AIはいかにして資本を労働力に変えるのか?
andreessen horowitz「Input Coffee, Output Code: How AI Will Turn Capital into Labor」の一部を日本語で紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
Andreessen Horowitzによる、AIがいかに既存のソフトウェア市場を拡大し、新しいソフトウェア市場を生み出すか?に関する考察記事。主なポイントは、以下の通りです。
- 資本(キャピタル)→ GPU+エンジニア→ソフトウェア→労働力
歴史的に、ソフトウェアの多くはオフラインのストレージをデジタル化し、誰でも、いつでも、どこからでもアクセス可能なフロントエンドを提供しました。しかし、この効率化によってユーザーのヘッドカウント(人員数)は変化しません。しかし、AIに進化により、すべての「デジタル化されたストレージ」の保有企業(ソフトウェア企業)が、このデータにアクセスし、行動した人間の代わり、あるいはこれを補強する「準人間的」な価値を提供し始めています。 - AIソフトウェア企業の3タイプとは?
AIによって新しいプレーヤーが必ず勝つとは限りません。流通(ディストリビューション) vs. イノベーションの戦いでは、流通がデフォルトの勝者であり、既存のソフトウェア企業はすでに流通を持っています。そのような背景の中で、AIソフトウェア企業には、事実上、3つの起源ががあります。- タイプ1. 既存ソフトウェアの上で動作する AI ツール
- タイプ2. 既存ソフトウェアの上で動作し、そのソフトウェアを置き換えうるAIツール
- タイプ3. 既存のソフトウェアが全く手を付けていなかった、労働に変わるAIツール
- AIがソフトウェアの市場を急拡大する
AI革命が最もエキサイティングなのは、$300B(約44兆円)と大きく見える年間のエンタープライズソフトウェア支出が、年間$10T(約1,500兆円)を超えるホワイトカラーの人件費支出を侵食できる点です。すでに多くの超急成長企業は、既存の高額なサービス産業を、低価格で提供できるAIで作られたプロダクトで切り込んできています。私たちは、ソフトウェアが労働力を侵食または強化する、超初期段階にいるのです。
2兆円の時価総額まで成長したToastのスケーリングに関する教訓
20VC with Harry StebbingsのYoutube「Aman Narang: 5 Lessons Scaling Toast to $14BN Market Cap | E1192」の一部を日本語で紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
北米のバーティカルSaaSの中でも代表的である企業、ToastのCEO兼共同創業者が、同社を2兆円以上の時価総額にまでスケールアップさせた際の教訓を共有しています。
- 価値創造から始まります:実際の問題を解決し、顧客に真の価値を提供することに焦点を当てることで、企業は持続可能な成長と収益性の強固な基盤を構築できます。
- 人々は10年間で達成できることを過小評価し、1年間で達成できることを過大評価します:長期的に大きな目標を持ちつつ、短期的な目標については現実的であるべきです。成功企業を築くには、粘り強さと忍耐が重要です。
- 企業文化の価値観は本当に重要です:適切な人材を採用するために時間をかけることも、特にリーダーシップレベルでは本当に重要です。
- 採用プロセスにおける明確なコミュニケーションと計画が重要です:多くの企業が候補者に求めるものを明確に定義できておらず、その結果、採用の判断を誤ってしまいます。職務要件と期待値を綿密に概説する時間を取ることで、より良い採用と円滑な新人研修につながります。
- 少ないリソースでより多くのことを行うことについて、多くのことが言えます:スタートアップにおける創意工夫と効率性が重要です。制約は実際に創造性とイノベーションを促進し、企業に巧妙な解決策を見出させ、リソースを最適化させます。この考え方は、より持続可能なビジネス慣行につながり、企業をスケールアップする際により良い準備ができます。
- 複数の収益源を含む包括的なビジネスモデルを持つことの重要性:Toastは早い段階で、コアプロダクトだけでは効率的にスケールアップできない可能性があることを認識し、追加のFintechサービスを開発しました。これは、ビジネスを総合的に考え、価値提案を強化する方法を常に探すことの重要性を示しています。
- Toastの成長と拡大戦略:強力なコアプロダクト(「アンカーソリューション」)から始めて、同じ顧客基盤内でより多くのニーズに応えるように拡大することが重要です。このアプローチにより、企業は既存の関係と市場理解を活用して、追加の価値と収益源を創出することができます。
業種・職種特化の AI copilot についての考察
A VERTICAL SOFTWARE NESLETTER「#087: Industry/Job Specific AI CoPilots, Something Too Many of Us Forget, How To Overcome Big & Legacy ERP’s」の一部を日本語で紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
AIの進化が凄まじい中で、業種・職種特化の AIサービスの躍進が見られます。それぞれのポジショニングにおいて重要な観点や具体例がピックアップされた記事を紹介します。
Vertical AI が活躍できる領域
- 大量のデータ分析
- コンピュータベースの管理作業の大量発生
- 大量の反復的なタスクとプロセス
- 頻繁に検索/クエリを実行する必要がある大規模なデータセット
具体的な業界や職種
- 大量のデータ分析やコーディング
- ソフトウェアエンジニアリング
- BI / データサイエンスの専門家
- 投資専門家
- コンピュータベースの管理作業が大量にある
- 医療費の請求とコード化
- デスクでの保険請求
- バックオフィス管理サポートの役割
- コールセンター
- 反復的なタスクとプロセスが大量にある
- 看護師
- 医療アシスタント
- 現場ベースの保険請求
- 保険仲介業者
- 在庫管理
- 営業担当者
- グラフィックデザイナー
- 意思決定のために頻繁に検索/クエリを実行する必要がある大規模なデータセット
- 医師
- 弁護士
- 建築
- 会計士 / 金融専門家
バーティカル
- Defcon AI - 防衛産業向けに軍事オペレーションの最適化支援AI。シードで$44Mを調達。投資家はBessemer Venture Partners、Fifth Growth Fundなど(TechCrunch)
- Redo - EC事業者向けに加盟店の返品、交換、店内クレジット、サポートチケットなどの自動化などを支援するSaaS。シリーズAで$24Mを調達。投資家はPelion Venture Partners、Cervin Venturesなど(Fintech Collective)
- Trunk Tools - PDF、図面、設計図などの様々なファイルからインサイトを得る、建設業特化のチャットボットAI。シリーズAで$20Mを調達。投資家はRedpointなど(TechCrunch)
- Admiral - メディア・パブリッシャー企業向けにAIを活用したマーケティング・オートメーション、著作権アクセスコントロールなど、ビジター・リレーションシップ・マネジメント(VRM)SaaS。$19Mを調達。投資家は、など(Yahoo! Finance)
- Reliant AI - バイオ医薬品業界向けのカスタマイズ可能なデータプラットフォーム。シードで$11.3Mを調達。投資家はTola Capital、Inovia Capitalなど(Tech.eu)
ヘルスケア
- Caresyntax - 外科医向け術前、術中、術後のデータを収集、統合、分析し、患者ケアの改善を支援するAI。シリーズCで$180Mを調達。投資家はPFM Health Sciences、BlackRock Innovation Capitalなど(Mobi Health News)
- Solace - 患者と専門家による医療支援者をつなぐデジタル・ヘルス・プラットフォーム。シリーズAで$14Mを調達。投資家はInspired Capital、Craft Venturesなど(Business Wire)
- Consensus - 科学研究のための学術検索エンジンAI。シリーズAで$11Mを調達。投資家はUnion Square Ventures、Draper Associatesなど(Mobi Health News)
- Clarium - 病院や医療システムのサプライチェーン管理AI。シリーズで$10.5Mを調達。投資家はGeneral Catalyst、Kaiser Permanente Venturesなど(Yahoo! Finance)
フィンテック
- Amount - 銀行や信用組合向けに消費者や中小企業の口座開設やローン組成を支援するSaaS。$30Mを調達。投資家はGoldman Sachs、QED Investorsなど(Fintech Futures)
- Yuze - UAE発の中小企業向け法人カードプログラム。$30Mを調達。投資家はOsten Investmentsなど(Fintech Global)
- Lettuce - 個人事業主、フリーランサー向けに税務・会計自動化SaaS。シリーズAで$15Mを調達。投資家はZeev Venturesなど(Fintech Futures)
データ・AIモデル
- Grafana Labs - あらゆる種類のデータを可視化する、オープンソースのオブザビリティSaaS。評価額$6B超で、セカンダリー売却込みで$270Mを調達。投資家はLightspeed、Sequoia Capitalなど(TechCrunch)
- Eppo - 元Airbnbのデータ・サイエンティストが設立した、AIモデルのA/BテストSaaS。シリーズBで$28Mを調達。投資家はInnovation Endeavors、Amplify Partnersなど(TechCrunch)
エンタープライズ
- Opkey - 企業がERPソフトウェアを継続的にテストするAI。シリーズBで$47Mを調達。投資家はPeakSpan Capital、UST Globalなど(TechCrunch)
- ModelOp - エンタープライズ向けAIガバナンスSaaS。シリーズBで$10Mを調達。投資家はBaird Capitalなど(SaaS News)
その他
- World Labs - AI分野で有名なスタンフォード大学教授Fei Fei Liが設立したAIスタートアップ。評価額$1B超で$100Mを調達。投資家はNEAなど(TechCrunch)
- Story - IP所有者がより効果的に使用状況を追跡できるよう、ブロックチェーン・ベースのプラットフォーム。シリーズBで$80Mを調達。評価額は$2.25B。投資家はAndreessen Horowitz、Polychain Capitalなど(TechCrunch)
- H2Corporation - 建設業界向けに積算業務の自動化システム「AI積算」を提供。プレシリーズAで3.1億円を調達。投資家はSpiral Capital、ジャフコグループ、Boost Capital、One Capital、MetaProp(PR Times)
- SoVa - テクノロジーと専門家を掛け合わせた新しい形の会計事務所「SoVa」を運営。Boost Capital、ジャフコグループなどからシリーズAで総額約2.8億円の資金調達を実施(PR Times)
- パートナープロップ - 次世代PRM(パートナー関係管理システム)を提供。ジェネシア・ベンチャーズをリード投資家として、デライト・ベンチャーズ、三菱UFJキャピタルから2.3億円を調達(PR Times)
- Robofull - 製造業の人手不足解消に向け、AI・データを活用した工場向け自働化設備を販売。MTG Ventures、いわぎん事業創造キャピタル、NOBUNAGAキャピタルから、総額約1億円の資金調達を実施(PR Times)
- AquaAge - 名古屋大発AIスタートアップ。Asu Capital Partnersから資金調達を実施。累計の調達金額は8,200万円(PR Times)
- Experience - 数値整理・施策立案・レポーティング・ジェネレーティブを一気通貫で行う広告代理店の代替システムを開発。エンジェルラウンドで総額1,600万円を調達。(PR Times)
- Tooon - フリーランス向け業務管理ツールを開発。ベータ・ベンチャーキャピタル、FFGベンチャービジネスパートナーズなどから資金調達を実施(PR Times)