インサイドセールスは、見込み客の育成や商談件数を安定させる仕組みとして、SaaSやサブスクモデルのビジネスで用いられる営業手法の一つです。

ALL STAR SAAS FUNDでは、製造業の購買部門向けの見積査定システム 『RFQクラウド』を提供するA1A株式会社に、インサイドセールスのノウハウを提供。以下4つのステップを踏み、専任1名の体制ながらも、約3ヶ月間で実装することができました。

藤田さん:社名の読み方は「エー・ワン・エー」で、「B2B取引をワンランク上に」という意味が込められています。

2018年6月に設立して、今では社員数16名ほどになりました。代表の松原脩平はキーエンスで製造業を担当していました。当時の「同じ企業にもかかわらず、担当者によって同一製品が異なる単価で購入されている」という業務への疑問が、いまのRFQクラウドを作るきっかけとなりました。

RFQクラウドは担当者によって異なってきた見積査定プロセスを、クラウド上で一元管理することで、原価低減と業務効率化を支援します(A1Aと松原さんの起業プロセスは、こちらのインタビューでもお聞きしました)。


1.ミッションとKPIの設定

──インサイドセールスの立ち上げは、どのようなど流れで進みましたか?

藤田さん:やっと導入事例が1社できた、というタイミングでした。 これまでの「とにかく成功事例を1社でもつくろう」という考えから、「安定的かつ効率的に導入企業を増やしていこう」と組織の意識が変わっていった時期でしたね。

当時はマーケティングにまだ力を入れておらず、商談は展示会後の一斉架電か、メール頼み。毎週毎月、安定的な商談の創出ができていませんでした。 加えて、RFQクラウドのセールスサイクルは非常に長く、商談から契約までの顧客フォローにも多くの時間を割く必要もありました。

そういった経緯から、いわゆるThe Model型の組織を採用することで、より生産性が高められると判断しました。

The Modelとは?
SaaSやサブスクモデルのビジネスで運用されている営業プロセスモデルです。見込み客の発掘から導入後の活用支援に至るまでのプロセスを切り分けることで、各部門の業務効率を最大化できます。
The Modelにおける営業プロセスは次の4つに分類されます。各部門が責任を持つ数字を最大化することで売上の向上を目指します。

──立ち上げは、どのように進めましたか。

藤田さん:初めに取り組んだのは、インサイドセールスの役割や目的を明確にすることでした。A1Aは事業の基盤を作るフェーズだったこともあり、より多くの企業とお会いするために、「多くの商談を安定的に創出する」べく商談件数をミッションに掲げました。

今期、商談の量と質を改善していく体制を作ることができれば、他のチームにも良い影響を及ぼしてさらに事業を成長させられるはずです。なので、今期のミッションは「インサイドセールスチームが会社の成長を牽引する」としています。


インサイドセールスの役割は?
インサイドセールスは大きくSDR(反響型/インバウンド対応)とBDR(開拓型/アウトバウンド対応)に分類されます。
SDRは新規リードや休眠リードを追うことで、顧客の温度感を高め最適なタイミングでのアポイントを設定できます。BDRは主にエンターブライズや注力アカウントの高役職者へアウトバウンドを行います。商談規模の最大化や、高役職者と商談が開始できることによる商談期間の短縮を狙います。
(仮にリードも潤沢にあり商談数も確保できている場合は、フィールドセールスの対応件数を上げるためにオンラインセールスを検討することになります。)
また、インサイドセールス専任1名のフェーズでは、営業スキルだけでなくオペレーションの整備も重要なテーマになりますので、可能であればインサイドセールス経験者を登用しましょう。

──KPIはどうやって決めましたか?

藤田さん:Googleでも採用されているOKRの考え方の通り、全社目標から落とし込んで策定しました。現状のKPIは「商談件数」と、自社で定義しているリードの課題が特定された状況である「フェーズ2への移行率」を重要指標として置いています。

受注金額や単価などもゆくゆく見ていければと思っていますが、いまはまだ事業フェーズ的に不確実性が高く、KPIには入れていません。 まずは安定供給できる商談の数、より質の高い商談の創出に集中していきます。全社の目標数字のひとつに「フェーズ2以上への移行件数」があるのですが、インサイドセールスのKPIは、まさにその全社目標とも連動しています。マーケティング、フィールドセールスと連携し合うことで、KPIを達成していく想定です。

KPIの設定で注意するポイント
The Modelによって分業体制を敷いているとはいえ、インサイドセールスもフィールドセールスと同じく、受注件数や金額に対する意識は高く持つべきです。売上目標から逆算したKPI設定を行いましょう。
A1Aの場合は、藤田さん自身がフィールドセールスの経験者で事業全体への意識を持っていたこと、VP of Salesが元Salesforceでインサイドセールス経験があり、商談の質が高く保たれていました。
しかし通常はアポイント件数のみをKPIに設定すると、いわゆる「テレアポ部隊」となってしまい「見込み顧客の温度感を上げる」などのインサイドセールスの役割が軽視される可能性があります。
KPIに設定するのが商談件数のみでも、商談金額、受注件数、受注金額などフィールドセールスへの貢献度を可視化できるダッシュボードは必須です。

2.オペレーションの整備

── 普段は、どのような数字をチェックしていますか?

藤田さん:インサイドセールス専用のダッシュボードを作り、毎日細かく確認しています。もともとSFA(営業支援システム)は導入済みで、フィールドセールスのダッシュボードはあったので、そこに連携させました。

インサイドセールスが獲得したアポ獲得→商談数→受注数/金額というように、最終的には受注へどのくらい影響したかが見られるようになっています。加えて、架電の行動量とその内容は商談獲得数を担保するための数値なので、こちらも「見える化」しました。

ダッシュボードで営業の「見える化」を
まずは架電件数、有効会話数、商談獲得数、商談獲得率、インサイドセールスによる商談の受注率・金額・件数を可視化しましょう。また、新規リードや荷電ToDoの対応漏れなど活動の異常値もダッシュボードで検知していきます。
立ち上げ直後は実績値が無いため、KPIは仮置きで進めます。毎日の行動を振り返って改善点を見つけ、PDCAを回せるようにしておきます。

商談のフェーズとは?
営業効率を上げるためには、商談の進行度合いをフェーズで管理していきましょう。一般的にフィールドセールスでは担当している案件を「A読み」「B読み」といった区分に分け、受注確度を測りますが、もっと明確に定義付けることで受注予測の精度が向上します。
各社で設定は異なりますが、以下のように考えられます。

インサイドセールスではフェーズ2への移行率を見ることで、提供したアポイントの質を管理することができます。
例えば、フェーズ2への移行率が95%の場合、一見は質の高いアポイントばかりで素晴らしいのですが、温度感の高さにこだわり過ぎてフィールドセールスの場数を減らしてしまっているかもしれません。フィールドセールスのKPIとも鑑みて、適切な商談件数とフェーズ2への移行率を探りましょう。

ー オペレーションを整備していく中で特に改善したポイントはどこですか?

藤田さん:テコ入れが必要だったのはリードの管理ですね。

流入したリードを状況ごとに分けられていなかったので、新規リード、評価中、継続コンタクト(個別ナーチャリング対象)というようにリードのステータスを定義していきました。

毎月の数字を組み立てる際に、KPI達成のための手玉がどこに、どのくらいあるのかを逆算できるようになります。 

現在は、A1Aでもマーケティングチームが発足したので、リードソースや住所・業種などのリード情報も連携していきたいですね。問い合わせフォーム、オンラインイベント、展示会といった異なるソースからの商談化率も可視化したいです。

リード管理はKPI達成の要
リードの管理とは、インサイドセールスが自分の顧客リストを管理することです。顧客リストは多ければいいというわけではなく、きちんと見込みのあるリードに活動を集中できるよう精査していきます。管理は、下記のように分類するといいでしょう。
・新規リード:まだ何もアプローチもしていない流入したばかりのリード。
・評価中:3ヶ月以内に商談化が見込めるリード。
・ナーチャリング:いまは検討段階にないが長期的に可能性のあるリード。メルマガなど必要な情報の提供により育成する。
・リサイクルリード:商談を進めた結果、失注や長期化してしまったリード。すでに検討がなされたリードのため、中期を見据えた継続的なエンゲージメント活動をする。
・興味なし:競合企業、就活中の学生など受注見込みのないリード
新規リードはマーケティングイベントの有無などに左右され、毎月一定数が得られるとは限りません。評価中とナーチャリングを常に何件ずつ保有し、それぞれで商談化を見極めていきます。さらに、リサイクルリードのフォローも活動先として加えられます。
こうすることで、毎月の数字の組み立てをリード別に計算できるようになるのです。

3.活動の質の整備

──フィールドセールスとの連携で注意していることはありますか?

藤田さん:ヒアリングの際に、受注シナリオをより意識するようになりました。

‍RFQクラウドは顧客の購買課題を全く新しい方法で解決していくシステムです。既存の業務フローを大きく変えることになりますし、先方の関係者も多いため、導入を意思決定する担当者は「絶対に失敗できない」と考えています。検討も慎重になるので、フィールドセールスへの質問や相談も必然と増えます。

ですので、インサイドセールスのヒアリング時点で、導入の目的、背景、導入にあたってのボトルネックなどの情報を洗い出し、受注までの道筋をフィールドセールスにパスできるようにしておきたいと考えています。これは、「ムダな時間を取らせてしまわないように」という意味で、お客様のためにもなると思っています。

商談実施後にはフィールドセールスと1on1をしたり、社内SNSを使ってヒアリングへのフィードバックをもらうようにしています。今後は、どういった情報が事前にあれば、より話を進めやすいのか。もっとスムーズに進めるためには、どこを調整すべきかなどを体系化していきたいですね。

架電履歴の残し方とヒアリングメモ
インサイドセールスは見込み客の育成だけでなく、CRMのデータを正しく保つための機能も持っています。その一つが架電履歴の残し方です。
履歴の残し方のポイントは、「他の人のメモを見ても、自分が過去にかけた電話かのように状況が理解できること」です。将来的にインサイドセールスが複数人になった時、や失注商談としてフォローコールする際は自身が架電をするとは限りません。対面でやり取りができないインサイドセールスにとって、過去のやり取りを鮮明に引用できることは、社内での情報連携はもちろん、お客様の信頼を得る大きな武器になります。
また、アポイントが得られたあと、フィールドセールスへの情報連携にはヒアリングメモを作成しましょう。インサイドセールスがいるにも関わらず、初回商談を基本的なヒアリングに使わせてしまうのは勿体ないです。
商談を前に進めるためにはどんな事前情報があるといいのか、フィールドセールスと連携してヒアリングすべき内容を事前に決めておきましょう。
また、ヒアリングメモは、インサイドセールス育成の機会にもなります。このメモの充実度合いからヒアリングのどこを強化すべきか判断したり、一箇所にまとめて管理しておき新任インサイドセールスが先輩のヒアリング情報を見返して学べるようにしておきましょう。

4.業務効率化

──立ち上げ段階の仕上げは、何に取り組みましたか?

藤田さん:細かいことですが、Google日本語入力の辞書登録で、よく使うワードを短縮入力できるようにしました。一日に何度もお客様にメールを送ったり、同じフォーマットでメモを残したりするので、定形文をワンクリックで入力できるだけでもかなりの時間短縮になります。

今後、イベントや事例が増えてきたら、ナーチャリング用のメールテンプレートも作成して、電話後にフォローメールをすぐに送れるようにしたいです。

辞書登録
一日に何度も使うワード、自社の住所や電話番号などは短縮入力できるようにしましょう。
1人目がインサイドセールス辞書を作っておくと、エクスポート機能を使って2人目の方の立ち上がりを加速させる効果もあります。

メールテンプレート

お電話がつながらなかったときの伝言メール、アポイント日時の確認、業界事例別のナーチャリングなど、何度も使うメールの形式はテンプレ化して保存しておきましょう。
SFA機能にテンプレがある場合は、送り先の社名などの入力も省くことができます。

商談数は1.5倍に。毎月安定した新規商談ができている


──4つのステップを完了してみて、メリットは実感しましたか?

藤田さん:これまでと比べ、約1.5~2倍の商談が実施できています。商談件数の確保に責任を持つ担当者がいることで、毎月安定して新規商談が生まれますし、四半期の目標もぶれないですね。

また、アポイントに対応するのが自分以外のメンバーなので、ヒアリングの質を高めようと意識が上がりました。自分が対応すると、どうしてもおざなりになってしまうときがあるんですよね。

フィールドセールスも商談フェーズを前に進めるために、ヒアリングで得た情報をもとに初回訪問から受注までのシナリオを設計しやすくなっています。1社の提案に複数人が関わるようになり、これまでより深い議論がされるようになりましたね。

──今後の注力ポイントはどこですか?

藤田さん:インバウンドリードへの対応とナーチャリング活動の強化ですね。細かなターゲティングによって、商談化するか、ナーチャリング対象なのか、の解像度を上げて振り分けられるはずです。事前ヒアリングでも再現性を持たせられるように、フォーマット整備などをしていきたいですね。

SaaSでよく言われる「良いスタートアップの指標」である「T2D3」をひとつの目標にしていますが、実現は相当に大変。そこを乗り越えるための戦略が、より上流の工程では必要で、戦い方をガラッと変えるシーンがくるんじゃないかなと思っています。

そのタイミングまでに、インサイドセールス、フィールドセールスの体制を整えて、売上を拡大していく組織の受け皿を作りたいです。


加えて、キャリアの面でも、受注シナリオを強く意識することはで、他社のインサイドセールスと比べてエンタープブライズ商談に強い人材になれると思うんです。インサイドとフィールドをそこまで意識する必要はなく、事業を拡大したという経験が力になるので。


今後は、インサイドセールスが作った商談に対応してくれるフィールドセールスの採用を積極的に進めています。少しでも気になった方がいたら、ぜひお話させてください!

(編集=ALL STAR SAAS FUND)

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