「今週のSaaS×AIニュース」ピックアップ!
*SaaS×AI Weeklyは、ALL STAR SAAS FUNDが毎週ピックアップした記事を日本語で要約し、一部メンバーからのコメントを入れてお届けしています。

AI効率化はコモディティ化する。最後に残るMoatは『組織知の内製化』
「Above the Model」 by Gordon Ritter on Emergence Capital
Emergence CapitalのGordon Ritter氏が、AIによる仕事消滅論に真っ向から反論し、「AIを活用して人材や組織知を社内に蓄積し、複利的に成長させる企業こそが、持続的な競争優位を持つ」と主張する内容です。AIツールに自社のノウハウを外部流出させずに、『組織知の内製化』をどう設計するか。日本のスタートアップ起業家にとっても、今すぐ着手すべき経営課題です。
AIは「目標の最適化」が得意だが、「目標の設定」はできない
AIは与えられたゴールに向けた最速・最安のルートを導き出す能力に長けています。しかし、どのゴールを追うべきかを判断する「一段上の思考」は依然として人間の仕事です。市場を動かし、会社を起こすのはその判断の瞬間であり、自動化が最も困難な領域でもあります。
勝者は「エージェント」ではなく「その下にあるプラットフォーム」を構築している
汎用AIツールがそのまま競争優位になる時代は終わります。自社の業務プロセス・意思決定ロジック・ノウハウをAIと統合し、社内に蓄積する仕組みを持つ企業が差別化を維持します。McKinseyの「Lilli」、Rampの内部AIワークスペースであるGlass Framework、Veevaの業界特化エージェントはその先行事例です。
「トレース」こそ外部から取得不可能な知的財産である
社員がシステムを使うたびに生まれる行動履歴(トレース)は、モデルの精度を高める固有データです。これは外部から買えず、時間をかけた実使用によってのみ蓄積されます。<yellow-highlight-half-bold>今日から構築をはじめた企業のトレース蓄積は、1年後に参入する競合には再現できない参入障壁になります。<yellow-highlight-half-bold>
個人知を組織知に変換し、「社内」に留める設計が問われている
一人の社員が発見した優れたワークフローを再利用可能な「スキル」としてパッケージ化し、全社に展開する仕組みがある企業は、個人の発見が全員のスタート地点になります。優れた実践を外部ツールに流出させている企業との差は、サイクルを重ねるごとに広がっていきます。
業務プロセスの外部流出リスクは「データ」より「思考の手順」にある
社員が公開AIツール上で業務の流れを説明・入力することで、自社の意思決定ロジックや優先順位付けの構造が基盤モデルに学習される可能性があります。契約上のデータ保護より、行動トレースや合成データに関する保護は法的に未整備であり、経営者が見落としがちなリスクです。
AI企業が「業界専門家のリクルーティング」を通じて競合の参入障壁を侵食している
AIラボ各社は医療・法律・金融の専門家を積極採用し、業界固有の推論能力を基盤モデルに組み込んでいます。これはSaaS企業が持つ深い業界知識が、AI基盤モデルによってじわじわと複製・代替されていくプロセスであり、特定業界に深いノウハウを持つSaaSスタートアップにとって無視できない競争構造の変化です。
「最適化は全員が持つ」前提で戦略を立てよ。差別化は組織の適応能力そのものにある
AIによる業務効率化はいずれコモディティ化します。真の競争優位の源泉は、目標を変える判断力、モデルがこれまで見たことのない一手を生み出す創造性、そして外から再現できない『組織固有の判断・適応・創造のパターン』です。それを捕捉・蓄積するレイヤーを構築した企業だけが、次の10年の勝者になります。
AIがSaaSのビジネスモデルを根底から再定義する:PitchBook Q1 2026 Enterprise SaaS VCトレンドレポート
「Q1 2026 Enterprise SaaS VC Trends」 by Derek Hernandez on PitchBook
PitchBookのシニアリサーチアナリスト Derek Hernandez氏らによる2026年Q1のグローバルEnterprise SaaS VC市場の最新動向分析レポート。AIネイティブへの移行がSaaSの収益構造・バリュエーション・競争優位のすべてを刷新しつつある実態を、最新データで解説しています。日本のAI・SaaSスタートアップにとっても、プロダクト設計・プライシング戦略・資金調達環境を再考するうえで多くの示唆に富む内容です。
SaaS市場のVC投資は史上最高額を記録。ただし実態は二極化
2026年Q1のEnterprise SaaS VC投資総額は1,730億ドルと過去最高を更新しました。しかし、その大部分はOpenAIの1,220億ドルとxAIの200億ドルによるものです。この2社を除いても前四半期比27.5%増を維持しており、AI・ERP・CRM・バーティカルSaaSへの投資需要は依然として旺盛と言えます。
シートベース課金モデルが「リスク要因」として再評価されている
2月の株式市場での急落でSaaSセクターは時価総額2,850億ドルを48時間で失いました。<yellow-highlight-half-bold>投資家はAIをプロダクト機能ではなく、シートベースARRに対する構造的脅威として価格付けしはじめています。<yellow-highlight-half-bold>ARRの70%以上をシート課金に依存するCRM・サポート・セールステック企業は特に脆弱とされています。
アウトカムベース課金が業界標準へ移行しつつある
HubSpotが『解決1件あたり0.50ドル』、Intercomが『解決1件あたり0.99ドル』でそれぞれARR 1億ドルを突破。SierraはARR 1.5億ドルを純アウトカム課金のみで達成し、バリュエーション100億ドルを獲得しました。シート課金を採用するSaaSベンダーの比率は12ヶ月で21%から15%へ低下しており、「完了した仕事に対して課金する」モデルへの移行が加速しています。
「コンテキスト」が次世代の競争優位となる
モデルへのアクセス競争から、エージェントを安定稼働させるための「コンテキストレイヤー」の支配権争いへとフェーズが移行しました。Salesforce、SAP、ServiceNow、Workdayは固有のワークフローデータ・セマンティックモデル・権限管理の獲得に向けた買収を相次いで実施しています。既存AIモデルのAPIを繋いだだけの『薄いAIラッパー型』プロダクトは厳しく評価されるようになり、自社固有の業務コンテキストを深く保持するシステム・オブ・レコードが優位に立ちます。
EXIT市場は表面上は好調だが実態は厳しい
Q1のEXIT総額は2,616億ドルと過去最高ですが、SpaceXによるxAI買収(2,500億ドル)が大半を占めます。これを除くと前四半期比56.8%減であり、バリュエーション開示率も23.4%と2021年の96.1%から大幅に低下しました。資本コストが大きく下がらない限り、従来型SaaSへのバリュエーション圧力は当面続く見込みです。
アーリーステージのバリュエーションは上昇トレンド
シード・プレシードのプレマネー評価額の中央値は2,860万ドル、アーリーステージは1億350万ドルと直近5年で最高水準に達しています。AIネイティブかつバーティカル特化のスタートアップへの評価は高く、MainFunc(16億ドル評価)やArena Intelligence(17億ドル評価)などが注目ラウンドとして挙げられています。
投資家の選別基準が「プロダクト×データ×アウトカム」に収斂している
今後VCから評価されるのは、固有データ資産・ワークフローへの深い統合・AIが実際に業務を遂行できる証明・そのコンテキストを守るガバナンス、の4点を兼ね備えたプラットフォームです。汎用的な自動化の主張やシート拡張に依存するビジネスモデルは、現在の市場では厳しい審査にさらされます。

世界をミュートして、自分の世界を築け
「What David Senra Learned Studying 400+ Founders」 by Sequoia Capital on YouTube
Founders podcastのDavid Senra氏が、HubSpot共同創業者でSequoiaのパートナーであるBrian Halligan氏と対談。Senra氏はMichael DellからJensen Huangまで、400人を超える偉大な創業者の評伝を読み込んできた人物です。本エピソードでは、時代を超えて偉大な創業者に共通する資質、プロダクトマーケットフィットよりも重要な「創業者と課題のフィット」、共同創業という幻想、ネガティブな自己対話との付き合い方、そしてAIがもたらすレバレッジの本質について語っています。
偉大な創業者を一語に凝縮すると「フォーカス」になる
400人超の創業者を研究してきたSenra氏は、すべてを一つの言葉に落とし込むなら「フォーカス」だと語っています。彼らは平均的な人間と比べて圧倒的に集中しており、「まるで別の生き物のようだ」と表現します。今の創業者よりもさらに脇目を振らず、他人が何をどうやっているかをほとんど気にかけないと言います。Senra氏はこれを「世界をミュートして、自分の世界を築け」という標語でまとめています。
Dana White氏のUFCは「自分が見たいものをつくっただけ」の典型
買収した会社であっても、Dana White氏はUFCの創業者だとSenra氏は言い切ります。White氏は19歳のとき、Bostonのホテルで働く自称『負け犬』のベルマンでした。Fertitta兄弟とともにUFCを200万ドルで買収し、さらに4,000万ドルを追加投資。最初の6年間は赤字が続きましたが、そこから26年間運営を続け、近年はテレビ放映権で約80億ドルの契約をまとめました。White氏はビジネス書も一冊読まず、ポッドキャストも一切聴かず、「自分が見たいものをつくっただけだ」と語ったと言います。
フォーカスとは、本当にやりたい「良いアイデア」にノーと言うことだ
フォーカスと執着はどう違うのか。Senra氏はSteve Jobs氏の言葉でその違いを説明します。「フォーカスとはノーと言うことだ」というものです。
Jony Ive氏がVanity Fairのインタビューで『あれもこれも断った』と話したところ、Jobs氏は『それはやりたくなかっただけだ』と返したといいます。本当のフォーカスとは、心からやりたい良いアイデアにこそノーと言うこと——それが偉大なアイデアから注意を逸らすからだ、とSenra氏は語っています。
プロダクトマーケットフィットより『Founder-Problem Fit(創業者と課題のフィット)』が重要
SpotifyのDaniel Ek氏はかつて、創業初期にSteve Jobs氏を真似ようとして何年も無駄にしたと語っています。本来の自分はコーチ型、チームプレイヤー型だったからです。Senra氏はEk氏と共同で、創業者のアーキタイプを体系化するプロジェクトを進めています。
Ek氏の主張は、product market fitやfounder industry fitよりも、founder problem fit、つまり創業者とその課題の一致こそが最も重要だというものです。DeepMindのDemis Hassabis氏がその典型で、「彼はまさにこの課題のためにこの世に生まれてきた」とSenra氏は語っています。
アイデアより人が重要だ、なぜならアイデアは人から生まれるから
『才能ある人材のマネジメントについて、誰よりも多くをEd Catmull氏から学んだ』——これはSteve Jobs氏自身の言葉です。Catmull氏はJobs氏と26年連続で働いた人物で、Senra氏がその思想を紹介しています。
Catmull氏の主張は、アイデアと人のどちらが重要かと問うこと自体が誤りで、アイデアは人から生まれるのだから人のほうが重要だ、というものです。偉大なアイデアを凡庸なチームに渡せば台無しにされる。しかし凡庸なアイデアを優れたチームに渡せば、彼らはそれを直すか、捨てて新しいものをつくる——これがCatmull氏の主張です。
長く続く共同創業の関係はまれで、必ず一人の推進力がいる
MITの研究が「最適な共同創業者の数は3人」と結論づけたことにSenra氏は懐疑的で、時の試練に耐えた共同創業の関係はむしろ少ないと語っています。Carnegie氏は自社を経営しておらず、実際に動かしていたのはHenry Clay Frick氏でした。Frick氏は執務室で暗殺者に首を撃たれながら、傷を縫合させてその日の仕事をやり遂げた人物です。
Buffett氏とMunger氏の関係も、Munger氏が「一世紀に一人の才能」であるBuffett氏に自らを従わせたものだといいます。Michael Moritz氏の表現を借りれば、Jobs氏は二度目にAppleを「一人で」創業し直したのです。
ネガティブな自己対話は燃料になるが、燃料を変えなければ身を滅ぼす
最高の創業者は、勝利に安住しない。DoorDashのTony Xu氏は何か良いことが起きてもせいぜい一日祝い、ディナーが終わる前には「うまくいっていない17のこと」を考えはじめるといいます。Jensen氏は毎朝鏡を見て「なぜお前はそんなにダメなんだ」と自分に問いかけます。
決定的だったのは、8つもの10億ドル企業を立ち上げたBrad Jacobs氏が、ここまで来させた負の駆動力はもう自分の役に立っていないと指摘し、自分の天職を愛したならば内なる駆動力は生産的なものに変わるべきだと語ったことだとSenra氏は明かしています。
「金を積まれても辞められない」かが本物の証、だから売るな
『好きなことなら無償でもやる』——よく聞く言葉だが、Senra氏はさらに上の段階があると言います。「本当に好きなら、金を積まれても辞められない」というものです。だからこそ、彼は30年、40年と同じことを続けてきた人物に惹かれるといいます。
70代、80代の創業者と過ごして得た結論は、<yellow-highlight-half-bold>最高のアイデアを売ったなら、ゲームから完全に降りるべきだ<yellow-highlight-half-bold>ということです。2番目、3番目のアイデアで50代や60代に往年の輝きを取り戻そうとしても、ほぼ不可能だからです。2回目の創業は過大評価されており、成功のほとんどは1回目だと語っています。
今回ばかりは本当に違う、その正体はAIのレバレッジだ
「今回は違う」という言葉に普段は懐疑的なSenra氏も、Michael Dell氏との対話で考えを改めたと語ります。Dell氏は19歳のとき1,000ドルを元手に、史上初めて時価総額1,000億ドルに達し業界シェア約80%を握っていたIBM、「Google10個分」に挑み、最初の約20年間は毎四半期黒字を出し続けた人物です。そのDell氏が、今回は過去のどの変化とも違うと断言したといいます。組織の形も、必要な人数も、報酬の設計も、計画のサイクルも変わるとSenra氏は語ります。
『無限のレバレッジの時代には、自分の専門スキルの極限にいることが極めて重要になる』——Eric Jorgenson氏がNaval Ravikant氏についてまとめた『The Almanack』にある言葉です。AI以前に書かれたものでありながら、AIこそがそのレバレッジそのものだとSenra氏は語っています。
最も偉大な創業者で、バランスの取れた人生を送れたのは3人だけ
研究してきた創業者のうち、円満な家庭や充実した私生活を持っていたのは何人かと問われ、Senra氏は3人だと答えました。
一人はEd Thorp氏で、世界初のクオンツ型ヘッジファンドをつくり、ブラックジャックのカードカウンティングを編み出した人物です。
もう一人はSol Price氏で、史上最も影響力のある小売業者であり、Sam Walton氏、Jeff Bezos氏、Home DepotのBernie Marcus氏、CostcoのJim Sinegal氏が揃ってアイデアを学んだ相手だといいます。
3人目はBrunello Cucinelli氏かもしれないが、それは本人の自伝に基づく話だと付け加えました。
一方で、現代の米国のトップCEO10人のうち離婚しているのは2人だけで、多くは有名になる前に、知的に対等なパートナーと早くに結婚し、添い遂げているとSenra氏は語っています。

成長率は同じでも、評価は3倍違う。AIエージェントFinが示した『加速』のバリュエーション
「From Unicorn to Zombiecorn to a $3.6B Acquisition」 by OnlyCFO on OnlyCFO's Newsletter
IntercomがFin AIエージェントへの転換を通じてZombiecornから36億ドルの買収に至った軌跡を、財務視点で分析しています。スタートアップの経営者にとって、AI時代における「再加速の条件」と「M&Aバリュエーションの本質的な読み方」を理解するうえで重要な視点を提供します。
2026年のM&A市場は「Hot or Not」の二択しかない
かつては「まあまあの会社」でもそれなりのEXITがあったが、今はほぼ二択です。高成長・再加速中の企業は好条件で売れ、そうでない企業はどれだけARRがあっても良い条件での買収は期待できません。多くのSoftware Zombiecornが存在するなかで、早く動いた企業だけがFin(旧Intercom)のような逆転を実現できました。
表面上ARR 9倍の買収だが、本命のAI部分にはARR27〜30倍が付いた
Salesforceによる36億ドルの買収は、全体ARR 4億ドルに対してARR 9倍に見えますが、内訳は旧来SaaS ARR 3億ドルと、350%成長中のFin AIエージェントARR 1億ドルです。Salesforceが本当に買いたかったのはAI部分であり、そこへのマルチプルはARRの27〜30倍。レガシーSaaSは2〜3倍で評価されたに過ぎず、ヘッドラインの数字だけを見ていると、見事な事業転換の実態を見誤ってしまいます。
Zombiecornからの復活が証明した「窮地に直面したときに人は動ける」という法則
2023年末時点でARR約2.5億ドル・成長率が横ばいだったIntercomは、売却価格がARR 3倍程度になる寸前でした。しかし窮地がむしろ覚悟を促し、Fin AIエージェントへの転換を決断。その結果ARR 1億ドル規模に達し、Salesforceを動かしました。
「同じ成長率だから同じ評価」は間違い。加速しているかどうかがすべて
全体成長率29%という数字だけを見てFinと同様の評価を期待するのは誤りです。Salesforceを動かしたのは全体成長率ではなく、AIプロダクトの350%成長という「加速の証拠」でした。同じ成長率でも減速中であれば、評価は1/3以下になる可能性があります。<yellow-highlight-half-bold>投資家・買い手が見ているのは現在の数字ではなく、成長の方向性です。<yellow-highlight-half-bold>

AIで増幅される人、手薄になる人──Simon Willisonが指す中堅エンジニアの分岐点
「Highlights from my conversation about agentic engineering on Lenny's Podcast」 by Simon Willison on simonwillison.net
Djangoの共同開発者であるSimon Willison氏が、元AirbnbのProduct LeadであるLenny Rachitsky氏のポッドキャストにゲスト出演し、その主要発言をブログで整理した内容です。テーマは、2025年11月以降に起きたAIコーディングの転換と、それがエンジニアの働き方・キャリアに与える影響。なかでも、AIが普及する組織で「どの層が伸び、どの層が手薄になるか」という論点が具体的に示されています。
AIはトップ層の『増幅』と、新人層の『底上げ』の二面で効く
大手ITコンサルのThoughtWorksが約1ヶ月前に開いたオフサイトで、各社のエンジニアVPを集めて議論した結論の一つが紹介されています。AIは経験豊富なエンジニアの能力を「増幅」し、同時に新人の「オンボーディング課題」を解きほぐす、というものです。
背景には2025年11月の転換点があります。GPT-5.1とClaude Opus 4.5の登場で、AIが書くコードがほぼ毎回意図通り動くレベルに到達しました。ベテランは大量のアウトプットを束ねられるようになり、新人は最初の壁を越えやすくなっています。Willison氏自身、1日に1万行規模のコードを生み出し、その大半が動く状態になったと語っています。
手薄になるのは中堅。「まだ超シニアではない層」への圧力
同じ議論で最も立場が苦しくなるとされたのが中堅層です。新人でもなく、まだ超シニアにも至っていないミドルキャリアの層を指します。理由はシンプルで、AIが肩代わりするのは、これまで中堅が時間をかけて担ってきた実装そのものだからです。
Willison氏自身、自分のコードの約95%はすでに自分でタイプしていないと述べています。セキュリティ企業StrongDMが掲げる『dark factory(人がコードを書かない・読まない)』という概念は、その延長線上にある世界観です。採用市場ではCloudflareが1,000人規模のインターン採用に動くなど両端への投資が進み、中堅のポジションが相対的に見えにくくなっています。
中堅がキャリアを再構築するための鍵は「agency(主体性)」と変化への適応力
Willison氏が繰り返し挙げるキーワードがagency(主体性)です。AIには人間のような動機がなく、agencyを持つことはできない。だからこそ人間が投資すべきは、自らのagencyと変化への適応力だとWillison氏は整理します。
2026年末までにエンジニアの50%がコードの95%をAI生成で書くようになるという予測のもと、<yellow-highlight-half-bold>変化し続ける時代に唯一普遍的なスキルは『変化に乗れること』<yellow-highlight-half-bold>だと述べています。
資金調達ニュース
[海外]
🏢 エンタープライズ
- DeepSeek — 中国発のオープンソース基盤モデル企業。V3・R1モデルがシリコンバレーに衝撃を与え、フロンティアAIの低コスト化を牽引。創業者Liang Wenfengが個人で約30億ドルを投じるなど、外部投資家に議決権を付与しない異例のLP構造で74億ドルを調達し、評価額は500億ドル超に到達。LP出資としてTencent、CATLが参加。(Yahoo Finance)
- Baseten — オープンソースモデルの推論処理を20以上のクラウドプロバイダーにわたって最適化するプラットフォームで、ARR は2億ドルから6億ドルへ急増。評価額130億ドルで15億ドルの調達をクロージング間近と報道。リードはSpark Capital、Sands Capital、Altimeter Capital、Wellington Managementが参加。(TechCrunch)
- Genspark — エンタープライズ向けのAIエージェント型ワークスペースプラットフォーム。プレゼンテーション、ダッシュボード、社内システム、リサーチなど複数業務をエンドツーエンドで自動化する。シリーズBエクステンションで1億ドルを調達、ポストマネー評価額は26億ドル(3ヶ月で63%増)。既存投資家のSozo Ventures、韓国Mirae Asset、UpHonest Capitalが参加。(Yahoo! Finance)
- Sarvam — インドのソブリンAIプラットフォーム。ヒンディー語を含む多言語対応の基盤モデル(30B・105Bパラメータ)を開発し、保険・農業・行政など幅広い領域に展開。日次インタラクション200万件超、APIコール1,000万件超を処理。Series Bのファーストクローズで2.34億ドルを調達、評価額15億ドル。リードはHCLTech(1.5億ドル戦略出資)、Bessemer Venture Partners、Khosla Ventures参加。(TechCrunch)
- Gradial — エンタープライズ向けAIエージェント・マーケティングオペレーションプラットフォーム。Adobe・Salesforce・ServiceNowといった既存エンタープライズツールの上でAIエージェントがコンテンツ制作から承認・配信まで全工程を自動実行。ARR は過去1年で10倍成長、評価額6.75億ドルでシリーズCにて6,500万ドルを調達。リードはInsight Partners、VMG Partners、Madrona、Pruven Capitalも参加。(Yahoo Finance)
- Conduct — Palantir出身の3名が共同創業した、ロンドン拠点のエンタープライズソフトウェアモダナイゼーション企業。SAP等のレガシーシステム内の数百万行に及ぶカスタムコードをAIで解析し、ビジネスロジックの可視化・変更・最適化を高速化。シリーズAで6,000万ドルを調達。リードはIndex VenturesとICONIQ、その他にSAP、Creandum、Lucid Capital、Booomも参加。(Yahoo Finance)
- Respond.io — マレーシア発の顧客会話管理プラットフォーム。WhatsApp・Instagram・TikTok・Messengerなど20以上のチャンネルを統合し、AIエージェントによるリード獲得・セールス自動化を実現。ARR 3,500万ドル・前年比169%成長・利益率30%を達成。シリーズBで6,250万ドルを調達。リードはCamber Partners、Endeavor Catalystも参加。(TechCrunch)
- Arcade — エンタープライズ向けに、本番稼働AIエージェントのセキュアなアクション実行・認可を担うインフラプラットフォーム(Arcade.dev)。AIエージェントがGmail・Slack・Salesforceなど業務アプリへアクセスする際の認証・権限管理を自動化し、IdPと連携してリアルタイムで権限を制御する。Series Aで6,000万ドルを調達、累計調達額7,200万ドル。リード:SYN Ventures、Morgan Stanley・Wipro戦略出資。(SiliconANGLE)
- Convey — 非エンジニアのオペレーターがAI「チームメイト」を構築・管理し、バックオフィス業務を自律実行できるノーコード基盤を提供。NBCUniversal・Samsara・TelevisaUnivisionらで累計100万時間超の自動化を実現。シリーズAで3,800万ドルを調達。リードはa16z、その他にKhosla Ventures、Pear VCも参加。(Yahoo Finance)
- Undo — AIエージェントがコードの実行時挙動を記録・巻き戻せる決定論的プログラム記録技術(Root Cause Analysis)を提供する開発者向けツール。複雑なコードベースの障害原因を自動特定し、開発・テスト・本番環境を横断して対応。3,700万ドルを調達。リードはElsewhere Partners。(SiliconANGLE)
🏗️ バーティカル
- CuspAI — ケンブリッジ発のAI素材探索スタートアップ。生成AIと分子シミュレーションを組み合わせ、半導体・エネルギー・気候分野の新素材探索を加速するプラットフォームを提供。評価額26億ドルで4億ドルを調達予定。リードはBezos Expeditions、Kleiner Perkinsが参加。(SiliconANGLE)
- Verse — AIデータセンター向けエネルギーインフラプラットフォーム。Fortune 500企業のエネルギーポートフォリオ管理SaaSに加え、オンサイト蓄電池・太陽光を活用してデータセンターの系統連系待ちを最大3年短縮するDispatch Intelligenceを展開。シリーズBで5,400万ドルを調達。リードはBessemer Venture Partners、その他にGV、NVIDIA、Norrsken VCも参加。(Globe Newswire)
- Bland — 自社開発の音声AIモデルを用いた企業向けエージェント電話プラットフォーム。ヘルスケア・金融サービスなど規制産業向けに250社超の企業顧客を持ち、週350万件以上のコールを処理。Series Cで5,000万ドルを調達。リードはDell Technologies Capital、HubSpot Ventures、Archerman、Tribecaが参加。(Yahoo Finance)
- Pramaana Labs — AI出力検証スタートアップ。数学的形式検証手法(LEAN言語)をLLMに適用し、税務・法律・創薬といったハイステークス分野でAIの回答を『確率的に正しい』から『証明可能に正しい』へと転換するインフラを提供。シードで2,700万ドルを調達。リードはKhosla Ventures、その他Accel、Nexus Venture Partners、Premji Invest、BoldCap、Unboundが参加。(TechCrunch)
- Copia Automation — 製造業・重要インフラ向けに、PLCなどOT(運用技術)機器のソースコードをバージョン管理・自動バックアップ・リカバリーする産業コード管理プラットフォーム。航空宇宙・防衛・エネルギーなど規制産業向けに展開。2,600万ドルを調達、累計調達額5,500万ドル。共同リードはAE Ventures・Squadra Ventures。新規参加はKAS Venture Partners。既存投資家のConstruct Capital・Lux Capital・Ironspring Ventures・Renegade Partnersが継続支援。(PR Newswire)
- Orbio — ヘルスケア・小売・物流・ホスピタリティなど現場で働くフロントライン従業員向けのAIエージェント型採用・オンボーディング・労務管理プラットフォーム。WhatsAppや電話経由でAIエージェントが面接から日次チェックインまでを担い、従来の採用フローを刷新する。シリーズAで2,100万ドルを調達。リード投資家はDawn Capital、既存投資家のVisionaries、2100 Venturesが参加。(TechCrunch)
🔒 サイバーセキュリティ
- Dream — イスラエル発のソブリンAI・サイバーディフェンス企業。政府・重要インフラ向けにSphere(国家サイバー防衛)、Hero(AI脆弱性ハンター)、Atlas(ソブリンAIプラットフォーム)の3プロダクトを展開。商業開始から約1年半で累積契約額3億ドル近くに到達。評価額30億ドルで2.6億ドルを調達。リード:Bicycle Capital、Group 11(共同)、参加:Bain Capital Ventures、Antler、Tru Arrow Partners。(Yahoo Finance)
- Ent — インテント認識型ワークスペースセキュリティ企業。人間とAIエージェント双方の行動意図をリアルタイムで解析し、インシデント化する前に介入するエンドポイント上のAIセキュリティ基盤を提供。元RiskIQ・Microsoft Security Copilotチームが創業。シードで1億ドルを調達。リードはDecibel、その他にSequoia、Crosspoint Capital Partners、Craft Ventures、In-Q-Telも参加。(SiliconANGLE)
- NewCore — 人間・マシン・AIエージェントを単一アーキテクチャで統合管理する、エンタープライズ向けのセキュリティファースト型アイデンティティプラットフォーム。既存のIAM基盤が想定していなかったAIエージェント時代の認証・ガバナンス課題に対応する。シードで6,600万ドルを調達、投資後評価額3億ドル(ポストマネー)。リード投資家はCyberstarts、Index Ventures、Evolution Equity Partnersが参加。(TechCrunch)
- NeuralTrust — バルセロナ発のエンタープライズAIエージェントセキュリティプラットフォーム。大企業内で急増するAIエージェントを一元的に可視化・監視・ポリシー制御するセキュリティ基盤を提供。シードで2,000万ドルを調達。リードはAlstin Capital、その他にVentureFriends、Seaya、Kibo Venturesが参加。(Yahoo Finance)
🛰️ ハードウェア×AI
- Hydra Host — AIデータセンター向けGPU管理・オーケストレーションOSを提供するインフラプラットフォーム。世界50カ所超のデータセンターをネットワーク化し、開発者・企業に高性能GPUへのオンデマンドアクセスを提供。Series Aで1億ドルを調達。リード:Kindred Ventures、Nvidia・ARK Invest・Founders Fund参加。(SiliconANGLE)
- XDOF — ロボット学習用データパイプライン・収集ツール・アノテーションシステムを構築するスタートアップ。フロンティアAIラボが社内構築を避ける双腕ロボット操作データの大規模収集インフラを提供し、UCバークレーとの共同でオープンソースデータセットABC(13万軌道を含む)をリリース。7,000万ドルを調達。リードはThrive Capital、a16z、Spark Capital、Lux Capital、WndrCoが参加。(TechCrunch)
⚖️ リーガルテック
- Sandstone — 法務部門向けのAIネイティブなワークフロー自動化プラットフォーム。Slack・メール・Jiraなど複数チャネルから届く法務リクエストをAIでインテーク・トリアージ・ルーティングし、契約書ドラフトやコンプライアンス分析を自動化する。シリーズAで3,000万ドルを調達。リード投資家はLightspeed Venture Partners、Sequoia、Mantis VCが参加。(TechCrunch)
- Andera — 内部監査・コンプライアンスAI自動化プラットフォーム。SOX統制テスト・業務監査・コンプライアンス検証をLLMとエージェントAIで自動化し、Excelベースの手動作業を置き換える。Fortune 100企業への展開を加速。シリーズAで3,700万ドルを調達。リードはLightspeed Venture Partners。(FinSMEs)
🏥 ヘルスケア
- Radical Numerics — DNA・RNA・タンパク質を横断してマルチモーダルに推論する「汎用生物学的インテリジェンス」を構築するAI研究ラボ。がん診断、創薬ターゲット同定、バイオセキュリティへの応用を目指す。シードで5,000万ドルを調達。リード投資家はEmergence Capital、Obvious Ventures、Triatomic Capitalが参加。(Yahoo Finance)
💰 フィンテック
- Interchecks — フィンテック・スポーツベッティング・金融機関向けにリアルタイム決済インフラを提供するプラットフォーム。10年間で500億ドル超の取引処理実績を持ち、直近7年間で3桁成長、2023年から黒字化。新たにデビットカード経由のリアルタイム口座入金(AFT)機能も展開。Series Cで5,000万ドルを調達。リード:Bettor Capital、Commerce Ventures、Decades Holdings、Thayer Street Partners参加。(FinSMEs)
そのほか
- Odyssey — パロアルト発のワールドモデルAIラボ。自動運転の知見を持つ創業チームが、物理法則に基づいた汎用ワールドシミュレーションモデルを開発し、ロボティクス・ゲーム・自律システムに展開。シリーズBで3.1億ドルを調達、評価額14.5億ドル。リードはNatural Capital、Amazon、AMD Ventures、GVが参加。(TechCrunch)
[国内]
- ウェルモ — 介護現場特化型AIプラットフォーム「ミルモシリーズ」を展開。全国26,100事業所のネットワークを基盤に、ケアプラン作成支援AIや音声記録要約サービスなど複数のAIプロダクトを提供。前年同月比売上503%増。総額約6.8億円を調達、累計調達額は約55.6億円。フジタ・イノベーション・キャピタルと東海東京インベストメントが設立・運営するフジタTTインパクト1号投資事業有限責任組合がリードし、個人投資家の西坂空也氏らが参加。(ウェルモ公式)
- CFOne — 「承認するだけで完結する」をコンセプトに、年額10万円で自動仕訳・チャット相談・申告までをカバーするAI税務OS「CFOne(シフォン)」を中小企業・個人事業主向けに提供。自社会計事務所での実証で受注率90%を達成。プレシリーズAにて総額1.7億円を調達し、累計調達額は2億円。Coreline Venturesがリードし、ANOBAKAが参加。みずほ銀行からも融資を調達。(PR Times)
- Aitane — 商談前〜後を一気通貫で支援するAIエージェントに、AIグラス等のウェアラブルデバイスを組み合わせ、オンライン・対面営業双方をカバーする次世代営業AIを開発。3,000万円のCVC出資。Sテクノロジーが単独で出資した。(PR Times)
- dodoAI — 企業がAIエージェントの業務遂行を統治・監査・継続改善できるSovereign Agentic OS『dodoAI』を開発。大手損保基幹システムへの試行では特定領域の対応工数を35〜98%削減。シードラウンド。ジェネシア・ベンチャーズ(GV-4)がリードし、クオンタムリープベンチャーズ、三菱UFJキャピタル、三井住友海上キャピタルが参加。(PR Times)
- be-FULL — AI会議分析をベースにフォローアップ提案・スキル可視化・AI議事録を提供するミドルマネジメント支援プラットフォーム『PXクラウド』を展開。シードラウンド。グローバル・ブレインが新韓ベンチャー投資との共同ファンド(新韓-GBフューチャーフロー)を通じてリード。(PR Times)
- Final Aim — 生成AI活用時の知財リスク管理・プロセストレーサビリティを担うデザイン・知財管理プラットフォーム「Final Design」を提供。アニメ・ゲーム・映像制作などクリエイティブ領域への事業拡張を加速。プレシリーズA。MIXIが単独で出資した。(PR Times)
- xID — マイナンバーカードを活用したデジタルIDアプリ「xID」とデジタル郵便サービス「SmartPOST」を展開するGovtechスタートアップ。東邦ガスとイグニション・ポイント ベンチャーパートナーズが共同運営する「シン・インフラ ファンド by TOHO GAS」から金額非開示のCVC出資(業務提携を伴う)を調達。(PR Times)
- HANAMII — さくらインターネット基盤上で独自開発した国産PaaS「hanamii」を提供。平均45秒の高速デプロイと100%国内データ管理を特徴とし、生成AIが開発したコードの即時公開も支援。ANRIの新設「ANRIプレシードプログラム」第一号案件としてANRIから出資。これに先立つ2026年3月にエンジェル投資家7名から調達済み(別ラウンド)。(PR Times)



