2024年にSaaSビジネスで勝つための戦略をいかに作るか?
Productled「How to Craft a Winning Business Strategy for SaaS in 2024」の一部を日本語で紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
日本でも有名なSaaS本『PLG プロダクト・レッド・グロース』著者ウェス・ブッシュ氏による、SaaSの事業戦略を考えるうえでの基本となるフレームワークを解説した記事。ビジネスで勝つための戦略のコアは、「何を大切にして、何を捨てるか?」です。これにより、チームが勝つための戦略に合わない取り組みに、「ノー」とはっきり言えるため、チームのエネルギーを1つの方向に注ぎ込むことができます。
では、SaaSビジネスの勝つ戦略をどう作れば良いのでしょうか?ここでは、経営者がクリアに答えるべき4つの質問を軸に解説してます。
- どこでプレーする?
理想の顧客(ICP、解決する課題、ソリューション、主要な流通チャネル、地域ターゲティングを選ぶこと。特にその起業家が最も得意とするプレーに磨きをかけることが大切です。 - どうやって勝つのか?
どのような市場においても、ビジネスで勝つ方法は無数に存在します。ここでは、SaaSビジネスで長期的な競争優位性をもたらす14のMoat(堀)を解説しています。ここで大切なのは、「時間をかけて1つ1つMoatを築き、複数のMoatを築きあげること」です。 - どのような能力が必要なのか?
能力とは、勝つための能力を直接的に支えるものです。スポーツで言うと、並外れたスピード、強靭なパワー、天性のセンス・テクニックがありますが、ビジネスでも全く同じです。ここでは、ビジネスにおける「能力」を3つに分解して解説してくれています。 - どのような戦略的選択をしなければいけないのか?
勝つための戦略とは、“シャープで、かつ明確である” ことを選択して、他のことを選択しないことです。戦略に沿わない選択をする度に、その企業はエッジを失います。ここでは戦略的な選択が必要な4つのエリアについて解説してくれています。
SaaSスタートアップ失墜から見る、失敗に至るポイント
Sammy Abdullah氏「Autopsy of a SaaS death」の一部を日本語で紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
SaaSスタートアップの失敗例を解説した記事です。本記事は、求職者向けコミュニケーションプラットフォームを開発していたTake The InterviewというSaaSスタートアップのストーリーを描いたもの。「失敗は成功のもと」と言いますが、自身の経営を振り返りアラートを立てるポイントの参考にしてみてください。(Deeplで翻訳後、一部修正)。
- 資金効率が悪かった
私たち(Blossom Street Ventures)が投資した当時、この会社(Take The Interview)のMRRは6万ドルほどでしたが、毎月17万ドルを費やしていました。収益1ドルに対して3ドル近くを消費するビジネスに関与したのは、私たちの見落としでした。正直なところ、2014年に投資した時、私たちは今ほど資金効率を重視していませんでした。 - チャーンをお客さまのせいにしていた
投資した当時は、高い割合でリテンションやリニューアルがなされていました。しかし、時間の経過とともにチャーンが増加し、NDRは100%以上から85%以上に低下しました。その時、同社は内側に目を向けてプロダクトやプロセスを修正する代わりに、お客さまのせいにしました。お客さまが購買してくれないこと、社内のチャンピオンを失ったこと、お客さま側でM&Aなどにより経営的に都合が悪くなったことなどを列挙しました。ICPに販売できているのか、お客さまの経営幹部に対してプロダクトの必要性を正しく伝えられていたのか、より多くのユーザーをオンボードさせて粘着性を高められなかったのか、などを問うべきでした。 - レイオフを避けた
経費を削減するために、大規模なレイオフを行なうべきでした。その代わりに、成長のための投資をやめませんでした。レイオフをすることでカルチャーが失われることに懸念がありすぎて、結果その意思決定ができませんでした。 - 共同創業者の退任原因をもっと深く掘り下げなかった
共同創業者が去ったとき、取締役会は、CEOのやっていることのすべてを疑うべきでした。共同創業者は、去り際に警鐘を鳴らさず、取締役会は言われた以上のことを掘り下げませんでした。 - 業績の悪い企業とM&Aしてしまった
上記の過程で多くのミスを犯したため、同社は弱い同業他社との合併を余儀なくされました。早く事態を収拾しようとする私たちの不作為を考えれば、合併は最も悪い選択だったと考えます。業績不振の2社を合併させたからといって強い会社ができるわけではありません。
取締役の選び方や活用方法
Brian Halligan氏のX投稿一部を日本語で紹介したものです。全投稿内容はリンク先をご覧ください。
Hubspot創業者Brian Halligan氏が、Open AIの騒動をきっかけに、取締役の選び方や活用方法について良いツイートをされたので、その要約を紹介します。
- VCの取締役としての価値
VCは、創業者と利害が一致している可能性が高いこと、そしてさらに他の企業の取締役を務めていれば、そこでの経験も活かされ、優れた取締役になり得るでしょう。 - 経験の重要性
初期段階の企業にとって、CEO経験のあるVCは、貴重な価値を提供できます。 - 独立した取締役
上場企業のCEO経験があるGail Goodmanのように、優秀で独立取締役は非常に価値があります。事業のスケールについての深い洞察を提供し、取締役会でVCの視点に偏らないように、うまくバランスさせてくれます。 - ステータスのための採用を避ける
優れた肩書きを持っている人物(例えば、元政治家、有名人)を、ただその肩書きのために採用することは避けるべきです。 - スタートアップの課題を理解する
成熟した大企業でのみしか働いたことがない取締役を迎え入れることは、避けることが望ましいです。なぜなら、成長しているスタートアップの課題を理解できないかもしれないからです。 - 経験 vs 知恵
独立取締役には、特にOpenAIでの問題を踏まえて、頭脳よりも経験が重視されます。 - 取締役会の説明責任
良い取締役会を構築することの方が重要で、「コントロールを維持すること」にフォーカスし過ぎないことです。経験豊富な取締役陣が、CEO/創業者を解雇するのは、通常、長期にわたるフィードバックを繰り返したあとの最終手段です。 - 取締役の役割
取締役は、親のように過度に関与するのではなく、祖父母のように、遠くから支援し続けてくれるアドバイザーのように行動すべきです。 - 定期的なレビュー
取締役全員(VCも含む)の360度評価を行うことは、とてもオススメです。そのフィードバックをCEOは真摯に受け取り、フィードバックに取り組むことが大切です。 - 取締役の交代
必要に応じて取締役を交代させることができますが、慎重に行なうべきです。 - 企業の成長に合わせた交代
会社のフェーズが、取締役の専門知識や経験を超えた場合、交代するべきです。これは360度評価から明らかになるはずです。
理想的なお客様を再定義していく
Startup Missives「Refining the ICP with David Apple」の一部を日本語で紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
アーリーフェーズのスタートアップにとってICP(理想的なお客様)を発見し反復していく作業が重要です。元NotionのSales/CSのヘッドであるDavis Apple氏とEarly BirdのAkash Bajwaの対談記事から多くのインサイトを得ることができます。
ICPの発見・磨き込みのために顧客インタビューの価値を最大化引き出す方法は、顧客の仕事 (JTBD) について学ぶように質問することです。顧客がビジネスのためにどのような問題を解決するためにあなたの製品を採用したかを理解することをお勧めします。
推奨している質問例:
- お客様はどのようにしてあなたの製品を見つけましたか?
- お客様が最初に解決したかった課題は何ですか?
- 既存のソリューションから変更する同期は何ですか?
- お客様の「Wow」の瞬間は何でしたか?
- お客様の決定基準と検討された代替案は何でしたか?
- 現在のユースケースは何ですか
- 製品がお客様のビジネスの改善について、彼らが最も気に入っている点/気に入っていない点は何ですか?
- 解約することを考えたことがありますか?
インタビューの大部分はオープンな質問であるべきです。しかし顧客インタビューの最後に、特定の仮説をテストする質問を追加するのは有効です。
- Notion にいたときの最初の仮説は、人事チームに Notion を売り込むべきだというものでした。人事チームのユースケースは、会社全体に Notion を有機的に広める可能性が最も高いからです。最初の 12 回の顧客インタビューでその仮説をテストしたところ、それはおそらく間違っていることがわかりました。
- 次の十数回のインタビューで、最初のエンタープライズ顧客を獲得するための販売戦略を策定するのに役立つ、他の仮説をテストしました。
ICPをどのような指標で設定すべきか。
- ICP を定義することは、マーケティングおよび販売戦略を作成する上で重要なステップです。しかし、細かすぎてパラメータが多すぎると、プロセスが複雑になりすぎる可能性があります。
- 定着率と収益に最も大きな影響を与える 2 ~ 5 個の指標に注目することをお勧めします。CRM データを分析するときは、特定の業界、企業規模、または地域の顧客が製品を購入する可能性が高いかどうか、および/または LTV が高くなる可能性が高いかどうかを理解することが大切。
同期不要でファイル編集作業できるコラボレーションSaaS Lucid Link、シリーズCで$75M(約113億円)を調達
LucidLinkは、巨大ファイルへの即時アクセスと安全なリアルタイムコラボレーションを可能にするプラットフォームを提供するスタートアップ。ユーザーはクラウドから直接データをストリーミングすることができます。Lucid Linkの顧客には、米連邦政府やAdobe、Shopifyなどを抱えており、過去2年間でARR 5倍と、SaaSスタートアップとしてトップクラスのKPIを達成しています。今回のシリーズCは、資金調達の必要性が無かった中、投資家からの熱烈なオファーによって実現しました。今回ラウンドの投資家として、Brighton Park Capital、Adobe Ventures、Headlineなどが参加しました。
フランス発の会計業務の自動化SaaS Indy、シリーズCで$44M(約66億円)を調達
Indyは、個人事業主やフリーランサーの会計自動化を支援するFintech×SaaSスタートアップ。2016年の設立当初は会計自動化プラットフォームとしてスタートし、請求書発行、銀行データ同期、経費報告書、給与明細などの会計・融資ツールに拡大。7万人ものフリーランサーに提供しています。今回のラウンドでは、欧州のPEファーム Blackfin Capital Partners、パリを拠点とする投資会社La Maisonなどが参加しました。
建設・不動産開発業向けプロジェクト管理SaaS INGENIOUS.BUILD、シリーズAで$37M(約56億円)を調達
INGENIOUS.BUILDは、データ、自動化、エンド・ツー・エンドのプロジェクト管理、リアルタイム・インサイトを提供することに特化した業界唯一のプラットフォームを提供するスタートアップ。すべてのステークホルダーがプロジェクトを正確に管理し、リスクを低減できるよう支援します。今回のシリーズAでは、Morpheus Ventures、Navitas Capital、Koch Real Estate Investmentsなどの戦略投資家が参加しました。
B2B向けのイベント・マーケティング支援SaaS Vendelux、シリーズAで$14M(約21億円)を調達
Vendeluxは、AIと予測モデリングを駆使して、16万を超える世界のイベント、トレードショー、カンファレンスに関する6500万件のデータを提供する、イベント・インテリジェンス・プラットフォームを提供するスタートアップ。Vendeluxは、この1年間で顧客数を2倍、ARRを3倍に増やしており、同社の無料版は、5,000人以上のイベントマーケティング担当者に利用されています。PayPal、MongoDB、Okta、T-Mobileなどを顧客に抱えています。さらに大規模なカンファレンスのデータを分析し、イベント主催者との協業もしています。2024年末までにチームを倍増し、欧州、中東、アジア向けに展開するため、英・ロンドンを拠点とするチームを設立するなど、グローバルに事業を拡大する狙いです。今回のラウンドでは、FirstMark Capital、Cervin Ventures、SaaStockなどの投資家が参加しています。
■資金調達
オールインワンデータ分析ツールを提供するSrush、シリーズAで4億円調達
データ統一クラウド「Srush」を提供しています。SnowflakeやAWS QuickSight、OpenAIなどの最先端のアーキテクチャが組み込まれ、データ抽出、蓄積、集計、グラフ化、AIを用いた分析がノーコードで可能となるプラットフォームを提供しています。農業総合研究所やスマートキャンプなどベンチャー企業や中小企業を中心に活用されています。今回のラウンドにはジャフコ、DEEPCORE、ニッセイキャピタル、マネーフォワードベンチャーパートナーズが参画しています。
オールインワン動物病院経営システムを提供するミニイク、累計1.4億円調達
オンライン予約、顧客管理、受付システム、電子カルテシステム、会計システムの連携、飼い主向けのオンラインページ提供などの利用が可能なソリューションを提供しています。エンジニア、デザイナーも含めた全メンバーが動物病院に実習を行っているところから、動物病院に従事するユーザーが使いやすいシステムを提供することにこだわっています。オンライン予約と顧客システムや受付システムなどがそれぞれ連結しているため、予約の情報を受付システムや電子カルテに入力し直すことや、電子カルテの内容から会計を作り直す必要がない高い利便性が特徴です。今回のラウンドには、アーキタイプベンチャーズ、ユナイテッド、JSSA、YazawaVentures、個人投資家等が参画しています。
商業施設のデジタル化を支援するCOUNTERWORKS、資金調達を実施
商業施設のオンラインリーシング支援SaaS「SHOPCOUNTER Enterprise」とポップアップストアの出店支援プラットフォーム「SHOPCOUNTER」を提供しています。「SHOPCOUNTER Enterprise」では、テナント募集サイトの構築、問い合わせ・営業・テナント情報管理・スペース稼働管理が可能です。今回はイオンモールとイグニション・ポイント ベンチャーパートナーズが共同運営するCVC「Life Design Fund」から資金調達を実施しています。本取り組みを通して、イオンとCOUNTERWORKS両社サービス・ノウハウの連携による事業拡大やイオンモールのアジア拠点におけるカウンターワークス提供サービスの展開などを目指します。
- OpenAI、アルトマン氏がCEO復帰 理事会大幅刷新へ(Nikkei)
- サム・アルトマン追放の直前に、OpenAIの研究者が人類に脅威をもたらす可能性のある革新的なAIの発見について取締役会に警告していたことが判明(Reuter)
- Airbnb、Siri共同創業者が設立したステルス企業「GamePlanner.AI」を買収(TechCrunch)
- Stability AI、生成AIで作成された画像をアニメーション化できる「Stable Video Diffusion」で動画生成市場に参入(TechCrunch)
- 生成AIが従業員にもたらす「恩恵」とは? ガートナーの予測を紹介(ITmedia)
- AI21 Labs - GPT-4の流れをくむ生成AIプロダクトを開発するスタートアップ。シリーズCエクステンションで$53Mを調達。評価額は$1.4B。投資家はIntel CapitalとComcast Ventures(TechCrunch)
- Aptus.AI - 法律文書を機械で判読可能に変換するイタリアのAIスタートアップ。プレシリーズAで€3Mを調達。投資家は、P101、Fin+Techなど(tech.eu)
- Phare Health - 臨床医の書いた患者メモをレビューし、財務チームが使用可能なデータに変換するAIプロダクトを開発する、英ロンドンベースのスタートアップ。シードで£2.5Mを調達。投資家はGeneral Catalystなど(tech.eu)
- Haut AI - エストニア発のスキンケア分析に特化した生成AIスタートアップ。シードで€2Mを調達。投資家はLogeVCなど(Arctic Startup)