利益と成長をSaaSビジネスで実現するためのカギとは?
SaaStr「The Key To Profitability and Growth in SaaS with Expensify’s COO」の一部を日本語で紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
SaaSに限らず、優れたビジネスは、成長しつつも利益を生みだします。SaaSスタートアップで利益と成長の双方を実現するには、明確な意志と規律が必要です。このSaaStrの記事では、黒字化しつつ、成長も継続しているExpensify COOが、SaaSビジネスで利益と成長を並行して実現する重要なカギについて解説しています。
- #1:ユーザーフィードバックを元にプロダクトを磨き続ける
SaaSにおいてプロダクトは最大のアセットです。プロダクトが優れていれば、評判を呼び、SaaS企業の最大のコスト項目である営業&マーケティングコストを少ない投資で成長することができます。Expensify Cardsの開発では、MVPを5ヶ月ですぐリリースし、顧客の利用動向を毎日チェックし、利用しているユーザーの生の声をプロダクトに反映し続けました。 - #2:自動化によって利益率をアップする
SaaSのコストの大部分は人件費です。その中でもサポートコストは、売上と比例して増加しがちです。Expensifyは、サポートプロセスを自然言語処理を使った3層プロセスで自動化することで、売上成長に対してサポートの人件費は連動せずに済むようになりました。 - #3.:柔軟性を保つためにアウトソーシングする
正社員の雇用は、採用やパフォーマンスの維持など多大なるコストがかかります。ゆえに外注を利用するのも良い戦略の1つです。Expensifyでは、再現性が高く、育成が簡単なリード獲得業務をアウトソーシングを1年半かけてテストしました。その際に、オフショア利用や複数のベンダーでの実験、季節性によって外注チームのサイズを変動させました。戦略について確信が持てないが試したい場合、正社員を採用する前にアウトソーシングで検討しましょう。 - #4:Expensifyの強みはジェネラリストチーム
Expensifyの秘伝のタレは、強力なジェネラリストチームです。ジェネラリストとは、問題を特定し、関係者と協力し、問題を解決できる人のことをさします。Expensifyが採用する際は、1. 生まれ持っての好奇心の強さ、2. 野心、そして3. 謙虚さの3つの資質を求めます。彼らのビジネスが利益と成長をうまくバランスできたのには、これらの戦略とジェネラリストチームの強みによるものです。
HubSpot成功の道のりをSequoia Capitalと振り返る
Sequoia Capital「HubSpot ft. Brian Halligan & Dharmesh Shah - How an underdog helped invent modern marketing」の動画の一部を日本語で紹介したものです。全内容はリンク先をご覧ください。
HubSpotは、Inbound Marketingのカテゴリを作り、SaaSプレイヤーとして大きく成功した企業の1つです。今回ご紹介する動画はSequoia CapitalのDarmesh氏とHubspotの共同創業者であるBrian氏によるインタビューになります。2011年、Sequoia CapitalはHubspotに投資を実行していますが、当時から今に至るまでに、HubSpotを成功に導いた意思決定の場面を振り返っています。(Deeplにて翻訳後、微修正)
- カテゴリをつくるとは何か
カテゴリーを作るときに有効なのは、敵がいること(HubSpotの場合は、MarketoやEloquaなどを含むマーケティングツール)。当時は、アウトバウンドマーケティングが主流で、インバウンドという概念はなかった。 - 戦略とは何か
戦略とは、「Yes」と言うこと以上に「No」と言うことだ。当時のHubSpotに置き換えると、「SMB向けのことは維持するが、エンタープライズにとって素晴らしい機能 “も” 構築する」ということも言えたが、いきなり何にでもYesと言ってしまうと、Deep Diveして何かのエキスパートになることができない。 - プライシングについて
Hubspotは最初期1つの価格帯しかなく、あるターゲット層には、高く感じられてチャーンした者もいれば、他のターゲット層には、安すぎてチャーンした者もいた。セールスフォースのように、提供する機能の数と顧客企業の規模の二軸で最適なプライシングを設計したことが、チャーンの防止やグロースに繋がった。 - 大きいマーケットでもゴリアテのような強力なプレーヤーがいる場合
CRMのような大きなマーケットで、Salesforceのような手強い競合と競争するには、Go-to-Market戦術や力技では勝てない。より優れたプロダクトを持っている場合にのみ、競合に勝つことができるのです。
BtoB SaaSには、ある共通の“攻略法”がある
Napkin Math「Every Software Business Has the Same Playbook」の一部を日本語で紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
BtoB SaaSでは、これまで「PLG vs SLG」といったグロース戦略や、「Horizontal / Vertical」というマーケットの整理の仕方など、あらゆるメソドロジーが提唱されてきました。しかしながら、プロダクトとして企業の経営を支え、成長してきた企業には、ある共通する特徴がありました。この記事では、成長してきたBtoB SaaS企業の特徴を整理したものです。記事中には、HR SaaSのLatticeの事例などを交えながら解説していますので、理解が深まる内容になっています(Deeplにて翻訳後、微修正)
ソフトウェア企業の成長のあゆみ
- まず、ポイントソリューションとしてプロダクトを提供します。特定のグループのために特定の問題を解決します。時が経つにつれてポイント・ソリューションの機能は成長し、お客さまに提供できるサービスが拡大します。
- 次に、マルチプロダクト化します。中核となるお客さまや、提供先の組織が必要とする機能を提供するようになります。
- 最後に、プラットフォーム化します。パートナーのエコシステムをうまく活用しながら付加価値を構築できるようになります。
- そしてまた、新たなポイント・ソリューションから再び始まります。2周目のサイクルは、既存のプラットフォームに関連する機能であり、新たな課題を解決するために開発されたものを提供します。
勝つために必要なこと
- データやワークフローの所有:
競合他社を寄せ付けない最も強力なデータやワークフローを所有することです。例えば、レストラン向けにソフトウェアを提供するほとんどの会社は、顧客IDやPOSシステムを所有しようとするでしょう。なぜなら、そのデータを使えば、売上から料理の注文に至るまで、レストランで起こる他のすべてのことにつなげることができるからです。コーヒーショップのレジに、ToastやSquareのロゴがあるのを思い浮かべてみてください。重要な管理ポイントは、機能、業界、業態ごとに存在するのです。 - 実行力:
攻略法がどの企業にとっても同じようになってくると、差別化に繋がるのは「誰がマーケットを一番よく攻略できるか」ということになります。つまり、企業のカルチャーとマーケットのフィットが重要になるのです。マーケットのニーズを反映した、適切な組織構造になっているのか?営業パーソンの採用で優位に立てるのか?などの問いが重要になります。 - 信念:
SaaSにおける大きな賭けの多くは、自明でない視点を早期に取り入れることから生まれます。「将来、どのように仕事や業務が行なわれるのか」という予測に基づいてプロダクトを構築することで、新興企業は価値を獲得することができます。このような仕事のやり方は、直感に反していたり、ときには間抜けに見えるかもしれませんが、それがベストなのです。 - マーケット・ゲーム:
NVIDIAのCEOは、マーケットのゲームとは「ゼロ億ドルマーケット」を探すことだと述べている。つまり 「まだマーケットはないが、いずれマーケットができる」と信じること。通常、そこに位置づけられると、誰もが「なぜあなたがそのマーケットにいるのか」を理解しようとします。私たちが初めて自動車業界に参入したとき、将来自動車は、大部分がソフトウェアになると信じていたのです。もし、大部分がソフトウェアになるのであれば、本当にすごいコンピューターが必要になります。偉大な企業とは、数十年先を念頭に置いて作られるものです。ソフトウェアの場合、プレイブックが明白であれば、誰よりも早くそれを実行することで得られる大きな利点があります。
SaaS の継続率を向上させる方法 (ベンチマークと平均)
VPA「How to Improve SaaS Retention Rates [with Benchmarks and Averages]」の一部を日本語で紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
SaaSに特化したPEファンドであるVistaより継続率についての丁寧な解説記事。少し古いブログですが基本をおさらいする上で、素晴らしい内容でした。
SaaS リテンションを測定する主な 3 つの方法は次のとおりです:
ロゴ保持率→顧客維持にどれだけ優れているかを測定します
- お客さまの数ベースでの解約率
- 過去5年間にVistaが買収した先の中央値は89%だった
- 多くの買い手や投資家は、この指標を最低限の条件として利用しており、バリュエーションに対しての判断材料にはならない
- Enterpriseにおいては少なくとも90%以上、SMB(低価格のエントリー価格オプションなどを通じて)では75%が目安となる
- SMBの場合は、お客さまの被買収や廃業が解約理由で最も多くなるから
総収益維持率→会社が既存顧客からの収益をどの程度維持しているかを測定します
- ある年から翌年までの顧客の保持された収益を評価する指標。つまり、アップセルを無視して、昨年の契約額のうちどれだけが更新される (維持される) かということ
- 多くの買い手は、優れた低リスクの投資機会とそれほど優れていない投資機会を区別するための大まかなカットオフとして 80% の総保有率を使用している
- 一般に、エンタープライズ SaaS の総保持率は 85% 以上、SMB の場合は 75% 以上である必要があり
純収益維持率→既存顧客からの収益をどの程度維持し、成長させれいるかを測定
- アップセルやクロスセルでチャーンやダウンセルを相殺し、収益ベースでどこまで伸長をしているかを測定する指標
- 過去5年間のVistaの中央値は108%
- 純収益の維持は、スケーラビリティと将来の成長を表すため、高い評価倍率と最も直接的に相関している
Atlassian越えを狙うHRユニコーン Employment Hero、シリーズFで$167M(約250億円)を調達
2014年にオーストラリア・シドニーに設立されたEmployment Heroは、採用、給与計算などのHRプラットフォームを提供するスタートアップ。現在までに30万社の中小企業にSaaSを提供しており、年間$85B(約12兆8,000億円)の給与を処理しています。オセアニア以外に欧州、東南アジアにも展開。イギリスでも約2万社の顧客企業がいます。同社はB2B SaaS以外にも、個人向け財務管理・カード「Swag」やSaaSデータを活用した求人マッチングサービス「SmartMatch」、OpenAIのLLMを活用した従業員の問合せ対応チャットボット「Hero AI」など複数の事業を展開しています。本ラウンドでは、Meta、Spotify、Netflixなどの投資家として知られるTCVがリードし、評価額は$1.37B(約2,000億円)。
B2B購買のワークフロー・AI予測SaaSプラットフォーム Procurify、シリーズCで$50M(約75億円)を調達
カナダ・バンクバーを拠点するProcurifyは、企業間の調達におけるコンプライアンス確認、承認、購買、請求書の照合など複雑かつ多層化された購買プロセスをシームレスに実施するためのプラットフォームを提供するスタートアップ。またAIを活用した購買データ分析モジュールにより、購買費用の予測、調達のワークフローのボトルネックを特定して、将来の購買活動の改善を支援しています。競合には、Coupa、SAP Ariba、NetSuiteなどが市場にいます。顧客社数は700社を超え、売上高は前年比で+100%増加。今回のラウンドでは、Ten Coves Capitalなどから資金調達しました。
法人向けオンラインコミュニティ・エンゲージメント向上SaaS Hivebrite、シリーズBで$37M(約56億円)を調達
2015年にフランス・パリで設立されたHivebriteは、オールインワン型のコミュニティ・エンゲージメントプラットフォーム。世界50か国以上の900を超える法人で導入されています。顧客にはクラフト・ハインツ、ボーイング、P&Gなどの大企業以外に、ハーバード大学、インペリアルカレッジ、米海軍兵学校、オバマ財団、WWFなどの大学や公的機関での導入事例が多数あります。本ラウンドでは、Quadrille Capital、Insight Partnersなどから調達しました。
欧州特化の企業向けトラベル予約・管理SaaS Lane&Planes、シリーズBで$35M(約53億円)を調達
ドイツを本拠地とするLane&Planesは、欧州地域に特化した企業向けの出張予約・決済、承認、経費精算をシームレスに提供するSaaSスタートアップ。経費精算機能は、企業の既存システムと簡単にインテグレーションできる点も強みです。企業の出張への支出額は2024年にはコロナ前のレベルに戻ると見込みだが、未だに企業の出張手配は非効率で透明性が低く、この課題解決を目指しています。今回のラウンドは、米VC Smash Capitalがリード投資家。既存投資家のBattery VenturesやDN Capitalなども追加出資を行いました。
フィールドサービス業特化オールインワンSaaS FieldPulse、シリーズBで$21M(約32億円)を調達
2015年設立のFieldPulseは、電気、水道工事などのフィードるサービス業向けに、業務で必要な機能全てをスマホで使い易いUI/UXで提供するバーティカルSaaSスタートアップ。ServiceTitanのように日程調整、請求、顧客管理、契約管理などの7つの機能を1つのSaaSで提供しており、顧客満足度に徹底したこだわりをプロダクト開発をしてきました。ここ数年は、急成長を実現しつつも、資金効率の高い経営を意識しており、その点を投資家からも評価されています。本ラウンドでは、Fulcrum Equity Partners、Capri Venturesなどから調達しました。
■資金調達
統合コマースプラットフォームを提供するSUPER STUDIO、約14億円調達
EC/D2CメーカーやOMOビジネスを展開する企業を中心に、統合コマースプラットフォーム「ecforce」を提供しています。オンラインとオフラインのデータを統合管理し、ECビジネスの最適化に留まることなく、モノづくりのビジネス全体を最適化することを目指しています。今後はよりオフライン市場も視野に入れ、統合プラットフォームとしてお客さまのビジネス価値を最大化するプロダクトを開発予定です。今回のラウンドには三井不動産、グローバル・ブレイン、あおぞら企業投資、QRインベストメントが参画しています。
AIソリューションを提供するSparticle、プレシリーズAで約5億円調達
情報要約ツール「Glarity」、リアルタイム通訳アプリ「Felo瞬訳」、ナレッジデータベースによるAIアシスタント「GPTBase」など、様々なAIソリューションを提供しています。主に保険、医療、旅行、エンタメ分野を中心に、多岐にわたる業界でソリューションを展開しています。2023年にはAWS LLM開発支援プログラムに採択されるなど、今後もR&Dへの強化をしていく予定です。今回のラウンドには、シリコンバレーのベンチャーキャピタルであるWisemont Capitalを主導とする投資家4社が参画しています。
情報のレビュー作業効率化を支援するBrushup、4.7億円調達
レビューツール「Brushup」を提供しています。PDFや動画などさまざまな形式のファイルに対して、オンライン上で手描きや場所を示してコメントするサービスです。主に漫画、雑誌、学習教材、スーパーのチラシ、CM動画、商品のパッケージなどの制作現場を中心に利用されています。「メールする」「チャットする」という文化ができたように、ファイルを「レビューする」という文化をつくることをビジョンに掲げています。今回の調達はりそな銀行、山陰合同銀行、京都銀行、日本政策金融公庫がサポートしています。
B2B輸送のプラットフォームを推進するハコベル、第三者割当増資を実施
物流のプラットフォーム「ハコベル」を提供しています。ハコベルは2022年、セイノーホールディングスとラクスルにより設立され、業界や社の垣根を超え、「共創・共生」を目指すオープンパブリックプラットフォームの実現を目指しています。具体的には、荷主から運送会社・ドライバーまで一気通貫で連携を支援し、効率化を実現する物流DXシステムを提供しており、配車計画や配車管理を強化し、車両の動態管理による配送品質の改善を支援します。今回は、山九、福山通運、日本ロジテムを引受先とし、新たな株主として経営に参画する形となっています。
- Microsoftが有害なコンテンツを特定する「Azure AI Content Safetyサービス」をローンチ(Computer World)
- Googleが医療分野向けの新機能「Vertex AI」を発表(Mobi Health News)
- Adobeが驚きの生成AI技術を披露。「写真の映り込み消す」「動画を多言語翻訳」(Yahoo!ニュース)
- NEC、独自LLMに勝算あり 日本語性能で「GPT-4」超え(Nikkei Tech Foresight)
- 三菱UFJ銀行が生成AI検討状況を紹介、手続き照会や稟議ドラフト作成で検証中(日経クロステック)
- Zhipu - 中国版OpenAIの競合スタートアップ。アリババ、テンセントなどから$342Mを調達(Bloomberg)
- Baichuan - 中国発のAIスタートアップ。アリババ、テンセントなどから$300Mを調達(Reuters)
- SwingVision - AI動画処理スタートアップ。シリーズAでAuthentic Venturesなどから$6Mを調達(FinSMEs)
- Reality Defender - AIで生成されたディープフェイクなどのコンテンツを検知するスタートアップ。シリーズAで$15Mを調達。投資家はDCVC、Comcast、元GitHub CEOが運営するAI Grantなど(TechCrunch)
- Imbue - 自動化エージェントのためのAIモデル開発スタートアップ。シリーズBの追加ラウンドで、AmazonのAlexa Fund、元Google CEO エリック・シュミット氏らから$12Mを調達。ラウンド総額は$210M。評価額は$1B越え(TS2)
- Luzia - スペイン発で南米に展開するAIアシスタント・スタートアップ。Gasol16 Ventures、Khosla Venturesなどから€9.5Mを調達(Contxto)
- Aindo - イタリア発のデータ合成×生成AIスタートアップ。シリーズAで€6Mを調達。投資家はUnited Ventures、Vertis SGR(Tech Funding News)
- Tofu - B2Bマーケター向けCopilotスタートアップ。シードで$5Mを調達。投資家は、Index Ventures、SignalFire、Stage 2 Capitalなど(Yahoo! Finance)
- Riffusion - 音楽特化の生成AIスタートアップ。シードで$4Mを調達。投資家はGreycroft、South Park Commonsなど(TechCrunch)