State of the Cloud 2024 - AIクラウドの5つのトレンド
Bessemer Venture Partners「State of the Cloud 2024」の一部を日本語で紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
米VC Bessemer Venture Partnersによる最新のSaaS/クラウドソフトウェア市場の動向をまとめたレポート。フィンテックや物流、気候変動など、まだ通常のSaaS・クラウドで市場機会はありつつも、米上場SaaSのBVPインデックスは低迷を続けており、今後もこのトレンドは続くという見方が大勢を占めている。一方で今日の米スタートアップ業界の回復は、AIクラウドへの投資家の期待によるものが大きいので、今後の注目テーマについてまとめています。主なポイントは以下の5点です。
- 生成AIモデルレイヤーはテックジャイアントの新たな戦場に
モデルレイヤーへの投資はAI全体の60%を占めており、これらはOpenAI、Anthropic、Mistralなどに投資されている。この投資の大部分が、Microsoft、Amazon、Goole、Oracle、NVIDIAなどのテックジャイアントに占められている。この結果、現状で起こっている3つのリアリティは以下の通り。- モデルレイヤーはコモディティ化している
- AIモデルレイヤーはテックジャイアント同士で市場シェアを分け合っている
- AIモデルは、ポテトチップス並みに種類が多様で、一般に普及している
- AIは人類すべてを現状の10倍優れたソフトウェアエンジニアに変える
AIブームはエンジニアの採用要件に博士号が付け加えられた一方で、Copilotの普及でエンジニアの生産性は飛躍的に上がっている。将来的にはAIによりソフトウェア開発能力を誰しも手に入れ、テック起業家の平均年齢はもっと下がると予想される。現状、この領域で起こっていることは以下の通り。- コードCopilot領域は、今後のイノベーションを起こすホットな領域で競争も激しく、2023年に$3.9BものVC投資がされた
- Copilot埋め込み型のエージェントサーチなどにより、さらにCopilotの市場価値は上がっていく
- 開発言語のリーズニング(理由を説明すること)がAI開発活動の中核になっている
- マルチモーダルモデルとAIエージェントによって、人のソフトウェアとの付き合い方を大きく革新する
マルチモーダルモデルとAIエージェントはAI開発の次の波となる領域です。特に音声AIアプリは、今後5年で$5Bの新たなソフトウェア市場を作るとみられています。 - バーティカル(業界特化型)AIがレガシーSaaSを新たなアプリケーション、ビジネスモデルに変える可能性がある
バーティカルSaaSは、SaaS初期の眠れる巨人で、今日のバーティカル上場SaaSトップ20社の時価総額合計は、約300Bにも上ります。LLMによって、これらのレガシーSaaSは変化する大きな可能性を秘めています。米労働局によると、米GDP全体の13%を占めるビジネス向けサービス業は、ソフトウェア産業の約10倍もの「繰り返される反復作業」に占められており、ここを自動化できることは非常に大きな市場機会です。 - AIによって、コンシューマー向けB2Cクラウドが復活する
過去の歴史をみてみても、コンシューマー向けクラウド企業(ストレージなど)は、大きなテクノロジーシフトのタイミングで出現しています。音声・動画・画像・テキストのようなマルチモーダルLLMの進化は非常に早く、これを利用した新たなコンシューマークラウドが出現すると予想されます。
国内スタートアップのIPO前の買収・エグジットとしてのM&Aのススメ
経済産業省 経済産業政策局 新規事業創造推進室「令和5年度産業経済研究委託事業(スタートアップの成⻑のための調査)調査報告書」の一部を紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
日本のスタートアップはIPOによるエグジット環境は、海外と異なりIPOに偏重しており、今後海外からの投資を集めるためにはM&Aも含めた多様な成⻑エクイティストーリーを志向できる機会を提供することが重要です。この経済産業省の最新のレポートでは、「IPO前に他社をM&A」と「エグジットとしてのM&A」を進める上でのポイントを実例と共に整理しています。SaaSスタートアップにとっても非常に参考になるので、目を通してみることをお勧めします。以下は、本レポートのサマリの抜粋です。
- IPO前に他社をM&Aする場合のポイント
上場審査上、IPO準備期間のM&Aを禁⽌するルールはなく、以下のポイントについて適切な対応を⾏えばIPO準備期間における他社M&Aも可能- M&Aの規模:M&Aの規模や影響度を踏まえた事業計画の策定やグループ全体の内部管理体制の整備・運⽤が求められる
- 事業計画:事業計画の蓋然性を⾼めることが重要であり、M&Aを実施したことによる事業への影響を適切に整理し、説得⼒のある形で⽰す
- 内部管理体制:必要に応じ、M&A対象会社のコーポレートガバナンスや内部管理体制を上場に適切な⽔準に引き上げることが求められる
- 会計上の論点:M&Aによる、のれんの償却や減損の検討、⼦会社株式の評価など、会計上の重要論点を合理的に整理する必要がある
- エグジットとしてM&Aを選択する場合のポイント
IPOのみ前提とした戦略でなく、IPOとM&A両にらみのデュアルトラックの戦略により、IPOのみならずM&Aも選択可能になる- 戦略:エグジットのタイミングはいつにするか、IPOとM&Aどちらにするかの選択は事業成⻑に影響を与える
- スキル/制度:M&Aエグジットを進めるためにはファイナンスに関する専⾨知識が不可⽋
- 投資契約・株主間契約:投資契約・株主間契約は内容によっては、M&Aのエグジットの意思決定スピードに影響が出る可能性がある
- バリュエーション:M&A前のラウンドでバリュエーションが⾼くなり過ぎた場合、M&A時の交渉時に、⾦額が⾒合わず交渉が難航する可能性がある
ソフトウェアとAI投資の現状
Bg2 Pod「Ep11. Coatue Conference Recap, Tesla & ISS Controversy | BG2 with Bill Gurley & Brad Gerstner」の一部を紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
Benchmark Capitalの元パートナー、Bill GurleyとAltimeter Capital CEO Brad Gerstnerが、AIとソフトウェア投資ついてとあるカンファレンスで学んだこと、聞いたことをYouTubeで配信しました。その中からいくつかの要点を以下ピックしました。
- 上場しているソフトウェア株への投資意欲は引き続き高い。それは現在の価値が割安であり、多くがAIの恩恵を受けられると見られているからです。
- 一方で、AIの恩恵を受けるソフトウェア企業もあれば、AIによって淘汰されるソフトウェア企業も存在します。
- 2024年の北米VC投資額は、2021年のピーク時の1/3程度になると予想されています。
- 非AIスタートアップと比較して、未上場のAIスタートアップの評価額は5-6倍高く、これはバブルを示唆する可能性があります。しかし、公開市場ではNVIDIAのP/Eレシオは、過去12ヶ月で時価総額が2倍になったにもかかわらず変化していません。これは、P/Eレシオが上昇したドットコムバブルとは異なることを示唆しています。
- 著名な投資家であるCoatueは、上場のハードルが高くなっており、上場するには100億ドルの評価額が必要だと述べています。Bill Gurley氏はこれに同意せず、そうでないことを望んでいます。なぜなら、それによってベンチャー投資の成功がより困難になるからです。
- OpenAIについて、報告された年間34億ドルの収益のうち、ビル・ガーリーは約20億ドルがコンシューマーユーザーのサブスク課金からのものだと推定しています。
- 注目を集めるシリコンバレーのスタートアップ、Cognitionは、わずか18人の従業員でありながら、数百のAIエージェントを使用してコードを書くことで、多くのエンタープライズ顧客にサービスを提供できています。より少ない人数での経営は今後のソフトウェア企業のあり方一つになる可能性があります。
R&D投資をスタートアップ企業はどう考えれば良いか
OnlyCFO's Newsletter「R&D Budgets | Innovation Speed AND Efficiency」の一部を紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
成長性に加え事業効率性についても、魅力的なスタートアップの要件になっていますが、ソフトウェア企業においては、研究開発費をどのように基準を持って先行投資していくかは悩みの一つです。今回はOnly CFOのブログより、LaunchDarkly CPOのClaire Voの解説を紹介します。
- AIがR&D費に与える影響
- 明らかなのは、AI 時代には予算はこれまで以上に流動的である必要があり、最新の技術開発に基づいて、人員とソフトウェアの間で再配分させていく必要がある。固定予算ではなく、継続的な最適化こそが重要
- AI は、データ分析からコンテンツ作成まで、多くの従来の役割を自動化・自動化を強化している。つたとえば、エンジニアはcopilotを使用して PM への依存を減らし、PM は生成 AI ツールを利用してエンジニアリング リソースへの依存を減らし、デザイナーは AI を通じてますます多くのレバレッジを獲得している
- 例えばMeta社でもVP職種の削減が行われ、PM1人がマネジメントできるエンジニアの人数が拡大している。
- ジュニア人材がシニアレベルの成果を生み出せるようになる、Copilot や ChatPRD などの AI 搭載ツールを使用すると、若手開発者やPMは実力以上の成果を上げることが可能に。
- R&Dの効率性を測る指標
- R&D費と収益の比率
- 研究開発費と収益の比率は、効率性を示す重要な指標。研究開発費が収益よりも速く増加している場合は、製品開発に過剰投資している可能性がある。
- 従業員数と従業員サポートの効率性
- 従業員 1 人あたりの収益、エンジニアリング費用に対する製品速度、技術チーム メンバー 1 人あたりのソフトウェア費用などの指標に注目。
- R&D費と収益の比率
バーティカル
- Celcoin - ブラジル発のBanking as a Service。$125Mを調達。投資家はSummit Partners(IBS Intelligence)
- Finbourne - イギリス発の金融サービス/保険事業者がAIモデルを活用するためのSaaS。シリーズBで£55Mを調達。評価額は£280M。投資家はHighland Europe、AXA Venture Partnersなど(TechCrunch)
- Zencity - 地方自治体向け地域コミュニティのエンゲージメントSaaS。シリーズCで$40Mを調達。投資家はStepStone Group、TLV Partners(CTech)
- Finaloop - Eコマース事業者向けのリアルタイム会計SaaS。$35Mを調達。投資家はLightspeed、Vesey Ventures、Accelなど(TechCrunch)
- Peak3 - シンガポール発の保険業務のコアシステムを提供するSaaS。シリーズAで$35Mを調達。投資家はEQT(Fintech Singapore)
- Constructor - ECサイトを持つブランド大手企業向けの商品発見・検索SaaS。シリーズBで$25Mを調達。投資家はShappire Ventures、Silversmith Capital Partners(tech.eu)
- Hona - 法律事務所のためのクライアント・エンゲージメントSaaS。シリーズAで$9.5Mを調達。投資家はCostanoa Ventures、Y Combinatorなど(FinSMEs)
AIファースト
- Waabi - トロント発の生成AIを搭載した自動運転トラックシステムを開発。シリーズBで$200Mを調達。投資家はUBER、Khosla Ventures、NVIDIAなど(The SaaS News)
- HeyGen - B2B向けの動画生成AIプラットフォーム。シリーズAで$60Mを調達。評価額は$500M。投資家はBenchmark Capital、Thrive Capitalなど(Bloomberg)
- Decagon - カスタマーサポート向けのAIチャットボット。シード、シリーズA合計で$35Mを調達。投資家はAccel、Andreessen Horowitzなど(Reuters)
- CuspAI - イギリス発の新素材探索のための生成AI。シードで$30Mを調達。投資家はHoxton Ventures、Basis Set Ventures、Lightspeedなど(TechCrunch)
- GPTZero - 創業1年目から急成長で黒字化を果たした、AIが生成したコンテンツを特定するAI。シリーズAで$10Mを調達。投資家はFootwork、Uncork Capitalなど(TechCrunch)
サイバーセキュリティ
- Huntress - SMB特化のサイバーセキュリティSaaS。シリーズDで$150Mを調達。評価額は$1.5Bを超えてユニコーン入り。投資家はKleiner Perkins、Meritechなど(Crunchbase News)
- Aim Security - エンタープライズ生成AI特化のセキュリティSaaS。シリーズAで$18Mを調達。投資家はCanaan Partners、YL Venturesなど(Fintech Global)
- Entro Security - 機械など人間以外によるID認証マネジメントSaaS。シリーズAで$18Mを調達。投資家はDell Technologies Capitalなど(CTech)
- Pomerium - アクセス・コントロール・プラットフォームSaaS。シリーズAで$13.75Mを調達。投資家はBenchmark Capital、Bain Capitalなど(FinSMEs)
エンタープライズ
- Tinybird - スペイン発のデータ・エンジニアチームのためのデータプラットフォームSaaS。シリーズBで$30Mを調達。投資家はBalderton Capital、CRVなど(TechCrunch)
- SurrealDB - ソフトウェアエンジニアがデータベースを統合するSaaS。$20Mを調達。投資家はFirstMark、Georgianなど(TechCrunch)
- PointFive - イスラエル発のクラウドコストを最適化するSaaS。シードで$16Mを調達。投資家はIndex Ventures、Vesey Venturesなど(FinSMEs)
- Synspective - 小型SAR衛星の開発・運用からSARデータの販売と解析ソリューションを提供。シリーズCで70億円を調達。投資家は日本グロースキャピタル投資法人、ジャフコ、みずほキャピタルなど(PR Times)
- オーティファイ - AIを活用したソフトウェアテスト自動化ツール「Autify」を提供。シリーズBで約20億円を調達。投資家はGlobis Capital Partners、LG Technology Ventures、WiL、Salesforce Ventures、Archetype Ventures、Uncorrelated Ventures(PR Times)
- DeepForest Technologies - 世界の森林保全と森林管理の効率化を目指し、ドローンなどのリモートセンシングデータからの森林解析技術を開発。シリーズAで総額2億円を調達。投資家は環境エネルギー投資、バイオ・サイト・キャピタル&SBI地域活性化支援、三菱UFJキャピタル、中信ベンチャーキャピタル、京信ソーシャルキャピタル(PR Times)
- モルゲンロット - 企業の計算リソースの可視化・管理・最適化の実現、計算力のシェアリングにより、最適な計算環境を提供。Cygames Capitalから資金調達を実施(PR Times)