「今週のSaaSxAIニュース」ピックアップ!
バーティカルAIの3つのビジネスモデル
Bessemer Venture Partners「Part III: Business model invention in the AI era」の一部を日本語で紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
過去20年間のクラウドと同様に、AIは現在、法律、医療などの分野において、複雑で言語依存度の高いタスクを劇的に効率化、自動化することを可能にしており、従来のソフトウェア市場の10倍の市場規模があると期待されています。このBessemerの記事では、Copilot、AIエージェント、AI活用型サービスの3つのビジネスモデルの事例について解説しています。
- バーティカルAIの3つのビジネスモデル
- Copliot:ユーザーの生産性を向上させる、サイドバイサイドで機能するAIアプリケーション
- エージェント:最小限の人間の介入で、ワークフローを自動化するAIソリューション
- AI活用型サービス:AIを使用してより高速、安価、一貫性のあるサービスを提供する企業
- 業界特化型Copilot
ここではCopliotの事例として、どのマルチモーダルデータによってどのようなCopilotの事例が出ているかを紹介しています。- コード:開発者のコード作成と完成を効率化
- テキスト:文書作業の集中的なワークフローを支援
- 音声:会話の文字起こしと分析
- 画像:建築や建設などの業界におけるデザインプロセスの合理化
- AIエージェント
AIエージェントは、特定の機能を完全に自動化し、人的リソースへの依存を減らすように設計されており、セールス開発、採用、カスタマーサポート、バックオフィス管理タスクなどの例があります。
- 伝統的なビジネスを破壊するAI活用型サービス
これらのサービスは、法律サービス、医療請求、保険管理などの業界において、AIを活用してより効率的で費用対効果の高いソリューションを提供し、より高いマージンを維持しながら低価格を実現しています。
- 革新的な価格戦略
バーティカルAIスタートアップは以下の代表的なプライシングのモデルを採用しています。- アウトプットベースのプライシング
- 利用量に基づくプライシング
- 階層(ティア)型プライシング
- サブスクリプションとアウトプット課金のハイブリッド
- 市場の可能性と新たな価値創造
バーティカルAIの成功は、特定の業界に合わせたプロダクトを提供し、顧客に明確な価値を示す価格モデルによって、既存のビジネスモデルを大きく変革する可能性があります。
ソフトウェア企業のR&D投資はどう決めるべきか?
Battery Condensing the Cloud「Decoding the Black Box of Software R&D Spend」の一部を日本語で紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
AIによるテクノロジーシフトが起こっている昨今においてR&D投資はより重要になってるため、超本質的ですが超難しい問いです。ソフトウェア企業の1番の投資であるGTM(拡販)投資は、CAC Paybackなど様々な指標があり、慎重にモニタリングされていますが、2番目に大きいR&D投資は評価が難しく、規律を持ってモニタリングされにくい。この記事では、ソフトウェア企業がR&D投資予算を決める上での5つのステップを紹介しています。
- 生成AIの時代に益々重要になるR&D投資
ソフトウェア業界では、R&D支出は競争力を維持し、イノベーションを推進するために極めて重要です。生成AI の台頭により、ソフトウェア市場がますますダイナミックに変化する中、継続的なプロダクト開発は顧客の獲得と維持に不可欠となっています。 - 高成長企業ほどR&D投資に積極的
多くの企業は売上高に対するR&D支出をベンチマークとしていますが、この指標だけでは誤解を招く可能性があります。R&D支出は企業の成長段階によって異なり、高成長企業は革新に対してより多くの投資を行う一方、成長が遅い企業は利益率に重点を置いて投資を抑制する傾向にあります。 - ソフトウェア企業のR&D投資を決定する5つのステップ
この記事では、ソフトウェア企業のR&D投資は以下のステップで決めていくことを推奨しています。- 事業目的や外部の類似企業のベンチマークからトップダウンでR&D投資額を配分する
- R&D投資を4つの戦略分類に分ける
- 既存市場での更なる顧客獲得
- 既存顧客の利用拡大とアップセル/クロスセル
- リーチできる新規市場の拡大
- 既存顧客のリテンション - 顧客接点を担当する部門の声を反映する
R&D投資の決定は、プロダクトおよびエンジニアリングチームに限定すべきではありません。営業、マーケティング、カスタマーサクセス、サポートなどの顧客接点を担当するチームを巻き込み、R&D活動が実際の顧客ニーズに合致するようにすべきです。 - R&D投資対効果を測定する
マクロとミクロの両レベルでR&D投資を評価することを提案しています
- マクロ:新規収益の創出や顧客維持などの望ましい成果との整合
- ミクロ:エンジニアリングチームの効率とプロダクトリリースの品質評価 - R&D投資のパフォーマンスを企業全体で責任を持つ
R&D投資の責任は、エンジニアリングチームだけの責任とすべきではありません。プロダクトと市場の適合性、市場ポジショニング、または部門間コラボレーションの問題を示している可能性があります。
ファウンダーとCEOの違い
Lenny's Podcast「How a great founder becomes a great CEO | Jonathan Lowenhar (co-founder of Enjoy The Work)」の一部を日本語で紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
Enjoy The Workの創業者Jonathan LowenharとLenny Rachitskyによるポッドキャストをピックしました。ファウンダーとCEOの違い、よくある失敗パターン、採用方法、Go-to-marketの考え方などが議論されています。以下が主なポイントです。
- ファウンダーとCEOの違い
ファウンダーは勇気、直感、そしてレジリエンスの姿勢をもつ存在である。一方、CEOであることは、採用、マネジメント、財務計画、戦略的思考などの特定のスキルを必要されます。成功には、「Founder Mode」をCEOとして必要不可欠なスキルを学ぶことを避ける言い訳として使うのではなく、両方の役割をマスターする必要があります。最高のスタートアップリーダーは、状況が要求するものに基づいて異なるモードを使い分けます。 - CEOの典型的な失敗パターン
Lowenharは、長年の経験から典型的なCEOの失敗パターンを特定しています。感情を排除しようとする「ロボットCEO」、難しい判断を避ける「プリーザーCEO」、完璧を求めすぎる「完璧主義CEO」、感情的になりやすい「短気なCEO」、計画なしで動く「即行動CEO」などが挙げられます。これらのパターンを理解することで、自身の傾向に気づき、改善することができます。 - 採用の基本的な考え方
効果的な採用は、12ヶ月後の期待する成果から逆算して考えることが重要です。そして、候補者を評価する3つの基準でみます。まず、その役割で必要な業務を過去に成功させた実績があること。単なる経験年数ではなく、実際の成功体験を重視します。次に、ポジティブな理由で転職を考えていること。つまり、現在の環境から逃げ出すのではなく、新しい機会に魅力を感じているかどうかです。最後に、カルチャーとの適合性。これは長期的な成功のために不可欠な要素となります。 - Go-to-Marketの実践
成功するGo-to-Marketには、体系的なアプローチが必要です。まず理想的な顧客像(ICP: Ideal Customer Profile)を明確にし、競合と差別化したマーケティングを行います。次に複数の集客方法を確立し、最後に営業の進め方を標準化します。これらの要素を着実に実行することで、持続的な成長が可能となります。 - 直感の活用
フレームワークや分析は重要ですが、直感も同様に大切です。静かに考える時間を作り、内なる声に耳を傾けることで、より良い判断ができます。この直感は、経験と知識に基づく重要な判断材料となります。 - 現実的な計画の立て方
計画を立てる際は、無理な目標は避け、実績データから現実的な計画を立てることが重要です。採用計画、営業計画、財務計画のすべてにおいて、この考え方を適用します。現実的な目標設定により、着実な成長が可能となります。 - ワークライフインテグレーション
仕事と私生活を無理に分けず、どの場面でも自分らしく振る舞うことが大切です。この一貫した姿勢が、より深い関係性の構築と、より良い仕事の実現につながります。 - リーダーシップの本質
リーダーシップでは、メンバーに応じた関わり方が重要です。経験者には目標と自由を与え、未経験者には手順と指導を提供します。この使い分けにより、チーム全体の成長を促進することができます。 - 信頼関係の構築
一貫した行動で信頼を築くことが、効果的なリーダーシップの基盤となります。これにより、意思決定が速くなり、チームの力も高まります。信頼関係は、長期的な成功のための重要な要素となります。
SaaS製品の価格設定
Lenny's Newsletter「Pricing your SaaS product」の一部を日本語で紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
プライシングは成長戦略の根幹であり、常に経営者を悩めせるテーマであります。一方で意外と、プロダクトの成熟や1stセグメントから次のターゲットに移行する中で、自社のバリュープロポジションに迷いが生じているケースがブロックになっていることを多く見かけます。今回紹介するLennyのブログは、Patrick Campbellにインタビューした内容となっており、まさにプライシングの決定版です。Value Metric(価値指標)と理想的な顧客プロファイルとセグメントの2点を重視した言及をしており、非常に本質的な内容になっています。
[海外]
バーティカル
- Tractian - 統合されたハードウェア、ソフトウェア、AIを組み合わせて製造業のメンテナンス活動を支援し、ダウンタイムを削減する製造業特化Co pilot。シリーズCで$120Mを調達。投資家はSapphire Ventures、General Catalystなど(Forbes)
- AMP Robotics - カメラ、AI、ロボットを組み合わせて、廃棄物処理の自動化ソリューション・施設運営。シリーズDで$91Mを調達。投資家はCongruent Ventures、Sequoia Capitalなど(TechCrunch)
- 9fin - 債券市場分析に特化したAI×Fintech×SaaSプラットフォーム。シリーズBで$50Mを調達。投資家はHighland Europe、Spark Capitalなど(Fintech Global)
- Yurts - 米国防総省も利用する防衛特化AIチャットボット。シリーズBで$40Mを調達。投資家はXYZ VC、Glynn Capitalなど(TechCrunch)
- Sage Solutions - 老人ホーム向けにコミュニティの運営を可視化し、入居者の日々のケアを改善するSaaS。シリーズBで$35Mを調達。投資家はIVP、Friends & Family Capitalなど(Yahoo! Finance)
- Cofactr - ハードウェア製造メーカー特化のサプライチェーン・マネジメントSaaS。シリーズAで$17.2Mを調達。投資家はBain Capital Ventures、YCなど(Leadsontree)
- HappyRobot - 物流事業者向けに、輸送管理システムと連携して、カスタマイズされたワークフローやエージェントAIを構築できるプラットフォーム。シリーズAで$15.6Mを調達。投資家はAndreessen Horowitz、Y Combinatorなど(Yahoo! Finance)
- Vooma - 物流業務の見積り作成、積荷構築、コミュニケーション管理などの重要な業務を合理化するAIプラットフォーム。シリーズAで$13Mを調達。投資家はCraft Ventures、Index Venturesなど(Yahoo! Finance)
- Lucra - ゲーミフィケーションでブランド・ロイヤルティを促進するSaaS。7GC、SeventySix Capitalなどから$10Mを調達(Yahoo! Finance)
エンタープライズ
- Cresta - コンタクトセンター向けエンド・トゥ・エンドの生成AIプラットフォーム。過去2年でARR 4倍、顧客数 約2倍に成長。シリーズDで$125Mを調達。投資家はWorld Innovation Lab、QIAなど(Yahoo! Finance)
- KPay - 香港・シンガポールベースの加盟店や中小企業向けのワンストップ財務管理プラットフォーム。シリーズAで$55Mを調達。投資家はApis Partnersなど(TechCrunch)
- Aerospike - AI/MLを活用したミッションクリティカルなアプリケーションを強化するリアルタイム・データベースSaaS。グロースラウンドで$30Mを調達。投資家はCIBC Innovation Banking(FinSMEs)
- Enterpret - プロダクト開発とCXチームのための顧客フィードバックAI分析SaaS。シリーズAで$20.8Mを調達。投資家はCanaan Partners、Kleiner Perkinsなど(Yahoo! Finance)
- Carbmee - ドイツ発のエンタープライズ向け炭素管理SaaS。シリーズAで€20Mを調達。投資家はCommerzVentures、Fly Venturesなど(EU Startups)
- BRM - AIを活用したベンダー管理・調達管理SaaS。シリーズAで$15Mを調達。投資家はCaffeinated Capitalなど(SaaS News)
サイバーセキュリティ
- Upwind - “ランタイム”セキュリティに重点を置いて、不要なアラートを削減し重要なアラートだけに集中させるクラウドセキュリティSaaS。シリーズAで$100Mを調達。評価額は$900M。投資家はCraft Ventures、TCVなど(TechCrunch)
- Axiado - インフラレベルの安全性を確保するプラットフォーム・セキュリティSaaS。シリーズCで$60Mを調達。投資家はMaverick Siliconなど(Forbes)
- Tuskira - AI×セキュリティ・メッシュを活用したサイバーアタック・ディフェンスSaaS。$28Mを調達。投資家はIntel Capital、SYN Venturesなど(Fintech Global)
フィンテック
- Lumin Digital - リテールおよびビジネスバンキング利用者の進化するニーズに対応するための、デジタルバンキングSaaS。$160M超を調達。投資家はLight Street Capital、NewView Capitalなど(PR Newswire)
- Mintifi - インド発の中小企業向けサプライチェーンファイナンスFintech×SaaS。評価額$750Mで約$80Mを調達。投資家はProsus(YourStory)
- Maybern - プライベートファンドの資産運用SaaS。シリーズAで$14Mを調達。投資家はPrimary Ventures、Friends and Family Capitalなど(Primary VC)
リーガルテック
- Lawhive - 予算が少ない小規模な法律事務所向けに、重い事務作業の多くを自動化し、応答時間を短縮し、より多くの顧客にサービスを提供できるAI×SaaS。シリーズAで$40Mを調達。投資家はGV、TQ Venturesなど(TechCrunch)
- Steno - 法廷報告サービスなどの訴訟プロセスを合理化するためソリューション。Trinity Capitalから$20Mを調達(Nasdaq)
その他
- Cake - あらゆる企業がオープンソースAIを活用するためのAIインフラSaaS。シードで$10Mを調達。投資家はGradient Ventures、Alumni Venturesなど(Yahoo! Finance)
[国内]
- any - ナレッジプラットフォーム「Qast」を運営。シリーズBでJICベンチャー・グロース・インベストメンツなどからのエクイティ調達、並びに北國銀行からデット調達合わせて約10.55億円の資金調達を実施(PR Times)
- amptalk - 「“日本の受注率”を上げるセールスイネーブルメント・カンパニー」として、業務効率化・人材育成など複数領域で製品を展開するマルチプロダクト戦略を推進。シリーズAで10億円の資金調達を実施。投資家はグローバル・ブレイン、Angel Bridgeなど(PR Times)
- Hubble - 法務と事業部門の協業性を高める契約業務・管理クラウドサービス、契約書を入れるだけでAIが網羅的な契約データベースを構築する契約書管理クラウドサービス等を提供。シリーズBファーストクローズで総額7億円を調達。投資家はJICベンチャー・グロース・インベストメンツ、DNX Ventures、Archetype Ventures(PR Times)
- find - 「落とし物クラウドfind」を提供。Dual Bridge Capital、HIRAC FUND、DIMENSION、ベータ・ベンチャーキャピタルからの株式調達(第三者割当増資及び株式譲渡)、ならびに三菱UFJ銀行、みずほ銀行、北國銀行からの融資により総額約7億円の資金調達を実施(PR Times)
- nat - iPhone/iPadを用いた新しい空間記録アプリなどを提供。シリーズAで総額5億円の資金調達を実施。投資家はDEEPCORE、TOPPANホールディングス、Dual Bridge Capitalおよび松岡広隆氏など(PR Times)
- aiESG - サプライチェーンESG分析評価コンサルティング・クラウドサービスを開発・提供。シリーズAで、融資合わせて総額約5億円の資金調達を実施。投資家はニッセイキャピタル、ジャフコグループ、かんぽNEXTパートナーズ(PR Times)
- プレカル - 薬局向けクラウド型レセコン、処方箋入力代行等の薬局DX事業を展開。2.3億円の資金調達を実施。投資家はDGりそなベンチャーズ、佐銀キャピタル&コンサルティング、DBJキャピタル、ユナイテッド、みずほキャピタル、個人投資家(PR Times)
- VisionAI - AIカメラによる省人化店舗ソリューションを提供。シードで5千万円の資金調達を実施。投資家はサイバーエージェント・キャピタル、New Commerce Ventures、サイバーエージェント(PR Times)