もしかすると、海外の有力SaaSスタートアップを調べていて、この質問をしてくれましたか?
確かに、Zoom、Dropbox、Asanaなどを見ると、無料施策はコストをかけることなく顧客を獲得できる魔法のように見えます。しかし、無料施策は全てのスタートアップにとって最適なわけではありません。
そこで今回は「SaaSにおける無料施策」についてお答えします。
まず無料施策の定義は、「フリーミアム」と「フリートライアル」に大きく分かれます。
- フリーミアム:一定の“機能”を無料で使える(例:5GB分までファイルの共有が無料)
- フリートライアル:一定の“期間”は無料で使える(例:1ヶ月間、全ての機能を試用可)
そして、それぞれに長所と短所があり、施策が向いているSaaSも異なります。
フリーミアムの長所
無料で使える範囲の機能で価値を提供できれば、ユーザーを増やすための常時施策になりやすい。特にDropboxや Zoomといったネットワークエフェクトが効きやすいサービスは非常に有効です。無料ユーザーが、他のユーザーへ間接的に価値を提供する形になるからです。
フリーミアムの短所
フリーミアムでの価値提供が高ければ高いほど、有料顧客へコンバートするのが難しい。グローバルかつSMB向けのサービスならば、対象顧客数が多いのでコンバージョンレートが低くてもスケールできるでしょう。しかし、国内エンタープライズ向けのサービスだと相性は非常に悪いです。
フリートライアルの長所
見込み顧客へ実験的に導入してもらうことにより、サービスの良さを理解してもらい、正式導入への意思決定を促せる。また、無料期間を定めることで、パイプラインのマネジメントもしやすくなります。相性が良いのは、すべての見込み顧客には営業メンバーをアサインできない段階にあるSMB向けのSaaSサービスです。
フリートライアルの短所
見込み顧客の多くがフリートライアルを行ってしまうと、正式導入の意思決定が結果的に遅れてしまう。意思決定が遅れると、顧客の中での優先順位が変わりやすく、結果的に導入を逃してしまうことにもつながります。
それぞれまとめましたが、施策の内容だけに囚われずに、その後のコンバージョンやセールスといった観点、自社サービスとの相性などから検討するようにしましょう。参考になれば幸いです。