「今週のSaaSxAIニュース」ピックアップ!
数字でみるアーリーステージSaaS(ARR $1~20M)の成長過程
ICONIQ「Scaling SaaS from $1 to $20M」の一部を日本語で紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
アメリカ有数のグロースファンドICONIQ Growthによる、SaaSスタートアップのアーリーステージ(ARR $1~$20M)でのARR成長率のベンチマークと注力すべき事業の状態について考察した記事です。日米にかかわらず、共通するポイントも多いと思うので参考になると思います。
- ARR $1~20Mのステージ全体を通して
- 前年比ARR成長率がSaaS企業の指針
ステージ関係なく、すべてのSaaS企業の指針は前年度比でのARR成長率です。ここ数年のSaaS市場の乱高下でARR $20~25M付近に成長停滞期があることがわかっています。トップクラスのSaaS企業は、ARR $1-10MでYoY 3-4倍、$10‐20Mで2-3倍を維持しています。 - 4半期ごとに新規ARRの獲得速度を確認
上位4分の1のSaaS企業は、新規ARRを四半期毎に一貫して増加させ続けています。これはPMFの強力な指標であり、GTMへの投資をし始めるための重要なシグナルです。
- 前年比ARR成長率がSaaS企業の指針
- ARR $1~10Mまで
- 新規獲得ロゴの速度と品質へのこだわり
データによると、$1-$10Mの新規ロゴの速度は、企業が成長停滞を通過するための重要な特徴の1つです。上位4分の1のSaaS企業は、四半期ごとに10-20%の新規獲得速度を維持しています。加えてICPに会った高品質なロゴ獲得は、長期的なリテンション/安定した顧客基盤を持つもう一つの重要な指標です。 - GTMへの投資を拡大する前にプロダクトへ投資
高い成長速度と強力なリテンションは、この段階でのプロダクトへの十分な投資と組み合わせる必要があります。ARR $1-5MではOPEXの大半が開発OPEXですが、$5‐10MになるにつれてGTM OPEXが開発OPEXを超えます。
- 新規獲得ロゴの速度と品質へのこだわり
- ARR $5~20Mまで
- 質の高いロゴ獲得とACVの拡大
アーリーステージの企業は$20Mに向かって規模を拡大しながらACVを拡大し続けます。SMB特化SaaSは、ACVの拡大の影響は小さく、ロゴ獲得の速度によるレバレッジが大きくなります。 - Upsell/Cross-sellへの準備とNRR
健全な顧客基盤が確立されると、Upsell/Cross-sellによるエキスパンジョンが重要になります。ARR $10~15Mでは、新規ARRの平均30‐35%がエキスパンジョンになり、上位SaaSのNDRは120‐130%に達します。
- 質の高いロゴ獲得とACVの拡大
- ARR $10~20Mまで
- ユニットエコノミクスを深く理解
GTMモーションが洗練され、マジックナンバーなどの効率性への注目が高まります。ARR $10Mあたりになると、上位SaaSでは、S&M投資に対してマジックナンバーは1‐2xになります。 - バーンマルチプルをトラック
このステージでは、バーンを下げつつ、成長をいかに維持するかが重要になります。ARR $10-20Mでは、バーンマルチプルの中央値が1.5‐2倍です。 - 採用にあたり従業員1人ARRを活用
上位SaaSでは、ARR $20Mに向かう中で、従業員1人あたりARR $140-$150K(約2,100~2,300万円/人)が1つの目安です。
- ユニットエコノミクスを深く理解
AIはリーガル分野にどのような変革をもたらすのか?
Battery「The New Code of Law: How AI Will Revolutionize the Legal Sector」の一部を日本語で紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
AIによる変革が進む期待が持たれている重要分野の1つである法律(リーガル)分野。米Battery Venturesによるこちらの記事では、70社以上のリーガルAIスタートアップの分析・対話の中で、AIがリーガルワークフローのどこに変革をもたらすのか、3つの主要分野について解説しています。
- 法務調査とレビュー
AIは証拠開示と検索を合理化し、関連するデータを迅速に特定し、文書レビューを自動化します。 - 契約書の作成と交渉
プレイブックの実装からハイパーリンクの自動化まで、AIは文書作成を迅速化し、リーガルの交渉を支援します。 - 特許と知的財産
複雑な文書を解析し、先行技術を特定できるツールの出現を予想し、特許の状況を完全に変えます。
エージェント型AIと今後のSaaSについて
SEQUOIA Capital「Generative AI’s Act o1」の一部を日本語で紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
著名な米国VCであるセコイア・キャピタルが、AIの現状と未来、そして今後の投資機会についての記事を公開しました。以下は主なポイントです。
- ジェネレーティブAI市場の安定化
ジェネレーティブAI市場の基盤層が安定化しており、Microsoft/OpenAI、AWS/Anthropic、Meta、Google/DeepMindといった主要プレイヤーが支配しています。この安定化は、AI能力と市場構造のさらなる進展のための堅固な基盤を築く上で重要です。 - システム2思考の出現
推論層の開発に焦点が移り、「システム2」思考—推論時の慎重な推論と問題解決—を強調しています。このシフトは、パターンマッチングを超えたAIシステムの認知操作を強化することを目的としており、AlphaGoのようなモデルに触発されています。 - OpenAIのo1モデル
OpenAIのo1モデルは、推論時コンピュートによって達成された真の一般的推論能力を持つAIにおける重要な進歩を表しています。このモデルは、「立ち止まって考える」能力を強化し、その推論能力を向上させるAIにおける飛躍を示しています。 - lphaGoがLLMに与える影響
AlphaGoが推論時間を増やすことでより良いパフォーマンスを発揮する能力は、LLMにとってモデルとなっています。課題はエッセイ執筆や旅程計画など、より抽象的な領域でこれを再現することであり、応答をスコアリングすることが複雑です。 - 強化学習と認知アーキテクチャ
強化学習はAIモデルの推論能力を向上させるために再活性化され、新しい認知アーキテクチャが人間の思考プロセスに似た形でこれらの能力を効果的に提供するために開発されています。 - システム1対システム2思考
本能的な応答(システム1)から慎重な推論(システム2)への移行は、人間の問題解決に似た深い思考と創造性を必要とする複雑な問題に取り組むために不可欠です。 - 推論コンピュートの新しいスケーリング法則
新しいスケーリング法則は、推論時コンピュートを増やすことでモデルの推論能力が向上することを示唆しています。このシフトは、タスクの複雑さに基づいて動的にコンピュートをスケールする環境につながる可能性があります。 - アプリケーションレイヤーでの機会
NVIDIAやOpenAIなどとインフラストラクチャやモデルで競争することは難しいですが、企業ニーズに合わせたソリューションでアプリケーションレイヤーには実行可能な機会があります。 - SaaS (サービス・アズ・ア・ソフトウェア)モデル
ソフトウェア・アズ・ア・サービスからサービス・アズ・ア・ソフトウェアへの移行は、AI企業がプロダクトではなく成果物を販売し、大規模なサービス市場に参入することを強調しています。 - エージェント的アプリケーションの台頭
様々なセクターで新しいエージェント的アプリケーションが登場しており、AIの推論能力を活用してAI弁護士や医療記録係など革新的なソリューションを生み出しています。 - SaaS企業への影響
当初は基盤モデルへのアクセスによって既存企業がAI進展による影響を受けないと考えられていましたが、認知アーキテクチャの開発によって従来型SaaSモデルへの潜在的な混乱が示唆されています。 - 投資フォーカスと機会
セコイアは大きな収益機会が存在するアプリケーションレイヤーに注目しています。インフラストラクチャ領域はハイパースケーラーによって支配されているため魅力が低いままです。
フランチャイズビジネスに学ぶ、Vertical SaaSのインサイト
tidemark「The Franchise: An Archetype for Vertical SaaS」の一部を日本語で紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
Tidemarkによる新しいVertical SaaSに関する記事。フランチャイズはVertical SaaSがクライアントのためにできることの原型であるという内容で、Vertical SaaSの可能性をさらに広げると感じます。
Slice(ピザ屋特化のVertical SaaS)を例にあげ、、独立系のビザ屋に対してSaaSによるアプリケーション提供を通じた業務高度化に加え、集客支援や顧客向けアプリからサプライチェーンによる介入などあらゆるビシネス支援をすることでフランチャイズの要素を見出すことができます。
ほとんどのVertical SaaSが顧客売上のうち1%取ることが限界だが、決済サービスなどを通じ2-3%を収益化することも可能になってきた。ただし、幅広いビジネス支援を行うフランチャイズビジネスは売上の10%をロイヤリティとして受け取っている現状がある。
Vertical SaaSはこのフランチャイズビジネスで提供されているソリューションをアンバンドルしているとも言える。
実際にフランチャイズビジネスが提供しているもの
- マーケティングサポート(広告など)
- ネットワークによるニーズ早出
- サプライチェーンへの支援(仕入れ、Tariffの割引)
- 資金調達
- オペレーションの支援
- 知的財産(ロゴ・ブランド)
実際に、Vertical SaaSの中にはロールアップにより、自らマーチャントになっていくケースも生まれていますが、この文脈に即して考えると、自然な流れだと理解することができます。
[海外]
エンタープライズ
- Asaas - ブラジル発の中小企業向け財務業務プロセス自動化AI×SaaS。シリーズCで$148Mを調達。投資家はBond、SoftBankなど(Fintech Global)
- Braintrust - AIの評価と監視を行うソフトウェア開発キット(SDK)型のSaaS。シリーズAで$36Mを調達。評価額(Post Money)は$150M。投資家はAndreessen Horowitz、Databricks Venturesなど(TechCompany News)
- Reylance AI - AIを活用したデータガバナンスSaaS。シリーズBで$32Mを調達。投資家はThomvest Ventures、Menlo Venturesなど(Fintech Global)
- Distributional - インテルの元AIソフトウェア担当GMが設立した、ソフトウェアAIテストSaaS。シリーズAで$19Mを調達。投資家はTwo Sigma Ventures、Andreessen Horowitzなど(TechCrunch)
- Unify - 企業、人材、営業活動、顧客活動のような一般化可能なGTMデータモデルに基づいた、GTM統合プラットフォーム。シードで$19Mを調達。投資家はEmergence Capital、Thrive Capital、OpenAI Startup Fundなど(BusinessWire)
- Lightdash - 企業が個々のチームのユースケースに特化した「AIアナリスト」を訓練し、チーム独自のBIを作成できるSaaS。シリーズAで$11Mを調達。投資家はAccel、Shopify Venturesなど(TechCrunch)
バーティカル
- Basecamp Research - 生物学特化のGPT。シリーズBで$60Mを調達。投資家はSingular、S32など(TechCrunch)
- Xfarm Technologies - イタリア発の農業向けスーパーアプリSaaS。シリーズで€36Mを調達。投資家はPartech、Mouro Capitalなど(Sifted)
- Noetica AI - 法律事務所や金融機関向けのディールタームデータ分析プラットフォーム。シリーズAで$22Mを調達。投資家はLightspeed Venture Partners、Thompson Reuters Venturesなど(Yahoo! Finance)
- Document Crunch - 建設会社の複雑な契約やプロジェクト文書に埋もれたリスクを発見するAI。シリーズBで$21.5Mを調達。投資家はTitanium Ventures、Navitas Capitalなど(Yahoo! Finance)
- Centaur Labs - 医療・科学機関のAI開発特化のアノテーションSaaS。シリーズBで$16Mを調達。投資家はSignalFire、Accel、Samsung Nextなど(Access Wire)
サイバーセキュリティ
- Human Security - 高度なボット攻撃や詐欺からデジタルプラットフォームを保護することに特化したサイバーセキュリティSaaSユニコーン。グロースラウンドで$50M超を調達。投資家はWestCap、Goldman Sachsなど(Silicon Angle)
- WatchTowr - 外部からのサイバー攻撃に対して、脆弱性や弱点を継続的に特定・検証するサイバーセキュリティSaaS。シリーズAで$19Mを調達。投資家はPeak XV、Prosus Venturesなど(Business Wire)
フィンテック
- Imprint - グローバルブランドと提携し、顧客エンゲージメント、ロイヤルティを向上させる提携クレジットカードプログラムの立ち上げ・管理を行うプラットフォーム。シリーズCで$75Mを調達。評価額は$600M。投資家はKhosla Ventures、Thrive Capitalなど(Business Wire)
- TrueLayer - オープンバンキング決済ネットワークSaaS。シリーズEエクステンションで$50Mを調達。評価額は$700M。投資家はNorthzone、Tiger Globalなど(Fintech Futures)
リーガルテック
- EvenUp - 法律事務所向けに人身傷害の事件を迅速に解決し、クライアントのためにより公正な和解を支援するAI。シリーズDで$135Mを調達。評価額は$1B超。投資家はBain Capital Ventures、Lightspeed Venture Partnersなど(PR Newswire)
- Case Status - 法律事務所向けクライアントエンゲージメントAI×SaaS。シリーズBで$19.7Mを調達。投資家はGreyhawk Capital、Topmark Partnersなど(PR Newswire)
[国内]
- Josys - 情報システム部門におけるITデバイスやSaaS管理などのノンコア業務を効率化するプラットフォームを運営。140億円のベンチャーローン調達を実施(PR Times)
- estie - 日本最大級のオフィスビル情報データ分析基盤「estie マーケット調査」など、不動産業界のDXソリューションを提供。シリーズBで28億円を調達。投資家はVertex Growth、日本政策投資銀行など(PR Times)
- KAKEAI - 1on1プラットフォーム「Kakeai」を開発・運営。プレシリーズBで9.7億円を追加調達。モバイル・インターネットキャピタル、DBJキャピタルからの出資に加えて、複数の金融機関からの融資を調達(PR Times)
- xenodata lab. - 経済特化生成AIを開発。シリーズCエクステンションで3.2億円を調達。投資家はCARTA VENTURES、岡三キャピタルパートナーズなど(PR Times)
- エスマット - 現場のあらゆるモノをIoTで見える化し、高度な在庫管理・工程改善を実現するDXソリューションを運営。シリーズCで総額2.5億円を調達。投資家はキヤノンマーケティングジャパン、鈴与商事など(PR Times)
- Coopel - クラウド型RPAサービス「Coopel(クーペル)」を提供。1.4億円の資金調達を実施。投資家はデライト・ベンチャーズ、イーストベンチャーズ、ユナイテッド、コロプラネクストなど(PR Times)
- Ubie - 全国1,700以上の医療機関で診療の質向上をサポートする医療機関向けサービス「ユビーメディカルナビ」などを提供。最新のラウンドにおいて、Googleから資金調達を実施(Nikkei)