はじめに
ここ5年、世界でB2B Fintechはホットなセクターとして広く認知されるようになりました。Rampのような次世代法人カード、Stripeのような組込型金融、企業間決済周りのCoupaやBill.com──。
世界のクラウド/SaaS企業のスタートアップのランキングであるForbes Cloud 100の内、(B2Bの)Fintechセクターにおける2022年の評価額合計は205億米ドル(約27兆円)。世界のクラウド/SaaS最大のセクターです。2019年対比での評価額合計の成長倍率で見ても6倍と、全セクター中で2番目に急成長しています。
このマーケット環境下で「なぜ、Fintechを取り上げるのか?」と思う方もいらっしゃるかもしれません。確かに、金利上昇の中で、B2Cを含めたFintechセクター全体は最も打撃を受けた分野です。下図を見てみましょう。
見るに明らかですが、B2B Fintechに関してはB2Cと異なり、高い業績パフォーマンスを示してます(理由は後述します)。
Fintechで有名な欧州スタートアップシーンでは、2022年においてもB2B FintechはB2C Fintechに対して4倍以上(141億米ドル vs 32億米ドル)も資金を集めています。これは驚くべき数字です。実際に、2023年以降もB2C Fintechに比べて、B2B Fintechへの投資が集中すると目されています。
その背景には、マクロ経済の逆風への耐性が挙げられます。B2B Fintechに比べ、B2Cのビジネスモデルは、インフレや金利上昇、マクロ経済の不安定さに対して脆弱です。実際に、米大手VCの「Coatue」の分析によると、上場しているB2B Fintech企業の売上継続率(NRR)は100%を大幅に超え、中央値で119%です。これはアメリカで上場しているトップティアのSaaS企業の中央値が120%であることを踏まえると、非常に高い水準です。一方で、B2C Fintech上場企業は中央値92%です。
また、営業利益率も同様に大幅な赤字を垂れ流している企業が多いことがよくわかります。B2B Fintech企業の営業利益率は中央値+5%で営業黒字であり、Fleetcorのように営業利益率50%を超える企業も存在します。一方で、B2C Fintechは中央値-51%です。
財務面で見てもB2B FintechはB2Cより力強い成果をあげられる素地だとわかります。
日本でも、hacomono、エンペイといったの決済FintechをからめたバーティカルSaaSスタートアップや、Fast Accounting、LayerXのような請求書処理周りのFintech・SaaSスタートアップの躍進が目立つようなってきたと思います。
今回の記事では、海外・国内のB2B FintechのトレンドやSaaSも絡んだ主な事例、日本での機会やB2B Fintechが市場で勝ち続けるための要素について、SaaS専門VCであるALL STAR SAAS FUNDのパートナーの立場から考えてみます。
※本記事を書くにあたり、Finatextホールディングス 取締役CFO 伊藤 祐一郎さんには、多大なるアドバイスおよび監修頂きました。心より感謝申し上げます。
ALL STAR SAAS FUNDが注目する「5つのB2B Fintechカテゴリー」
B2B Fintechは、企業向けに決済や融資のような資金移動に伴うデジタルサービスや、そのインフラを提供するソフトウェア・サービスを指します。ここでは、隆盛のある事例としてALL STAR SAAS FUNDが注目するB2B Fintechの主要な5つのカテゴリーと代表的な注目企業を紹介していきましょう。
【1】B2B決済
B2B決済はB2B Fintechで最もメジャーで、数多くのプレーヤーがいる分野です。世界のB2B決済総取引額は、2021年に約48.5兆米ドル、2030年までに約81.8兆米ドルと、年率6%で成長が見込まれます。非常に巨大な市場です。
「B2B決済」といえど全体は大きいため、ここでは2つに分けて解説します。まずはB2B、B2B2Eでの資金移動プロセスの運用・管理・実装を目的としたホリゾンタルなB2B決済の分野。そして、特定の業界ないしは複数の業界に特化した、顧客企業側がB2B2Cのデジタル決済を実装するためのバーティカルB2B決済です。
ホリゾンタルB2B決済では、小切手のような紙のプロセスを電子化したり、企業の入出金を管理するBusiness Spend Management(BSM)のワークフローを効率化・自動化するFinancial Operation(FinOps)がメジャーです。
SaaSではミッドからエンタープライズ向けではプロセスが複雑なため、決済機能よりも業務効率化に主眼が置かれたソリューションが一般的です。代表例としては、CoupaやAvidXchangeなどが挙げられます。
一方で、ワークフローが比較的シンプルなSMB向けでは、決済機能に主眼が置かれるケースが多く、法人カードも提供していることがあります。代表例は、RampやBill.comなどです。加えて、企業向けに出張管理SaaSを提供するTripActionsも注目される急成長プレーヤーです。その他に、マルチリージョンでの給与決済を実現する給与計算・支払を支援しています( DeelやRapydなど)。
日本でもこの分野は、電帳法の改正に伴ってホットです。インボイス処理周りでは、Fast Accounting、LayerX、Sansanが提供する「Bill.One」など、数多くのプレーヤーが参入しています。
また、バーティカルB2B決済では、レストラン(例. Toast)やフィールドサービス(例. ServiceTitan)のようなサービス業向けや、EC(例. Shopify)、小売(例. Melio)などの物販業向けにB2B2Cの多様なデジタル決済を提供するプレーヤーが数多くいます。
主にSMBを中心にターゲットしており、SaaSと組み合わせてオール・イン・ワン型で提供しているケースが多いです。日本でもウェルネス業界向けのhacomonoや教育業界向けのenpayなどが代表的な事例として、多数出てきています。
【2】ファイナンス機能提供型SaaS(BaaS、Embedded Finance)
Andreessen HorowitzのAngela Strange氏は、現在金融サービスを提供していないスタートアップから大企業に至るまで、全ての企業がFintechを提供すると予想しました。AWSの出現で高額なサーバーや開発が必要だったソフトウェア産業が民主化されましたが、今後はFintechでも同じ流れを予測しています。
これを実現するイネーブラーが“ファイナンス機能提供型SaaS”です。提供者視点では、Banking as a Service(BaaS)やInsurance as a Serviceと言われたり、ユーザー視点ではEmbedded Finance(組込型金融)と言われたりします。ここでは、より広義にファイナンス機能提供型SaaSと称します。
ファイナンス機能提供型SaaSは、法令を遵守したフルスタックのテクノロジー基盤を有しており、APIなどを通して、ファイナンス機能をプロダクトやサービスに簡単に組み込めます。
メジャーな例としては、ECサイトをはじめ必要なサービスに決済機能を簡単に実装できるStripeやCheckout.com、オープンバンク機能(Fintech企業や会計ソフトの開発企業などの外部事業者へ、銀行が保有する各種データや機能を開放・連携すること)を提供するPLAID、金融カードの発行企業向けにオープンAPIを提供するMarqetaなどが挙げられます。日本でも2021年に上場したFinatextホールディングスやGMO Payment Gatewayなどはよく知られた存在です。
欧米の場合、スタートアップが次の展開としてTAMを広げたり、ユーザー体験とサービスを向上する過程でFintechを実装するケースで大きく広がり、それに追随する形で大企業がFintech機能実装を支援するケースが増えてきた経緯があります。
日本においても、バーティカルSaaSの増加と伴い、決済機能は普及しつつあります。しかし、欧米と異なり、その他のファイナンス機能については、スタートアップの数や規模がまだまだ小さいため、大企業向けにコンサルティングを含めたカスタマイズしたシステム開発をするプレーヤーが目立ちます。
【3】デジタルバンキングSaaS
デジタルバンキングSaaSは、銀行・保険・証券といった金融機関やFintech企業向けに、Fintech化の支援、運用業務を効率化、ユーザー体験の向上を行なうカテゴリーです。企業のFintech化を支援するという観点では、ファイナンス機能提供型SaaSとほぼ同じですが、ユーザーが金融機関やFintech企業という点が大きな違いとなります。
代表的な企業例としては、クラウドベースで銀行の基幹業務を支援するThought Machineや、銀行の融資や口座開設などを現代のユーザーに合わせたモダンな仕組みに変えるnCinoやBlendが挙げられます。日本でも金融機関の債権管理や回収業務の効率化を支援するLectoなどが例でしょう。
【4】サイバーセキュリティ/Regtech
B2B、B2C問わず、Fintechサービスが広がる中で重要になってくる分野が、クレジットカードの不正利用などを防ぐFintech企業向けのサイバーセキュリティや、金融業特有の複雑な規制(Regulation)に対応するRegtech(Regulation Technology)です。
金融業は規制業種であり、規制対応は金融機関やFintech提供者の重要なイシューですが、一方で人的リソースの不足や、IT部門とユーザー部門におけるギャップの調整といった課題を抱えやすくもなります。そのため、必要なテクノロジーとして近年、にわかに盛り上がりを見せるプライバシー領域も含まれてきます。
この分野は前述のB2B決済、BaaS、デジタルバンキングSaaSといった金融サービスのデジタル化が進む中で、ある意味ではFintechの「ツルハシとジーンズ」な存在として、一歩遅れて勃興すると考えられます。事実、Regtechについては、Fintechが一大産業のイギリスでも2015年頃からよく耳にするようになりました。
また、特に注目が集まっているのは不正利用検知といった分野です。現在は利益創出がマーケットから強く求められる環境であり、金融機関やFintech企業のコスト削減にも繋がるからです。
この分野の企業例としては、オンラインバンキングの顧客ID検知やサイバーセキュリティを提供するSocure(直近のバリュエーションでは$4.5B)、Incode Technologies(同$1.25B)、Onfido、暗号通貨のトランザクション分析のChainalysisなど、数多くのユニコーン級企業がいます。
日本でも金融機関を中心に、不正アクセス検知SaaS「フロードアラート」を提供するカウリスといったプレーヤーがいます。
【5】その他、カテゴリー未満ながら注目のB2B Fintech
サイバー保険×SaaS
データに基づくサービスという観点では、保険サービスとデータエンジンとしてのSaaSは非常に相性が良いと言えます。この分野で注目すべきは「サイバー保険×SaaS」が挙げられます。
サイバー保険分野は世界的にサイバー攻撃と被害が増加する中で、急速に成長している市場です。ただ、サイバー保険は大手保険会社も提供しているため、スタートアップが闘うにはハードルが高いのですが、SaaSを組み合わせることで躍動する企業もあります。一例としてはCoalitionで、独自のプロアクティブなサイバーセキュリティSaaSを提供することで、大手保険会社には提供できないポジショニングを築いています。
エクイティ管理SaaS
企業経営においてエクイティでの資金調達やストック・オプション(SO)の管理はとても重要です。テクノロジー業界では国内外問わず、人材獲得競争が熾烈になる中で報酬としてのエクイティへの注目も年々高まっています。そのような背景から、エクイティ管理のCartaや、SOを含めた従業員の報酬管理のPaveといったユニコーンSaaS企業が生まれ、は注目度は高くなっています。日本でも、SOなどの株式報酬を管理するNstockや、株主総会や資本政策周りではsmartroundやFUNDOORのようなスタートアップが出てきています。
Generative AI×Fintech
Open AIが提供するChatGPTなど、昨年からGenerative AI(生成型AI)はテクノロジー業界を非連続に進化させるとして注目されています。ただ、Fintech業界においては潜在的なユースケースが明らかになっておらず、海外でも目ぼしいスタートアップは出てきていないように思います。
しかし、GPT-3などの大規模言語モデル(LLM)は、企業がデータセットをより早く、安価にトレーニングできるため、Fintechを非連続に進化させることは十分に考えられます。たとえば、Andreessen Horowitzが公開したFintechの新しいアイデアに関する記事では、これまで半自動化しかできなかった保険金請求処理やローン審査などを、Generative AIを活用することで完全自動化する可能性を示唆しています。
日本でいまB2B Fintechがホットと言える4つの理由
そもそもなぜ、いまB2B Fintechが日本でホットなのでしょうか?いくつか、マクロ視点/ミクロ視点での追い風となる潮流を紹介します。
理由その1:世界的パンデミック、そして業務デジタル化への法改正による後押し
B2B Fintechが普及した大きな契機は、新型コロナウイルス感染症の流行です。訪れたコロナ禍により、2つの大きな変化がありました。リモートワークの普及と現金離れです。
リモートワークの普及は、電子署名(サイン)の法改正があったことも大きく影響していますが、マニュアルが慣例となっていた契約書や請求書のやり取りのデジタル化を推し進めました。日本の商習慣がマニュアルから離れられなかった大きな要因の一つがハンコ文化です。このプロセスが電子化したことで、契約締結や請求書発行といった捺印に関する上流・下流のプロセスがデジタル化へ一気に舵を切ることができました。
個人的には、近年、日本のリーガルテックSaaSや請求書処理プロセス周りのSaaSが急成長を遂げている大きな背景としても挙げられると思っています。さらに現在では、電子帳簿保存法の改正が、請求書処理プロセスをデジタル化させる必然性をさらに高めている状況です。これらのデジタル化された業務プロセスと会計システムとの連動による効率化で、コーポレートカードの普及も進んでいきました。
さらに、主にB2B2Cのビジネスで起こった現金離れが重なってきます。パンデミック後は、消費者が感染予防の観点から現金への接触を嫌煙する動きが出たこともあり、現金を用いたB2C決済プロセスがキャッシュレス化へと移行しました。日本ではエンペイが提供しているような、幼稚園・保育園の現金集金をキャッシュレス・ペーパーレスさせたのが代表例でしょう。
理由その2:B2C Fintechの急速な普及とキャッシュレス比率の高まり
B2B Fintechが広がる上では、B2CにおけるFintech化・キャッシュレス化は重要な起点となります。先行する米国や欧州でも、テクノロジー業界でのB2C Fintechの普及に応じて、B2BでもB2CライクなFintech体験への要求が高まったり、既存の金融プレーヤーのFintech化を支援するB2Bプレーヤーが急増したりしました。
しかし、日本市場では純粋なB2C Fintechプレーヤーが拡大しにくい状況がありました。欧米と異なり、若年層が少ない人口動態が大きなハードルになっていたのです。そこにPayPayやLINE Payを提供するZホールディングス、メルペイを提供するメルカリなど、大型化したB2Cテクノロジー企業が積極的に投資を行ない、なおかつ政府からのキャッシュレス推進の追い風もあり、2015年以降には急速にB2Cでのキャッシュレス決済が進展しました。
経済産業省の調査では、2021年のキャッシュレス比率は、前述の消費者の現金離れも後押しをして32.5%に上り、2013年の15.3%から大きく伸張しました。B2C Fintechの急速な普及は、今後の日本でもB2B Fintechが爆発的に普及する可能性を高めたと見ていいでしょう。
理由その3:国内VCのドライパウダーの急増と連続起業家の出現
B2B Fintechスタートアップを取り巻く資金環境も、この10年間で大きく改善されたことの一つです。Fintechは他業種のSaaSビジネスに比べると立ち上げ時に資金がより必要になるケースが多いです。規制業種ならではの顧客の動きの遅さや、資金移動業免許を維持するための資金が主な理由です。
しかし、欧米のFintechユニコーンが数千億円の資金調達することも珍しくない環境にありながら、日本でFintechのブームが最初に起こった2015年前後では、国内スタートアップの資金調達額は年間でも2,000億円足らずしかありませんでした。資金獲得の面で日本のスタートアップは大きなハンディキャップを背負っていたと言えるでしょう。
ところが近年では、国内スタートアップの年間資金調達額は5,000億円を超える額まで到達しています。Fintech領域で起業するハードルも下がってきました。さらに、テクノロジースタートアップの起業・経営経験のある連続起業家がFintechで創業するケースが増えていることもプラスに働いています。連続起業家の方々は社会的な信用も高く、シード期においてもVCなどから多額の資金調達を優位に進められることもあり、Fintechのような初期立ち上げコストの高い起業においては大きな利点です。
理由その4:SaaSスタートアップの大型化とFintech化
2018年頃より、SaaSスタートアップは日本のスタートアップエコシステムでも市場の牽引役として大きな役割を果たしてきました。SmartHRに代表されるユニコーン級の企業や、Sansan、freee、MoneyForwardといった時価総額が数千億円を超える上場企業も出てくるようになりました。日本のクラウド化の波もあり、国内では現在に至るまでSaaSスタートアップが急増しています。
ただ、SaaSスタートアップが増加し、大型化してくると、「いかにTAMを広げ続けるか?」という壁によくぶち当たります。その解決策の一つとして、SaaSスタートアップがFintech事業に染み出すケースが多くなっています。hacomonoやNstockは代表例でしょう。
顧客企業の業務に深く入り込むSaaSは、B2B Fintech単体より粘着性が高く、NRRも取引額に応じて向上できるので、相乗効果の高い組み合わせと言えます。また、SaaS事業での実績を元に大型の資金調達も可能なので、B2B Fintech事業をはじめる上での資金面でのハードルもクリアできます。SaaSを起点としたB2B Fintechへの染み出しが、B2B Fintechの過熱に油をさらに注いでいると感じています。
B2B Fintechで起業する上で重要な3つのポイント
ここまで現況についてまとめてきましたが、B2B Fintechで起業を考えている人に向けて、押さえるべきポイントを述べて、この記事を締めていくとしましょう。ポイントは3つです。
1. B2B Fintechに必要な信頼を築き続ける
Fintechは、金融サービスです。金融サービスは信用があって初めて成立しますし、B2B Fintechも例外ではありません。しかも、B2B Fintechは他のSaaSビジネスに比べると法規制があり、起業に際しても前倒しで多額の資金が必要になります。それを実現するのは、信頼です。
名の無いスタートアップがどうやって信頼を築けるのでしょうか?結論から言うと、創業者がすでに持つ信頼をレバレッジするか、これまでの実績で信頼を築くかしかありません。
前者は、連続起業家など過去の事業を成功させた実績があるケースや、数十年も金融や業界での豊富な経験があるケースです。後者は、事業として急成長した実績を元にする一方で、B2B Fintechでは「鶏と卵の問題」になってしまいがちです。そのため、SaaSなどのアセットライトな事業で急速に成長させた実績を元に、Fintech事業を運用するためのネットワークや多額の資金調達を行なう必要があります。
SaaSのセカンド・アクト(第二の事業)としてFintechが多くなる理由は、ここにあると思います。
2. ユーザー体験にこだわりぬく
B2B Fintechは、企業活動の生命線であるお金を扱う活動を支援します。この世の全ての企業は、お金のやり取りを行なう業務があります。そのため、ユーザー体験が悪いと使われません。しかも、その価値を感じるまでの時間(Time to Value)は一般のSaaSと比較しても非常に短く、ユーザー体験の良し悪しが生死を分けます。
特に企業間、ないしは企業と消費者の間のお金のやり取りは、企業の信頼に関わるミッションクリティカルなプロセスです。圧倒的なユーザー体験を提供できれば、企業からB2B Fintechベンダーへの信頼にもつながる上に、その先の企業・消費者の「顧客の顧客」からの信頼・エンゲージメント向上にも大きく寄与します。
付け加えると、B2B決済の場合、決済システム単体での差別化は難しくなるので、周辺のワークフローをSaaSを用いて、いかにユーザー体験を高くできるのかが勝負の分かれ目になります。
3. 売上総利益を継続的に改善し続け、将来的な収益性の明るさを示す
B2B Fintechの魅力は、SaaSにはないTAMの大きさと成長の爆発力です。一方で、B2B Fintechの場合、粗利率が一般のSaaSに比べると低いです。そのため、この成長性と収益ポテンシャルの総合力のバランスを取りながら、中長期で経営の舵取りが求められます。
このB2B Fintechの成長性と収益性の総合力を理解しながら経営を舵取りする方法として、米大手ファンドのCoatueが「Rule of 200」という評価方法を紹介しています。Rule of 200は、売上継続率(NRR)、年間売上成長率、粗利率、営業利益率の和が200%を超えるFintech企業を優れているとする、新しい評価方法です。
ただ、SaaSにおける「Rule of 40」のように世界的に流通している評価方法ではなく、かつ企業価値評価との相関性もまだわかっていないので、黄金律とまでは言えません。しかし、B2B Fintech企業が評価される際のトレードオフのある財務の重要指標を明らかにしている点、そしてそのバランスをどう取って経営していくかを考える上では、目安として参考にしてみる価値はありそうです。
(参照・ソース)
- Fintech and the Pursuit of the Prize: Who Stands to Win Over the Next Decade?
- Forget neobanks: In 2022, it’s B2B fintech that investors find ‘sexy’
- The Future of B2B Fintech: Trends and More
- List of top B2B fintech firms
- Fintech Scales Vertical SaaS
- Foundations for Successful Fintech Infrastructure (and Several Tradeoffs to Consider)
- Tech valuations are down. A16z says fintechs are getting hit hardest.
- Investment in B2B fintech set to continue to outpace B2C fintech in 2023, experts say
- 4 Trends That Will Redefine The Future Of Fintech In 2023
- Forecast: Which Fintech Sectors Will VCs Favor In 2023?
- The top 5 European fintech funding deals of 2022
- Top 10 Fintech Trends to Watch in 2023
- Fintech Forecast For 2023: Stronger Regulations, Consolidation Wave, Neobanks Coming Of Age & More
- How can fintech startups outlast the VC winter?
- The Big Ideas Will Tackle in 2023
- Future proofing fintechs: Four lessons for startups and VCs
- The B2B Payments Tech Landscape
- Make Cents: The Universe of Fintech Infrastructure
- A Look Back at Q3 '22 Public Cloud Software Earnings