客が信頼性を保証されたコードベースのデータパイプラインを構築することができます。また、同社はLLMと組織固有のナレッジグラフを活用してデータ変換を促進するツールData Copilotも提供しています。銀行、ヘルスケアなど、複数のFortune 500企業で利用されています。本シリーズBは、Insight PartnersとSignalFireが共同でリードし、J.P.モルガン、Databricks Venturesなども参加しました。
契約ドラフト作成を合理化するCLM SaaS Harbour、シリーズAで$15M(約23億円)を調達
契約管理分野のソフトウェアを提供するHarbourは、企業内の契約ドラフト作成から契約実行までのプロセスを補強するために、他システムと簡単に統合できるプロダクトを提供することで、シームレスな契約業務を支援するSaaSスタートアップ。契約書の作成、変更、署名プロセスを簡素化するために、契約ライフサイクル管理(CLM)機能も備えています。すでに2,000社以上が利用。毎年3倍の成長を実現しており、ARR $1Mを超えています。本シリーズAでは、Getty Image共同創業者 Jonathan Klein、Scribble Venturesなどから調達しました。
■資金調達
企業の脱炭素・ESG経営支援を促進するアスエネ、20億円調達
CO2排出量見える化・削減・報告クラウドサービス「アスエネ」とサプライチェーン調達のESG評価サービス「アスエネESG」を提供しています。兼松やコメダ、大林組などの企業が利用しています。現在は4,000社を超える企業・自治体が導入しています。今回の調達は、三井住友銀行、商工中金、日本政策金融公庫、横浜銀行、常陽銀行によるデットファイナンスになります。
保険流通のプラットフォームを構築するhokan、シリーズBで総額約15億円調達
クラウド型保険代理店システム「hokan®」を提供しています。「hokan®」では、見込みから保全までの情報を一元管理し、情報の集計/分析が可能です。今後は顧客基盤の拡大、プロダクト開発や新規事業開発の強化、企業代理店チャネルの深耕、保険会社や銀行等への横展開、海外展開、新規事業開発(EVオーナー向け特化型プラットフォーム事業「FEVOW」など)、M&A等も積極的に検討予定です。今回のラウンドには三井物産インシュアランス・ホールディングス、Archetype Ventures、Sony Innovation Fundが参画しています。
EC・D2C事業の売上最大化と業務の効率化を支援するACROVE、シリーズBで総額11.4億円調達
ACROVEは、ECデータ分析プラットフォーム「ACROVE FORCE」を提供しています。「ACROVE FORCE」では、独自のBIツールを提供し、Amazon、楽天市場、Yahoo!ショッピングなどの主要なECモールや自社ECサイトの運用を支援します。全国160社の事業者を支援しており、Blue Seal、つるとんたんなどの飲食事業者が利用しています。今回のラウンドには日本郵政キャピタル、静岡キャピタル、SMBCベンチャーキャピタル、広島ベンチャーキャピタル、りそなキャピタル、大日本印刷、ベクトルなどが参画しています。
業務の自動化・効率化を推進するMarsdy、プレシリーズAで3.2億円調達
数値管理DXソリューション「AutoDate」を提供しています。「AutoDate」では、ツール横断で営業進捗や経理数値などの数値情報を管理するシステムを作ることで、経営のDXを支援します。ケースによってはマニュアルでの処理にも対応します。企業側はあらゆるツールを導入したことで、却って管理業務が煩雑になってしまった背景から、プロダクトを開発、提供しています。導入企業の継続率96%と高い水準を誇っています。今回のラウンドにはフェムトパートナーズ、三菱UFJキャピタル、Gazelle Capitalが参画しています。
数値管理DXソリューション「AutoDate」を提供する 株式会社MarsdyがプレシリーズA 3.2億円の資金調達を実施
- OpenAIがより安価かつ迅速に同社AIモデルを活用したソフトウェア開発を促すために大規模アップデートを計画(CNBC)
- Googleが自民党のヒアリングに対して「日本が米国以外でAIの最優先地域」と回答 (テレ東BIZ Youtube)
- Google検索バーからAI画像を生成できる「Search Generative Experience」を発表(TechCrunch)
- 生成AIチャットボットを開発するChacter.AIが複数のAIと会話をできるグループチャットの新機能をリリース(TechCrunch)
- オーストラリアで学校でのChatGPTなどのAI利用が2024年から許可(The Guardian)
- LINEヤフーがソフト開発に生成AI、どう活用?(日本経済新聞)
- Nod.ai - オープンソース型AIソフトウェアを提供するスタートアップ。世界2位の半導体メーカーAMDがAIソフトウェアエコシステム強化のために買収。本四半期中に買収が完了する見込み(TechCrunch)
- TileDB - 多次元配列のデータ構造に強みを持つ、マルチモーダルDBスタートアップ。シリーズBで$34Mを調達。投資家は、MongoDBデータベース開発者が設立したVC AlleyCorp、Intel Capital、NTT Docomo Venturesなど(Silicon Angle)
- Cleanlab - 企業向けLLM/AIのためのデータキュレーションSaaSスタートアップ。シリーズAで$25Mを調達。投資家は、Menlo Ventures、TQ Ventures、Databricks Venturesなど(Yahoo! Finance)
- Conveyor - OpenAIのLLMを利用して、セキュリティに関する質問への回答自動生成するSaaSスタートアップ。シリーズAで$12.5Mを調達。リード投資家はCervin Ventures(TechCrunch)
- Anysphere - AIネイティブなソフトウェア開発環境(IDE)を提供するSaaSスタートアップ。シードで$8Mを調達。投資家は、OpenAIのファンド、GitHub元CEO Nat Friedmanなど(TechCrunch)
- Intento - グローバル企業向け多言語対応生成AIプラットフォームを提供するスタートアップ。シリーズAで$8Mを調達。投資家は、Somersault Venturesなど(CISION)
- Sparticle - 日本語LLMを開発するAIスタートアップ。プレシリーズAで約5億円を調達。投資家は米VC Wisemont Capital他(Excite)
- Fantix - プライバシーに配慮したAIモデルを開発するスタートアップ。Notion Capital、Founders Factoryなどから$1.6Mを調達(SaaS News)