全世界、あらゆるビジネスで注目が集まる、DX(デジタルトランスフォーメーション)の動き。建築業界にもその風は吹き始めています。
クラウド型建設プロジェクト管理サービス「ANDPAD」を運営するアンドパッドの今井亮介さんは、大学院卒業後に建築士として数々の大規模開発に携わったあと、ブランドコンサルティングや新規事業開発の領域へキャリアチェンジ。昨年末までは自身でも歴史系のメディアやサービスを立ち上げていました。
現在はアンドパットの “VP of New Business”として、新規事業開発やアライアンス戦略の現場責任者を務めています。今井さんはなぜ建築業界に戻ってきたのか。建築×テクノロジーの領域である「Con-Tech(コンテック)」にどんな可能性を感じているのか。
ALL STAR SAAS FUNDの前田ヒロと楠田司が聞きました。
建築業界の人が一番、一緒に仕事をして気持ちよかった
楠田:まずは、今井さんのこれまでのキャリアを伺えますか。
今井:慶應義塾大学SFCで学部と修士課程を経て、日本設計という組織設計事務所に入りました。1967年創業の、霞が関ビルなど、日本で最初に超高層を設計した設計事務所のチームが独立して作った会社です。そこで7年ほど海外プロジェクトを中心に設計の仕事をしていました。
後半の3年ぐらいからRhinoceros(ライノセラス)という3Dのソフトを使って、コンピュテーショナルデザインの手前ぐらいのことをやっていました。最後の1年くらいにBIMの部署が立上がり、その中で海外事業部でどのように3DやBIMを活用していくかのロードマップをつくっていました。
*BIM:Building Information Modeling(ビルディング インフォメーション モデリング)の略称。
コンピューター上に作成した3次元の建物のデジタルモデルに、コストや仕上げ、管理情報などの属性データを追加した建築物のデータベースを作成。建築の設計、施工から維持管理まで、全工程を通じて効率的な情報活用を行うためのソリューション。
**ライノセラス:正式名称はRhinoceros。AppliCraft社が提供する3次元モデリングツールで、建築BIMでもよく応用されている。
今井:そのあと、CIAという怪しげな名前の(笑)、ブランディングファームに入りました(正式名称はCreative Inteligence Associates)。そこも40年くらいの歴史があり、青山フラワーマーケットや上島珈琲店、Peach Aviationといったブランドをゼロから立ち上げきた会社です。ブランディングの老舗で、戦略とクリエイティブを両方ちゃんと理解して作っていく会社で、そこで1年半ぐらい学ばせて頂きました。
その後、スタートアップをつくりながら、受託で新規事業のコンサルティングのようなかたちでご飯を食べていました。スタートアップの立上げは失敗も多く、非常に多くのことを学んだ時期でした。
新規事業開発の受託では、建築業界と近いところで言うと、北海道を拠点とするハウスメーカー、土屋ホームさんのコーポレートブランディングや注文住宅ブランドをゼロから立ち上げるお手伝いをしました。あとは、ローソンさんの環境配慮型店舗を2件ほどお手伝いさせて頂きました。ここではZEBを実現したり、CLTを用いたフル木造を実現したり非常に挑戦的なプロジェクトでした。
***ZEB:ネット・ゼロ・エネルギー・ビルディングの略称。「ゼブ」と読む。快適な室内環境を実現しながら、建物で消費する年間の一次エネルギーの収支をゼロにすることを目指した建物のこと。省エネで消費エネルギーを減らしつつ、創エネによって使う分のエネルギーをつくることで、エネルギー消費量を正味(ネット)でゼロにすることができる。
スタートアップの方は、元々都市や地域活性に興味があったことがあり、街を動画でプロモーションするサービスや位置情報を使った飲食店の顧客共有サービスなどをつくっていました。最後の5年ぐらいは歴史系のスタートアップに注力していました。たとえば、夏目漱石の『坊ちゃん』に出てくる団子屋さん(羽二重団子)やアインシュタインがリピート買いした細切昆布(新橋玉木屋)など、今でも存在する「ストーリーのある老舗」を紹介しその商品をオンラインで販売するサービスをつくっていました。その後、「川端康成の鎌倉」「代官山:都市と建築の物語」など、パッケージングされたストーリーを楽しみながら旅ができるアプリサービスにも取り組んでいました。
その事業で資金調達に向けて動いてたんですが、うまくいかないとなったのが去年の末ぐらい。そこで、中長期的に社会にバリューが出せる会社にジョインしようかと真剣に考え始めました。
楠田:リアルなモノとテクノロジーを掛け合わせたことを、いろいろ0→1でやっておられたんだなっていう印象があるんですけど、その中でアンドパッドにどうやって出会ったんですか。
今井:経験的にも、新規事業って受託でやると失敗する可能性が結構高くて。
たとえば、委託元企業のカルチャーが新規事業と元々合っていなくて、そこにいるスタッフの方たちが運用しきれない。あとは結局、そのための投資資金が捻出できないなど。なので、やるならハンズオン型のVCか、もう完全に中に事業会社に入るかという2択で考えていました。
中に入るのならば、ちゃんと世の中を何か変えられるようなところで、マネジメント層として関わりたいなということで探していました。
で、これまでの仕事で金融系、ガバメント系、医療系と、結構いろいろ携わってきた中で、一緒に仕事をして一番気持ちよかったのが建設業界の人たちなんですよね。
楠田:何が違ったんですか?
今井:全ての会社がそうだとは思わないんですが、いろいろと関わらせていただいた中ではなかなかリーンに事業を開発していくスタイルが合いづらい業界が多かった印象です。そんな中で、フィットネス系の業界か建設業界が、体育会系でノリもよくって。
楠田:なるほど、想像つきます(笑)。
今井:それでアンドパッドを見て、そういえばもともとは自分も設計をやっていたなと思って、お話を聞きに行きました。
プロフェッショナルながら、フラットな関係性がある
前田:実際に入社されて感じた、予想とのギャップとかってありました?
今井:あまりなかったですね。基本はコミュニケーションをするのが社長室っていう、いわゆる既存事業で収まらないことをいろいろやるところなのも大きいですね。例えば、ブランドを作るとか、職人さんへインタビューして記事化していくとか、事業外の人たちが結構固まっている部屋なんです。
あとは、複数の営業VPや開発VPともコミュニケーションしているんですけど、すごくみんなプロフェッショナルとしての意識が高い。
僕はスタートアップは少人数で、コンサルティングもタスクフォースチームを都度組んでやってきているので、あまり社内政治があるようなところは苦手だな、という意識があったんです。でも、アンドパッドはみんなプロフェッショナル意識があって、セクショナリズムは全くなく、進む方向性もクリア。
稲田さんだけでなく、CFOの荻野(泰弘)さんであったり、COOの堀井(浩平)さんも、相談にすぐ乗ってくれますし、VP同士でもいつもslackやオフィスでコミュニケーションしています。それぞれがプロフェッショナルな分野を持ちながら、フラットにお互い足りない部分を補い合える関係性ですね。
そんな関係性は小さな組織ならありえると思うんですけど、20人近い人たちがそういう感じでコミュニケーションできてるって、なかなかないなと。
前田:経営レベルやVPクラスと気軽に話せるというか、コミュニケーション頻度が高い感じ。
今井:そうですね。特に新規事業ということがあるのかもしれませんが。僕がいま作っている新しいプロダクトを「早く営業で使いたいから、ちょっと資料もらえますか?」と依頼がきたり、「一緒に営業行きませんか?」と誘ってもらったり。
前田:新規事業の優先度がすごく高いっていうのが伝わりますね。
住宅領域の拡張と、非住宅領域への挑戦
楠田:多分これを読まれる方って、新規事業以前に、アンドパッドがどんなフェーズなのか、いまどんな事業に挑戦してるのかっが、まだそもそもわかっていないと思います。現在の状況を簡単に伺えますか。
今井:現状の立ち位置としては、アンドパッドは2000社以上のクライアントと契約し、職人さんが15万人以上が使っていて、業界のリーディングプレイヤーです。
また、非住宅領域のお客さんも、結構増えてきています。非住宅領域も来年から本格的にアプローチしていきたいなと考えており、そのためのプロダクトをいまいろいろと準備しています。それが現状と今後1〜2年の話になるかなと思います。
そのときに、いまのアンドパッドのチームだと、どちらかというと住宅領域をずっとやってきた方が多い。現場監督の出身者も基本はハウスメーカーであったりとか、住宅領域の方なので、まだまだ大規模な用途に対する解像度が高いスタッフはまだ足りてなくて。そういう人たちにどんどん入ってきてもらって、いろんな視点で話ができるといいかなとは思ってます。
楠田:規模感も広げつつ、新規事業のほうにも入っていく状況なんですね。今井さんのポジション名が“VP of New Business”という珍しい名前なのも納得でした。
今井:大体、何でもやってます(笑)。現場をヒアリングして、経営陣と折衝し、事業を開発していく。それをスピード感と密度を高めながらする仕事ですね。
楠田:今回の募集で入ってもらいたい方も、現場とのコミュニケーション能力や、その先の課題解決に対する感度を大事にされていますか?
今井:そうですね、理想的には。全部できる人ってなかなかいないので、部分ごとにいろんな人が来てくれればいいかなとは思っています。
ちゃんと現場や設計がわかっている人たちが実際にアンドパッドへ入ることによって、よりクライアントのニーズに即したプロダクトがつくりやすくなっていくはずですし。
楠田:これだけのオールドインダストリーを変えていくため実際にアクションしてみて、失敗体験や、苦戦しているところはありますか。
今井:事業とは別に、アンドパッド初のカンファレンスを2021年の1月に開催するんです。そのために、登壇者のお声がけなどの準備を進めていて。
最初は住宅系のHousing Tech.と、非住宅系のBuilding Tech.という2つのテーマでやろうと考えていたんです。しかし実際に準備していくとそれぞれの2テーマのコンテンツはかなり違いますし、1人で全体を見ていくのが非常に大変で、、、それで今回は初回なのでHousing Tech.1本で開催することになりました。それが初めての失敗というか、壁にぶち当たったところです。シンプルにワーク・ボリュームに押されたというか。
ただ実際にお声がけを始め見ると、ハウジングテック系の方々にすごくポジティブに登壇をOKしていただけました。アンドパッドって愛されてるな、すごいプロダクト、すごいブランドだなと実感できたことは本当に良い経験でした。
別の言い方をすると、、アンドパッドは住宅系、リフォーム系では本当にリーディングプレーヤーになっているんだなと実感しました。今回開催を見送ったBuilding Tech.領域は最近顧客が増えているエリアで、次の開催を非常に楽しみにしています。
このようなこれまでと異なる顧客が増え始めていること、調達の観点でも「第2創業期」であると考えています。僕もその先鋒として戦っていかなきゃいけないので、非常に楽しみですね。
リクルーティング目線で言うと、アンドパッドがいまの規模になってなお、もう一回スタートアップっぽい戦い方ができるところと、そのときに一定の資金があって戦えるところは非常に魅力的です。来年には異なる戦い方になっているでしょうから、今しかこの面白いシチュエーションで戦えることはないんじゃないかなって思うので。
現場が使えるエコシステムを作る
楠田:資金調達リリースにも書かれていて興味を持ったのですが、「DX化」を一つキーワードに、アライアンスを促進していく予定とのことですね。具体的にどんな構想があり、実現の先にどんな変化が生まれそうでしょうか。
今井:アライアンス周りは、セールスフォースさんやクラウドサインさん、ネクストステージさんなどのクライアントがANDPADを使われており、ほかのプロダクトにもつながっていきたいというニーズを聞きながら対応していっています。
あと、具体的な例で、ちょっと名前は伏せますが、あるIoT系のプロダクトの会社さんとの連携の準備をしています。
ANDPADの既存ユーザーは、「案件管理」といって一つずつの物件を管理していくんですよね。でも、IoTのプロダクトは、一定の業務を簡単にするツールで、データが物件にひもづかないんですよね。だから、現場情報に必要なデータ管理としては十分でなかったりします。
それが、ANDPADが既に現場管理のプラットフォーマーになっていることによって、それを紐付けていくことで、顧客のそれぞれのコミュニケーションがより快適になっていくイメージは、クリアに見えています。
ANDPADに顧客ごとの悩みに応じたプロダクトを載せていくというのが、アンドパッドがいま考えているアライアンスです。そのためにAPI構想のようなものを持っています。外に対してANDPADのAPIを開放していって、APIマーケット的なものを作っていく考えです。
楠田:ANDPADを中心に、バラバラになっていたコミュニケーションが一つに統一されていくような。
今井:そうですね。事業者ごとに別々のアカウントを取るだけでも大変ですから。大手になってくると、非住宅系でもストレージ系サービスを扱っていたりするので、逆にそのサービスを使ってもらったうえで、ANDPADがひもづくといった連携の仕方もあるでしょう。
ただ、やっぱり現場でちゃんと職人さんが使っていることが一番大事です。競合のプロダクトも使っているのは現場監督といった、いわゆる元請けの社内の人で、職人まで情報が渡っていなくて。例えば、ゼネコンの現場では情報共有を未だに朝礼で大きなスクリーンでやっている場所が多いと聞きます。。、ANDPADのようにスマホで朝礼の情報が確認できることは非常に価値が高いはずです。
現場に加わるすべての人がANDPADを使った先に、新しい価値が見えるはずだと。いろんなプロダクトやサービスとアライアンスして、トータルのエコシステムを作る世界観があります。
スタートアップと建設業のスピード感は意外と近い
楠田:新規事業の部隊の組織体制は、どういった体制になってらっしゃるんですか。
今井:いまは、ほぼ僕だけですね(笑)。
もう一人、社長室のメンバーが、プロダクト側を半分ぐらい担当してくれています。カンファレンスはまた別のブランディングチームがあるので、そこと一緒に。いわゆる事業やプロダクト系は、ちゃんとチームとしているのはまだ僕しかいません。
楠田:アンドパッドの新規事業チームは、どんなカルチャーになっていきそうか、どんな人がフィットしそうかというのはありますか。
今井:カルチャーは、さっき言ったようにプロフェッショナリズムを持ちながら、それぞれが領域関係なくコミュニケーションできるようなカルチャーが、何より重要だと思っています。
あとは新規事業なので、とりあえず作ってみる。企画にしろ、ワイヤーにしろ、何かぱっと作ってみて様子を見る、ぶつけてみるといったフットワークの軽さ。企画ベースでいいので、実際に作り上げるスキルセットが必要ですね。
楠田:テクノロジー業界の人と、これまで建設業界で働いている方は、仕事の進め方や実行までのスピード感が違うのではと思いますが、どうでしょうか。
今井:相対的には違いますけど、プロジェクトベースで言うと、建築業界でもコンペは1カ月ぐらいで一気に何もないところから3Dでがっちり立ち上げてプレゼンテーションを作っていたりしますし、その辺りの辺のスピード感は瞬間風速的には近いものあるかなと。
楠田:それはよい気づきでした。これを読まれる方も、スピード感やスタートアップのカルチャーについていけるのかは、すごく不安視されそうなので。
今井:0→1で作ってきているメンタリティやフレキシビリティは、かなり近いものがあります。実際にそれが採択されたら、しっかりしたものを構築していくのも同じですから。
楠田:ヒロさん、投資家目線では、アンドパッドのぶつかり得る壁なども踏まえて、今後の人材戦略をどのように考えますか。
前田:アンドパッドって、すごく面白いポジショニングにいると思っていて。可能性が無限にある状態です。
ある程度、業界のリーダーポジションが取れているなかで、今後はどこまで欲を持ってさらなる深い課題、大きな課題を解決していくかというフェーズに入っているのかなと。成功や失敗よりも、「成功の度合い」がアンドパッドのいまからこだわるべきことであり、解決しないといけない部分なだと思っていますね。
そういう意味では、今井さんのように、お客さん目線で考えられて、それをベースに企画に落とし込んだりとか、プロダクトに落とし込んだりとかができ、さらに実際のビジネスに組み込んでいくプロセスが担える方がたくさん来てくれるとうれしい。
今井:まさにそんな感じですね。新規事業部の観点で言うと、それこそ社内で事業や担当プロダクトを立ち上げ、売るところも一緒に今後担っていきます。営業所を作り、お客さんのところへも行くので、「スタートアップを会社内に作る部隊」といったイメージになってくると、非常に面白いかなと思ってます。
前田:ちょっと変わったかたちでの0→1ですよね。もうブランドとお客様との関係性がある状態の0→1なので、すごく進めやすいはずです。
今井 :もう日々、先人に感謝です。その尊敬の念は、常に感じずにはいられない場所なので。
「SaaSの鉄則」を体現する社長
楠田:今井さんも、稲田さんとの議論が入社の決め手になった部分もあると思うんです。ヒロさんから見て、初めて稲田さんに会ったときの印象とか、いろんな起業家を見る中で、彼の魅力はどういうとこに感じますか。
前田:とにかく「しっかりしている人」だなと。
起業したときは建築業界のイロハを学びながら経営していた感じでした。その吸収力も確かに高かったですし、まじめにお客様のことを考え、知見や経験を貯えながら事業を推進していった。その意味でも、とてもしっかりした経営者だなと感じます。切実に、お客様に面と向かって事業を進めているので。
これは「SaaSの鉄則」とまでは言いませんが、結局は最もお客様から愛を、信頼を集めた会社が最終的に勝つんですよね。そのためにはやっぱり、トップがお客様の大事さへの理解や思想を持っていないと、なかなか事業や組織に浸透しなかったり、プラットフォームに反映されなかったりするので、そういう面は稲田さんが担っている部分だなと思います。
今井:本当に言うとおりですね。Slackを見ていても、稲田さんはネガティブなものも、ポジティブなものも、顧客周りのリアクションはすごく細かく見ていて。何かが起こりそうだったら早めに人をアサインして、すぐに対応するようにしたりとか。
クライアントとのコミュニケーションでも、非常に丁寧でいつも内心驚いています。これまで受託で仕事をしてきた身としてもこんなに丁寧なコミュニケーションをしてきたかなと。
それを当然として社長が実践しているのは、会社の強さにつながっているち思っています。
コンテックは加わるならば「非常にいいタイミング」
楠田:最後に、この記事を読んでくれる方、こういった業界に飛び込もうか迷ってる方に、何か一言あれば、ぜひ。
今井:一つは、コンテックの面白さ。世の中のタイミングと会社のフェーズがいまぐらいマッチしないと、なかなかこの勢いで新しいことはできないと思うんですよね。その意味でも非常にいいタイミングです。
もう一つは、建設・建築系の人にとってのチャンスだと思うんです。彼らは基本的に、大規模な物件では1000分の1スケールから図面を描き始めるんですよ。そこから、1分の1をつくるわけです。
紙であったものが3Dデータになって、物体になっていく。物体も木なのか、スチールなのかからもう全然違いますし、それぞれの取り合いが違うものを、図面から想像するんですよね。
大きなスケールから小さなスケールまで、ちゃんと解像度を持って並走できる人たちって、明らかにどの業界でも仕事ができるはずなんですよ。
スタートアップや新規事業って、まさにゼロから作る、抽象度の高い状態から具象度の高い状態にしなきゃいけない。建築設計でも「与件」といって、建築のプロじゃない人が出すお題に対して、形を正しく出していくわけですよね。それが単純に正しいだけだったら多分面白くなくて、コンペに落ちてしまう。
ちゃんと相手の期待を超えて、0→1でかたちを作っていく建築業のスキルって、たぶん新規事業でもすごくフィットする。
その上で、建築業界の人からすると、他業界のスタートアップに行ったら、普通は知ってるものがほぼほぼない状態で入らなきゃいけないんですけど、アンドパッドないしはコンテックの場合なら、半分はスキルを知っている。こんなラッキーというか……得なこと、なかなかないと思うんですよね。僕は本当に0→1でジョブチェンジして苦労もしているんで。
このジョブチェンジが、いいタイミングにできるのは、なかなか機会がないはず。だから興味のある方は、本当に今のタイミングで入ったほうが絶対面白いはずです。
楠田:ありがとうございます。ヒロさん、最後に何かありますか。
前田:いやもう、全く今井さんと一緒ですね。タイミングが最高です。建設業界は500万人の従事者がおり、その500万人のインフラになれる、「500万人の仕事を支えられる」というのはすごく魅力的です。特に、アンドパッドに関しては、本当にこれ以上に資金も、チームも、プロダクトも、タイミングも、需要もそろうことって、あんまりないと思うんですよね。多分30年か40年に一度あるかどうか。これを逃したら、30年ぐらい待たないといけないと思うので。
今井:違う業界になってるかもしれないですね、もう(笑)。
前田:業界の構成も、競争環境も大きく全く変わっていきます。この500万人、50兆円の市場に対して、本当に大きな変革をもたらせられるような場所って、他にあまり思い当たりませんね。
今井亮介
社長室 VP of New Business
大学卒業後、日本設計にて建築士として国内外の大規模開発に携わったのち、ブランド・コンサル・ファームにてブランド開発のプロジェクト・マネージャーとして従事。その後、個人で新規事業開発のコンサルティング業務をしつつ、REKISHOKUやTime Travelという歴史系メディアやサービスの立ち上げに従事。