「今週のSaaSxAIニュース」ピックアップ!
10x起業家:AIの進化によって起業が変わるのか?
The Experimentation Machine by Jeff Bussgang「The 10x Founder」の一部を日本語で紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
AI Copilotの進化により、平均的なエンジニア10人分の成果を生み出すソフトウェアエンジニア「10xディベロッパー」というコンセプトが出てきました。先日JPモルガンのカンファレンスでのOpenAI創業者サム・アルトマン氏は、「近い未来に人を雇うことなく、ユニコーン規模のスタートアップが生み出される」という挑戦的な発言をしました。この記事では、この「10x起業家」の可能性について議論しています。1人も雇用せずにスタートアップが成長できるかは定かではありませんが、AIの進化がスタートアップの在り方を変える可能性は十分にありうるので、採用が成長のボトルネックになりやすい日本では大きな影響を与える可能性があります。
- 10x起業家の台頭
今後、AIを活用して生産性を劇的に向上させる新しい起業家が登場してくるでしょう。AI エージェントや高度なツールを使用して、10人の平均的な創業者に匹敵する成果を達成する可能性があります。 - 採用不要の成長
従来の成長モデルは、継続的な採用に焦点を当てていたが、AIを活用した戦略に置き換えられつつあります。従業員数を比例的に増やすことなく、効果的に組織を拡大できる。Adobeのスコット・ベルスキー氏が強調しているように、「採用不要の成長」が新しいトレンドとなってきています。 - AIによる組織変革
スタートアップは、アイディア創出、顧客発見、価値提案の検証、市場展開、収益モデル構築など、ビジネスプロセスのコアを AIツールで再構築し始めています。各領域に特化した AI ソリューションを提供する数十の企業が登場してきています。 - 生産性と財務への影響
AIは大幅な効率化を可能にします。Alphabet、Microsoft、NVIDIAなどの企業は、従業員一人当たりの収益に劇的な増加を見せており、この傾向は運用コストの削減と収益性の向上を示唆しています。 - AI導入の実践的事例
先進企業はすでにAI統合から大きな利益を得ています。例えば、Klarnaの AI カスタマーサービスは顧客チャットの3分の2を処理し、ServiceNowはすべての部門にAIロードマップを義務付けています。 - AIによるスタートアップ競争環境の変化
一部の人々はAIがスタートアップの競争優位性を縮小させる可能性があると主張していますが、生産性の利点がその潜在的な欠点を上回ると考えています。特にスタートアップは新技術とプロセスを容易に採用できる点で強みがあります。 - 未来の展望
スタートアップは、AIを最も素早く採用できる立場にあります。10x起業家は、これらの技術を使用して、より少ないリソースでより多くを達成できる革新的で高効率な組織を創造する可能性が高いと考えられます。
Perplexity訴訟にみるAIプロダクトマネジメントで重要なこと
mind the PRODUCT Presented by pendo「Perplexity lawsuit sends warning to product managers」の一部を日本語で紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
News CorpによるAIスタートアップPerplexityに対する著作権侵害訴訟のケースから、責任あるAIイノベーションのためのプロダクトマネジメントで考えるべき、法的・倫理的課題について解説している記事です。日本でもAI×SaaSの開発が進む中で、社会的に信頼性のあるAIプロダクトを考える上では1つの重要なケースだと思うので、頭の片隅に置いておいてよい内容だと思います。
- AIの法的・倫理的課題
News Corpは、AIスタートアップPerplexityに対して著作権侵害で訴訟を起こし、大規模なコンテンツスクレイピングと無許可での出版物使用を主張しています。この訴訟は、ニュース出版社のコンテンツ所有権、著作権、AIによるコンテンツアクセスの倫理的使用に関するより広範な問題を浮き彫りにしています。 - 複雑な法規制環境
この課題にかかわる規制当局の管轄は多岐にわたります。AIモデルのトレーニングは多様なデータ収集に大きく依存しています。フェアユース、著作権法、およびAIが生成する不正確さや「ハルシネーション」によるブランドの評判への潜在的なダメージについて、未解決の課題がまだ存在します。 - 倫理的なプロダクトマネジメント
PdMは、責任あるAIイノベーションを優先し、信頼、安全性、倫理的配慮に焦点を当てるよう求められてきています。専門家は、単なるコンプライアンスを超えて、データプライバシーの確保、バイアスの防止、コンテンツ制作者の権利の尊重を確実にするAIソリューションの重要性を強調しています。明確な業界基準の必要性と、技術的に先進的であるだけでなく、社会的に責任のあるAI技術を開発することへのコミットメントが今後求められるようになります。
AIがもたらすソフトウェア産業の大転換 - Snyk創業者が語る2024年以降の展望
20VC with Harry Stebbings「Guy Podjarny: The Future of AI Software Development - What is Real & What is BS | E1232」の一部を日本語で紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
SnykとTasselの創業者であるGuy Podjarnyが、20 Minute VCのポッドキャストで、AI、ソフトウェア開発、ビジネス戦略、業界動向における重要な進展について語りました。この対談では、AI技術の進化、市場のダイナミクス、そしてソフトウェア開発の変化する状況について探求しています。主要なポイントは以下の通りです。
- ソフトウェアエンジニアの役割の進化
ソフトウェアエンジニアの役割は根本的に変化しています。今後10年間で、コーディングはより周辺的な作業となり、エンジニアはアーキテクチャの決定とシステム思考に注力することになるでしょう。キャリアパスは、システムレベルの意思決定とトレードオフに焦点を当てるアーキテクチャ的な役割と、ユーザーへの共感とソリューション設計を重視するプロダクト指向の役割に分かれつつあります。この変化は、コード生成におけるAIツールの影響力の増大を反映する一方で、戦略的決定における人間の判断の重要性を浮き彫りにしています。 - エンタープライズにおけるAI導入のタイムライン
実験的なAI予算から運用予算への移行は段階的に進んでいます。AIアシスタントはすでに具体的な価値を提供し、通常予算に組み込まれつつあります。しかし、カスタマーサポートなどの特定の領域を除き、より自律的なAIアプリケーションは依然として実験段階にとどまっています。主な制約は必ずしも技術的なものではなく、プロセスの適応、説明責任の枠組み、規制上の考慮事項に関連しています。 - プラットフォーム競争と市場構造
AIプラットフォームの状況は、潜在的な統合に向かって進化しています。少数の主要プレイヤーが支配する閉鎖的なエコシステムの出現が懸念されており、これがイノベーションと統合機能を制限する可能性があります。このリスクは特にソフトウェア開発において顕著で、ブラックボックス的なソリューションがエコシステムの補完的なツールやイノベーションの構築能力を制限する可能性があります。 - プロダクトマネジメントへの影響
プロダクトマネージャーの役割は、より高い自律性と技術的能力が求められる方向へと進化しています。特に技術指向のプロダクトマネージャーについては、エンジニアとの境界が曖昧になりつつあります。しかし、ユーザーニーズを理解し戦略的なプロダクトの決定を行うという中核的な機能は、AIが実装を支援する中でも、依然として人間主導であり続けています。 - AIにおける投資戦略
AI企業を評価する際、チームの質と安定性は依然として重要な要素です。AnthropicとOpenAIの比較は、リーダーシップの安定性と長期的なビジョンが、現在の市場ポジションよりも価値がある可能性を示しています。この評価からは、現在の市場における支配力の有無に関わらず、安定したリーダーシップと明確な長期戦略を持つ企業を重視する傾向が見て取れます。 - 市場競争のダイナミクス
最も健全な競争環境は、独占市場や50社以上の細分化された市場ではなく、5-10社程度の企業が存在する市場であることが示唆されています。この中間的な状況は、イノベーションを促進するのに十分な競争を提供しながら、成功企業が重要な市場シェアを獲得することを可能にします。競合が多すぎる市場では、優れた企業でさえ意味のある規模を達成することが困難になりがちです。 - エンジニアリングツールの進化
エンジニアリングツールのエコシステムは、AIの統合により大きな変化を経験しています。現在のAI搭載ツールは、エンジニアの作業方法を根本的に変更することなく、既存のワークフローを強化する場合に最も成功しています。重点は、エンジニアが重要な決定に対するコントロールを維持しながら、反復的なタスクを削減しインテリジェントな支援を提供することにシフトしています。 - AIだけでは簡単にSaaSビジネスは作れない
「AIがあれば簡単にSaaSビジネスが作れる」という考え方は、B2Bソフトウェア企業が持つ複雑な側面を見落としています。SaaSにおける成功は、プログラムコードを超えて、データの優位性、ネットワーク効果、顧客との関係性、そしてサービスの乗り換えコストにまで及びます。これは、AIの機能が進化を続けたとしても、優位なポジションを確立したSaaS企業には持続的な価値があることを示していると言えるでしょう。 - 長期的な市場の進化
ソフトウェア業界は、Web開発の基準が進化してきたように、品質と機能性に対するより高い期待に向かって移行しています。この進展は、基本的な機能がより自動化される中でも、専門的なツールとサービスには継続的な機会があることを示唆しています。成功への鍵は、人間の判断と専門知識が今なお不可欠な領域に注力することにあります。
ServiceTitanのIPOについての分析
OnlyCFO's Newsletter「IPO Floodgates Opening?」の一部を日本語で紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
OnlyCFOのニュースレターより、ServiceTitanのIPOが今後のクラウド企業に与える影響について整理した記事を紹介します。
- ServiceTitanは2021年以降で4番目のクラウドIPOである。これまでのonestreamやklaviyoなどが上場するたびに、IPO windowが開かれたかと言われれば、それは懐疑的であった。
- 一方で、ServiceTitanのSaaS指標は「可もなく不可もない」ことから、今後のクラウド企業のIPOの良いリトマス紙になるだろう。
- コンセンサスではないが、現在クラウド企業がIPOするには約 5 億ドルの収益が必要であると多くの人が考えている。ServiceTitan の LTM 収益は 6 億 8,500 万ドル。過去 3年間の他の3つのIPOは、ARRが5億ドルから8億ドルレンジであった。
- 業績スタッツとしては、上場SaaSと比較すると、ARR成長率はトップ25%に入るが、ARR規模は少ないため、収益成長率の観点では最低限のレベルになっている。一方で過去10四半期の95%GRRと110%以上のNRRは明らかに強みとしている指標であり、粘着性の高さは魅力的である。
- IPOに対してのプレッシャーについては、同社がシリーズHラウンドでは「複利ラチェット」を用いた調達を実行。シリーズHから1.5 年後の2024年5月から、ラチェットの「複利」部分が作動し、ハードル価格が四半期ごとに複利で年間11%増加し始めることを意味し、早期のIPOのインセンティブになる。
[海外]
エンタープライズ
- Eon - クラウド環境に保存されたデータのバックアップ・プラットフォーム。シリーズCで$70Mを調達。評価額は$1.7B。投資家はBond、Sequoia Capitalなど(Silicon Angle)
- Pyramid Analytics - 機械学習とAIを活用した次世代ビジネスアナリティクスSaaS。BlackRockから$50Mを調達(CTech)
- Agicap - SMB/ミッドマーケット向けに、リアルタイムのキャッシュフロー可視化、銀行口座接続、ERP連携可能な財務管理SaaS。シリーズCで€45Mを調達。投資家はAVPなど(Fintech Global)
- VISO TRUST - AIを活用したサードパーティリスク管理(TPRM)SaaS。$24Mを調達。投資家はBain Capital Ventures、Sierra Venturesなど(VC News Daily)
- Wherobots - 企業が衛星データ、センサー、GPS対応デバイスなどの空間データを活用したAI分析を支援するSaaS。シリーズAで$21.5Mを調達。投資家はFelicis、JetBlue Venturesなど(Silicon Angle)
- Aviz Networks - データセンターとエッジネットワークに合わせた、AI活用型ネットワーキングSaaS。シリーズAで$17Mを調達。投資家はAlter Venture Partners、Cisco Investmentsなど(Silicon Angle)
- Emma - AIを活用したマルチクラウド管理SaaS。シリーズAで$17Mを調達。投資家はSmartfin、RTP Globalなど(Yahoo! Finance)
バーティカル
- Constrafor - 下請け業者とゼネコンの関係を強化し、調達、請求書発行、支払いプロセスを簡素化するSaaS。シリーズAで融資枠とエクイティ調達合わせて$264Mを調達。投資家はNFXなど(Fintech Global)
- Appcharge - ゲームパブリッシャーがゲーム通貨やその他の仮想グッズを消費者に直接販売するための独自サイト構築を支援する「ゲーム業界のShopify」。$26Mを調達。投資家はCreandum、Supercellなど(TechCrunch)
- 360Player - スポーツクラブ向けに、ビデオ分析、選手育成、チーム管理、財務サービスなどをオールインワンで提供するSaaSプラットフォーム。Five Elms Capitalから$25Mを調達(Silicon Valley Journal)
- Fresho - レストランに生鮮食品を供給する卸売業者向けのオーダー管理SaaS。シリーズBで$17Mを調達。投資家は建設テック大手創業者Geoff Tarrant氏など(Yahoo! Finance)
- Boosted.ai - 投資運用会社特化の投資マネージャーが自分の思考プロセスを反映するようにカスタマイズできるAIエージェント。$15Mを調達。投資家はFidelity Investments Canada、HarbourVest Partnersなど(Fintech Global)
ソフトウェア開発
- Tricentis - ソフトウェアのバグをより迅速にテストできるSaaS。評価額$4.5Bで$1.33BをGTCRから調達(Silicon Angle)
- /dev/Agents - 元Stripe CTOが立ち上げた、ソフトウェア開発者向けAIエージェント構築SaaS。シードで$56Mを調達。評価額は$500M。投資家はIndex Ventures、CapitalGなど(TechCrunch)
- Wordware - AI開発のためのフルスタック・オペレーティング・システム。シードで$30Mを調達。投資家はSpark Capital、Felicisなど(Venture Beat)
フィンテック
- Cardless - クレジットカードの割引やその他特典を、よりカスタマイズされたカード体験を構築する支援をするFintech×SaaS。$30Mを調達。投資家はActivant Capital、Mischiefなど(TechCrunch)
- Capitolis - 機関投資家向けに金融取引の最適化を支援するSaaS。Citi、State Streetなどから$20Mを調達(FX News Group)
サイバーセキュリティ
- Halcyon - ランサムウェア攻撃を防御する最先端のサイバーセキュリティSaaS。シリーズCで$100Mを調達。投資家はEvolution Equity Partners、Bain Capital Venturesなど(Fintech Global)
[国内]
SaaS
- Lecto - 債権管理業務のDXを推進。シリーズAラウンドにて、SMBCベンチャーキャピタル、りそなキャピタル、三菱UFJイノベーション・パートナーズ、みずほキャピタル、ALL STAR SAAS FUND、D4Vより資金調達を実施。借入も合わせて累計調達額は13億円超に(PR Times)
- TAIAN - ブライダル・バンケットビジネスに特化したサービスやソフトウェアを提供。シリーズAラウンドにて約6億円の資金調達を実施。投資家はグロービス・キャピタル・パートナーズ、ジェネシア・ベンチャーズ、ANRI、東京海上グループ、三菱UFJキャピタル、静岡キャピタル、キャナルベンチャーズ、他2名(PR Times)
- ゼスト - 在宅医療・介護の収益改善プラットフォーム「ZEST」を展開。シリーズBラウンドで約5.4億円の資金調達を実施。投資家は農林中金キャピタル、日本生命、ニッセイ・キャピタル、Niwa Holdings、シーユーシー(PR Times)
- コングラント - ソーシャルセクターと企業向けに「寄付DXシステム」を提供。シリーズAラウンドで総額3億円の資金調達を実施。投資家はジェネシア・ベンチャーズ、Sony Innovation Fundなど(PR Times)
- AccordX - 飲食事業者様向けにキャンセル料金のデジタル請求サービス「請求できるくん」などを提供。複数のエンジェル投資家、及び事業会社から資金調達を実施(PR Times)
SaaSイネーブルド・サービス
- コノセル - ハイブリット学習塾「個別指導 コノ塾」の運営や、アプリ・教材の企画開発。オリエンタルランド・イノベーションズより20億円を追加調達(PR Times)
M&A
- シャトク - 福利厚生制度としての社宅制度導入を、システム面と仕組みづくりからサポートする、中小企業および中堅企業向けのSaaS型社宅管理システムを提供。マネーフォワードがグループ会社化(PR Times)