※本記事は前編・後編で構成されています。前編を読んだ上で本記事を読むことを推奨します。
前回は、国内、海外のSaaS/ITベンダーからのヒアリング結果をもとに、現在スタンダードとされる、顧客支援フレームについて整理しました。後編では、支援フレームを整理・構築する際に、サービス提供側で論点になりやすいポイントを考察し、それを踏まえた上で、私が考える理想の支援フレームを展開していこうと思います。
(1)支援フレームのトレンド紹介
(2)現存する支援フレームが抱える問題← 今回はここ
(3)最適な支援フレームの考察
では早速、 支援フレームを運用する上で課題・論点化しやすいポイントをまとめていきましょう。
プロフェッショナルサービスと有償CS、どちらで支援を提供するべきか
プロフェッショナルサービスと有償CSは同義に解釈されることも少なくありません。これは言葉の定義の問題なので、正解を求めることにあまり意味はないのですが、世間的には「プロフェッショナルサービス」といった場合、(特に海外では)インプリ系の有償支援(ベンダーが提供するSaaSを、他のシステムと接続するためのテクニカルな支援や、当該SaaSのテクニカルなチューニング・カスタマイズ支援)を指すことが多いとされています。
提供するSaaSを顧客の業務に定着させる前準備に、高度な専門性が求められるケースにおいては、その業務に従事する人材要件は自然と高くなります。これは顧客に請求する金額が高額になることを意味しており、この場合、その支援にあえて「プロフェッショナルサービス」という言葉を冠して、比較的高価な金額を請求することは一定有効なようです。個人的な見解としては、「プロフェッショナルサービスか有償CSか?」という議論に意味はなく、むしろ「有期か継続か?」「工数ベースの見積りかメニュー化か?」という議論にこそ意味があり、その結果決定された、支援をどのように呼ぶかは別に議論したほうが健全な気がします。
CSMのキャリアの到達点=プロフェッショナルサービスではない
ヒアリングした範囲では、「プロフェッショナルサービスを、カスタマーサクセスマネージャー(以後CSM)の上位互換」としてキャリアを構築しようとしている会社もありましたが、個人的な感覚としてはこの2つをひと続きのキャリアとみなすのには違和感があります。
プロフェッショナルサービスは業務デザインやインプリメンテーションなど狭い分野で高度な専門性を発揮し、決められた金額と期間の中で、高いレベルで任務を完遂することに責任を持ちます。対して、CSMは顧客にアウトカムを与えることを責務としています。
そのため、プロフェッショナルサービスの顧客対面は情シスや事業企画、もしくは提供SaaSを実際に利用する部門であるのに対し、シニアレベルのCSMは対面が経営層やCレベルであることも多いのです。そのような意味で、この2つはキャリア的に連続しておらず、人材確保のルートも別になっているように見受けられます。
例えばマーケティングのSaaSを扱っているとして、各々の責務は以下のよう整理できます。
・PS:The Model型のワークフローを顧客最適にデザインする
・CSM:デザインされたワークフロー使って顧客にアウトカムを与える
この2つのキャリアに連続性を持たせることが悪いというわけではありませんが、保有するケイパビリティと、そのキャリアのExit先がかなり異なるので、地続きで見るのは「ハイグレードなジェネラリストを育成する」という現代ビジネスにマッチしていないことを目指しているように思えます。
有償支援のサービスメニューをどう設計・値付けするか?
プロフェッショナルサービスにしても有償CSにしても、その活動にどのように値付けするかは重要な問題です。一般的な傾向として、複雑性が高く高度な専門性が求められる支援は、工数ベースの見積りをもって金額が決定されます。
この場合、本来的には期間、成果物、検収要件などを定め、契約に盛り込むべきでしょう。一方で定型化された支援はメニュー化されることが多く、契約上も上記を厳格に問わないようになっています。
顧客側からすると、(支払金額に応じて)支援内容に厳密にコミットしてほしいところですが、サービス提供側としては最終アウトプットにコミットすることはリスクが高すぎることもあります。よって、顧客の納得感、支援にまつわる契約業務の複雑度、現存する社内タレントなどを考慮しつつ、自社の状況に応じて柔軟に変化させ続ける必要があるでしょう。
継続的な有償支援に対し、どう値付けするか?
有期性のある支援業務は、支援項目とそれに掛かる工数ベースでプライシングを決定しやすいのですが、アダプションなど、継続的に支援する場合はここがぼやけやすいという特徴があります。実際、「毎月1回の定例会議」や「〇〇に関する質問への回答」などで、ある程度は規定できるものの厳格化は難しいでしょう。
これが転じて、顧客から「金額に見合った支援をしてもらっていない」と言われたり、逆に社内のマネジャーから「支援をしすぎているのではないか?」というクレームや疑念を生むことがあります。
これらはいずれも、有期性が薄いせいで支援項目を決定しにくいことが原因です。これを解決するポイントは、支援に適度な有期性を持たせられるかにありそうです。これについては最後に説明します。
どこまでを有償・無償の支援範囲とするか?
前編で、支援の有償化は以下の正当性をもって決定されると分析しました。
(1)支援すべき範囲・規模が大きいことに紐付ける
(2)有償と無償の支援内容にコントラストを付ける
(3)市場トレンドから見た有償妥当性
サービス提供側で論点になりやすいのは2つめの、「有償と無償の支援内容にコントラストを付ける」です。ベンダーによっては、有償及び無償の支援内容を定めているものの、都度発生する顧客の要求がサービスメニューの範囲内かどうかを機械的に判断することは難しく、現場CSMsの裁量にゆだねられていることも少なくありません。
これは、CSMsによる支援の濃淡を発生させ、顧客からの「〇〇さんはやってくれたのに」という問題に発展します。私が見た限りでも、多くのSaaSベンダーはこの問題に苦しんでいました。これについては最後のパートで私なりの見解を説明します。
担当CSMの有無が、無償か有償かの境界をわける
まず、無償と有償の支援境界を整理するもっとも簡単な方法は、「有償支援はCSMが付く」と整理することです。こうすることで、CSMが付く顧客と付かない顧客間で、支援の濃淡をなくすことができます。
また、ベンダーによっては「プールドCS」という考え方を導入し、有償・無償の支援の濃淡を説明しているところもありました。プールドCSとは「専門の担当ではないが、ベストエフォートでチームが無償支援します」という支援提供形態のことです。
顧客側から見ると「無償の範囲で、できるだけのことをやってくれる人」と映るため、期待値をある程度コントロールすることが可能な存在です。ベンダーによっては、プールドCS担当は名前も公開せず、ミーティングも個別開催しないなど、徹底して「貴社の担当」と思わせない配慮をしているところもありました。
「CSMのアサイン」「プールドCS」どちらもすでに実績があり、効果が証明されているプラクティスです。
支援範囲が肥大化する問題
担当CSMが付くケースにおいては、有償・無償を問わず、支援内容を厳格化することは難しいものです。現場CSMからすると、顧客の成功に資することはなんでもやろうとするので、放置しておくと、支援は際限なく肥大化していきます。これを回避する現実的な運用は以下です。
(1)有償・無償の支援範囲を、(一旦)概念ベースで規定する
(2)その上で、顧客からの支援要求が範囲内かどうかを現場のCSMsの裁量で判断する
(3)判断に迷うものは、上長に申請・承認するフローを設ける
(4)上長は承認した範囲の支援を管理対象とし、その総量を常に把握する
SaaSベンダーのCS部門で問題になりやすい「支援のやりすぎ」は、そのボリュームがマネージされていないことに大きな原因があるようです。従って、これらの業務の総量を管理できるようにすることで、支援過多が発生した場合に適切な対応をしやすくなります。
最適な支援フレームの考察
これまで議論してきた内容を踏まえた上で、BtoB SaaSにおける適切な支援フレームを考察していきましょう。
事業フェーズと支援フレームの関係
事業のフェーズによって組織の成熟度が異なり、それに応じて提供できる支援フレームに違いが出るのは明白ですが、ここでは「最適な支援フレームを提供できるリソースを保有している」と仮定し、理想的な支援提供のタイミング考えてみましょう。
なお、本提案は、私のこれまでのカスタマーサクセス経験と今回のヒアリング結果を踏まえて考案したもので、自社の支援フレームを検討する上での参考と位置付けてください。
図3-1は事業フェーズとその時々で最適と思われる支援フレームを模式化したものです。ここでは、便宜上、自社SaaSの事業フェーズを「Seed/Early」「Middle/Later」「Pre/Post-IPO」の3つに分割しています。
まず、インプリPSは技術支援の必要性が高いプロダクトにおいては、はじめから必須となります。同時に、技術支援と業務デザインが不可分なプロダクトの場合は、コンサルPSも必要でしょう。
また、コンサルPSは、提供プロダクトを顧客の業務に定着させるための前準備に過度に労力がかかるケースでも初期から用意しておくことが有効です。なぜなら、これがその後のリテンションに効いてくるからに他なりません。
しかし王道としては、SaaSスタートアップは無償CSからはじめます。PMFを探すフェーズにおいては無償支援を行なう中で、顧客の課題感を探索する必要があるからです。
Middle〜Laterにおいて支援の定型化が進み、CSMごとの支援の濃淡が薄まっていることを確認できたら、これを有償支援メニューとして切り出します。
この頃には提供サービスの認知度も高くなっており、支援を有償化しても事業成長の足かせになることは少なくなっているはずです。これによって支援工数を価格に転嫁することができます。
なんらかの事情で、有償CSとプロフェッショナルサービスが同時に存在してしまった場合、「有期性」と「専門性」が高い稼働を切り出し、それをプロフェッショナルサービスの業務として整理します。これによってプロフェッショナルサービスの支援額の妥当性を担保しつつ、最適なバックグラウンドを持った人材を市場から確保しやすくします。また、CSMとプロフェッショナルサービスの評価方法についてもここで再考する必要があるでしょう。ここは前編で解説したそれぞれの評価方法を参考にしてください。
プロフェッショナルサービスと有償CSを明確に分ける
有期性をもった支援を有償で行なう場合、プロフェッショナルサービスと有償CSの区分が曖昧になりやすいのですが、顧客の期待値コントロール、及び支払金額に妥当性を持たせる意味で、提供している支援にどのような名称を付けるかは真剣に考えたほうがよいでしょう。一般的にPSはその性質上、以下の特徴を有していると顧客に説明できます。
・高度な専門性をもった人材を期間限定でアサインする
・金額が高いのはそのため
・ただし、成果物の質に責任を負う
自社が提供している支援の難易度がそれ相応のものだと判断できる場合、あえてプロフェッショナルサービスの名称を冠することで顧客の納得感を高める効果もあります。また、プロフェッショナルサービスと呼称することは、以下の点からも内部的なメリットがあります。
・採用時の人材要件がCSMとは異なることを説明できる
・CSMとは異なる評価基準が適用される(成果物ベースなど)
プロフェッショナルサービスを提供する意義
一般的な業務課題解決型SaaSの場合、顧客のそもそもの業務フローにおいて、提供SaaSのポテンシャルを発揮できず、貢献できない状況になることもあるでしょう。プロフェッショナルサービスはその部分をリデザインし、提供SaaSの利活用・定着が進むようにする手段として有効です。尚、この場合は、プロフェッショナルサービスの活動に有期性を持たせた上で提供することを推奨します。
私独自の見解ではありますが、プロフェッショナルサービスの業務範囲は以下が望ましいです。
<業務デザインに関するコンサルテーション>
・業務課題の特定
・最適な業務フローの提案
・業務オペレーションを回すための教育プログラムの作成とそのガイド
<システムに対するインプリメント>
・他システムとの繋ぎ込みの技術検証
・そのためのシステム設計
・顧客要件にあわせたプロダクトのチューニング及びカスタマイズ設計
・及び、その実装の直接支援
このように見ると、コンサルテーションは業務のグランドデザインまでを行ないますが、インプリは直接支援までを行なうという違いが見られます。
なぜかというと、SaaSは稼働しないとその価値を発揮しないため、まずは正しく稼働する状態を担保しなければなりません。このような理由から、インプリPSは直接支援まで踏み込む必要があると考えます。
一方で、顧客の努力次第でビジネス成果が創出できることまでを担保できていれば、最低限そのSaaSの契約義務は果たしているといえます。私が、コンサルPSの業務範囲をグランドデザインまでに留めているのはこういった解釈からです。
有償・無償の支援範囲を規定する
有償・無償それぞれにおいて、支援項目・範囲を明確にすることが重要ですが、ここではヒアリングで得られた内容をもとに、それらをどのようなポリシーで決定していくかを説明します。
まず、「今の事業フェーズにおいて、プロダクト利用料に含まれるものは何か?」という議論を社内で行ないます。あるSaaSを利用するにあたって、プロダクト以外で最低限必要なものは何かを考えてみるのです。これは、例えば以下などが考えられます。
・ヘルプページ、FAQ(管理者、エンド向け)
・基本操作マニュアル(エンド向け)
・管理者ガイド、運用マニュアル(管理者向け)
・他社事例
考えようによっては、無償支援は上述のマテリアルの配布・提供のみを行ない、それ以外は有償支援の範囲と整理することもできるでしょう。
当然ながら、この判断は自社の事業フェーズにも依存します。当該SaaSがその市場でデファクトスタンダードとなっており、使いたい人が多い場合は、上述のマテリアルを提供するだけでも事業拡大できるかもしれません。
ただ、スタートアップのアーリーフェーズにおいては、無償で手厚い支援を行なわなければ顧客を獲得できないことも多いものです。熟考した結果、「SaaS利用を前提とした業務フローの提案までを行なうべき」と判断したら、それを無償支援の範囲に含めることになるでしょう。
重要なのは事業フェーズごとに、都度、プロダクト利用料に含まれるものは何かを問い、社内コンセンサスを作ることです。
有償支援の項目・範囲の決め方
無償・有償の境界は、「今の事業フェーズにおいて、プロダクト利用料に含まれるものは何か?」という問いに答えることで整理されるので、ひるがえって、有償支援の項目・範囲を決めるということは、「それ以上やらない支援を決める」という問いと同義といえます。
顧客が典型的に陥る問題と、そのときに求められる支援はおおむね共通するため、そのパターンを理解・保有し、その中で無償支援外のものはすべて有償支援と位置付けることができます。
一方で、顧客からの非典型的な支援要求・相談への対応方法は以下の2つが考えられます。
1.お断りする
2.プロフェッショナルサービスでその支援要求を受け付ける
1.は説明不要ですが、2.をプロフェッショナルサービスのフレームに入れるということは、厳密には、
・支援内容に有期性を持たせる
・工数見積ベースで金額を決める
・期間、成果物、検収要件をコミットする
というスキームをもって受け付けることを意味するので、その判断は慎重に行なわなければなりません。
有償支援メニューの価格の決め方
プロフェッショナルサービス、有償CSともに見積りベースで価格を決定する場合は、人月単価の適正値をエンジニアとビジネスサイドでそれぞれ保有しておき、それに必要な工数を掛ければ比較的簡単に算出できます。しかし、支援をメニュー化した上で値付けする場合は、以下の方法をとることになるはずです。
1.掛かる工数を事前に見積もっておき、利益を確保した金額を最低価格として、そのメニューの価格とする
2.その上で、顧客のお財布事情や市場感にあわせて売上を取りに行く
見積工数を削減し、より顧客に対して誠実でありたい場合は、バッファを持たせた上で1.のみを行なえばよいでしょう。自社の利益をより優先したい場合は、2.まで踏み込む判断もありえるでしょう。
ただし、有償支援は性質上、粗利が低く、スケールしづらい特徴を持っているので、極端に2.を取りにいき、事業成長のエンジンとする方法をとるのは得策ではありません。あくまで、プロダクトのリカーリング収益を確保しやすくするための手段として位置付けておいたほうが無難だと考えます。
支援メニューの中身の作り方
プロフェッショナルサービス、有償CSともに、支援内容をメニュー化して提供する場合を考えてみます。用意するメニューは、導入支援と活用支援の2つです。
導入支援メニュー
まず、顧客の業務に提供するSaaSがフィットするかどうかを読みづらい場合は、コンサルPSとして導入前支援を提供すれば、導入失敗のリスクを低減できます。複雑性が高いプロダクトにおいてはおすすめの方法です。
(前捌きが完了しているとして)プロダクト利用契約締結後は、導入支援を有償もしくは無償にて行ないます。有償にするか無償にするかは、前述した「今のフェーズにおいて、プロダクト利用料に含まれるものは何か?」という問いに答えることで整理していきましょう。
ちなみに、導入支援は有期性が高いので、「有償支援メニューの価格の決め方」で述べた方法で決定していくのに適しています。
期間内に導入支援が完了しなかった場合は、マネジャーの承認制で導入期間を延長するのがベターです。有償支援の場合、延長した時の支援費用をどう扱うかが問題となりますが、これは現実問題、顧客側の過失の量や顧客とのパワーバランスに応じて都度判断していくことになるでしょう。
活用支援メニュー
活用支援はその性質上、支援期間が長くなりがち(有期性が薄い)で、かつ内容を厳密化し難く、過剰支援や支援不足に陥ってしまうことも少なくありません。また、支援内容を厳格化できないことが、値付けを難くしている側面もあります。
これに対する解決策は、支援に有期性を持たせることです。有期性を持たせると支援内容を厳格にしやすくなり、成果も高頻度で振り返ることができるため、過剰支援や支援不足の発生頻度をある程度抑えることができます。同時に値付けもある程度の妥当性をもって行なうことができるというメリットも生みます。
一方で、年間計画などの長期スパンで支援を行なうことが難しくなるので、この辺りは顧客の事情にあわせて有期性を選べるようにしてくことが有効と思われます。(例えば四半期ごとの自動更新など)
支援期間を短く区切ることによる売上減はあるものの、顧客の納得感やフェア感を高く保つことができるので、事業方針・計画と照らしあわせながら検討していってください。
支援メニューをセールスイネーブルメントに埋め込む
ここまでで有償・無償支援の境界や、有償メニューの作り方について述べてきましたが、これ以外に注力すべきポイントとして、セールス組織に対する調整・配慮があります。
多くの場合、プロフェッショナルサービスや有償CSを顧客に販売するのはセールスのタスクと位置付けられており、彼らの顧客に対する期待値調整が、のちの「支援過多」や「支援不足」を生む原因となることも多いものです。
このような事態を避けるために、カスタマーサクセス組織は支援メニューを整備後、セールス組織・ユニットに対して、同メニューの詳細を説明するとともに、顧客に正しい期待値調整を行なうようオーダーしますが、時間の経過とともにセールスの言動が、カスタマーサクセスの期待とズレてくることも多いものです。
多くの場合、この原因はセールスの教育機構(セールスイネーブルメント)に支援メニューの正しい説明が反映されていない、もしくは不十分なことにあります。特にスタートアップにありがちな、OJTと口伝のみでのレギュレーションやノウハウが共有される研修形態は同現象を発生させやすいのです。時間の経過に伴い、顧客への期待値調整が適切になされていない気配を感じたら、セールスイネーブルメントに対する確認・介入を迅速に行なうことをお勧めします。
おわりに
今回、前編でBtoB SaaSにおける顧客支援フレームのトレンドを整理し、後編でそれを踏まえた現時点のベストプラクティスを提案してみました。
支援内容やそのプライシングに正解はありませんが、それらはベンダー側の都合だけでなく、トレンドがもたらす市場コンセンサスが大きく影響を及ぼすので、その大きな流れと問題になりそうなポイントを知り、その上でこの辺りは、今後も継続的な注視とPDCAが必要だと思っています。
著者:山田ひさのり
『カスタマーサクセス実行戦略』の著者。ゲームプログラマーとしてキャリアをスタートし、Web開発のPG/SEを経て事業開発にキャリアチェンジ。その後、Sansan株式会社にてCS部門の責任者を歴任。現在はsasket LLCを設立し、2年間で約20社へのCSアドバイザリーを経験。