2023年を迎え、マーケットの市況感にも動きが出てきました。リセッション(景気後退局面)の兆候を感じるなかで、海外SaaS企業でもレイオフなどの話題が起こり、コストカットの要請がIT企業を中心に出てきています。国内外のSaaS企業で、今後もプロダクトの見直しや原価圧縮に対する働きかけが起こりうるでしょう。
はたしてこの環境下で、CS(カスタマーサクセス)はいかなる価値を発揮し、その概念を広めていくべきなのでしょうか。グローバルトレンドを踏まえた上で、日本のSaaS企業におけるCSの立ち位置を、ALL STAR SAAS BLOGのCS分野ではお馴染み、メンターの山田ひさのりさんに伺いました。
聞き手は、自身もカスタマーサクセスの責任者として事業成長を牽引した経験を持ち、現在はグロース支援体制の構築などをサポートする、ALL STAR SAAS FUNDパートナーの神前達哉です。
(※この記事はPodcastをテキスト化し、編集・構成したものです。ぜひ併せて配信版もお聞きください!)
CSMの評価はKPIやKGIでなく、生産性の計測から
神前:SaaSベンダーにおいて「利益率の確保」を考える上では、2つの観点があると思っています。一つはクライアント企業による、SaaSプロダクトの導入見直し。もう一つが導入後のチャーンや、導入検討が遅れ、ダウンセルが走っていくといった要因です。ネガティブ要素は2023年3月現在の市況環境で増えており、CSとしても対応が難しいのではないでしょうか。どういったポイントを意識すべきですか?
山田:ARR100億円を超える「メガSaaS」のような企業では、CSMの生産性を計測することにチャレンジすべき、というのが私の意見ですね。CSMの生産性はNet Dollar Retentionやチャーンレート、1人当たりの保持ARRで語られることが多いですが、それだけだと同じARRを持っているCSMがいたとしてもチャーンしなければ、数値上はCSMのパフォーマンスは同じに見えるわけです。
でも、個人的にそれは違うだろうと。良いCSMはもっとARRを持てるかもしれませんし、チャーンしなかったにしても、より生産性が高い活動をしているCSMがいるかもしれない。現時点のKPIやKGIだと、そのあたりが分からないことが多い。なので、CSの生産性の測り方がSaaSにおいては今後のキーになってくると見ています。
海外事例を調べると、そこを研究している人もいらっしゃる一方で、未だに1人当たりARRで片付けようとする風潮もあります。私自身もそこに向き合いたいですし、生産性を大事にするフェーズに突入していくのであれば、見立てとして悪くないのではと考えています。
神前:具体的にどういった指標を持ち、見るべき箇所はどこになりますか?
山田:今、ある大規模SaaS企業でCSMの生産性を計測するプロジェクトに携わっています。詳しくは契約上お話しできないのですが、プロダクトを理想的に利用されてる状態、つまり「プロダクト価値」がちゃんと伝わっている状態をまず定義し、それをプロダクトの利用記録などから簡単な計算式で導きます。
その出した式をCSMが担当しているお客さまごとに当ててみて、平均値もしくは中央値をCSMの評価として数値化したら、同じ保持ARRにもかかわらず良いCSMと悪いCSMで3倍ぐらいパフォーマンスに差があったんですね。そこに居たメンバーの定性的な感覚としても一定の納得感があったようです。
神前:同じARR1億円を担当したとしても、淀みなく使われている1億円と、そうではない1億円では、チャーンリスクやエキスパンションの可能性も含めて、全然異なると。
山田:おっしゃる通りです。淀みなく利用されている方が良いわけですし、そういった支援をしたCSMにこそ高評価を与えるべきでしょう。
プロダクト価値を測定する計算式を導くべし、逃げてはいけない
神前:話は変わって。プロダクト価値の仕様についてですが、これはCSだけでは決められませんよね?
山田:確かにそうですが、CSはヒントを渡せる存在です。「良いお客さまはプロダクトを通して、こういった状態になっている」といった、プロダクトが健全に使われているかが分かるのは、確実にCSだけなんですね。私はそれを「旗を立てられる存在だ」と表現しています。
神前:いまおっしゃった、自分たちのプロダクトが健全に利用されている状態を、山田さんが携わったプロダクト、『Sansan』で置き換えると、どういった言い方になりますか?
山田:『Sansan』は社内で個人が持っている名刺をシェアできるのが大きな機能の一つなんですよね。現在は名刺の共有だけでなく色んな接点を管理するプロダクトに進化しています。そう考えると、『Sansan』の強みであるプロダクト提供価値とは、「自分が持っている人脈を他人に見てもらう、他人が持っている人脈を自分が見る」といった人脈の相互参照を最大化させられることにあります。従来では人脈の相互参照は話さないと分からないことでしたから、『Sansan』が提供した価値によって変化が起こせたわけです。
その上で、どういうサクセスが成り立つかといえば、たとえば、人脈の生成コストを著しくカットできます。これが最も典型的なサクセスパターンですね。プロダクト価値と導かれるサクセスが、私にはしっくり来て見えます。この例で言うと、『Sansan』が提供するプロダクト価値である「人脈の相互参照の最大化」を計算式にした、ということです。
ここまで分かれば、プロダクト価値をお客さまが得ているかどうかは分かります。そこから、実際にサクセスしたかどうかは別の問題がありますが。少なくとも、プロダクトに携わる「中の人」としては、プロダクト価値が届いた状態を公式化することに意味が出てくるのです。それをより推進するためのオンボーディングプロセスやアダプションフェーズとは何か、どういった組織が必要なのか、といった観点をだいぶ考えやすくなります。
神前:その立脚点の有無は、確かに考え方に大きく影響しそうです。
山田:ただ、これもポイントがあって、計算式を出すのが難しくて諦めがちになるんです。諦めた結果として「お客さまに強く寄り添う」とか、「アカウントプランやサクセスプランを作って導入目的を達成しにいく」とかいった、言わば「ゆるい施策」に落ち着きがち。
もちろん、お客さまに寄り添うこと自体は間違いではないので一生懸命やるのですが、そもそもプロダクト価値が分かってない状態でアカウントプランを作ろうとしても、施策がどうもぼやけるんですよね。プロダクト価値が分かって、アカウントプランに紐づける。それをどう利用して、アカウントプランでやりたいことを実現するか。こういった考え方が大事なのです。
神前:まさに、アーリーフェーズの場合はそれを見つけるのが使命ともいえそうです。
山田:そう思いますね。
アーリーフェーズとレイターフェーズ、やるべきことの違いは?
神前:みなさんがよく混乱しがちなのがSAMに関することです。SAMのお客様にまだ7割ぐらいしかヒットしていないが、機運としては導入してくれているような状況になってきたとき、サクセスプランを刷新しないといけない。しかし、そこまでにもリソースは大きく投下しているがゆえに、VCや投資家からも売上のアップを求められる。結果として、ARRやチャーンといった数字を追いかけるのがゴールになってしまう……。
山田:おっしゃる通りだと思います。なので、迷いはじめたらプロダクト価値を表す公式を真剣に考えた方が良いんですが、しっかり考える暇も無く、ただただ事業と市場の拡大の波に乗っかってしまったがために後から苦戦する。これは「あるある」かなとも感じます。
神前:そのなかで、アーリーフェーズとレイターフェーズに分けるとすれば、どういったところに気を付けるべきですか?
山田:アーリーフェーズに関しては、しっくりくるプロダクト価値を探すフェーズです。余計な外圧をまだ感じにくいので、プロダクトの価値と向き合える環境ですからね。大体において、経営者が訴える自分たちのプロダクト価値が的を射ているケースも多いのですが、一方でサクセスとプロダクト価値の結びつきが不明瞭であることも多い。顧客数が少ないために、サクセスの形が分からないのです。
アーリーフェーズに関しては「サクセスをクリアにすること」に重きを置いて、早めに大成功しているお客さまをどう導くのか、偶然に生み出されるのか、いずれにしてもその形をはっきりさせることです。そして、プロダクト価値との結びつきを考えましょう。
レイターフェーズに関しては、成功している顧客数がよほど多くなっているはずですが、外圧によってプロダクト価値が分からなくなっていくケースが多いです。そのため、「プロダクト価値をより明瞭にしていくこと」に重きを置くことでしょう。
神前:チャーンやダウンセルのリスクを最小化していくために徹底できることはありますか?
山田:行動レベルにおいては、自分たちのプロダクト価値を決めて、それを引き出すための業務プロセスを逆算して作っていく発想が、おそらく一番効くと思います。分からない時は積み上げていくしかないので。
アーリーフェーズに関してはプライシングが問題になっているケースが多いです。“最も売れる最高値”に設定することがアーリーフェーズでは多く、SaaSだと強気の値段設定も多いとは思うのですが、それゆえにお客さまが持続しにくいプライシングになるケースも多く、ある種の「見せ玉」になって有名無実化している設計にもなりがち。結果として、エクスパンションが取れないような設計にされているところも多いんですよね。
そうではなく、プロダクト価値とプライシングが結びつけられ、なおかつ従量課金の余地もあるようだと、お客さまも納得してくれることがあり、エクスパンションが伸びやすいという事例も見聞きします。ただ、売れるものがあることが絶対条件なので、シングルプロダクトは戦いにくいです。シングルプロダクトで売れるものを作ろうと思ったら、プロダクト価値と結びついた従量課金モデルが持てれば、CSとしてもだいぶ戦いやすくなります。要は、プロダクト価値を引き出せば引き出すほど「おかわり」があるんですね。
さらにそれがサクセスと結びついているとお客さまにもROIが出て、CSとしては頑張った分だけリターンがある。リセッション時に財布の紐が固くなっていても「必要な投資だ」と思っていただきやすくなります。CSからプライシングに物申すのはなかなか難しいことではあり、実際に動けている会社はそれほど多くないようには見受けられます。理想的なあり方ではありますがね。
神前:弾力性をいかに持てるか。とても大事な観点ですね。
山田:ちなみに、投資家サイドである神前さんはプライシングを相談されるようなことも多いのではないですか?プライシングの柔軟さやストレッチングの余地には、みなさんまだまだじっくり向き合えていないのでしょうか。
神前:おっしゃるように、向き合えてないと感じます。プライシングは「ロジックの構築」と「その単価をいくらに設定するのか」という2つのポイントから成ると考えますが、VCがフィードバックしてサポートできるのはロジックについてだと。単価は実際に市場へ当ててみないと何とも言えない部分もあるでしょうから。
よくあるフィードバックとしては、ロジックへの弾力性の無さです。プランが一つしか無い、3つのプランがあっても差が見えにくい、などですね。お客さまのサクセスに合わせてライセンス数を増やしていくとすると、他の事業部にも拡げるためのアカウントプラン作成が必要です。従量課金制なら、金額をいかに増やせるかのサポートが必要かも分かりやすい。しかし、弾力性が無いプランだけしか武器が無いと、CSとしてもチャーンの阻止といった施策にフォーカスしまいがちで、エクスパンションが望めなかったり、提供価値に対して売上が見合わなかったりというケースも散見されます。
詰めが甘いロジックは再考できる余地があります。海外事例を紹介したり、課金モデルをディスカッションしたりすることが多いですね。
変わるCSの役割、広まるサクセスプランの浸透
神前:「カスタマーサクセスの変化」にテーマを移しましょう。前回、山田さんとPodcastを収録したのは2021年で、この2年間でCSの概念やTHE MODELについても一般化し、SaaSに携わる人ならば知らない人が居ないくらいになってきました。
一方で最近、北米のSaaS、特にACV1億円といった領域を超えていくようなメガSaaSは、顧客セグメントに合わせたチームの体制を組み、望める単価感に合わせた動きをしているようにも見えます。高いACVをいただけるお客さまに対して、CSが携わる「最適な体制」をどう捉えていますか?
山田:おっしゃったようなトレンドは私も感じています。高単価が望めるお客さまに対応しようとすればするほど、アカウントエグゼクティブのような存在が個々に対してアカウントプランを作るのです。それを「サクセスプラン」と言ったりもしますが、もっとも今にはじまった話ではありません。営業組織がお客さまのサクセスを牽引していく体制は、SaaS業界に限らず、金融業や重機メーカーといった高単価が望める業種では行なわれてきました。
一方で、全体的な母数が多いのはあくまでSMBの領域になってきますし、そこで重要なのがCSという存在です。彼らに対してCSが接点を持ち、プラクティスやテクニックが磨かれていき、カスタマーサクセスという概念が生まれた……というのが私の理解です。
GainsightやTotangoといったカスタマーサクセスプラットホームも、そういった母数の多いお客さまをどうマネージしていくのか、CRMとは違う側面からいかにデータを取るべきか、といった発展の流れから生まれてきたと考えています。
しかしながら、サクセスプランを設けて対応していくのも合理性があることですから、元々あった考えに戻っているとも言えそうです。
神前:海外ではCRO(Chief Revenue Officer、最高収益責任者)というファンクションを設けて対応にあたっている企業も増えてきています。ここは日本国内SaaSにとってもまだまだ伸びしろだと感じます。日本のマーケットはエンタープライズ比率が海外に比べても高いです。まだそこに挑むナレッジが貯まっていない印象を個人的には持っています。
山田:それが加速する流れがあるとすると、マルチプロダクト化ですね。セールスフォースの方とよく話をするのですが、色んな会社を買収してグループに入れた上で製品展開していく際に、彼らはブランド名も変えて取り込んでいくんですよね。色んな製品が混在し、色んな人が居るとお客さまも混乱してしまうし、どう導けばいいかが分かりにくくなるので。
まさに「船頭多くして船山に登る」ではないですが、MAなり、自社開発なりで、マルチプロダクト化した時に複数プロダクトを購入してくださるお客さまをいかにマネージできるのかが、次の悩みとして挙がってきます。国内のメガSaaSもプロダクトが増えてきていますからね。施策としては、結局はアカウントマネージャーを中心に据えたアカウントプランニングになっていく。私が観測した事例は多くはありませんが、流れとして確実だと感じます。
サクセスとサティスファクションは大きく異なる
神前:山田さんはこの2年間で、カスタマーサクセスの伝道師として活躍されてきました。
以前にお話をした際に「今ではSaaS以外の企業に対してもサクセスの概念が広がってきている」とおっしゃっていました。具体的にそれを感じる瞬間があったのですか?
山田:サブスクリプションモデルで、プロダクトやサービスを提供している会社さんであっても、サクセスが馴染めない方が一定居るんです。「どこまでをSaaSと呼ぶのか」は議論の余地がありますが、さまざまな企業から「カスタマーサクセスにうちも取り組んだ方が良いのではないか」といった相談が寄せられる機会が増えてきました。中には「ソフトウェアビジネスではないのでは?」と思えるほど境界が曖昧なビジネスに出会うこともあります。
果たして、そういった企業にもサクセスが通用するのか否かに直面し、この2年間向き合ってみると、サクセスがフィットしやすい事業と、フィットしにくい事業があることが見えてきました。後者の例はSIerです。理由としては、顧客の要望を叶えることを使命に置くマインドがあり、サービスやプロダクトの提供価値を非常に特定しづらいからです。他にも、BtoBだけでなくBtoCにおいても馴染みにくい業種はありますね。
神前:どういった業態や条件が関係してくるのでしょうか?
山田:2つのポイントがあります。一つは、プロダクトやサービス価値を、お客さま側ではなく、自分たちにイニシアチブがある状態で明確に語れること。「語れる」が重要です。BtoB SaaSは事業課題からプロダクトを作っていくことが多いので、比較的、プロダクト価値を語りやすい状態にそもそもありますね。
先ほどの例ならSIerは「顧客が望むシステムを安く、速く、作る」といった打ち出しをすることがあっても、これは商売の価値であって、プロダクトやサービス価値ではありません。今日もお話ししたように、プロダクト価値がはっきりしないと、その先のサクセスにも進めません。
もう一つは。プロダクトやサービス価値をお客さまに十分に引き出せているかどうかを計測できること。ソフトウェアの場合はログから分かる部分もあると思うので、そういった計測が可能ならサクセスはフィットしやすいでしょう。
そもそも、なぜカスタマーサクセスが流行っているかといえば、インターネットや技術の発展で、購買後の顧客の活動が計測できるようになってきたからです。お客さまと直接繋がって、承諾さえ得られれば、ユーザーの行動を販売後も追えるケースが増えてきており、サクセスがフィットしやすい領域も広がっているのでしょう。
これら2つのポイントをもとにすると、たとえば、シャンプーやお菓子といった消耗品は購入後の活動が追えませんから、サクセスの概念は馴染みにくいんですね。
「山田さんのプラクティスやメソッドは、BtoB SaaSだけで使えるんですか?」とよく質問されます。確かにBtoB SaaSはプロダクトやサービス価値が特定できて、かつその伝達量が計測しやすいのでサクセスを適応させるに値するんですよね。でも、BtoB SaaSでなくても、前述の2つのポイントを中心に考えれば、自ずと答えが見えてくるのではないかと思います。
神前:今までそれが馴染まない属性のビジネスモデルは、カスタマーサポートのような存在がフロントに立って、販売後の活用促進や対応に当たってきたと思いますが、今後はサクセスの影響を受けて変わってくるのですか?
山田:すごく良い視点で、CSが出現する前のビジネスにおいては、カスタマーサティスファクション(顧客満足)の最大化が至上とされ、お客さまに再度選ばれ続けるポイントだとされてきました。これには反対意見もそれほど無いでしょう。
ところが最近は、満足感だけでなく成果までコミットするスタイルに変わりつつあり、それがカスタマーサクセスという考え方なわけです。ですから、先ほど述べた2つのポイントを持たないビジネスについては、おそらく今まで通りカスタマーサティスファクションを主軸にした方が戦いやすいはずです。
もっともカスタマーサクセスが実現できると長く支持されやすいですから、みなさんはそういった期待感をもってCSに目を向けているんだろうと思いますね。
リセッションとなっても、日本のSaaSマーケットは伸びしろがある
神前:カスタマーサクセスを単なる仕組みや施策ではなく、経営として、あるいは事業として、いかに考えるべきかが問われているのでしょう。
山田:そう思います。もっとも、カスタマーサクセスのアプローチやメソドロジーは、気の利いたものもあるのです。用いるだけで業務効率が上がったり、お客さまの満足度が高まったりするTipsがある。そういう目的でCSを使うといった割り切り方も無くは無いはずです。
ただ、本質的には業務プロセスのデザインをしないと、お客さまにとって気の利いたサポート役で終わってしまうので。
ここまで否定的なことも言いましたが、最後は景気の良い話で終わりましょうか。リセッションが濃厚だといえども、私自身は日本のSaaSマーケットは伸びしろがあると常に感じているんですね。株価やバリュエーションを見たら見劣りしそうですが、労働人口の減少も伴って、SaaSに対する需要は根強く、底が堅い感じがします。
神前さんは投資家の目から見て、この感覚、いかがですか?
神前:SaaSの可能性を世界で考えた時に、最もポテンシャルがあるのが日本だろうと思っています。
山田:そうなんですね。
神前:エンタープライズ比率が高くて大きいこと、ちゃんと事業を伸ばしていけるような会社が多いこと、そして自力があることが理由です。事業を安定的に、地政学的にも環境的にも伸ばしていける技術力がある環境があります。
今はどうやってそれを効率化していくのかという圧力があり、インセンティブとしても大きいと個人的には感じています。SIerの方々もおっしゃるのですが、SaaSを担いでコンサルティングに乗り出すケースも増えていると聞きます。既存SaaSの組み合わせによって稼いでいこうという考えですね。
SaaSの裾野が広がってきていると感じますし、たとえば、マネーフォワードさんの決算資料を見てもSaaSの普及率が増加傾向にあるレポートが上がってきました。まだまだ白地が全然あるのだと思います。
著者:山田ひさのり
『カスタマーサクセス実行戦略』の著者。ゲームプログラマーとしてキャリアをスタートし、Web開発のPG/SEを経て事業開発にキャリアチェンジ。その後、Sansan株式会社にてCS部門の責任者を歴任。現在はsasket LLCを設立し、2年間で約20社へのCSアドバイザリーを経験。