既存顧客の体験向上に集中する戦略が画期的な成長をもたらす
McKinsey&Company「Experience-led growth: A new way to create value」の一部を日本語で紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
大企業がカスタマー・エクスペリエンス(CX)へ集中することが画期的な成長の宝が狙っていることを解説したマッキンゼーの記事。この記事は、大企業CXにかかわるSaaSでエンタープライズのセリングに使えるストーリーなのはもちろんですが、SaaSスタートアップ経営においても、「既存顧客に成長の宝が埋まっている」と気づかせてくれる良い記事だと思います。
個人的に良いと思った部分を、以下に抜粋します。
- 世界的な大企業は、共通してイバラの道を歩んでいる
航空会社、保険会社、通信会社など既存の大手企業はすべて、自社のサービスがコモディティ化する中で、持続可能で利益を生み、高い成長を実現しようと苦戦しています。多くのケースで、パーソナライズ化されたサービスで顧客を狙う、敏捷性の高いデジタルネイティブ企業による破壊に直面しています。しかし、多くの大手企業は、積極的に新規顧客を獲得することで対抗しようしています。しかし、新規顧客に執着するあまり、最も強力な競争優位性である「巨大な顧客基盤」をないがしろにしています。 - 既存顧客の価値とは?
マッキンゼーの研究から、既存顧客の重要性を示す2つの数字があります。1つ目は、「既存顧客1社を失うことは、新規顧客を3社獲得しないと補填できない」ということ、2つ目は「世界で最も成功している成長企業は、コアビジネスによって価値の80%を得ている」という事実です。 - CX戦略を測定する財務指標とは?
最も破壊的で、俊敏な競合他社は、積極的に既存顧客をアトラクトする特徴的なカスタマー・エクスペリエンス(CX)を提供する強力な戦略を磨き上げてきました。これにより顧客は行動を変え、この行動の変化は、Share of wallet(顧客予算内シェア)、リピート購入、売上継続率(NRR)などの具体的な財務指標によって測定されます。 - 黙って顧客の声に耳を傾ける
ある通信大手企業は、存亡の危機に直面していました。競合の値下げキャンペーンで顧客が流出していったのです。これに対抗しようと、顧客の囲い込みをしようとしたが、裏目に出て、さらに多くの顧客が流出してしまいました。さらに新規顧客には目を引くキャンペーンを打ち出したが、既存顧客は対象外としたため、不満がさらに高まってしまった。そこでCEOは、コールセンターにかかってくる顧客からの電話に耳を傾けるようにしました。顧客の不満の声に彼は衝撃を受けました。そこで、顧客のペインに取り組む戦略の方向転換をすることに集中しました。その結果、顧客満足度は業界最下位からトップへ急上昇し、解約率は75%削減。3年間で売上は2倍に拡大し、売上成長率も競合の3倍を上回りました。 - エクスペリエンス・レッド成長戦略の3つの柱
この顧客体験向上をコアにすえる成長戦略は3つの柱によって成り立っています。- クリアな成長への野心と目的、CXを価値を結びつけるロードマップを設定する
- カスタマージャーニー、プロダクト・サービス、ビジネスモデルの再設計を通じて、断固たる行動で事業の変革に(経営が)コミットする
- 効果的なCX効果測定によって、組織カルチャー、組織の能力、テクノロジー基盤、ガバナンスを変革を可能にする
PMM初心者のためのプロダクトマーケティングガイド
Bessemer Venture Partners「Product Marketing 101: A beginner’s guide to building the function」の一部を日本語で紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
プロダクトマーケティングは、「開発したプロダクトを売上に変換」するための重要な役割です。このBessemer Venture Partnersの記事では、アーリーステージのSaaSスタートアップのために、優れたプロダクトマーケティングとはどのようなものか?初期のプロダクトマーケター(PMM)に何を求めるべきか?を事例を交えて解説しています。
- 創業初期のPMM担当者の主な業務
- 市場調査:
コアターゲット、そのペインポイント、ニーズを理解する。 - ポジショニング:
狙ってる市場における買い手の問題を解決するために、自社のプロダクトがどのようにユニークかつ適しているかを明確にする。 - メッセージング:
セールスやマーケティングのさまざまなシナリオで使用するトーキングポイントや推奨する言葉を定義し、主要な各バイヤーペルソナに合わせて作り込む。 - GTM戦略:
プロダクトの立ち上げ、ユーザーアダプション、リテンション、エンゲージメントの促進を行う。 - セールス・イネーブルメント:
ソート(思想的)リーダーシップ記事、ケーススタディ、デモなど、ファネルの各段階に応じたマーケティング資産を構築する。 - 顧客からの フィードバック:
カスタマー・エクスペリエンスを向上させ、より高度なプロダクトの意志決定を行うために、定性的および定量的なデータを収集する。
- 市場調査:
- PMMが管理する3つマスト文書
- メッセージング文書:
プロダクトのターゲット、市場動向、ベネフィット、差別化について説明する。さらに、メッセージング文書には、プロダクトを説明するための推奨する言葉と、そのように説明することのメリットも含まれる。 - ペルソナ文書:
プロダクトのコアターゲット・肩書き、重要な優先事項、そしてセールスがバイヤー接触する際にそのバイヤーが注力している業務責任を明らかにする。 - キャンペーン文書:
マーケティングキャンペーンの目的や目標、KPI設定・測定、展開チャネル、ステークホルダーの責任などを明確にしたプロジェクト概要をまとめる。
- メッセージング文書:
- SaaSプロダクトの違いによる3タイプのPMM
- エンタープライズPMM:
異なる業界やバイヤーペルソナにポジショニングを適応させる。また、セールスイネーブルメントに重点を置き、大規模なインサイドセールスチームの場合、営業チームのプロセスに並走する。 - PLG PMM:
主にプロダクト自体の立ち上げや成長イニシアチブをサポートする。アクティベーションポイントとアドプションを促進し、ユーザーをプロダクトに深く入り込ませるメッセージングを開発する。このタイプのPMMは、プロダクトと営業部門をつなぐAPI。 - テクニカル/ディベロッパーPMM:
技術者・開発者向けに詳細なチュートリアルやデモを作成する。彼らは開発者の言葉を話し、専門用語は使わずストレートに話す。非常に技術的なコンセプトを深く理解し、それがどのように機能するかを明確に説明できる。セールスエンジニアとPMMのブレンドのような特徴がある。
- エンタープライズPMM:
- プロダクトマーケティングリーダーを採用すべきタイミング
- アーリーアダプターからスケールの大きな成長へと移行する準備が整ったとき
- プロダクトのローンチ・機能リリースが管理しきれないと感じたとき
- 新たなマーケットへの参入を目指すとき
- 優れたプロダクトマーケティングリーダーの5つの特長
- プロダクトマーケティングが初めてではない
- 売上を向上させるノウハウ・方法を理解している
- 技術的なコンセプトやプロダクトの特長をクリアに説明できる
- 市場を歴史やトレンドを含めて熟知している
- 創業者やCクラスとの会話の相性が良い
あまり議論されていない3つの指標
SaaStrのYoutube「Metrics That Matter in 2024 and Will IPOs Be Back」の一部を紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
SaaStr CEOのJason Lemonは、SaaS企業にとって重要だが、あまり議論されていない3つの指標について語っています。主な要点は以下の通りです。
- 新規顧客数の純増
この指標を追跡することが重要なのは、ARRや成長率は将来の可能性を表していないからです。ARRは成長していても新規顧客数の純増がない場合、将来的にARRの成長は減速します。 - 成長は依然として重要
成長性は収益性よりも重要です。収益性があるだけでは価値があるとは限りません。ARR25億ドル、成長率12%、利益率39%のVeevaは12倍のマルチプルが付いている一方、同額のARRで成長率6%のDropboxは2倍のマルチプルに過ぎません。 - IPOのハードルが高くなった
KlayvioとRubrikはそれぞれARR6億ドル、7.8億ドルで上場しましたが、ともに成長性の高い優良企業です。上場するためのハードルが高くなっています。
AIはVertical SaaSに死をもたらさない
LinkeIn内、Andrew Ovedの記事「AI is Not the Death of Vertical SaaS」の一部を紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
Reformation PartnersのAndrew Ovedによる記事より、AIの発展がもたらすVertical SaaSの展望について解説された記事です。
- AI の発展によるSaaS企業へのリスクは次のようなものがあります。
- ノーコードまたはローコードで、サードパーティから同等のソフトウェアを購入する価格よりもはるかに低いコストで独自の社内ソフトウェア ソリューションを構築できる。
- 社内ツールをよりシームレスに構築できるこの新しい機能の結果、チャーンが増加し、価格圧縮が起こり、その結果、SaaS の価格決定力がデフレ状態になる。
- 一方で、Vertical SaaSの導入企業の多くには技術チームや社内能力がありません。
- 建設現場に足を踏み入れると、付箋やホワイトボードがまだぶら下がっているのが目に入る。社内にもIT人材が日即死文字通りの紙とペンから、AI を使用して社内で独自のツールを構築することは難しい
- AI によってより少ないリソースで社内製品の構築が容易になった場合、同じ効率の利点がサードパーティのVertical SaaSにも適用されますが、その規模はさらに大きくなり、コストメリットが大きいです。
サイバーセキュリティ
- Wiz - わずか18カ月でARR0からARR $100Mを達成した、クラウドセキュリティ分野のSaaSデカコーン。シリーズEで$1Bを調達。今回の評価額は$12Bにアップ。投資家はAndreessen Horowitz、LightSpeed Venture Partners、Thrive Capital、Greylock、Sequoia Capitalなど(TechCrunch)
- Corelight - ネットワーク機器のトラフィックを分析し、外部からの攻撃などをリスク状況を可視化・検知するNDR(Network Detection and Response)分野のSaaS。シリーズEで$150Mを調達。投資家はトップVCのAccelの他に、戦略投資家であるCisco InvestmentsとCrowdStrike Falcon Fundも出資(Fintech Global)
- TXOne Networks - サイバーフィジカルシステム(CPS)セキュリティ分野を代表するSaaS。シリーズBエクステンションで$51Mを調達。投資家はTGVest Capital、Pegatron Groupなど(PRTimes)
- Oasis Security - スマホやIoTデバイスなどの、人間以外のID認証に特化したサイバーセキュリティSaaS。シリーズAエクステンションで$35Mを調達。評価額は前回から2倍の増加。投資家はAccel、Cyberstarts、Sequoia Capitalなど(CTech)
- SafeBase - セキュリティレビュー業務を摩擦のなく、自動化するSaaS。シリーズBで$33Mを調達。投資家はTouring Capital、Zoom Ventures、NEAなど(Fintech Global)
- Traceable AI - YoY 300%で急成長するAPIセキュリティSaaS。$30Mを調達。投資家はIVP、Citi Ventures、Geodesic Capitalなど(Yahoo! Finance)
- LayerX Security - SaaSや生成AIアプリが普及する現代の企業向けブラウザセキュリティSaaS。シリーズAで$26Mを調達。 投資家はGlilot+、Dell Technologies Capitalなど(CTech)
- Aikido - Snykの競合となる、ソフトウェア開発者向けサイバーセキュリティSaaS。シリーズAで$17Mを調達。投資家はSinglar、Notion Capitalなど(TechCrunch)
AIファースト
- CoreWeave - 生成AIブームを裏で支えるGPUインフラプラットフォーム。$1.1Bを調達。投資家はCoatue、Fidelity、Altimeter Capital(TechCrunch)
- Holistic AI - ディープマインド出身者が設立したフランス発の生成AIスタートアップ。エクイティと転換社債で総額$200Mを調達。評価額は$370M。投資家はAccel、UiPath、Google元CEO エリック・シュミット氏(The Next Web)
- Rad AI - 放射線科医向け生成AIガイドツール。シリーズBで$50Mを調達。投資家はKhosla Ventures、WiL、Artis Venturesなど(TechCrunch)
- RunPod - カスタマイズAIアプリ開発を支援する開発者向けSaaS。シードラウンドで$20Mを調達。投資家はIntel CapitalとDell Technologies Capital(Silicon Angle)
- Lamini - エンタープライズがAIモデル開発・実装を支援するSaaS。$25Mを調達。投資家はAMD Ventures、Amplify Partners、First Round Capitalなど(Silicon Angle)
- DatologyAI - AIモデル用の訓練データのキュレーションプラットフォーム。シリーズAで$46Mを調達。投資家はFelicis、Amplify Partners、Amazon Alexa Fundなど(Silicon Angle)
エンタープライズ
- Lexion - 契約ワークフロー自動化SaaS。DocuSignが$165M(調整の可能性あり)で買収を発表。LexionはこれまでKhosla Venturesなどから累計$35.2Mを調達(DocuSign)
- Transcarent - 医師からの診断や薬の処方など、企業の従業員が総合的な医療サービスを迅速に受けられるようにするバーチャルケアSaaS。シリーズDで$126Mを調達。評価額は$2.2B。投資家はGeneral Catalyst、7wireVenturesなど(Yahoo! Finance)
- Atlan - 社内外の多様なデータを統合管理するAIガバナンスSaaS。シリーズCで$105Mを調達。評価額は$750M。投資家はGIC、Salesforce Ventures、PeakXVなど(Reuters)
- Legion Technologies - 時給ワーカーを抱える企業向けのワークフォース管理・最適化SaaS。Riverwood Capital、Norwest Venture Partnersなどから$50Mを調達(Yahoo! Finance)
- Beehiiv - 次世代EメールニュースレターSaaS。シリーズBで$33Mを調達。投資家はNEA、Lightspeed Venture Partnersなど(TechCrunch)
- Panax - 企業のキャッシュフロー管理業務を自動化するAI×SaaS。$15Mを調達。投資家はTeam8、TLV Partnersなど(Fintech Global)
バーティカル
- Stonal - ESGレポーティングや設備投資計画などを支援する不動産データSaaS。戦略投資家として、13,000社以上の顧客基盤を持つ不動産SaaS企業 Aareonから€100Mを調達(CTOL Digital Solutions)
- AiDash - AI・衛生データを活用したインフラ保守・運用支援SaaS。シリーズCで$58.5Mを調達。投資家はLightsmith Group、丸紅など(FinSMEs)
- Privateer - アップル共同創業者スティーブ・ウォズニアックが設立した宇宙データプラットフォーム。シリーズAで$56.5Mを調達。投資家は宇宙特化VC Aero X Venturesなど。今回の調達に合わせて、Orbital Insightの買収を発表(Reuter)
- Peregrine - 州政府など公共機関向けにセキュアなデータインテグレーションを可能にするSaaS。シリーズBで$30Mを調達。投資家はFriends & Family Capital、Fifth Down Capitalなど(FinSMEs)
- Opmed.ai - 医療機関の手術室オペレーションを最適化するAI×SaaS。NFX、Grove Venturesなどから$15Mを調達(Med-Tech Innovation)
- Blackwell Security - ヘルスケア産業特化のサイバーセキュリティSaaS。General Catalyst、Rally Venturesなどから$13Mを調達(Fintech Global)
- クラッソーネ - 専門の解体工事会社と施主をマッチングするサービスで、最短1分で解体工事の概算費用を把握できる「解体費用シミュレーター」なども提供。総額約12.2億円を資金調達。投資家は環境エネルギー投資、イグニション・ポイント ベンチャーパートナーズ、大和ハウスグループグロースファンド、JPインベストメント、アニマルスピリッツ(PR Times)
- アンドパッド - クラウド型建設プロジェクト管理サービス「ANDPAD」を提供。住宅・不動産業界に特化したマーケティングオートメーションツール「Digima」を運営する株式会社コンベックスをグループ会社化し、みずほ銀行から借入により12億円の資金調達を実施(PR Times)
- イクシアス - 店舗型ビジネスの業務効率化・利益最大化支援するAI搭載店舗マーケSaaSを提供。プレシリーズAで5.1億円を調達。投資家はDNX Ventures、Spiral Capital(PR Times)
- Connectiv - 企業向けNFT生成・管理プラットフォーム「NFT Garden」を提供。株式会社リヴァンプより資金調達を実施(PR Times)
- エムネス - 医療機関向けの遠隔画像診断支援サービス、並びに医用画像を中心とするデータの管理・共有のための医療支援クラウドサービス LOOKRECを提供。MEDIPAL Innovation投資事業有限責任組合から資金調達(PR Times)