プロダクトの成功を左右する「WHY NOW?」の12パターン
STARTUPS UNPLUGGED「Why Now: Timing and Product Success」の一部を日本語で紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
スタートアップの急成長には、戦略や実行と共に、必ず”タイミング”に大きな影響を受けます。Facebook、Shein、Spotify、AWSなど、現在の巨大なテクノロジービジネスの成功の背景には、強力なWhy Now?があります。日本でも日本でも電帳法改正による、請求書周りのSaaSの急成長は身近な例です。ここでは、この記事で紹介されている、Why Now?の12個のパターンについて紹介します。プロダクト企画の際に、深く調査・考察するための指針として参考になると思います。
- テクノロジーの進歩
特定のプロダクトを構築する能力を飛躍的に向上させるテクノロジーの出現。今まで高過ぎる、遅過ぎる、不可能だったものが、安く、速く、可能にします。ムーアの法則のように予測可能な漸進的な進歩もあれば、AIのような急進的な進歩もあります。 - 社会やヒトの行動の変化
カフェイン、たばこ、ドラッグ、エンタメなど。ヒトの習慣には普遍的な行動もありますが、急速に広まる中毒性のある習慣の変化もあります。アメリカでたばこが何十年も続いた後に衰退し、この習慣は一部VAPE(日本だとシーシャ)のような別のものに代替されることがあります。 - 法律や規制の変化
法律や規制により、一般消費者や企業の活動が制約されたり、緩和されたりするタイミング。昨今のアメリカでのマリファナの合法化や前出の電帳法改正は、この好例と言えると思います。 - デバイスの急激な普及
スマホ普及と技術革新により、GPS、モバイル通信、オンライン決済、評価システムのようにライドシェアを可能にする技術要素が広がりました。UBERやLyftは、スマホ出現以前から技術的には可能でしたが、このデバイスの急速な普及が可能にした好例と言えると思います。 - ネットワークの普及
デバイスの普及と異なり、ネットワークインフラの普及。例えば、ソーシャルメディアの普及は、新しいコンテンツ流通、売買を可能にしました。ネットワークの普及により、ヒトは直接会わずに信頼関係を構築し、新たな売買活動を可能にしました。 - 人々の経済状況の変化
特定のグループの人々が急に豊かになったり、貧しくなるケースもWhy Now?の要因になります。新しいビジネスモデルが可能になるかもしれないし、既存のビジネスモデルが新しい場所で可能になる可能性があります。 - 流通形態の変化
新しい流通形態は、新しいビジネスを可能にします。例えば欧州で印刷機が普及したことで、書籍が多く出版されるようになり、プロテスタントによる宗教改革の思想が広まりました。オンラインコミュニティは新たな流通の機会になります。 - 資本へのアクセスしやすさの変化
資本へのアクセスは時代や国によって異なります。政府、ベンチャー投資家など、誰が資本のソースになりそうなのか?金利の影響は、投資家の投資意欲に大きく影響を与えます。資本量によって可能になるビジネスも存在します。 - 組織形態の変化
自律分散型組織(DAO)のような新しい組織形態は、ビジネスの在り方も大きく変わります。固定費が低くなり、よりプロダクトを安価に生産できる可能性があります。 - タレントの獲得しやすさ
AI、医療、起業家精神など、専門分野における新たな専門家の輩出されます。その人材はどれくらいのスピードで輩出され、人材アクセスのしやすさ・しにくさはWhy No?の要因になります。 - 人口動態の急激な変化
人口動態は通常ゆっくりで予測可能ですが、移民、戦争による難民、パンデミックなどで突発的なシフトはWhy Now?になりえます。 - クライシス(危機)の発生
突然の変化により、それまで存在しなかった機会が開かれることがあります。例としては、コロナによるリモートワーク、EC、遠隔診療などの急激な増加が上げられます。
企業向けAIアプリでチャーンされないためのプロダクト戦略 7選
Bessemer Venture Partners「Seven product strategies to prevent churn for B2B AI app leaders」の一部を日本語で紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
AIモデルのAPI民主化によって、B2Cを中心にAIスタートアップの参入障壁が下がり、競争環境は激化しています。最近のアメリカでは、Tomasz Tunguz氏の最新のブログによると、AIスタートアップの成長率は大きく鈍化し、成否に差がみられるようになってきています。では、B2B(企業向け)AIアプリケーションで解約されずに持続的に成長するにはどうしたらよいでしょうか?このBVPによる記事では、彼らの投資先企業の事例から解約されないためのプロダクト戦略を7つ紹介しています。
- インテグレーションや業務提携によって、既存のプラットフォームに組み込む(例. Sixfold)
- ユーザーのいる場所で出会う機会を作る(例. Databook、RILLA, datasnipper, Scribe)
- ユーザーの欲する成果物をダイレクトに提供する(例. EvenUp)
- ワークフローの特定部分を抑えて、ICPとなるユーザーに更なる価値提供をする(例. DeepL)
- 独自ないしは新しいデータ技術でMoatを築く(例. Databook)
- テキスト、画像などのマルチモーダル化対応をする(例. Jasper)
- アーキテクチャによるネットワーク効果を最大化する(例. Fieldguide)
AIに秘めている1兆ドルのチャンス
The Peel with Turner NovakのYoutube「Aaron Levie | The $1 Trillion AI Opportunity, Stories From Early Days of Box」の一部を紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
BoxのCEOであるアーロン・レヴィは、AIに秘めている1兆ドルのチャンスについてポッドキャストで語りました。以下は主なポイントです。
- B2Bソフトウェアにおいて、AIはカテゴリーを改善する役割を果たし、SaaSを破壊するのではなく補完します。
- Boxはお客様にさらなるインサイトと価値を提供するためのAI活用方法を模索しています。
- BoxにはAIの未来を考え、取り組む専任チームがあります。
- AIが仕事をより生産的にしても、多くの企業はそれを活用してよりアウトプットを最大化するでしょう。そのため、AIは仕事を奪うことはありません。
- 競争が激しい世界では、生産性向上によるコスト削減を選択しても、競争相手はその生産性を競争優位として活用するでしょう。
- 決定を下し、実行するAIエージェントは将来的に興味深い分野です。AIがお客様を特定して実際に連絡するユースケースなどが一つの例です。
- 2000年代はクラウドとSaaSの影響を過小評価していました。インフラが10倍安くなり、利用がお手頃になると、対象顧客の数が拡大しました。AIにも同様の効果が期待されます。
指標に惑わされるな。FCFの重要性と市場ポジショニング
OnlyCFO's Newsletter「Blinded by Metrics」の一部を紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
今回もOnly CFOによる、財務指標を悪用することにより会社の実態や事業そのものに誤解を招くということへの警鐘を鳴らす記事を紹介いたします。ソフトウェア企業は特に数値メトリクスによるコミュニケーションがしやすいので注意が必要です。
- 各企業は自分の物語に沿ったイメージを描くために、財務指標(メトリクス)を用いたコミュニケーションを行う。多くの場合、意図的ではないが誤用や誤解を招いているケースが存在する。
- 組織のすべてのリーダーが、指標の意味と、指標が意思決定にどのように作用を本当に理解していることが重要
- SaaS事業のメトリクスは様々なものがあるが、これらの指標はすべて、企業が存続期間にわたって 1 株あたりのフリーキャッシュ フロー (FCF) を生み出す可能性を理解するためのものである。一株当たりの FCF の可能性は、下記の3要素に分解できる。
- 収益の増加
- フリーキャッシュフローマージン
- 株式の希薄化
- ソフトウェア会社の高いPERは、巨額のフリーキャッシュフローマージンを生み出すことで正当化される。しかし、収益性の低いソフトウェア企業の多くは、収益性の低さを高収益の成長が相殺するという問題に直面している。
- 2021年のSaaS評価は成長スピードのみを重視していた。利益は後からついてくるとし、粗利益率の低い企業を粗利益率の高い企業と同じように評価していたことが大きな過ちだった。
- 大多数の投資家は愚かではない。企業の潜在的な利益を評価するために、粗利益やユニットエコノミクスなどに注目するが、20% 以上の FCF マージンを達成し、それを継続することは非常に困難になりつつある。
- 考察すべきポイントは成長性と収益性が過年度でどうなっているか、そしてFCFマージンが継続するかどうか。
- 顧客(収益)維持率はどの程度強くなっているか。
- Expansionの機会(NRR)は何か。
- 市場におけるポジショニング、価格決定力の有無。
バーティカル
- Restaurant365 - レストラン向けに会計、在庫管理、従業員管理から分析ツールまで提供するオール・イン・ワンSaaS。評価額$1B超で$175Mを調達。投資家はICONIQ Growth、KKR、L Cattertonなど(TechCrunch)
- Canopy - 『2024年最も急成長したソフトウェア100トップ100』に選出された、会計士・会計事務所のための会社全体の業務支援SaaS。オーバーサブスクライブで$35Mを調達。投資家はTen Coves Capital、Ankona Capitalなど(Fintech Collective)
- Agora - イスラエル発の不動産投資版の「Carta」。シリーズBで$34Mを調達。投資家はQumra Capital、Insight Partnersなど(TechCrunch)
- Gorgias - EC事業者特化のカスタマーサービス支援AI×SaaS。シリーズC2で$29Mを調達。投資家はSaaStr、Alven、Shopifyなど(Yahoo!Finance)
- Sona - 病院、ホテル、飲食店、小売などの現場のフロントラインワーカー管理モバイルSaaS。アメリカ展開に向けて、シリーズAで$27.5Mを調達。投資家はFelicis、Gradient Venturesなど(TechCrunch)
- Sift Healthcare - 医療機関向けの決済・収益サイクル管理SaaS。シリーズBで$20Mを調達。投資家はB Capital、Allos Venturesなど(The SaaS News)
- Purple Dot - イギリス発の消費者ブランド・小売事業者向けECプレオーダー&ウェイティング管理プラットフォーム。シリーズAで$10Mを調達。投資家はOpenOcean、Commerce Venturesなど(tech.eu)
AIファースト
- PolyAI - 英・ケンブリッジ大学からスピンアウトした、エンタープライズ向け音声自動化AI。シリーズCで$50Mを調達。投資家はBessemer Venture Partners、NVIDIA Venturesなど(Silicon Angle)
- SmarterDx - 病院の収益増加を支援する医療費請求のレビューAI。シリーズBで$50Mを調達。投資家はBessemer Venture Partners、Transformation Capitalなど(PR Newswire)
- Steno - 訴訟を担当する弁護士や法務チーム向けに法廷向け報告書作成・分析AIを活用したサービス。シリーズBの追加ラウンドで$46Mを調達(LawSuites)
- Voxel51 - 。$30Mを調達。投資家はBessemer Venture Partners, a Michigan-based visual AI startup, raised a $30 million round led by Bessemer Venture Partners.
- LanceDB - 画像、音声、テキストなどのマルチモーダルAIアプリ開発のためのベクトルデータベースSaaS。シードで$8Mを調達。投資家はCRV、Y Combinatorなど(Silicon Angle)
エンタープライズ
- Sigma - Snowflakeを共同創業したSutter Hill VenturesのEIRが設立した、コラボレーション型データ分析SaaS。シリーズDで$200Mを調達。投資家はSpark Capital、Avenir Growth Capitalなど(TechCrunch)
- Weka - AIブームの裏側を支えるデータパイプライン管理SaaS。シリーズEで$140Mを調達。評価額はポストマネーベースで$1.6B。投資家はValor Equity Partners、NVIDIAなど(TechCrunch)
- CRMBonus -ブラジル発のマーケティング・オートメーションSaaS。シリーズBで$75Mを調達。投資家はMary Meeker率いるBondとValor Capital(Fintech Collective)
- Data Zoo - オーストラリア発のデジタルID認証SaaS。シリーズAで$35Mを調達。投資家はEllerston Jaade fund(Business News Australia)
ソフトウェア開発
- Vercel - クラウドアプリケーション開発プロセスをシンプルにする開発者向けSaaS。シリーズEで$250Mを調達。評価額は$3.25B。投資家はAccel、CRVなど(Reuters)
- Harness - 昨年ARR $100M越えを果たした開発者向けソフトウェアデリバリーSaaS。IPOに向けて全額融資で$150Mを調達。調達先はSilicon Valley BankとHercules Capital(TechCrunch)
- Alkira - オンデマンド型でネットワークインフラを拡張性高く、シームレスに提供するSaaS。シリーズCで$100Mを調達。投資家はTiger Global、Sequoia Capital、Kleiner Perkinsなど(Fintech Global)
フィンテック
- Cover Genius - 組込型インシュアランス(保険)SaaS。グローバル展開を加速するために、シリーズEで$80Mを調達。投資家はSpark Capital、Dawn Capitalなど(Insurtech Digital)
- Fintech Farm - 新興国の中堅金融機関がフィンテックサービスを提供するためのBanking as a Service。シリーズBで$32Mを調達。投資家はNordstar、Bank of Georgia(Sifted)
SMB向け
- Squarespace - ARR $1B(約1,500億円)越えのノーコード・デザインSaaS上場企業(NYSE: SQSP)。欧州PE大手ペルミラが全額キャッシュで$6.9B(約1兆円)で非公開化の合意(TechCrunch)