SaaSスタートアップの創業初期、CEOやボードメンバーは頭をフル回転させ、プロダクトを磨き続ける日々を送ります。数々の職種を兼務しなければならない状況を経て、組織が拡大し、分業できるような体制づくりへ移行していく中で、必ず起きる課題があるようです。
VCとして数々のSaaSスタートアップに関わると、その悩みの多くが「プロダクトマネジメント」に集中しているように見受けられるのです。
ビジネスサイドと開発組織をいかにすり合わせ、開発の優先順位を決めていくのか。そもそもPdMやPO(プロダクトオーナー)はどのような役割を担い、業務を推進していくのか……。組織やサービスが成長するにつれ、それらプロダクトに関する悩みも増えていくものです。一方で、ソフトウェアにおけるPdMの経験値が高い人材は国内では多くはなく、そのナレッジも他の職種と比べて体系化されていない状況もあるようです。
そこで今回は、「教育」という比較的レガシーな産業の中で、“ユーザーを熱狂させるプロダクト”を開発し続けるatama plusのプロダクトオーナー・林田智樹さんにインタビュー。元UXデザイナーがPOとして活躍するまでのステップ、POとして大切にする心構え、ユーザーを深く理解するための行動、開発の優先順位づけのポイントなどを伺いました。
プロダクトオーナーとは何をする仕事なのか
──atama plusに入社されるまで、林田さんはどういったキャリアを歩んできたのですか?
林田:リクルートにUXデザイナーとして入社し、2年ほど「リクナビ」を担当していました。学生の頃から、人の行動や動機から課題を捉え、それをプロダクトで解決していく仕事が面白そうだと感じていたんです。リクルートは当時にしては珍しく「UXデザイナー職」で募集をかけていて、入社を決めました。
リクナビは大学生の一大イベントである就職活動に関わるサービスで、学生がどんなふうに悩んでいるのかを知れたのは、とても良い経験だったと思っています。
atama plusには創業半年目のタイミングで1人目のUXデザイナーとして入社しました。当時は社員10名くらいで、私以外はエンジニア。当時はプロダクトオーナーを代表の稲田大輔が担っていたのですが、私は実装以外を比較的何でもやるような感じで、いろいろ担当してきました。2020年の頭くらいから組織の規模も大きくなってきたことに伴って、私がプロダクトオーナーという役割に就くことになりました。
──そこからatama plusでは「プロダクトオーナー」として働かれていますが、この職種はどういった役割を担うのでしょうか。
林田:会社ごとに意義や役割は異なるでしょうから、あくまでatama plusでの担当範囲を端的に表すと、「プロダクトを通じて事業を前進させる役割」ですね。会社全体の方針をもとにプロダクトチームが貢献できるポイントを探して、それをチームの活動に落とし込みます。そして、活動がプロダクトに反映され、狙い通りに貢献できているかを確認します。
組織図のイメージでお話しすると、まず会社全体は「ビジネスチーム」「プロダクトチーム」「コーポレートチーム」から成っています。プロダクトチームは、私を含め2名のプロダクトオーナーが5チームを担当。各チームにはエンジニア、デザイナー、QA(Quality Assurance 品質保証)のメンバーがおり、日々の開発は1チームずつ進めていきます。
この5チームに「今週はどういった機能の開発を進めるか」「開発の前提となる検証をどうすべきか」といったことを決めるのもプロダクトオーナーの役割です。あとは、「3カ月単位で会社全体としてどんなことに注力していくか」をOKRのフレームワークで運営しているのですが、このOKRを決めるのも役割の一つですね。
現在はOKRを決定する1カ月くらい前から動き出しています。というのも、そのタイミングで会社全体としての大きな方針が経営陣から示され、それに対してプロダクトとして貢献できることをOKRに定めていくからです。
プロダクト開発にはそれなりに時間がかかるので、「すでにある程度の検討が済み、時期を区切って実際の開発まで進めるもの」と、「先々のテーマや課題になりそうなもの」を分けて考えます。前者はプロダクトチームとしてのオブジェクティブで、後者は他のビジネスチームのメンバーも集め、OKR期間中に貢献ポイントを探す目的でのオブジェクティブですね。
──開発で解決するオブジェクティブと、開発以外で解決できるであろうオブジェクティブに、しっかりと分けて運用していると。
林田:そうです。過去には「実はプロダクトではなくビジネスチームで解決できることだった」みたいなことがありました。あるいはプロダクトでも、「機能開発ではなくコンテンツを改善すれば解決できることだった」ということも。フェーズを切り離した検討がスムーズさにつながると考えています。OKRは1年ほど前からの取り組みで試行錯誤中ですが。
プランニング&レトロスペクティブで回す1週間
──プロダクトオーナーとしての「1週間のスケジュール」を教えてください。
林田:「チームの翌週の計画を決める」のが定常的な業務です。チームではスクラム開発を採用しており、1週間を一区切りとしています。毎週最終日に成果物を確認したら、その翌日の全社ミーティングで発表し、フィードバックをもらいます。フィードバックを受けた午後には意見を参照しつつ「プランニング」として、次の1週間の計画を立て、優先順位をまとめてBacklogに反映します。
あとは「レトロスペクティブ」といって、チームの活動で「良かった点・悪かった点・どちらともいえない」を週次で振り返り、改善点を洗い出しています。チームによっては「2週間に1回」や「1カ月に1回」と頻度はまちまちです。1on1は別途実施していますから、ここではあくまで「チームの活動をチームで振り返る」ための時間です。
レトロスペクティブがあることでお互いに本音で話す文化が醸成されたり、今までなんとなく続けていたような業務を見直すきっかけになったりと、プラスの効果があると感じています。
このように、プロダクトの計画とチームの活動の両方を、週次で見直しながら開発を進めています。atama plusはチームで成果を出し、チームで振り返るということを大事にしているのも、特徴の一つだろうと思いますね。
また、「チーム活動への伴走」「チームが少し先に取り組むことになることへの検討」「チームが検討したものの壁打ち相手となり、打ち手の有効性の確認」といったことも業務として挙げられます。
「打ち手の有効性の確認」は、チーム内でも主にはUXデザイナーが課題をもとにいかなるソリューションを当てるかを検討しています。その内容を一緒に考えたり、プロダクトオーナーも現場に同伴して実際に使ってもらったりして、確かな課題解決につながるのかを見ていきます。
現場への理解無くしてプロダクトは成らず
──定常業務の「優先順位の決定」について、その基準はどのように設定されていますか?
林田:まさに3カ月に一度のオブジェクティブを決める段階で、「どういった課題を解決するべきなのか」「課題はどこに原因があるのか」を深く理解した上で決めています。
課題を明らかにするタイミングでは、かなり頻繁に現場である塾の教室へ赴きます。というのも、プロダクトが頻繁にアップデートされているので、それによって顧客の反応もどんどん変わっているんですね。それに伴って、課題のフォーカスが移ることもよくあるのです。
たとえば、「生徒ごとに個別対応したい」という要望に応える機能をリリースして、その後に現場を見てみる。確かに解決したけれども、個別対応自体の業務負荷が高くなり、新たな稼働に変わってしまっていた……など。そこで、頻繁に現場を訪れ、訪問タイミングごとにある顧客の課題を明らかにしなくてはなりません。
また、私たちのカスタマーサクセスチームは塾さんごとに丁寧に伴走していますから、各塾が抱えている課題、atama+をどのように活用しているのかについても、深くまで理解しています。カスタマーサクセスチームのメンバーにそういった現状を聞くことで、各塾が目指している地点を理解するのに役立ちます。
これら背景の理解と、現場で実際に起きている課題を総合して、今後のプロダクトで取り組むべきことは何かを考えているともいえます。
──お客さまへのヒアリング数は月間にならすと、どれくらいになりますか。また、ヒアリングの際に注視している林田さんの「こだわりポイント」があれば、教えてください。
林田:頻度は4〜5回程度ではないでしょうか。少ないときでも2週間に一度くらいは現場へ行っているはずです。
「こだわり」と言えば、塾によって授業の形態や在籍している生徒が異なるものですから、私たちがペルソナとして定めている「生徒」と、実際の生徒たちに、いかなる差分があるのかを把握することは常に意識していますね。そこが明確にならないままインタビューなどに入ってしまうと、フィードバックいただいたことの判断基準がブレてしまうのです。
たとえ、ペルソナに近い生徒であっても、「なぜこのような課題や発言が出てくるのか」という背景を理解した上でフィードバックを受けないと、それを活かす段階でうまく価値付けができなくなってしまうと思うんです。
──ペルソナへの明確さ、あるいはカスタマージャーニーがしっかりと描かれているからこそ、機能に対してのフィードバックを丁寧に追えているのだろうと感じました。
林田:ありがとうございます。私たちはペルソナである生徒さんをとても大事に考えています。生徒という存在を通じて、会社全体として解決したい課題に取り組んでいき、それを浸透させていくという思いがあります。
オフィスにペルソナの「3Dフィギュア」や「看板」を作って置いているのも、みんながいつでもペルソナのことを意識できるようにするための心がけの一つですね。
変数が多い環境でもプロダクトに見通しを立てるには?
──プロダクトオーナーとして取り組まれてきた中で、「嬉しかった瞬間」といえば?
林田:プロダクトを通じて、生徒さんの変化を実感できた瞬間ですね。現場に行ったときだけでなく、お客さまからのポジティブなフィードバックを投稿するSlackのチャンネルがあるのですが、「数学が苦手で嫌いだったけれども、atama+のおかげで少し好きになってきました」といった感想をいただくと喜びを感じます。
atama plusはミッションに「教育に、人に、社会に、次の可能性を。」と掲げていて、これほどの大きな変化をダイレクトに感じるのは難しくとも、一人ひとりの生徒さんの人生に少しでも良い影響が及ぼせていること、その実感が持てることは、嬉しさにつながりますね。
──逆に「今まで苦労した瞬間」もありますか?
林田:とにかく変数が多いことです。塾さんごとに導入されるモデルが違います。たとえば、集団授業と組み合わせる場合や、個別指導のメインの教材として採用する場合では、全く使い方が異なります。コンテンツのアップデートも日々ありますし、カスタマーサクセス上のコミュニケーションも日々改善されています。プロダクト自体の改善以外にも、いろいろなところで日々変化が起きているんですね。
それらの変化は予想がつかないものがあり、見通しが立てづらいことも……。目指していきたいプロダクトのコンセプトやビジョンはあれど、それを念頭に置きすぎて進んでいくと、目指すべきものから外れてしまうことが今までも何度もありました。
だから、一定は見通しを立てるためのプロダクトコンセプトとして、「ここだけは譲らない」と思える部分や、会社全体の戦略を明文化しつつ、今現在の課題を捉え、改善していく方針をとても大事にしていますし、一番に苦労する点ともいえるでしょうね。
この<yellow-highlight-half-bold>プロダクトコンセプトは、お客さまと共有しながら大切にしていく<yellow-highlight-half-bold>のも、重要なポイントだと思っています。atama plusでは、カスタマーサクセスのメンバーも含めてみんながそこを意識してコミュニケーションを取っているんですね。プロダクトコンセプトを社内全員がしっかり理解し、それを基にお客さまとコミュニケーション取ることも、プロダクト開発がうまく進むポイントなのだと捉えています。
というのも、短期的な視線で、その時々の課題としてお客さまから挙げられる声は、プロダクトコンセプトと相性が悪いものも含まれます。たとえば、私たちのプロダクトは生徒さんが「わからない」と感じる原因を特定し、そこから解決していくのが特徴です。ただ、それをどの生徒さんにも適応してしまうと、工数が膨大になってしまう。結果として、プロダクトコンセプトとして大事にしていることが守れない状況にも陥りかねません。
ただ、会社全体でその課題を理解して、カスタマーサクセスチームはお客さまの「現場での痛み」を理解した上で、コンセプトを変えることなくいかに乗り越えるべきかというコミュニケーションを取ってもらいます。
その結果として、ちゃんとフィードバックをいただけ、プロダクトチームとしても考えやすい状態になっていく。プロダクトとして大事にしたいことを、社内にしっかりと共有できているのが、atama plusとしての強さにつながっていると感じますね。
コミュニケーションでは「具体性」を重視する
──プロダクトオーナーとして、開発メンバー、カスタマーサクセスメンバーなどと、よくディスカッションをされると思います。コミュニケーションで気をつけられているポイントはありますか。
林田:お互いに具体例を確かめ合うような質問が多いかな、と思います。私たちはお互いに「これをやってください」と手渡すような仕事のやり取りをすることはあまりなく、「こういった課題を解決したいです」というコミュニケーションを日々取っています。そうすると、お互いの目線がそろっているかどうかが大事になってくるんですね。
プロダクトチームの中でも、仕様の話をする前に、まずは課題について会話しています。具体的な仕様はチームで考えることが大半ですから、むしろ「課題が正しく伝わっているかどうか」が重要。その際のコミュニケーションとしても、「具体的にどんなシーンで起きている困りごとなのか?そこで取り得るべき方針は?」といった質問が多いように思います。
他のチームとも課題ベースで会話していますけれども、その際にも「具体的にどんなことが起きているのか」「どのぐらいの規模のお客さまで起きているのか」「対象となる塾はどういったプランで、いかなる使い方をしているのか」をセットにして考えます。そして、決して言葉だけがひとり歩きしないように、わからなかったら現場に直接行って確認し、具体化させて目線をそろえます。
ディスカッションをすると、どうしても話が抽象的になっていく側面があると思うのですが、それはやり取りに具体性が無く、課題の目線がそろっていないからなのでしょうね。
行動の背景には、いつもカルチャーがある
──確固たるプロダクトコンセプトがあるからこそ、そのコミュニケーションがうまくいっているように感じます。だからこそ、ファクトやコンテキストに基づいたコミュニケーションが促進される。それはPOだけでなく会社全体のカルチャーが確かでなければ支えられないと考えます。atama plusさんではカルチャーにどういった投資を続けていますか?
林田:ありがとうございます。不確実性の高いことを私たちの会社はしていて、「プロダクトが最終的にどういったものになるのか」も見えない中で開発しています。ただ、会社のミッションや大事にすべきことは明確で、「基礎学力」の習得にかかる時間を短くし、「社会でいきる力」を養う時間を増やすこと。現在は、「基礎学力」の習得にかかる時間を短くすることに注力しています。
カルチャーとしては「生徒が熱狂するような学びを届ける」という、具体的なプロダクトの手前にある部分が共有できているように感じます。そういったカルチャーを明文化するのはどの会社でもなさっていると思いますが、atama plusでは『atama+ culture code』という一冊の本にまとめています。
最初は、会社として大事にしたいカルチャーをValuesとして定義していたのですが、組織が大きくなる中で、さらに目線をそろえるためには、もっと具体的に言語化することが必要だと考えました。そこで半年ほどかけて各チームからメンバーを集って、明文化したのです。
新しく入社する人は、まず集まってこの本を読み合わせて、具体的な部分については既存社員とコミュニケーションを取る場も設けています。そういった活動を通して、会社全体として大事にしていきたいことを根づかせています。
──確かにatama plusのnoteにも「カルチャーは庭」といった言葉がありました。手入れをし続けなければいけない、と。
林田:本当に「作って終わり」ではないと日々感じます。そして、自分たちがカルチャーに日々試されている側面もあると思います。「掲げているものを守っていけるか」と日々意識しながら行動することで、維持されている面もありますね。
会社の中で、みんなに向けて話すときも、カルチャーコードに書かれた文章を引用しながら話すことがよくあります。それによって、自分たちが取り組んでいることのベースになる考えを知り、折に触れて自分たちの活動にカルチャーとしての意味づけがなされていること、行動の背景にカルチャーがあることに、意識的になるのが大事なのかなと。
プロダクトの「外側」も踏まえなくては使われない
──プロダクトチームの方々とコミュニケーションする際に、気をつけているポイントは?
林田:やはり背景もセットで伝えることですね。正確に意図が伝わらなかったり、あるいは背景が伝わっていればより優れた解決策が見えたりするかもしれません。自分もたまに失敗してしまうこともあるんですけども。
「会社全体として今目指していることがこれで、この3カ月で私たちが取り組んできたことはこれで、それを踏まえるとこういったことがしたい」という、会社全体の大きな流れとつながっていることも大事だと思っています。
自分なりの解釈で大事にしていること、それがプロダクトチームといかに関連しているのかを、整理して伝えることを意識していますね。
──Wantedlyに書かれていて印象的だったのが、たくさんの付箋を壁に貼っていることでした。おそらくカスタマージャーニーの動きではないかと思いますが、そういったことに取り組まれている背景や、そこから得られたベネフィットは何ですか?
林田:これも全体感を伝える手段だと捉えています。使い方が多岐にわたる中で、統一された大きなユーザーフローがあるわけではありません。「ある課題」や「ある機能」を検討する際に、そのタイミングで関わる部分についてフローを整理して、その中で課題になっているところを時系列で整理することで浮き彫りにしていく……といった目的で使っています。
けれども、一連の流れでどこに課題があるのかを整理することで、問題が起きている文脈の理解であったり、よりクリティカルに見通しが立ったりする効果があるのではないか、と考えています。
──プロダクト内でのユーザー体験だけでなく、プロダクト外で起こっているユーザーやステークホルダーの動きを整理されている、といったことも書かれていましたね。
林田:塾の現場で使うサービスなので、複数のサービスが相互に連携し合ったり、プロダクト外で起きていることもたくさんあったりします。それらがプロダクト内の整理だけだと伝わりきらないので、プロダクトの外側で起きていることも同時に整理するようにしているんです。
ただ、そういったものを「ドキュメント化してチームに共有する」というだけでは難しい部分がありまして。チームと一緒に、実際にそのフローを体験しているカスタマーサクセスのメンバーなども交えながら、共にする時間の中で整理していくことで、正しく課題感が共有されるのではないかと思います。
──カスタマーサクセスにおいて「自社プロダクトでいかによい体験をしてもらうか」を考えがちですが、顧客は他のサービスを併用しているものですし、むしろ他のサービスと連携したらうまくいくところもあります。そこまで意識したようなオンボーディング体験や活用促進をできないと、サービス全体を通したUXの向上は難しいのだろうと、ここまでのお話やnoteなどから感じました。
林田:本当にそうですね。特にBtoBで、私たちのように規模が大きな組織に導入していただいていると顕著です。
「どういうフローで最終的に現場で使う人に情報が伝わるのか」「この組織において、この業務は誰の役割になっているか」といった構造が異なりますし、それらを把握しないでプロダクトをリリースしてしまうと、全く使ってもらえないことにもなりがちです。
それらを把握し、実際の業務に合わせること。プロダクトの機能だけを磨くのではなく、事前にカスタマーサクセスメンバーとも擦り合わせ、「いつリリースすれば業務改善のタイミングに間に合うのか」も懸案しなくてはなりません。たとえば、夏休みの講習に間に合わせたいなら、その1カ月前にはリリースしたいところです。
そういった「プロダクトの外側で起きているコミュニケーション」も意識しながら、プロダクトのリリース時期や、どんな機能や体験を作るかを考えていますね。
PdMやPOは「なってから」始めていく仕事
──林田さん自身が未経験の中でプロダクトオーナーという役割に就かれた時期から振り返って、どのように現在の考えが形作られていったと思いますか?
林田:UXデザイナーからプロダクトオーナーになったのですが、最初は正直、どのように役割が変わるのかがわからない状態でスタートしたんです。
今までの話の中でも出てきた、「課題をきちんとチームに伝える」「会社全体の方針を踏まえた上でチームの活動を決める」「優先度を決める」というのが大事なのも、やり始めてからだんだん認識していった部分です。
それらを理解していく過程で、会社内の他チームが今どのような動きを取っているのかを積極的に把握したり、他チームの定例会議に参加してみたり、直接的に「今どんなことをしているんですか?」と聞きに行ったりするようになりましたね。
あとはそれらをチームへ伝える際に、自分だけではなく他の人が言ってることも、自分の言葉として整理してチームに話すことを意識するようになった。だんだんと、そのあたりができるようになってきたかな、と思っています。
──他にもインプットしたり、勉強されたりしたことはありますか?
林田:界隈でよく話題になっている本とかは当然読みもします。いろいろなことを試したり、本を読んだりするのは、もともと好きですね。とはいえ、あまり普段から経験を仕事につなげる意識を強く持っているわけではないですけれども。
ただ、体験するという意味では、自分は大学付属高校の出身だったので一般的な大学受験を経験したことがなかったんです。それで、2020年にあった最後の「大学入試センター試験」を受けに行ってみました。実際に受ける前にはプロダクトを使ってみることで、ユーザー理解につながるのではないかな、と。
──ありがとうございます。最後に、PdMやプロダクトオーナーを目指そうと思っている方、今すこし悩んでいる方に、アドバイスやメッセージがあればお願いします。
林田:「今の土俵で培ってきたもの」が、PdMやプロダクトオーナーになったときの武器になると思っています。PdMやプロダクトオーナーとしてのスキルって、おそらくは「なってから」会得していくので構わないはずです。まずは今の土俵で培えるものを増やすことが大事で、その延長線の一つとしてPdMやプロダクトオーナーという役割があるのではないでしょうか。
atama plus株式会社
プロダクトオーナー 林田 智樹
新卒でリクルートに入社し、UXデザイナーとして就活生のエクスペリエンス向上に尽力。2017年に創業間もないatama plusへJoinし、UXデザイナーとして数々の機能開発に携わる。現在はAI教材atama+のプロダクトオーナーを担当。
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