「エンタープライズテックの現状2024」レポートからの4つの学び
INSIGHT PARTNERS「What founders can learn from the 2024 State of Enterprise Tech Report」の一部を日本語で紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
米ニューヨークを拠点に置くInsight Partnersが、数兆ドルの売上を誇る大企業のIT関連の幹部421人を対象にした調査結果に関する記事。アメリカのAIスタートアップの発展の背景にある、顧客側の大企業のトレンドを理解するのに役に立ちます。日本の大企業は、アメリカと同じトレンドとは言い難いですが、近い将来、同じような状況になる可能性は高いので、エンプラを対象とするSaaSスタートアップの方にはおすすめです。
- カスタムAIへの注目の高まり
大企業のデータを統括するリーダーの99%はデータ基盤やAI予算を増加または維持すると回答している。特に、企業特有のニーズを満たす、AIモデルのカスタマイズに大幅に投資をしている。特に採用されているのはOpenAIのAIモデルで回答者の43%がGPT-4、36%がGPT‐3.5を採用している。生成AIの導入を成功させるためには、組織全体での賛同を得ることが重要とも回答している。 - クラウド投資は増加の一途
技術系幹部の91%は、ハイブリッドクラウド、演算処理、またはコンテナ技術の予算を増やすか、維持すると回答しています。現在、技術リーダーの68%はCI/CDパイプラインを導入し、積極的に使用しており、62%はサーバーレス技術を導入しており、よりアジャイルなソリューションへのシフトしています。 - 学習・能力開発と従業員のパフォーマンス・生産性向上を優先
企業のリーダーは、顧客満足度を高めるために、高度なデータ分析と自動化を活用するようになってきている。 重点分野には、顧客データ管理、顧客分析、デジタル・コミュニケーションおよびバーチャル・エージェント、顧客サービスの自動化が含まれる。今年は、従業員のパフォーマンスと生産性を最優先事項と考えているリーダーは、2023年の36%から65%に増加している。 - サイバーセキュリティは最優先課題で高需要
サイバーセキュリティは依然として企業の最優先事項であるため、可能な限りサイバーセキュリティのリーダーは予算を確保しており、大半は2024年まで予算配分を維持している。特にクラウドセキュリティは最優先事項であり、サイバーセキュリティリーダーの49%は予算重点事項のトップ3の1つに挙げている。
バーティカルSaaS最大の課題:営業チームを業界の専門家集団にすること
Saastr「The Biggest Challenge With Vertical SaaS: Your Sales Team Has to Be Domain Experts」の一部を日本語で紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
近年では、国内外のSaaS企業の規模が大きくなるにつれ、SaaSの営業経験者を採用することは難しくなくなってきました。特にSalestechのような領域では、採用の難易度はぐっと下がってきています。一方で、バーティカルSaaSの場合、一般的なSaaS営業経験者ではなく、その業界の専門家であることが顧客から要求されるため、営業チームの組成・スケールはホリゾンタルSaaSより難易度が高くなります。そのため、ホリゾンタルSaaSとは異なる考えに基づいて、計画を立てる必要があります。
- B2B SaaSのトップ企業で働いてたからと言って即戦力である期待をしてはいけない
GongやCartaでうまく売れたから、非常に特殊な業界向けのツールも売れるだろうと考えて、営業担当者を雇うSaaS創業者を、あまりにも多く見かける。 - 創業者が中心となった営業モードに長くいるように計画する
バーティカルSaaSの場合、ホリゾンタルより創業者が中心となって営業し続ける必要がある。 - 社内からのプロモーションに注力する
どうにかして営業を成功させる方法を見つけた2-3人のセールスから、最初の営業責任者に抜擢する必要があるかもしれません。 - 幹部候補者には営業の実態を知ってもらう
一般的なB2Bツールの営業からバーティカルSaaSの営業にジャンプできる人は確かにいる。ただし、多く場合、そうなりたがらない。ゆえに幹部候補者には、顧客との電話を聞いてもらって、どのような営業が必要か理解してもらうべきです。
AI革命ではサーバー、鉄鋼、そして電力が重要な資産になる
20VC with Harry StebbingsのYoutube「David Cahn: Why Servers, Steel and Power Are the Pillars Powering the Future of AI | E1186」の一部を日本語で紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
Sequoia Capitalのパートナーであるデイビッド・カーンが、AIの現状についてポッドキャストで話しました。以下がその要点です。
- AIに関して過剰な投資が行われています。AIに関連するインフラやファウンデーションモデルに過剰な資金が投入されています。
- より優れた効率的なモデルが登場すると、実際にはデータセンターやGPUの需要が増加します。これは、モデルが進化するにつれて、人々がさらなる開発のためにより高度なハードウェアでトレーニングを行いたいと考えるためです。データセンターが最も重要な資産であるという議論も成り立ちます。
- SaaS企業にとっては、AIを取り入れてお客様に提供する価値を高めることが重要です。より多くの価値を提供することで、SaaS企業は顧客に対してより高単価に価格設定ができるようになります。
- 特にデータに関するMOATを持つ業界やビジネスは、より大きなプライシングパワーを持つでしょう。
- モデルが大規模化するにつれて、モデルとインフラの垂直統合がより重要になります。イーロン・マスクとマーク・ザッカーバーグはこの方向性を追求しています。
- サーバー(NVIDIAとチップ)、鉄鋼(データセンターの建設)、電力(それらを稼働させるために必要なエネルギー)は、このAI革命において非常に重要な要素となるでしょう。
- 米国はAIで先行するための素晴らしい環境を持っていますが、中国も急速に追いついています。
- 不動産投資家は非常に活発になっており、データセンタービルや施設建設のファイナンスに多くの投資を行っています。
生成AIとソフトウェアの関係性
Clouded Judgement「Clouded Judgement 8.16.24 - The Great Services-To-Software Rotation」の一部を日本語で紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
Jamin Ballのメルマガにて、生成AIの発展がもたらすソフトウェア事業への影響について述べられており、非常に示唆に富んでおりました。
- 一部の批評家は、生成AIがデフレ効果をもたらすと主張しています。少ないリソースでより多くのことを可能にすることで特にソフトウェア市場を縮小させる、無限の作業負荷を処理できるAIエージェントが、最終的にソフトウェアへの支出の必要性を減少させるという主張です。
- 一方でJamin Ballはこの見方が大局を見誤っていると主張。実際、生成AIは(内部および外部の)サービス支出からソフトウェア支出への劇的なシフトを促進する立場にある、そしてこのシフトはソフトウェア市場の規模(および創出される株式価値)を劇的に拡大するでしょう、と主張しています。
- 生成AIは、人員/アウトソースサービスへの支出をソフトウェアに移行させることで、ソフトウェア市場の規模を拡大します。
- タスク完了の「単価」またはコストを下げるにもかかわらず、生成AIは潜在的需要を解放することでソフトウェア市場の規模を拡大します。
- 生成AIは、低倍率の収益を高倍率の収益に移行させることで、ソフトウェアの株式価値成長に複利効果をもたらします。
バーティカル
- Guidewheel - 製造工場のオペレーション改善AI×SaaS。シリーズBで$31Mを調達。投資家はDecarbonization Partners、Greycroftなど(Business Wire)
- UptimeAI - オイル&ガス、化学などの製造プラントのパフォーマンス最適化AI。シリーズAで$14Mを調達。投資家はWestBridge Capital、Emergent Venturesなど(FinSMEs)
- EliseAI - 不動産オーナーと借り手をつなぐAIチャットボットベースの不動産管理SaaS。シリーズDで$75Mを調達。評価額は$1B。投資家はSapphire Ventures、Navitas Capitalなど(TechCrunch)
- ITpipes - パイプ検査の効率的なデータ収集、分析、監視を可能にするSaaS。$20Mを調達。投資家はTrilogy Search Partners、Miramar Equity Partnersなど(VC News Daily)
- CruxOCM - エネルギー部門の制御室向けcopilot。シリーズAで$17Mを調達。投資家はM12、ONEOKなど(Yahoo! Finance)
ソフトウェア開発支援
- Anysphere - ソフトウェア開発者向けコード支援AIコパイロット。シリーズAで$60Mを調達。評価額は$400M。投資家はAndreessen Horowitz、Thrive Capitalなど(TechCrunch)
- Encord - AIモデルづくりのためのデータ開発(ラベリング・アノテーション)SaaS。シリーズBで$30Mを調達。投資家はNext47など(TechCrunch)
- CodeRabbit - コードレビューAI。シリーズAで$16Mを調達。投資家はCRV、Flex Capitalなど(Silicon Angle)
エンタープライズ
- Glean - エンタープライズ向けAIサーチエンジンSaaS。評価額$4.5Bで$250Mを調達をDST Globalなどと交渉中(WSJ)
- DevRev - カスタマーサポートとプロダクト開発を統合したAIプラットフォーム。シリーズAで$100Mを調達。評価額は$1.15B。投資家はKhosla Ventures、Mayfield Fundなど(Silicon Angle)
- ArborXR - エンタープライズグレードのAR/VRデバイス管理SaaS。シリーズAで$12Mを調達。投資家はMercury Fund、Cortado Venturesなど(TechCrunch)
サイバーセキュリティ
- Kiteworks - EメールセキュリティSaaS。評価額$1B超で$456Mを調達。投資家はInsight Partners、Sixth Street Growthなど(TechCrunch)
- Chaos Labs - ブロックチェーンのリスク管理SaaS。シリーズAで$55Mを調達。投資家はHaun Ventures、Lightspeed Venture Partnersなど(CTech)
フィンテック
- Setpoint - 不動産と資産担保融資のための技術インフラSaaSを提供。シリーズBで$31Mを調達。投資家は645 Ventures、Andreessen Horowitzなど(Fintecch Futures)
その他
- Sahara AI - ブロックチェーンを活用した分散型AIネットワーク。シリーズAで$40Mを調達。投資家は Pantera Capital、Polychain Capitalなど(Reuters)
- Levels - リアルタイムの血糖値、血液検査、栄養摂取量、睡眠と運動データなどのバイオマーカーに基づいて、メタボリックヘルス改善を支援するAI。シリーズAエクステンションで$10Mを調達。投資家はa16z、Long Journeyなど(Yahoo! Finance)
- デジタルクランプ - リフォーム業界の現場管理支援事業を展開。シードラウンドで約8500万円を調達。投資家はDRG Fund、Gazelle Capital、ユナイテッド、waypoint venture partners(PR Times)