急成長のスタートアップは、とにかく日々、やることだらけのはずです。ToDoを整理しようにもタスクばかりが増えていき、リストが機能していない……ということも。
タスクを一つ終わらせることは、会社を確実に一歩前進させることと同じです。しかし、無理をしすぎれば心身が悲鳴を上げるのも、人間ですから仕方ありません。そこで必要なのがタスク管理。取り組むべきことにフォーカスし、常に仕事を前進させ続けるための方法には、正解はありませんが工夫はできます。
そんなタスク管理の工夫を、ALL STAR SAAS FUNDの支援先企業で「仕事の進め方がうまい」と評判の二人に教えてもらいました。hacomonoの川原田晋也さんと、カミナシの松下まど加さんに、普段の心がけから必須のツールまでをお聞きし、実際のツール画面のスクリーンショットも交えつつ、まとめました。
記事の最後には今回のインタビューから見えた「タスク管理10箇条」を、おまけとしてご用意。タスクに追われがちな方、ぜひ見えるところに貼るなどして、ご活用ください!
<gray-italic>hacomonoの川原田晋也さんはセールス部門に在籍し、フィットネス業界をメイン顧客にフィールドセールスを担当。職歴は3社目で、現在27歳。1社目では人材業界で既存の派遣スタッフの対応をする人材コーディネーター職を約3年間。2社目は音楽業界の販促企画職を1年半ほど経験し、hacomonoへジョインしました。<gray-italic>
タスク管理は3つの観点があると考えています。
一つ目が、対応しているクライアント様を主語として、最も優先すべきことにフォーカスすること。二つ目が、対応後の進捗を適宜、お客様に合わせて情報共有すること。三つ目が、自分でボールを長く持たないように「今、何をすべきか」を絞ること。
一つ目に関しては、フィールドセールスという仕事は、お客様に契約していただくところまでが責務です。その流れにおいては、あくまで自分の都合ではなく、お客様がスムーズに動けて、お手間を取らせないことを優先します。
それを踏まえると、二つ目の進捗共有は、自分がボールを持って社内確認をしたり、僕自身がすぐにお客様のお問い合わせに応えられなかったりするとき、その回答期限を明示し、どのような進捗状況にあるのかを適宜伝えます。言い換えると「ボールを動かしていること」を認識してもらい、優位を持たせて働きかけていることを、先んじて共有しますね。
三つ目のタスクへのフォーカスは、「自分がボールを長く持たないためにはどうすべきか」という判断軸を常に持つことが大切です。メール対応や社内タスクにおいて、後回しにしたくなるような内容だったとしても、その判断軸さえあれば「今、やったほうがいい!」といった判断をしやすくなるはずです。
「社内タスク」と「社外タスク」を切り分ける
もう一つ、タスクの考え方の前提としては「社内タスク」と「社外タスク」を分け、さらに対応を変えていくこと。
hacomonoの社内タスクはSlackやメールで依頼を受けることが多いのですが、それをさらに「即時対応できる/できない」で明確に切り分けます。
そして、「自分がボールを長く持たない」の判断軸に照らし、即時対応できるタスクに関しては優先的に対応します。僕の言う「即時」の目安は3分以内です。たとえば、メールやスプレットシートの確認作業は、3分もかからずに終わるタスクの筆頭ですね。
一方で、重い案件やタスクだと捉えたものは、Google カレンダーの「終日」の予定欄になぐり書きしておき、一旦その場で考えなくても済むようにします。ただ、忙しくなってくると、そのタスクが終えられないこともあるのですが、前日のものは即時対応タスクに切り替えるなどして、その日中に全てを終わらせるのが基本です。
クライアントとのやり取りを伴う社外タスクは、セールスフォースのToDoで管理しています。基本的にはモーションで議事録を取り、ToDoとして管理したいタスクが出た場合には登録するというフローです。
僕自身が、セールスフォース上で片づけていく作業が好きなんです。確認して、対応したら完了マークを押し、とにかく減らしていくというのに快感もあって(笑)。
セールスフォースのToDoに登録するときは、内容と期限を明確にし、期限が近くなるまでは考えなくても済むようにしておきます。たとえば、「月末に連絡する」「月頭の時点で確認する」といった項目に対して、そのタイミングまで意識しないようにするんですね。
社外タスクに取り組むときには、僕はカレンダーに「タスクを進める時間」を書き入れて、その分の時間を事前に確保しておきます。資料作成やテスト環境構築といった明らかに時間のかかることがわかっているものは、そのための作業予定を見積もっておきます。逆に言うと、空き時間に進めればいいものは「終日」へ記入してタスク化することが多いです。
Google カレンダーとセールスフォースの使い分けは、完璧ではない部分がどうしてもあります。商談で次の打ち合わせが詰まっていると、セールスフォースのToDoとして登録ができない、とかですね。その場合はGoogle カレンダーに一旦なぐり書きで残し、振り返りをするようにします。Google カレンダーは「思い出し装置」みたいなものですね。
前提や背景の共有を怠らない
メールに関しては整理整頓をすぐできるように心がけています。メーリングリストで全体向けに届く内容はすぐにアーカイブして、いつも受信箱を「自分が対応しなければならないもの」だけが見えている状態にはしています。
振り分けは厳密ではありませんが、フォルダを5つに分けていて、メインフォルダにあるものに関しては「温度感が高い内容」を並べます。返信すべきものを始め、いずれ確認・対応するのが決まっているので残すもの、といったメールが多いですね。
Slackは社内コミュニケーションツールとして使われていますが、タスク管理としても考え方は同じです。即時対応できるならすぐに。難しければGoogle カレンダーに入れちゃいます。そのときは、やり取りしているスレッドのURLを貼っておきますね。
コミュニケーションでいうと、僕もコロナ禍以降は特に勉強中ですが、Slackやメールでのやり取りでは「前提となる情報」や「共有することにした背景」を伝えるように意識していいます。それらの情報がない中で質問されると、「なぜですか?」「目的は何ですか?」といったコミュニケーションが余計に増えてしまいますから。
hacomonoの場合は、セールスが受注して契約したら、カスタマーサクセスに引き継ぐ社内コミュニケーションが必要になります。そこでも「前提の情報」や「顧客が契約した背景」を伝えないと、引き継ぎ後にお客様の口から、それらを再度説明しなければならない場面が起きやすくなってしまう。そのやり取り自体が、hacomonoにもお客様にもマイナスです。
お客様の情報についてはNotionで共有しています。営業活動に関してはセールスフォースですが、情報共有を目的とするとNotionのほうが汎用的で、他のツールと組み合わせやすいという利点があると考えています。
<gray-italic>続いてお聞きするのは、カミナシの松下まど加さん。2020年12月にジョインし、カスタマーサクセスチームに所属しています。オンボーディング担当を皮切りに、現在は既存顧客向けのリテンションを担い、合計で60案件を受け持っているといいます。他にもカスタマーサクセス発での開発連携についても、リーダーシップを取って推進中です。<gray-italic>
タスク管理の大前提は、自分の記憶力を信じないこと。頼まれごとの記憶って、もう120%忘れるものと捉えています(笑)。多くの人が自分の頭を過信してしまっている傾向があると思っているのですが……絶対に忘れるという前提で、別の場所に書き留めておくなど、仕組みで解決するのが大事ですね。
私自身は、その時々や業務内容で柔軟に変えることもあるのですが、今はTrelloをメインに使っています。それ以前はGoogle スプレッドシートも使っていました。Trelloではプロジェクト的にインボックスとなる場所を最初に作り、タスクを整理するときにカードへ日づけを設けて移動させるようにしています。
インボックスには、とにかく発生次第、何も考えず、無心で入れていくことが大事。「どこのプロジェクトに入れよう」と考えてしまうと、入れるという行為そのものが面倒になってきて、やがて忘れちゃうので……。
だから、できるだけ毎日振り分けの時間は取るようにしています。当日のスケジュールは、できるだけ前日の夜までに決めておくことが最も良いと考えているんです。そのためにもタスクの洗い出しの時間を定期的に設けていますね。
あと、ツールでは「Planyway」というTrello用のカレンダーとタイムトラッカーツールを、個人的に課金して追加しています。タスクタイムマネジメントができるもので、以前まではスプレッドシートで自作していたものから、ずっと使いやすくなったので気に入りました。
Planywayを導入すると、自分のカレンダー内にTrelloのタスクを表示できるようになります。「今日は打ち合わせが何件あって、何時間必要か」って、意外にパッとわからないものですよね?それが、ひと目で見えるので、「使えるのは残り2時間ほどだから、このタスクを進めていこう」と目算しやすくなるんです。
「タスクタイムマネジメント」を基本とする
打ち合わせとタスクを一括で管理し、自分が使える時間を正しく理解して、期限を設けていく。これを私はタスクタイムマネジメントと定義しています。タスクと時間を統合して管理するイメージですね。
その考え方は、最初に入社したSpeeeで学びました。タスク管理を非常に大事にするカルチャーがあり、社内でも「タスク管理ではなく、タスクタイムマネジメントをしてください」とよく言われました。ToDoを終わらせるだけではなく、時間と掛け合わせなければ意味がない、というのが基本。
タスク一つあたりにどれほどの時間がかかり、一日にどれほどの打ち合わせがあり、全体の時間から実際の稼働を管理することをたたき込まれました。私はこの考えがすごく好きで、今でも重視して活用しています。
それに、何かを「やるぞ!」と決めて挑んだ日と、決めないで過ごした日の差って、気持ち的にひどく大きくて(笑)。「今日はこれをやったら終わりだわ!」と思って終えられた日は、やっぱり幸せじゃないですか。
タスクの「つまみ食い」で見通しを立てる
タスクに関しては、すぐできるものはすぐやることが大事です。「すぐ」の目安は3分。それで終わるならその場で、終わらないなら後で、という都度のジャッジを心がけています。
すぐ終わるものを後回しにすると、何だかちっちゃいものがずっと積み重なっていっちゃうので。
記憶力を過信せずに、Trelloなどの仕組みを活用すれば抜け漏れは割と防げるはずですが、それでも抜けてくるものあります(笑)。Slackで投げられたタスクは必ずセーブし、一日に何度か見直して返信漏れがないかを確認します。「3分以内で返せるならすぐ応答、難しければセーブで見返す」をルール化しました。
メールもSlackに送るようにしています。もちろんメールの受信トレイでも見てはいるのですが、Slackにも大事なものは配信しておき、漏れないようにします。それからメールで絶対にするのは、返信を要するものなど自分でアクションすべき以外のメールは、全てアーカイブしてから終えることです。受信トレイは空っぽにするのを基本的にしています。
登壇資料を作るなど、「よっこいしょ」と腰を上げるくらいの重いタスクは、まずはつまみ食いをして見通しを立てるのも絶対です。事前に作業見積もりができるものは別として、それが見えないようなタスクの場合は、10分でも良いので手をつける。そうすると、想像よりも時間を要するのか、逆にあっさり終わりそうなのかもわかります。
色々と積み重なって、自分のタスクがあふれそうな感覚を持ち出したら、できるだけ30分程度の「タスク整理タイム」を設けます。手元の紙でもNotionでも、何でも構いませんが、思いついた順にプロジェクトやタスクを書き出してみます。書き出すと、自分が抱いた感覚との答え合わせができるんです。
自分では「あふれちゃう!」と焦っていたはずなのに、書いてみると「案外、そんなでもなかったなぁ」みたいな安心感につながることも(笑)。そこで一旦、Trelloに打ち込んで整理し直せば軌道修正できます。定期的なタスク整理タイムを設けるのもポイントですね。
ちゃんと整理できれば、期限がないタスクは少なくなっていくはずです。もし、期限が定められていなくても、発生した段階で自分から期限を設けるようにして、言い切るのも一つの工夫です。期限については自分から進んで確認して、曖昧にしないようにしています。そうすることで必然的に優先度もついていきますから。
他者への依頼は「回収までが自分のタスク」
社内コミュニケーションで、カミナシではTandemというツールを使っています。ざっくり言うと「気軽な雑談ツール」みたいなものですね。Slackにも最近、似たような機能が入ったかもしれませんが。コミュニケーションがタスクに偏りがちな中で、「声をかけづらい」という気持ちを減らし、気軽に話しかけられる環境は心理的安全性につながると感じます。
こういったツールも前提にしつつ、とはいえSlackでのコミュニケーション量は以前より増えていますよね。そこでも、事前にアジェンダを送るとか、話した内容をまとめてお互いの認識を確認し合うとか、そういったことは改めて心がけています。
私個人のタスク管理術と話は逸れるのですが……他者へタスクを渡すときには「回収すること」までが自分のタスクである、という意識を強く持つのも大事だと思っています。たとえば、社内向けアンケートを投げるにしても、投げっ放しでリマインドもしないままに、締切日に「みなさん書いてください!」なんて催促してしまうのは、良くないです。
オンラインに限らず、タスクを依頼するときは、最初に「期限」と「対応工数」を書くように気をつけています。「いつまでにやってほしくて、だいたい5分で終わります」みたいに書いて、見てもらう工夫をしておくのは、今はより必要になってきたように思います。
あと、これは有名なビジネス本でも指摘されていることですが、とにかく「途中で見せる」ができない人は結構多いものです。全部やり切ってから出そうとしすぎて、期限に遅れてしまうケースをよく見てきました。私も途中の段階を「たたき」で出すとか、確認しながら進めるとかいったことは、特に新卒の頃は気をつけていました。
こういった基本的なことを点検するのも、改めて大事になっているのかもしれませんね。
仕事の仕方が変わる!タスク管理10箇条
今回のインタビューを踏まえ「タスク管理10箇条」というおまけコンテンツを用意しました。ぜひダウンロードしてご活用ください!
株式会社hacomono 川原田晋也
株式会社カミナシ 松下まど加