米国上場SaaSの2024年Q1決算からみるSaaSの安定化傾向
Sammy AbdullahのMedium「Q1 SaaS metrics show stabilizing trends」の一部を日本語で紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
米上場SaaS 62社の最新決算のまとめ記事。成長は鈍化しつつも、営業黒字化や、赤字でも効率的に売上成長をしていている傾向が見て取れます。
- 24年Q1売上の中央値は$167M。年間換算で$669M(約1,000億円)。
- 年度成長率の中央値は19%。2022年Q1が36%だったので、成長はかなり鈍化している。
- 全体の37%のSaaS企業は営業利益が黒字化。営業利益率の中央値は-11%でまだ赤字中心。
- まだ赤字の企業が多いが、直近の売上成長は筋肉質化。1米ドルのバーンに対して、0.88米ドルの売上創出ができている。
- 全体の47%のSaaS企業はNRR(売上継続率、NDR)を開示。NRRの中央値は112%で2022年、2023年より下がっているが、直近は安定してきている。
- Rule of 40は時代遅れの指標になっており、利益率、キャッシュ効率、回収期間がより重要になってきている。
SaaS全体成の成長が鈍化する一方、成長が加速するDatabricks
Theory Ventures内の記事、Tomasz Tunguz「Databricks' Accelerating Growth」の一部を日本語で紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
米上場SaaSが安定化・低成長の一方、AIブームの追い風を受けるDatabricksが、4半期売上$600M(年換算で$2.4B、約3,600億円)に拡大していることを公表しました。
YoY成長率は60%と、2023年同時期が50%なので、この規模で成長がさらに加速していることがわかります。NRR140%と米国SaaSトップクラスの実績を示しています。Theory Venturesのトマス・ツングス氏はこの成長率は競合のSnowflakeの2倍の成長であり、売上マルチプルは14.5倍と推定しています。
SaaSでMOATを築くための方法
Jason M. LemkinのYoutube「10 Ways Build a Moat in SaaS (Updated)」の一部を紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
SaaStrの創設者であるJason Lemkinは、SaaSにおいてMOATを築くための方法について、10のポイントを話しています。
以下、そのうちのいくつかのポイントをご紹介いたします。
- ブランド
購入者の80%はカテゴリーリーダーか2位のプロダクトを選びます。ARRが数億円に達すると、ミニブランドとして認識され始めます。NPSを測定し、ブランドのプロモーションに努めることが重要です。 - データ
分析やダッシュボードを提供することが顧客がプロダクトを使い続けたくなる良い方法の一つです。 - パートナー
強力なAPIを構築し、パートナーと良好な関係を築くことは、自社のポジションを強化します。 - インテグレーション
他のソフトウェアベンダーと優れたインテグレーションパートナーを持つことは、拡販やユーザーへの提供価値を強化します。 - エージェンシーおよびインプリメンテーションパートナー
SIやその他のエージェンシーと話し、実装パートナーになってもらうことができると拡販を強化する重要なパートナーになります。 - 長期契約
顧客に3年以上の契約を結ばせることは有効です。 - 資本を活用して他のセグメントに進出する
弱いセグメントであっても、多くのセグメントに存在することで自社のプレゼンスが向上します。 - エンタープライズベンダーになる
カテゴリー内で最も信頼され、最も安全な存在になることで顧客に選ばれる理由の一つになります。
AIエージェントの普及はアカウント数での課金を終わらせるか?
Clouded Judgement「Clouded Judgement 6.14.24 - Is Seat Based Pricing Dead?」の一部を紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
今週もJamin Ballの記事よりポイントを抜粋しています。
- 歴史的に、クラウドソフトウェアビジネスは、ユーザー数に基づいて定期的な料金を請求していました。その後、TwillioやSnowflakeなどインフラストラクチャ / 開発ツール ソフトウェア企業は、消費量に基づく価格設定モデルを採用。
- インフラ開発ツールがユーザー課金を取り入れると、
- 『提供価値」と「請求金額」が一致せず、請求額が低い状態に据え置かれる
- 1ユーザーが製品を使用すればするほど、収益は増えずに限界費用が増加するため、ユニットエコノミクスが破壊される
- 従来のアプリベースのソフトウェアでは、使用量はライセンスの数に依存していた。それは1 人でできる作業には限界があり、採用が増えてライセンス数を増やすと、使用量は直線的に増加していく。
- さらに、マルチプロダクト戦略で、エンド ユーザーに提供する製品 SKU を増やすと、コンパウンドに収益が増加します。しかし、AI が当たり前のようにビジネスで活用されてくると、状況は一変します。AI によって、「より少ないリソースでより多くのこと」を行えるようになる、つまり、1ライセンスあたりの利用価値が増大するとACV が圧迫され、利益率が低下していく。
- すでにZendeskはAIボットによって完全に解決された自動チケットの数に基づいて価格設定をスタートしており、プライシングはハイブリットに移行している。
AIファースト
- AlphaSense - Google、Microsoftも出資する、AI活用型マーケットデータ・インテリジェンスSaaSユニコーン。評価額$4Bで$650Mを調達。投資家はViking Global Investors、BDT&MSD Partners。今回の調達資金の一部で未上場マーケットデータSaaS企業Tegusを$930Mで買収(TFN)
- iGenius - OpenAIなどと競合する、イタリア発生成AIモデル開発スタートアップ。評価額€1.7Bで$€650Mの調達活動を実施中。投資家はAngel Capital Management、Eurizon Asset Managementなどがコミット済み(Yahoo! Finance)
- Mistral - フランス発の生成AIモデル開発ユニコーン。評価額€5.8Bでエクイティで€468M、デットで€132Mを調達。投資家はGeneral Catalyst、Andreessen Horowitzなど(tech.eu)
- Anterior - 医療保険の承認プロセスを自動化するAI。シリーズAで$20Mを調達。評価額は$95M。投資家はNEA、Sequoia Capitalなど(TechCrunch)
- Indico Data - 保険契約ライフサイクルで重要なインテーク・ワークフローを自動化するAI。シリーズで$19Mを調達。投資家は.406 Ventures、Guidewireなど(The SaaS News)
バーティカル
- Canary Technologies - ホテル業界のゲスト体験を向上するSaaS。シリーズCで$50Mを調達。投資家はInsight Partners、Y Combinatorなど(TechCrunch)
- Mad Mobile - レストラン・小売向けのクラウド型POS、セルフチェックアウトなどの決済周りのSaaSソリューション。$50Mを調達。投資家はMorgan Stanley Expansion Capital、Bridge Bankなど(Morgan Stanley)
- Relay - 現場のフロントラインワーカーの生産性を向上するコミュニケーションSaaS。シリーズBで$35Mを調達。投資家はG2 Venture Partners、Wind River Venturesなど(PR Newswire)
- Tenderd - 製造業や物流業向けに重機の稼働データからオペレーション効率化を支援するSaaS。シリーズAで$30Mを調達。投資家はA.P. Moller Holding、Quadri Venturesなど(FinSMEs)
エンタープライズ
- Cognigy - ドイツ発のコンタクトセンター自動化SaaS。シリーズCで$100Mを調達。投資家はEurazeo、Insight Partners、DN Capitalなど(TechCrunch)
- AccountsIQ - 複数の通貨や複雑な承認プロセスの課題を解決する財務会計管理SaaS。シリーズCで€60Mを調達。投資家はB2B SaaSに特化したグロースファンドAxiom Equity(Yahoo! Finance)
- Learn to Win - データ分析とAIを活用して学習効果のパーソナライズと最適化する企業向けトレーニングSaaS。シリーズAで$30Mを調達。投資家はWestly Group、Norwest Venture Partnersなど(PR Newswire)
サイバーセキュリティ
- Cyberhaven - AIを活用したデータセキュリティSaaS。シリーズCで$88Mを調達。投資家は Adams Street Partners、Khosla Venturesなど(Fintech Global)
- Seven AI - Cybereason元幹部が設立した、AIの悪用により複雑化するサイバー攻撃に対抗する次世代セキュリティ・オペレーション・センター(SOC)SaaS。シードで$36Mを調達。投資家はGreylock、Spark Capitalなど(WSJ)
- Sakana AI - グーグルの著名なAI研究者らが設立したAI開発スタートアップ。評価額$1B以上で、$125Mを調達する計画。投資家はNEA、Khosla Ventures、Lux Capitalなどの米有力VCを対話中(Nikkei Asia)
- アスエネ - 気候テック分野の脱炭素・ESGコンパウンドスタートアップ。シリーズC 1stクローズで42億円を調達。三井住友銀行、SBIインベストメント、スパークス・アセット・マネジメントをリード投資家として、国内外で計17社から調達(PR Times)
- matsuri technologies - 観光産業(インバウンドおよび国内市場)で、B2BとB2Cを融合したユニークなビジネスを展開するスタートアップ。シリーズDで総額13.4億円を調達。投資家はVertex Ventures SEA Fund V、BRICKS FUND TOKYOなど(PR Times)