AIの「S字カーブ」進化論とエンタープライズ向けでの新たな4つの機会
EMERGENCE「The AI Plateau Is Real — How We Jump To The Next Breakthrough」の一部を日本語で紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
生成AIモデルによる期待と停滞が、昨今色々なところで議論されています。イノベーションの歴史を紐解くと、常に爆発的な進化と停滞期を繰り返す「S字カーブ」での進化が起こります。例ではTCP/IP、ブラウザ、AppストアなどでAIの現状はまさに、停滞期に入ったと言えます。その証拠にOpenAIのフラッグシップモデルの性能向上は停滞してきています。では、AIの次のS字カーブジャンプには何が必要でしょうか?
Emergenceは、「仕事の文脈で生み出されるデータ」が次のAI進化をリードするとしています。B2BにおけるAIの価値提案のチャンスは膨大にあるにもかかわらず、まだほとんど利用されていないのが実態です。AIの停滞を解決するために、新しいスタートアップにとってチャンスのある4つの機会を提案しています。
- エキスパートを巻き込む
最高品質のデータは、各分野の専門家から得られる可能性がある。そのためにコミュニティ構築や新しいインセンティブ構造のあるデータ収集メカニズムを作っていくことが重要 - 潜在データを活用する
- コンテキスト(文脈)を把握する
- 秘伝のたれを作りこむ
企業が独自のカスタム・モデルを作成、展開するのを支援し、コントロールし続け、独自のIPを作りこんでいくことも可能性があります。
ここ10ヶ月でAI市場がどのように変化したか
Sequoia Capital「AI’s $600B Question」の一部を紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
激しく変化するAI市場。著名なシリコンバレーのVCであるSequoia Capitalが2023年9月以来AIにおいて起こった変化をまとめました。
以下はその主なハイライトです。
- GPU供給不足の緩和
2023年末にピークに達したGPUの供給不足は解消しました。現在は、適度なリードタイムでGPUを入手することが比較的容易です。 - GPU在庫の増加
大規模なクラウドプロバイダーによって駆動されるNvidiaのデータセンター収益が増加しました。ビッグテックは引き続きGPUに多額の投資を行っており、これにより大規模な在庫蓄積が進んでいます。在庫が十分に増えた時点で需要が減少し、市場がリセットされることが予想されます。 - OpenAIの収益成長
OpenAIの収益は2023年末の1.6億ドルから3.4億ドルに成長しました。OpenAIと他のAI企業との収益のギャップは依然として大きいです。AI企業は長期的な収益を維持するために、消費者に対して大きな価値を提供する必要があります。 - AI収益予測の増加
以前に予測されたAI関連の収益ギャップは1,250億ドルでしたが、現在は5,000億ドルに増加し、AI主導の収益に対する期待が高まっています。 - Nvidia B100チップの導入
NvidiaのB100チップは、コストが25%増加するだけで性能が2.5倍向上すると約束されており、これにより再び需要の急増と供給不足が予想されます。
Veevaの空売りレポートに見る、Vertical SaaSの強さ
OnlyCFO's Newsletter「Vertical Software | Riches in Niches」の一部を紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
今週のOnlyCFOの記事より。Veevaの空売りレポートから見えるVertical SaaSの強さについて言及されていましたので紹介します:
Veeva は ライフサイエンス業界向けのVertical SaaS企業。2013 年IPOの前に調達した金額はわずか700 万ドルであり、世界で最も資本効率が高く、成功しているソフトウェア企業の 1 つ。
Suhail Capital は 2013 年11 月 (IPO の 1 か月後) に Veeva の空売りレポートを発行。今現在になってみると、このレポートは”長期的に見れば”誤っていた(当時の時価総額は 60 億ドルで、現在は 250 億ドル)ことがわかるが、なぜ彼らがショートポジションを取ったのか?について理解することでVertical SaaSのIRのポイントを確認できる。
- 理由1:TAMが小さすぎる
- 彼らの焦点はライフサイエンスCRM の TAMのみに閉じていた。IPO の時点では、CRM 以外の Veeva の追加モジュール/機能は実績がなく、収益もほとんどなく考慮できていなかった。
- TAMの算出は、実際の具体的な数字ではなく、市場機会や戦略の仮説の方がより重要であり、優れた経営者は、継続的に拡大する方法を見つけうる。
- 理由2:競争環境が激しい
- 大手エンプラの20%はすでに競合製品や自社開発のツールを使っており、Veevaに移行する可能性は低い。
- Salesforceがライフサイエンスにシフトし、市場の脅威になる恐れがある。
- これらを理由に成長が阻害されるとしていたが、結論としては誤りであった。
- 理由3:過大なマルチプル評価
- 当時 Veeva が高い評価を得たのは利益を創出できていた数少ないソフトウェア企業の1つだったから。しかし10 年が経過し、多くのSaaSは、Veevaクラスの利益率を上げることができないことが判明した。
- Veeva はFCFマージンが46%であり利益率ではトップ。事業そのもののユニットエコノミクスにフォーカスを当てるべき。
Vertical SaaSは急速に拡大するのが難しいですが、マルチプロダクトの拡大機会が増えるにつれて、永続的で一貫した収益成長を遂げることができる可能性がある。そして特に生成型 AIとも非常に相性が良く、優れたビジネスモデルへと昇華の可能性を秘めている。
エンタープライズ
- Lambda Labs - NVIDIAのAIチップ搭載サーバーを貸し出しているクラウドコンピューティングプラットフォーム。$800Mの資金調達を交渉中。投資家は非公開。今年2月には評価額$1.5Bで$320Mを調達(Financial Times)
- Hebbia - 何十億ものドキュメントから文書検索できる生成AI搭載SaaS。シリーズBで$100Mを調達。評価額は$700-800Mの見込み。投資家はAndreessen Horowitz(TechCrunch)
- Axelera AI - 生成AIおよびコンピューター・ビジョン推論のための専用AIハードウェアプラットフォーム。シリーズBで$68Mを調達。投資家はSorenson Capital、Intel Capitalなど(Businesswire)
- Qloo - 世界の消費者行動を予測することに特化したAI。Bluestone Equity Partnersから$20Mを調達(Baseline)
- Natural Capital Research - 自然災害リスクを定量化し、事業戦略に組み込むための自然データ分析SaaS。シリーズAで$10Mを調達。投資家はPelican、Yeo Venturesなど(FinSMEs)
ヘルスケア
- K Health - プライマリーケアに特化したAIプラットフォーム。Claure Groupをリード投資家として$20Mを調達(Yahoo! Finance)
サイバーセキュリティ
- Redactive - オーストラリア発のエンタープライズのボットによる機密漏洩を恐れることなく生成AIを活用できるセキュリティSaaS。シードで$7.5Mを調達。投資家はFelicis Ventures、Zapier、Atlassian Venturesなど(Axios)
その他バーティカル
- Runway - 映画製作者向けの動画生成AI。評価額$4Bで$450Mの調達を実施中。リード投資家としてGeneral Atlanticと交渉中(The Information)
- ZeroEyes - 米国国土安全保障省のセーフティ法指定を受けている唯一のAIベースの銃検知ビデオ分析プラットフォーム。シリーズBで$53Mを調達。投資家はSorenson Capital、Samsung Catalyst Fundなど(Yahoo! Finance)
M&A
- Everbridge - 政府機関や企業が緊急事態に対応できるよう支援するクリティカル・イベント・マネジメント分野の米上場企業。Thoma Bravoが$1.8B全額キャッシュで買収し、非公開化(TechCrunch)
- SmartHR - クラウド人事労務ソフト「SmartHR」を運営。オンタリオ州教職員年金基金のレイターステージおよび成長投資部門であるTeachers' Venture Growth、KKR、既存株主・新規投資家を引受先とした第三者割当増資および既存株主の株式譲渡による約214億円のシリーズEラウンドの契約を締結(PR Times)
- チューリング - 生成AIを活用した完全自動運転車両の開発。プレシリーズAの後半として15億円の資金調達を実施し、総額45.38億円の調達でプレシリーズAラウンドを完了。投資家はX&KSKなど(PR Times)
- Yuimedi - 医療データ利活用プラットフォームを開発。DG Daiwa Venturesをリード投資家としたエクイティ・ラウンド、およびあおぞら企業投資からのベンチャー・デットで、合計4億円を調達(PR Times)
- 補助金クラウド - 補助金支援のDXを通じた経営支援サービス「補助金クラウド」「前ほじょくん(補助金債権の早期資金化)」を運営。シリーズBにて、エクイティやベンチャーデットなどで2.5億円を調達。投資家はNVCC、みずほキャピタルなど(PR Times)
- スーツ - タスク管理ツール「スーツアップ」を開発・運営。シードで2億円を調達。投資家はmint、グリーベンチャーズ、SMBCベンチャーキャピタルなど(PR Times)