2024年のSaaS業界が2023年より良くなる3つの理由
SaaStr「3 Reasons 2024 Has To Be Better Than 2023」の一部を日本語で紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
2023年はSaaS業界全体にとって、非常に厳しい年でした。テック業界全体のマルチプル圧縮、効率成長重視への経営シフトにより特にアメリカのSaaS上場企業の成長鈍化、顧客側でも増え続けるSaaSのベンダー統合・コストカットなどなど。しかし、2024年は停滞の底を抜け出し、再びSaaSの復活の年になるというSaaStrの記事です。
- その1. リニューアル時のダウングレードが一服した
ZoomInfo CEO ヘンリー・シュック氏とBox CEO アーロン・レビー氏が最新のSaaStrのポッドキャストで指摘している通り、リニューアル時のダウングレードも過去のものとなり、好転する見込みです。SaaS企業の全体的なデータもこのことを裏付けています。
- その2. 企業のSaaSのコストカットへのエネルギーも切れてきた
多くの企業は、コスト削減のためにSaaSの20%を削減してきました。しかし、これもほとんど過去の話です。毎年20%コストカットして、事業を成長し続けることはできません。また企業側にとってコストカットのリソース負荷も大きいため、5-7年に一度ならできますが、毎年続けることは非常に難しいです。
- その3. SaaS企業が大幅に筋肉質化して燃費が上がった
Shopify、Salesforce、ProcoreなどのSaaS上場企業からユニコーン企業まで、SaaS企業の燃費は大幅に改善しました。 上場SaaS企業では従業員1人当たり売上は大きく向上し、$300K(約4,500万円)を超えました。SaaSスタートアップもRule of 40を超えた時点で、また採用をして成長投資する必要があります。ただ、Monday.com CEOが指摘する通り”採用のペースは成長のペースより遅くする”など、燃費を意識した成長が必要です。
世界のエンタープライズの生成AI活用状況と今後の予測
MENLO VENTURES「2023: The State of Generative AI in the Enterprise」の一部を日本語で紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
米Menlo Venturesが欧米のエンタープライズ企業のエグゼクティブ450名以上を対象に行ったサーベイの結果と、エンタープライズ向けでの生成AI活用の予測に関する記事。主なインサイトは以下の通りです。
- 生成AIへの支出はまだクラウド支出全体の1%にも満たない
- AIの活用企業割合は、1年で48%→55%に一気に上昇した
- 予測1. 生成AIブームの一方、エンタープライズの活用はクラウド市場の初期のように緩やかに進む
- 予測2. 顧客は既存プロダクトにAIを埋め込んだ既存ベンダーを好む
- 予測3. エンタープライズの生成AI活用は、文脈理解とデータリッチなワークフローがカギになる
- 新規参入のスタートアップが生成AIで勝つカギは、以下の3つとなる
1)既存プレーヤーより優れた”理由”説明能力
2)独自のデータ
3)ワークフローとエンタープライズ横断のフィードバックループ
2024年のIT支出額トレンド
Gartner「Gartner Forecasts Worldwide IT Spending to Grow 6.8% in 2024」の一部を紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
GartnerによるグローバルのIT支出額のトレンド調査です。下記がポイントになります。
- 2024年の世界のIT支出額は、2023年比で6.8%増の5兆ドルになると予想されています。2023年には生成AIが大きな存在感を示したが、短期的にはIT支出の伸びを大きく変えることはありません。
- 2024年は、組織が生成AIの利用方法のプランニングに投資をする年になりそうです。
- ITサービスへの投資額は2024年も成長を続けます。これは主に、企業が組織の効率化と業務最適化のプロジェクトに投資するためです。
- 2024年には再びモメンタムが取り戻されると予想されますが、IT支出環境は変化疲れによって若干の制約を受ける状態になりそうです。変革疲れは、CIOが新たな契約に署名したり、長期的な取り組みにコミットしたり、新たなテクノロジー・パートナーを採用したりすることをためらうなど、変革への抵抗として顕在化する可能性があります。新たなイニシアチブを開始する場合、CIO はより高いレベルのリスク軽減と成果の確実性を求めるでしょう。
生成AI台頭によるSaaSのパラダイムシフト
EVERY「Asset-light Software Businesses:The New Paradigm for Startups」の一部を日本語で紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
2023年以降生成AIの進化は目覚ましいものがある中で、このテクノロジーがビジネスモデルやオペレーションにどのような影響を与えるか、これから考えていく必要があります。本記事では、SaaSを対象に考えたときのポイントをまとめています。以下、特に気になったポイントをピックアップし翻訳しました (Deeplで翻訳後、一部修正)。
- 組織構造の変化
「ソフトウェアの能力が飛躍的に向上することは、ホワイトカラーの仕事のコストに破壊的な革新をもたらします。ホワイトカラーの仕事の大半は、コードを書いたり、サポートメールを書いたり、要約を書いたり、ブログ記事を書いたりと、テキストを生成することで成り立っています。これが、API経由でアクセス可能な無限のジュニアからミッドレベルの知識労働力は、開発者、マーケティング担当者、営業担当者、弁護士、カスタマーサポートマネージャー、プロダクトマネージャーなど、ジュニアからミッドレベルの従業員の代わりを提供することになります…(中略)…もしかしたら、将来の組織構造は、今よりもかなり多くのシニアメンバーを抱えることになるかもしれなません…(中略)…将来のソフトウェア組織が、マーケティング組織のようになるとしたらどうでしょうか。シニアのストラテジスト、クリエイター、リーダーが、ジュニアの開発者の代わりに自動化されたシステムを管理し、スケールの大きな仕事を提供することになるかもしれません。」
- コストの変化
「もはや、新しいソフトウェアビジネスは、開発者、営業担当者、カスタマー・サクセス・マネージャーに頼る必要はない…(中略)…生成AIがその潜在能力を発揮できれば、組織構造、コスト構造、成長戦略を再構築することが可能であり、ソフトウェアの新たなフロンティアを意味することになります。」
企業向けにデバイスレンタル+ソフトウェアを提供するDevice as a Service、シリーズDで€270M(約436億円)を調達
独・ベルリン発のEverphoneは、企業向けにスマートフォン、タブレットなどのデバイスの調達・レンタル・オフボードと合わせて、企業のデバイス調達ポータル、カスタマーサービス、セキュリティ管理などを提供するスタートアップ。アメリカ市場進出に向けて、2021年のシリーズCの資金調達を行っており、更なるハードウェア調達、グローバル展開を加速させる予定です。今後はソフトウェアとしても、企業向けにビジネス・インテリジェンス機能やESGレポーティング機能などを提供を計画しています。今回の調達では、デットとエクイティを組み合わせており、デットはCiti Groupがリードし、エクイティはCapnorなどから調達しました。
増え続けるソフトウェア支出を追跡・最適化を支援するVertice、シリーズBで$25M(約37億円)を調達
英・ロンドン発のVerticeは、財務チームが、何のソフトウェアがどこで使われているかをきめ細かく、俯瞰的に把握できるプラットフォームを提供するスタートアップ。企業はクラウドを中心にソフトウェア投資を増え続けており、AIの台頭により益々これは加速すると見込まれています。同社のアプローチでは、通常の自動化に加え、人間による評価、AIツール群を組み合わせて実行しています。Verticeが特に狙うのは、スタートアップだ加えて、大手ハイテク企業。売上約300億円(2億米ドル)未満の企業では、調達チームを持っておらず、資金管理のプレッシャーに悩まされています。2023年の売上は7倍成長でARRも二桁億円に到達しています。今回のラウンドは、Bessemer Venture Partnersと83Northの前回ラウンドのリード投資家が再度リードしています。
現場の最前線で働く人達に「スマート」無線機とSaaSを提供するWeavix、シリーズBで$23.6M(約35億円)を調達
Weavixは製造現場や医療現場などで働くフロントライン・ワーカー向けに、無線機とソフトウェアを提供するスタートアップ。ただの「スマート無線機」とは異なり、翻訳や書き起こしなどの機能に加えて、ライブおよび録画ビデオメッセージやテキストメッセージをサポートしています。管理者には、無線機のグループにアラートを送信したり、作業員から報告されたインシデントを分析することで、作業員を必要な場所に誘導することができます。Weavixは製造業、食品や飲料の製造業、商業建設業、エネルギー・サービス業など、フォーチュン500社に名を連ねる「複数の」顧客を抱えています。今回のラウンドは、Insight Partnersがリードしました。
SaaS企業のインテグレーション構築・大規模な展開を支援するiPaaS Prismatic、シリーズBで$22M(約33億円)を調達
Prismaticは、SaaS企業が自社プロダクトとSaaSの顧客がすでに使用している他のプロダクトと接続するためのソリューションを設計するiPaaSスタートアップ。Prasmatic創業者は以前別のソフトウェアスタートアップを経営した際に、R&Dキャパシティの半分以上をインテグレーション開発に費やした原体験からPrismaticの事業を構想しました。同社はSaaS企業がインテグレーションを簡単に構築・大規模に展開・管理し、SaaSのユーザーがセルフサービスできるようにソリューションに組み込むことを支援しています。顧客は新興企業からフォーチュン100社まで幅広く存在し、2023年はARRを大きく成長させたとのことです。本シリーズBは、Five Elms Capitalがリードしました。2015年に印・バンガロールで設立されたImpact Analyticsは、小売、食品、消費財(CPG)などの業界のサプライチェーンに特化したプランニングと商品企画・調達を支援するソフトウェアスイートを提供するスタートアップ。同社のソフトウェアにより、需要予測、価格設定、プロモーション、在庫管理などの意思決定を最適化・自動化できます。本ラウンドでは、Sageview CapitalとVistara Growthから調達しました。
■資金調達
行動認識AIで安全で快適な世界を目指すアジラ、シリーズCで約4.6億円調達
AI警備システム「AI Security asilla」を提供しています。既存のカメラをAI化し、異常行動や不審行動を検出したときに通知します。映像をモニタリングする警備員の業務を軽減でき、見逃しや見落としも無くすことが可能です。日本国内の複合施設や商業施設、病院、教育機関、交通インフラなど幅広く採用されています。本ラウンドはモアマネジメント、三菱UFJキャピタル、エースタート、イノベーション・エンジンが参画しています。
ノンデスクDX実現を目指すX Mile、シリーズBで約18億円調達
ノンデスク事業者向けの人材採用システム「クロスワーク」、物流領域・自動車整備領域・建設領域に特化したエージェントの「ドライバーキャリア」「整備士キャリア」「建職キャリア」「ロジキャリア」物流業界向け経営支援サービス「ロジポケ」などのサービスを提供しています。直近の実績として、取引数は5,000から10,000事業所へ2倍伸長し、ノンデスクワーカーのデータベースも20万人から40万人へ2倍伸長しています。今回のラウンドにはMinerva Growth Partners、JPSグロース・インベストメント、UTEC、SMBCベンチャーキャピタルが参画しています。
アポイントを取らずにその場で商談を実現させるOPTEMO、シリーズAで3億円調達
Webサイト訪問者と即時コミュニケーションが可能なセールステック「OPTEMO(オプテモ)」を提供しています。既存のWebサイトに専用のタグを1行入れることですぐに導入が可能であり、「これまで知らずに逃していたお客様」との顧客接点を取ることが可能な仕組みを提供しています。新規商談数の160%アップや商談化率80%達成などの成果を実現しています。今回のシリーズAラウンドにはSkyland Ventures、SBIインベストメントなど複数の投資家が参画しています。
ライティングアシスタント実現を目指すスタジオユリグラフ、シードラウンドの調達を実施
AIライティングアシスタント「Xaris(カリス)」を提供しています。「Xaris(カリス)」では、特許出願済の独自UIで執筆時間を大幅に短縮し、音声入力・資料検索・構成提案などのアシスト機能により、記事の執筆時間を70%以上削減が可能です。主にプロのライターや記事制作会社を中心に、累計130ユーザー(うち法人42%)から有料契約を獲得しています。今回のラウンドにはANOBAKAが参画しています。また、融資による調達も行っています。
リファレンス/コンプライアンスチェックサービスを提供するROXX、資金調達を実施
正社員転職プラットフォーム「agent bank」とオンライン完結型のリファレンス/コンプライアンスチェックサービス「back check」を提供しています。「agent bank」では、未経験の求職者と採用企業のダイレクトマッチングに加え、人材紹介会社の支援サービスを展開しており、「back check」では採用候補者の経歴や実績に関する情報を第三者から取得できます。これまでの業績として「agent bank」は掲載求人数約43,000件、人材紹介会社による転職者推薦数が累計40万件を突破し、「back check」は累計リファレンスチェック実施人数が約5万人に到達しています。今回の融資にはUPSIDER Capitalが参画しています。
■IPO / M&A / 業務提携
メドレー、グッピーズに対しTOBを実施
メドレーは、グッピーズの株券等を金融商品取引法による公開買付けにより取得することを決議しており、グッピーズは本公開買付けに賛同の意見を表明しています。グッピーズは、医療・介護・福祉に特化した人材サービス事業及び健康管理アプリを活用したヘルスケア事業を行っています。
三菱HCキャピタルとメダップが資本業務提携契約を締結
三菱HCキャピタルとメダップは、医療機関の経営改善支援および持続可能な包括的地域医療体制の構築を図るべく、資本業務提携契約を締結しました。地域中核病院、専門病院、クリニックなど、幅広い医療機関を対象とした経営改善サービスの構築、および地域医療の質と持続可能性の向上に資するビジネスの確立を図ります。両社は、メダップの提供する地域連携CRMツール「foro CRM」の活用などを通じて、地域における医療機関の役割分担の明確化、医療資源の最適配置、患者の状態に適した医療提供を実現することで、医療機関の経営改善に取り組みます。
- マイクロソフトが「Copilot Pro」発表。月額3200円でGPT-4の優先利用やWordやPowerPointのAI機能を利用可能(Business Insider)
- 生成AIの業界団体「Generative AI Japan」発足 ベネッセが発起 マイクロソフト、AWS、Google、オラクルなどの幹部が理事に(IT Media)
- マイクロソフト、買い物客の購買行動全体にわたる新たな生成 AI とデータソリューションを発表(Microsoft)
- AIに懸ける米アクセンチュア、4400億円投じ体制強化(日本経済新聞)
- 企業における生成AI利用、まずは営業分野で普及の可能性(Yahoo!ニュース)
- 個別学生に合わせた「AI家庭教師」 米アリゾナ州立大学、オープンAIと提携(毎日新聞)
- 1X - OpenAIも出資する、ノルウェー発ヒューマノイド型AIロボットを開発するスタートアップ。シリーズBで$100Mを調達。投資家はEQT Ventures、Samsung Nextなど(VentureBeat)
- Forta - 品質の高いヘルスケア提供を支援するAIスタートアップ。シリーズAで$55Mを調達。投資家はInsight Partnersなど(FinSMEs)
- Sakana AI - 元Google Brainの研究者らが設立した、東京ベースのAIスタートアップ。45億円を調達。投資家はLux Capital、Khosla Ventures、NTT、KDDI、ソニーグループなど(Nikkei)
- CloudTalk - 顧客体験を向上させる、次世代電話SaaSスタートアップ。シリーズBで$28Mを調達。投資家は、KPN Venturesなど(FinSMEs)
- Recraft - プロのデザイナー向けデザイン生成AIスタートアップ。シリーズAで$12Mを調達。投資家はKhosla Venturesなど(FinSMEs)
- Alphathena - 投資顧問業(RIA)向けのAIを活用したダイレクト・インデックス・プラットフォームを開発するスタートアップ。投資家はETFS Capital、HPA(FinSMEs)
- Truewind - 会計版AI copilotを開発するスタートアップ。$1Mを調達。投資家はThomson Reuters Venturesら(AXIOM)