現在の米国ベンチャー投資と2021年の類似点
Clouded Judgement「Clouded Judgement 2.29.24 - Shades of 2021」の一部を日本語で紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
Clouded Judgementによる、近年のAIソフトウェアバブルと2021年のSaaSバブルの共通点とそれに対する警鐘を鳴らす記事です。米国ではここ数ヶ月の間、AI関連スタートアップへの投資が過熱する一方、昨年対比でこれらのAIスタートアップの成長は鈍化しはじめています。AIが大きなプラットフォームシフトであるという見方もありますが、2021年での学びを振り返り、冷静に資金調達をすることはスタートアップにも重要であると説いています。2021年と現在の類似点は以下の通りです。
- ARRの100倍前後での過剰なバリュエーションをつけている
投資家は「これはプットオプションである」と言いますが、この発言は2021年でも多く聞かれた言葉です。
残念ながら、現実にはプットオプションにはなりません。
ARRの100倍で投資をして、VCが10倍のリターンを創出することは極めて困難です。
- Pre-empted(先買い)ラウンドが急増している
この行動によって、FOMO(取り残されることへの恐怖)を投資家に助長しています。
それによって先取りして動こうとする動きが加速しています。
- 大規模なセカンダリー取引が増えている
残念ながら、この現象も徐々に増え出しています。
- 世間的に注目される、“ ホット ”な案件に唾をつけようとする
メディアが注目する様なホットな案件に関わることで、分野との関連性を投資家が示そうとします。
それによって、より多くの起業家からのアプローチを期待するためです。
これは投資家心理のFOMO(取り残されることへの恐怖)を助長しています。
また、高いバリュエーションを期待する起業家心理を助長しています。
- 既存の取締役がタームシートに反対する
これは、最近見られる現象です。2021年以降、高いバリュエーションで資金調達を行なうことによるマイナス面や隠れたコストが見えはじめました。
これを経験した多くの人々は、「これほど高いバリュエーションで資金を調達することは会社のためにならない」と述べています。
2021年にこう言っていた多くの人々は正しかった。そしていま、2024年でも彼らは同じことを言っています。
プロダクトマネジメントが上手くいかない9つの危険信号
Paweł Hurynのmedium「9 Red Flags in Product Management」の一部を日本語で紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
SaaSモデルの前提には、プロダクトが常に進化し、顧客価値を上げ続ける「永遠のベータ版」があることがあります。そのためプロダクトマネジメントが機能しているか否かが、長い目でみた時にSaaS企業の成否をわけます。また、今日のように成長と効率性、将来的な利益創出が求められる市場環境では、日本のSaaSスタートアップにおいて、複数のプロダクト開発・展開は不可避とも言えます。このブログでは、プロダクトマネジメントが上手くいかないレッド・フラッグ(赤信号)となる現象を紹介しています。
- 最初からPRDに全て文書化しようとしすぎる
- 機能工場 -Feature Factory- になっている:プロダクト組織がただ要件を実装するだけ。「なぜ」に無関心になっている
- ウォーターフォール型の開発プロセスで実行している:全ての要件が初期段階で集められている
- ガント方式のロードマップ:時間ベース、機能ベースのロードマップで運用している
- プロダクト開発途中で “発見” が無い:アイディアを検証する必要性を感じていない
- デザイナーが初期から関わっていない:プロダクト開発後半にデザイナーを巻き込んでいる
- プロダクトの分析(アナリティクス)が無い:ユーザーがプロダクトをどう使ってるか分かっていない
- 一部の顧客が決定権を持っている:強力な顧客がすべてのプロダクトの意思決定に影響を持っている
- 戦略がない:すべての顧客を満足させ、あらゆるチャンスをつかむことで売上を上げようとする
候補者について多くを学べる質問
Lenny's Newsletter「How to learn the most about a candidate from a single interview question」の一部を日本語で紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
ポッドキャスターであり、以前Airbnbでプロダクトリードを務めていたLenny Rachitskyが、面接で使っている好きな質問を紹介しました。いくつかの質問は、特にプロダクトマネージャー向けです。
- あなたの最大のプロダクト失敗について教えてください。何が起こり、どのように対処しましたか?
- チャレンジングな状況にあった時のことを教えてください。どのように乗り越えましたか?
- 想定していたのと違う理由でうまくいったことについて教えてください。
- 何かがうまくいかなかった時のことを教えてください。何が起こり、どのように対処しましたか?
- 上司と意見が合わなかった時のことを教えてください。どのように対処しましたか?
- これまでに出荷した最悪のプロダクトは何ですか?
エンタープライズセールスにおけるSolution Engineeringの存在
Startup Missives「Mastering Solutions Engineering for Enterprise Sales with Zaki Bajwa, Snyk」の一部を紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
相対するお客さまの規模が大きくなればなるほど、その問題の複雑性は増していきます。提供するプロダクトを導入するためには、企業が抱える課題を特定し、1つ1つ紐解き、信頼を勝ち取ることが求められます。一方、スタートアップ側の立場に立つと、お客さまに最も貢献できる体制や、ケイパビリティを設けておきたいものです。今回は、エンタープライズ企業を攻略していく中で、(特に技術的な側面から)お客さまのニーズに合わせた解決案を考えていくSolution Engineeringの役割について解説する記事をご紹介します。下記は、記事の要約の中で参考になる部分を翻訳したものです。ぜひ記事もチェックしてみてください。
- Solution Engineer (SE) の活動は受注確度の高いフェーズで行なわれる
SEは、AEから見込み客の紹介を受けながら技術関係者をチャンピオンにしていきながら契約を取っていく重要な役割を果たします。 - アップマーケットする過程で、セールスはよりコンサルティング活動をするようになる
企業は処方箋を求めます。「このソフトウェアはどのように問題を解決するのか」「このソフトウェアはどのように我々の環境に適合するのか」を求めてきます。 - SEは社内でお客さまの声を代弁する
SEは現場に関わりながら、PMFやプライシング、プロダクトのクロスセリングなどに関する豊富な洞察を提供します。 - AEとSEの関係は極めて重要である
AEはビジネス・チャンピオンを獲得し、SEは技術チャンピオンに集中します。 - プリセールスとポストセールス両方のパフォーマンスを測定する
現代のSE組織は、プリセールスフェーズにおけるパイプラインの活動や新しいビジネス状況だけでなく、アップセルやリニューアルの活動にも関わってきます。 - テクニカルプロダクトのセールスは、必ずビジネス・バリューが重要になる
高度に技術的な開発者向けのプロダクトであったとしても、企業の中で採用されるときにはビジネス価値を中心に問われます。
OpenGovの18億ドルでの買収から学べること
Linear: A Vertical Software Newsletter「#062: OpenGov Acquired for $1.8B, Building SaaS For Law Firms, Average Churn Rates」の一部を紹介したものです。全内容はリンク先をご覧ください。
OpenGovが、Cox Enterpriseによって18億ドルで買収されることが発表されました。投資家にはInsight Partners、Accel、Andreessen Horowitzらから1.8億ドルの資金調達を行ない、Mark Andreessenは取締役にも就任しています。
- 12 年以上の中で、正しい方法でVertical SaaSを積み上げていくことでこの偉業を成し遂げました。Vertical SaaSのプレイブックを地道に正しく実行した結果だと言えます。
- 大不況の中で、地方財政における研究を開始。初めに予算データを求めることから開始しましたが、システムがあまりにもレガシーでデータを取得できないことに気づいたことが起業の契機に。
- 政府が実際に金融データにアクセスし、それをインタラクティブかつ視覚的な方法で一般の人々と共有できるようにする、報告と透明性のプラットフォームを構築することから事業を開始しました。
- Vertical SaaSは、「マルプロダクトなのかか」がすべてであり、OpenGovも多分に漏れず、そのスイートを拡張していきました。さらに非連続な打ち手として買収も積極的に実施。調達プラットフォームのProcureNowや資産管理SaaSのCartegraphなどがワンストッププラットフォームの確立に一役買っています。
- Figure AI - ヒューマノイドロボット・AI開発スタートアップ。評価額$2.6Bで$675Mを調達。OpenAI、Nvidia、アマゾン創業者ジェフ・ベゾスなど(CNBC)
- Glean - エンタープライズの固有データに基づくChat GPTライクなパーソナルアシスタントSaaS。シリーズDで$200Mを調達。評価額は$2.2B。投資家はKleiner Perkins、Lightspeedなど(TechCrunch)
- Abridge - 医療従事者の書類作成業務を自動化する生成AI。シリーズCで$150Mを調達。投資家はLightspeed、Union Square Ventures、Bessemer Venture Partnersなど(SaaS News)
- Exodigo - センサー、3D画像処理、独自のAIプラットフォームを組み合わせた地下マッピングソリューション。シリーズAで$105Mを調達。投資家はGreenfield Partners、Zeev Ventures(CTech)
- Unseenlabs - フランス発の海上監視分野のDefense Techソフトウェア。$92.2Mを調達。投資家はSupernova Invest、UNEXOなど(tech.eu)
- Ideogram - midjourneyの競合となる画像生成AI。シリーズAで$80Mを調達。投資家はAndreessen Horowitz, Index Ventures、Redpoint Venturesなど(Venture Beat)
- Reveleer - ヘルスケアデータ管理・分析SaaS。$65Mを調達。投資家はHercules Capital(PR Newswire)
- Intenseye - AIを活用した職場環境の安全性を向上するソリューション。シリーズBで$64Mを調達。投資家はLightspeedなど(BusinessWire)
- Passes - クリエーター向けの顧客エンゲージメント向上・収益管理SaaS。シリーズAで$40Mを調達。投資家はメリー・ミーカー率いるBondなど(Yahoo! Finance)
- B.well - 患者のエンゲージメント向上のためのヘルスケアデータSaaS。シリーズCで$40Mを調達。投資家はLeavitt Equity Partnersなど(PR Newswire)
- Inkitt - AIでベストセラーを開発する自費出版プラットフォーム。シリーズCで$37Mを調達。投資家はKhosla Ventures、NEA, Kleiner Perkinsなど(TechCrunch)
- Synadia - オープンソースのクラウドおよびエッジネイティブ・メッセージングSaaS。シリーズBで$25Mを調達。投資家はForgepoint Capitalなど(FinSMEs)
- Xcelerate - シンガポール発のGRC(ガバナンス・リスク・コンプライアンス)/ESG管理SaaS。$25M超を調達。投資家はFederated Hermes Private Equity、Altair Capitalなど(Fintech Global)
- Crisp - CPGブランド企業が製造、流通、マーチャンダイジング、マーケティングを最適化するSaaS。シリーズBエクステンションで$20Mを調達。投資家はBlue Cloud Ventures、FirstMark Capitalなど(Yahoo! Finance)
- Qapita - シンガポール発のエクイティ・ESOP管理SaaS+未上場株取引のマーケットプレイス。プレシリーズBで$17.2Mを調達。投資家はEast Ventures、MassMutual Ventures Southeast Asiaなど(BNN)
- Mistral AI - フランス発のOpenAIの競合となる生成AIスタートアップ。マイクロソフトから戦略的パートナーシップを目的として$16Mを調達(TechCrunch)
- NLX - エンタープライズ企業が顧客体験を改善するためのエンド・トゥー・エンドAIソリューション。シリーズAで$12Mを調達。投資家はCercanoなど(FinSMEs)
- Parspec - 建設資材の選択と販売を合理化するAIソフトウェア。シードで$11.5Mを調達。投資家はInnovation Endeavorsなど(Yahoo! Finance)
- Relish - 企業向けに調達システム・プロセスを最適化するSaaS。シリーズAで$10Mを調達。投資家はVolition Capitalなど(Yahoo! Finance)
- Slice - 各国のコンプライアンスへの適合を確認するAIによる、グローバル・エクイティ・プラットフォーム。シードで$7Mを調達。投資家はTLV Partners、R-Squared Venturesなど(Fintech Global)
- OpenGov - a16zが投資する政府機関・自治体向け予算編成、計画、調達管理SaaS。Cox Enterprisesが$1.8Bで過半数株式を取得するマジョリティ投資を実行(govtech)
- orosy - B2B卸仕入マーケットプレイス。シリーズAで約3億円調達。投資家はSpiral Innovation Partners、GxPartners、東芝テック、ギフティ、Life Design Fund、佐藤 裕介氏(STORES 株式会社 代表取締役社長)、山本 正喜氏(Chatwork株式会社 代表取締役)(PRTimes)
- LOOV - 各顧客に応じて営業内容が自動的に変化する動画作成/配信ツール。シードで累計1.2億円超調達。投資家はOne Capital、HAKOBUNE、個人投資家。(PRTimes)
- フラッグス - プロジェクトマネジメントDXプラットフォーム。総額2億円調達。投資家はシンプレクス、ラキール。(PRTimes)