「今週のSaaSxAIニュース」ピックアップ!
音声AIの進化で広がるスタートアップの新たなビジネス機会
Bessemer Veuture Partners「Roadmap: Voice AI」の一部を日本語で紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
日本でも広がりつつある音声AIについて、これまでの技術革新の歴史と現在のチャレンジ、主要なプレイヤーなどを詳しく解説したBessemer Venture Partnersの記事。ALL STAR SAAS FUNDの投資先でもRevComm、IVRyを筆頭に、この分野の日本での市場機会の大きさと成長性を感じています。今後、インターフェースとしての音声は顧客接点などで大きな可能性があるので、ご一読をお勧めします。
- Voice AI分野は大きな変革期にあり、従来のIVRシステムを超えて、航空機の予約変更などの複雑な顧客対応も可能な、人間らしい会話が可能になっています
- 企業にとって、電話でのコミュニケーションは重要な手段であり続けている一方、多くの電話が応答ができていない(中小企業では62%)現状からも、Voice AIソリューションの大きな市場機会を示しています
- 近年の技術的ブレークスルーには、テキスト変換を必要としない音声直接処理が可能なSpeech-To-Speech(STS)モデルが含まれ、超低レイテンシー(約300ミリ秒)と、従来のカスケードアーキテクチャと比べて、優れた感情認識が実現できています
- 過去1年間の主要な進展には、OpenAIのVoice Engine、GoogleのGemini 1.5、GPT-4oが含まれ、音声、視覚、テキストにわたるマルチモーダル機能とリアルタイム推論が可能になりました
- 一方で、現状の音声AIソリューションの主な課題は、品質、パフォーマンスの信頼性であり、特にパフォーマンスの低下がビジネス損失につながる重要な場面での課題がまだあります
- 開発者プラットフォームは、レイテンシーの最適化、エラー処理、サードパーティとの統合、会話フローの制御などの複雑な課題の解決を支援するために登場しています
- 成功するVoice AIアプリケーションは、業界特有のワークフローに深く組み込まれ、優れたプロダクト品質を提供し、「成長」と「リテンション/プロダクト品質」のバランスが重要です
- Voice AIソリューションの成功を測るには、以下の5つのメトリクスが重要です
- チャーンレート
- セルフサービスによる解決率
- 顧客満足度スコア
- 通話完了率
- コホート別の通話ボリュームの拡大率
RPAの死:生成AIの進化で起こる「インテリジェント・オートメーション」
Andreessen horowitz「RIP to RPA: The Rise of Intelligent Automation」の一部を日本語で紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
これまでエンタープライズの自動化といえば、UiPathに代表されるようなRPA(Robotic Process Automation)が主流でした。しかし近年の大規模言語モデル(LLM)の出現により、より高度な自動化が可能になっています。このa16zの記事では、LLMによって新たに開かれた市場機会とLLMを活用した自動化ソリューション・スタートアップの先行事例や事業立ち上げのポイントを解説してくれています。主な要点は以下の通りです。
- AIは従来のオペレーションスタッフが行っていた、重要だが反復的な業務を変革しています。
- これまでのRPAはこれらのタスクの自動化を試みましたが、硬直的なプログラミングに制限され、高額なコンサルタントを必要としたため、大企業のみがアクセス可能でした。
- 大規模言語モデル(LLM)の出現により、事前にプログラムされた手順に従うのではなく、目標を理解して適応的に実行できるAIエージェントを通じた真の自動化が可能になりました。
- LLMによる自動化は、市場機会は非常に大きく大きく、800万人以上のオペレーション・事務職と、2,500億ドルのビジネスプロセスアウトソーシング(BPO)市場の一部を狙えます。
- これらの業務ワークフローの多くは、既存のソフトウェアソリューションや確立されたシステム・オブ・レコードが存在しないため、スタートアップ企業にとって未開拓の機会があります。
- 市場機会は主に2つの分野に分かれています。
- ホリゾンタルAIイネーブラー:業界横断的な特定機能の提供
- バーティカル自動化ソリューション:業界特化型のエンドツーエンドワークフロー構築
- インテリジェント・オートメーションに必要な基本要素には、Webデータクローラー、非構造化データの解析、レガシーシステムとの統合などがあります。
- バーティカル自動化ソリューションは、特定の業界に必要な狭いが深いコンテキスト理解と深いインテグレーションを提供できるため、特に有望です。
- 専攻事例には、Tennr(病院間の患者紹介管理)やHappyrobot(物流トラッキング)などの企業があり、特定の収益生成ワークフローの自動化に焦点を当てています。
- この領域のスタートアップの登り方としては、システム全体の置き換えを試みるのではなく、狭いが重要なワークフローから始めるアプローチが、成功の方程式となっています。
SaaS業界の転換点:2024年のB2B市場を読み解く
SaaStrのYoutube「What Really Matters in SaaS in 2025 with Jason Lemkin and Dave Kellogg」の一部を日本語で紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
SaaStr創業者のJason LemkinとHost Analytics元CEOのDave Kelloggによる、B2B SaaS業界における重要なトレンドと課題についての包括的な議論です。成長戦略、カスタマーサクセス、プライシング、戦略的意思決定に焦点を当てています。以下が主要なポイントです。
- エンタープライズテクノロジー投資の回復
Battery社のエンタープライズテクノロジー投資指数は、2023年第1四半期の50.2から直近では65.1まで大幅に改善しています。企業の74%が予算増加を見込んでおり、特にAIイニシアチブに対する実験的予算の増加とともに、企業が保守的な支出期間から脱却しつつあることを示唆しています。 - IPO市場の進化
IPOの基準は劇的に引き上げられ、BoxやHubSpotが150億円のARRで上場した過去の事例に比べ、現在では約750億円のARRが必要とされています。この変化により、この基準に達しない企業にとってPEによるイグジットがより魅力的な選択肢となり、イグジット環境に新たなダイナミクスを生み出しています。 - AIが予算に与える影響
AIは新たな予算機会を創出すると同時に、既存予算の再配分を促しています。企業の59%がAI支出の要因として実験的予算を挙げており、特にカスタマーサービス分野では、人的資源予算をAIソリューションへ再配分する傾向が顕著です。 - 現代のプライシングダイナミクス
AI機能の登場により、SaaSのプライシングはより複雑化しています。プライシングの革新がビジネス戦略の核心でない限り、同カテゴリーの確立されたプライシングモデルを踏襲すべきというのが共通認識となっています。 - Rule of 40の重要性
Rule of 40を達成している企業は、より高い評価を受けています。特に成長率が25%未満の企業にとって、収益性を通じた価値創造の代替的な手段として、この指標の重要性が増しています。 - 市場ポジショニング戦略
企業は強力な競争上のポジションを維持しながら、積極的な価格設定による顧客の離反を避ける必要があります。特に代替選択肢が存在する競争市場では、価値提供と価格決定力のバランスが極めて重要です。 - エンタープライズセールスのダイナミクス
エンタープライズソフトウェアの販売は依然として競争が激しく、確立されたプレイヤーでも価格圧力の影響を受けています。企業は価格の整合性を維持しながら、競合他社が価格を武器として案件価値を毀損することを防ぐ必要があります。 - 予算配分トレンド
明確なROIが実証できる場合、特に企業は従来の領域(人員など)からAIや自動化ソリューションへの予算再配分により積極的になっています。 - イノベーションの必要性
持続可能な成長には、既存プロダクトの維持を超えた継続的なイノベーションが必要です。企業は成長の停滞を防ぐため、現行のサービス提供を維持しながら、新機能への投資とのバランスを取る必要があります。
ソフトウェア企業評価の成長への回帰
Clouded Judgement「Market Tipping to Growth」の一部を日本語で紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
- 過去2年間で、ソフトウェア企業の評価軸がゼロ金利時代の「成長重視」から「収益性重視」へと大きく変化し、多くの企業がフリーキャッシュフローで黒字化を達成しました。しかし、収益性の向上は成長率の低下と引き換えでした。効率性重視の経営により、また市場環境の影響も受けて、成長率は全体的に低下傾向にありました。
- AI革命という大きな技術変革期を迎え、企業が再び成長投資にシフトし始めている兆候が見られます。セールスフォースのAI人材1,000人採用などがその例。
- 市場評価も変化しており、以前は収益性の高い企業(FCFマージンの高い企業)が高い評価を受けていましたが、最近ではその傾向が弱まり、成長性への期待が再び高まっています。
- 今後は、AI分野への投資が実際の収益成長につながるかが重要なポイントとなります。現時場では年間成長率30%以上の公開ソフトウェア企業はありませんが、この状況が変化する可能性があります。投資家は技術セクターに成長を求めており、効果的に投資を成長に結び付けられる企業が高い評価を受けることが予想される。
[海外]
エンタープライズ
- Writer - エンタープライズグレードの安全で信頼性の高い生成AIプラットフォーム。シリーズCで$200Mを調達。評価額は$1.9B。投資家はPremji Invest、ICONIQ Growthなど(TechCrunch)
- ScaleOps - アプリ毎のパフォーマンス要求に合わせてクラウド使用量・支出を管理するSaaS。シリーズBで$58Mを調達。投資家はLightspeed、NFXなど(TechCrunch)
- 11x - AI SDRエージェント。シリーズBで$50Mを調達。投資家はAndreessen Horowitzなど(Sifted)
- AgiCap - オール・イン・ワンのキャッシュフロー管理SaaS。シリーズCで€45Mを調達。投資家はAVPなど(Tech.eu)
- Conduktor - ストリーミングデータをリアルタイムで管理するSaaS。シリーズBで$30Mを調達。投資家はRTP Global、M12など(SaaS News)
- PointFive - マルチクラウド環境のコスト最適化SaaS。シリーズAで$20Mを調達。投資家はSalesforce Ventures、Index Venturesなど(TechCrunch)
ソフトウェア開発支援
- Recogni - 爆増するAIモデルに必要な演算処理能力を提供するAIプラットフォーム。シリーズCで$102Mを調達。投資家はCelesta Capital、GreatPoint Venturesなど(PR Newswire)
- Tessl - Snyk共同創業者が設立した、AIネイティブな開発支援をするDevOpsツール。シリーズAで$100Mを調達。評価額は$500M超。投資家はIndex Ventures、Accelなど(TechCrunch)
- Northflank - 複雑なクラウドインフラへの対処を簡単にし、開発加速化するソフトウェア実装プラットフォーム。$22.3Mを調達。投資家はBain Capital Ventures、Vertex Ventures USAなど(Venture Beat)
- UnifyApps - 企業内のSaaSとデータを接続して、独自のAIチャットボットを作成するプラットフォーム。$20Mを調達。投資家はICONIQ Growthなど(TechCrunch)
- Cogna - 非エンジニアでも業務モデル内の課題解決をしてソフトウェア開発を可能にするAI開発プラットフォーム。シリーズAで$15Mを調達。投資家はNotion Capital、Hoxton Venturesなど(FinSMEs)
バーティカル
- JobNimbus - 屋根修理業特化のオール・イン・ワンSaaS。Summer Equity Partnersから$330Mを調達(PE Hub)
- OpenAirlines - フランス発の航空会社特化の環境にやさしいフライト実行を支援するAI×SaaS。€45Mを調達。投資家はEiffel Investment Group、Mirova(Tech.eu)
- Prokeep - ディストリビューター向け顧客コミュニケーション・エンゲージメントSaaS。シリーズAで$25Mを調達。投資家はDahlia Equity Partners、Ironspring Venturesなど(PR Newswire)
- Klim - 再生可能農法の農地転換の進捗状況をトラックし、土壌の健全性、生物多様性の回復、炭素の吸収、排出量の削減に関するデータなどを把握できるSaaS。シリーズAで$22Mを調達。投資家はBNP Paribas、Earthshot Venturesなど(TechCrunch)
サイバーセキュリティ
- Chaos Industries - 国防目的で防衛への脅威の検知、モニタリング、コミュニケーションプラットフォーム。シリーズBで$145Mを調達。投資家はAcccel、8VCなど(Crunchbase News)
- Upwind - クラウド脆弱性に関する無駄なアラートの90%を削減するサイバーセキュリティSaaS。シリーズBで$100Mを調達。評価額$800‐900M。投資家はCraft Ventures、Greylockなど(TechCrunch)
フィンテック
- Parker - EC事業者向けのバンキングプラットフォーム。シリーズBで$20Mを調達。投資家はValar Venturesなど(Forbes)
- Tako - ブラジルで頻繁に変更される給与の法律に対応する給与計算Fintech×SaaS。シードで$13.2Mを調達。投資家はRibbit Capital、Andreessen Horowitzなど(TechCrunch)
ヘルスケア
- Stepful - 医療人材不足に対応する、医療人材特化のトレーニングAI。シリーズBで$31.5Mを調達。投資家はOak HC/FT、Y Combinatorなど(TechCrunch)
- Impilo - 患者が自宅でリモートで、パーソナライズ化されたケアサービスを受けるための統合プラットフォーム。シリーズAで$11.5Mを調達。投資家はConstruct Capital、GC 1 Capitalなど(PR Newswire)
リーガルテック
- RobinAI- 数千の法務文書をまとめを作成して、とるべきアクションをレコメンドするAI。$25Mを調達。投資家はPaypal Ventures、ケンブリッヂ大学など(FinSMEs)
その他
- Alison.ai - 顧客データとその競合データを活用した、広告向けの動画生成AI。シードで$13.3Mを調達。投資家はAlmaz Capital、Foresight Groupなど(CTech
[国内]
- シンプルフォーム - 国内500万法人の定性情報を収集しデータベース化して、この情報を基盤とした法人調査プロセスを自動化する『SimpleCheck』と、法人のリスク情報の重要な変化をモニタリングする『SimpleMonitor』などを提供。政府系ファンド、国内メガバンク系VC4社、独立系VCなど投資家 計9社を引受先とする26億円の第三者割当増資及び金融機関から14億円の借入を行い、シリーズBラウンドで総額40億円の資金調達を実施(PR Times)
- Matchbox Technologies - 従業員・パートタイマー・アルバイト・スポットワーカーを含めた各社独⾃の⼈材プールを構築し、1日・数時間単位の求人と働き手をオンラインでマッチングするスポットワークプラットフォーム。シリーズAは総額9.5億円を調達。投資家はジャフコグループ、第四北越キャピタルパートナーズ、大光キャピタル&コンサルティング、NSGホールディングス。デットは日本政策金融公庫、第四北越銀行、大光銀行が参加(PR Times)
- tacoms - 9,000店舗の飲食店のオンライン注文・デリバリービジネスを支援する「Camelシリーズ」を提供。シリーズBで総額9.5億円の資金調達を実施。投資家は、GMO Venture Partners、31VENTURES Global Innovation Fund 2号、KIRIN HEALTH INNOVATION FUND、NTTドコモベンチャーズ、三菱UFJキャピタル。加えて、あおぞら企業投資からのベンチャーデットを実施(PR Times)
- miive - VISAカードとアプリを活用したポイント型の福利厚生プラットフォーム「miive(ミーブ)」を提供。DNX Ventures、明治安田未来共創ファンド、kubell、セブン銀行などの複数の新規投資家と、既存株主からのエクイティ調達、および金融機関からの借入(融資枠を含む)による約4.5億円の資金調達を実施(PR Times)
- ユアトレード - 国際流通最適化サービスを提供。プレシリーズAで総額3.5億円の資金調達を実施。投資家はGenesia Ventures、ANRI、環境エネルギー投資、アーキタイプベンチャーズ。加えて、日本政策金融公庫と商工組合中央金庫から借入を実施(PR Times)