■「今週のSaaSxAIニュース」ピックアップ!

AIエージェントによるオートメーション革命
INSIGHT PARTNERS「AI Agents: Disrupting automation and reimagining productivity」の一部を日本語で紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
昨年11月に開催された、米VC Insight Partners主催のイベント「ScaleUp:AI」のセッションまとめ記事を。AIエージェントを取り巻く大きなトレンドについてわかりやすくまとめています。
主な要点は以下の通りです。
- AIエージェントは、すでにコパイロットを超えて、人による最小限の入力で複雑なタスクを実行できる自律システムへと進化しています。
- フィードフォワード型AIからフィードバック駆動型AIへシフトすることで、AIはより高度な推論、計画、適応ができるようになります。
- AIエージェントが実世界で機能するためには、特化型AIにしてドメイン固有の専門知識が必要不可欠になります。
- ヒューマン・イン・ザ・ループが信頼性と監視のために不可欠であることに変わりはないが、AIエージェントの一貫性と信頼性が証明されれば、人への依存度は低下します。
- AIエージェントの課金モデルは、サブスクリプションベースからアウトカムベースへシフトしており、顧客側の支払うコストとビジネス・インパクトに合わせるようになっています。
RipplingによるDeelへの訴訟について
OnlyCFO's Newsletter「Rippling Sues Deel for Corporate Espionage!」の一部を日本語で紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
先日、HR SaaSデカコーンRippling(評価額$14B)が、ライバル企業であるDeel(評価額$12B)への企業スパイ活動を告発する訴訟を起こしました。この記事では、今回告発された事案の内容やSaaS企業におけるコーポレートガバナンスの重要性について解説しています。
- 今回訴訟されたケース概要
- Ripplingがライバル企業Deelに対して企業スパイ行為、機密情報の窃取、社内スパイの育成を理由に訴訟を起こした。
- Deelは、2023年6月からRipplingで働いていた従業員をスパイとして利用し、Ripplingの機密情報(販売データ、価格設定、顧客情報など)を大量に盗み出した。このスパイは2024年11月から「Deel」という検索語を1日平均23回も検索するなど、不審な活動を行なっていた。
- Ripplingのセキュリティチームは、Deelの上層部がこのスパイ活動に関与しているかを確認するために「ハニーポット(サイバー攻撃者を引きつけて罠にかけるように設計されたおとりシステム)」を仕掛けた。
- さらなる情報収集のためにアイルランドの裁判所命令でスパイの電話提出を求められた際、スパイはトイレに逃げ込み、電話を提出せず、その場から逃亡した。
- 今回のケースからの教訓
- セキュリティチームをおろそかにしてはいけない
今回のケースでは、Rippling側のセキュリティチームが従業員の行動を監視していたことで発見できた。 - 企業スパイを行なった場合のコストは莫大なものになる
(まだ事実かどうか、司法の判断は確定していないが)Deel側は調査や弁護士費用のほかに、従業員の損失、営業上の競争優位を失うことになるかもしれない。 - (見かけも含めて)強力なコーポレートガバナンスは重要
Deel側のCFOがCEOの父親であることも、おおざっぱなコーポレートガバナンス意識だったことを指摘されている。
- セキュリティチームをおろそかにしてはいけない

マイクロマネジメントとパートナーシップの区別
Simon Sinek氏のYoutube「The Secret Art of Micromanagement with Airbnb CEO Brian Chesky | A Bit of Optimism Podcast」を日本語で紹介したものです。全内容はリンク先をご覧ください。
Airbnbの創業者 Brian Chesky氏が、作家Simon Sinek氏のポッドキャストでリーダーシップについて語りました。クオリティの高いアウトプットへのこだわりや、「パートナーシップ」を意識したマネジメントスタイルが特に面白いと思いました。以下が主なポイントです。
- ハンズオンなリーダーシップによる基準の確立
ゴルフのインストラクターが適切なフォームを教えるために最初はハンズオン(手取り足取り)指導するように、リーダーもアウトプットやエグゼキューションの基準を確立するために、最初は積極的に関与すべき。Chesky氏は意図的に非常にハンズオンなアプローチを取りました。会社から出すプロダクトや機能リリースを自ら確認し、ときにはプレスリリースに何十回もの修正を加えることもありました。これは組織全体に卓越性の基準を浸透させるためでした。この集中的な関与が一時的なものであるという点が重要です。チームがこれらの基準を身につけて組織として定着させることができれば、最初はハンズオンだったリーダーが徐々に手を引くことができます。現在、Chesky氏はプレスリリースにほとんど修正を加えていません。それはチームが求められる品質水準を理解しているからです。Chesky氏によると、リーダーの直接的な関与が必要となる場面は、以下に絞られます。- 基準を確立する必要がある新しいチーム
- 基準を引き上げるべき領域
- 会社が方向転換する必要がある状況
- マイクロマネジメントとパートナーシップの区別
Chesky氏は、一般的に「マイクロマネジメント」と呼ばれるものを「創造的なパートナーシップ」として再定義しています。Chesky氏が、AppleのSteve Jobs氏と共にデザイン責任者として働いていたJony Ive氏に対して、「Jobs氏の細部へのこだわりがマイクロマネジメントと感じられましたか?」と質問すると、彼は「いいえ、彼は私とパートナーシップを組んでいました」と答えたとのこと。このパートナーシップの視点は「あなたの仕事と私の仕事」という区分けの考え方を否定しています。Chesky氏は、人々に何をすべきか細かく指示する代わりに、以下の点に焦点を当てています。- 明確な基準と成果目標の設定
- 率直なフィードバックの提供
- 思考を促す挑戦的な質問
- 部門間のコミュニケーション

SaaS は永久に消滅するのか? AI がソフトウェアの未来をどう変える?
The VC Corner「Is SaaS Dying for Good? A Look at How AI Is Reshaping the Future of Software」の一部を紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
今週は、Ruben Dominguez Ibar氏によるThe VC Cornerというメルマガより記事をピックアップ。AIがSaaSの未来についてどのような影響を及ぼすのか、さまざまなブログや記事が出ていますが、このブログは豊富な参考文献をもとに素晴らしく整理されていたので、取り上げました。
重要な問いは「SaaSが生き残るかどうかではなく、生成AIというテクノロジーをどのように活用して次のSaaSの姿を再定義するか?」というものであると結論づけていますが、エンタープライズ企業におけるSaaSが必要不可欠な理由(決定論的システムと確率論的システムの違いなど)やコンパウンドの発想につながるベスト・オブ・ブリードの見直しなど、議論の土台となる前提が適切に記述されています。
■ 資金調達ニュース
[海外]
エンタープライズ
- Nerdio - マイクロソフトAzureの導入・管理を自動化するインフラ系SaaS。評価額$1B超のシリーズCで$500Mを調達。投資家はGeneral Atlantic、Lead Edge Capitalなど(TechCrunch)
- Factorial - スペイン発の中小企業向けオールインワンHR SaaS。General Catalystなどから$120Mを調達(TechCrunch)
- Dataminr - テキスト、画像、ビデオ、音声、センサーデータをクロールして世界中の出来事をリアルタイムで監視する分析AI。NightDragon、HSBCなどからデット・エクイティ合計で$85Mを調達(TechCrunch)
- Carbon Arc - 企業のAIプロジェクトのデータ調達に最適化したデータセットを提供するSaaS。Liberty City Venturesなどから$56Mを調達(Silicon ANGLE)
- Prezent - 生成AIを活用した企業向けプレゼンテーション自動作成AI。Greycroft、Zoom Venturesなどから$20Mを調達(TechCrunch)
- Gradial - 前年比30倍で成長するマーケティングオペレーション特化AIエージェント。シリーズAで$13Mを調達。投資家はMadrona、Proven Capitalなど(GlobeNewswire)
ソフトウェア開発支援
- Cognition AI - コーディングアシスタントAI「Devin」。評価額$4Bで$数百万ドルを調達。投資家は8VC、Founders Fundなど(Tech In Asia)
- Graphite - AI(特にAnthropicとOpenAIのモデル)を活用したコードレビューAI。シリーズBで$52Mを調達。投資家は Accel、AnthropicのAnthlogy Fundなど(TechCrunch)
- TurinTech - コードを洗練させ、パフォーマンス、セキュリティ、スケーラビリティを向上させる「バイブ・コーディング」AI。シード・シリーズA合計で$20Mを調達。投資家はOxford Capital、Circle Rockなど(TechCrunch)
- Arcade.dev - Okta元幹部が設立したAIエージェントインフラSaaS。Perplexity/Databricks共同創業者が設立したLaude Venturesからシードで$12Mを調達(TechCrunch)
バーティカル
- Inn-Flow - ホテル業界特化のバックオフィス(会計、労務管理、給与計算、ビジネスインテリジェンスなど)向けオールインワンSaaS。Mainsail Partnersなどから$45Mを調達(Business North Carolina)
- Augment - 物流業務のメール、電話、データ入力などのルーチン・タスクを自動処理するAIエージェント。シードで$25Mを調達(Yahoo! Finance)
フィンテック
- NymCard - 中東・北アフリカ地域向けのカード発行処理、組込型融資などのEmbedded Finance SaaS。シリーズBで$33Mを調達。投資家はQED Investors、Shorooqなど(Yahoo! Finance)
- Crossmint - 企業がウォレットやトークン化から決済まで一貫して構築できるオンチェーンAIエージェント。Ribbit Capital、Franklin Templetonなどから$23.6Mを調達(Yahoo! Finance)
サイバーセキュリティ
- VIA - 最高レベルのセキュリティ技術を持つデータ・ID保護SaaS。シリーズBで$28Mを調達。投資家はBosch Ventures、BMW i Venturesなど(citybiz)
- VulnCheck - サイバーセキュリティチーム向けの脆弱性管理・優先順位付け支援SaaS。シリーズAで$12Mを調達。投資家はTen Eleven Ventures、In-Q-Telなど(Yahoo! Finance)
ハードウェア×AI
- Apptronik - 米テキサス大学発の産業向けヒューマノイドロボット。シリーズBで$53Mを調達。投資家はB Capital、Capital Factoryなど(TechCrunch)
リーガルテック
- Norm AI - アメリカの連邦・州法などの規制の定期的なコンプライアンス・レビューを実施するAIエージェント。Coatue、Craft Venturesなどから$48Mを調達(Silicon ANGLE)
その他
- Evroc - スウェーデン発の安全性の高い持続可能なハイパースケールクラウド。シリーズAで$55Mを調達。投資家はEQT Ventures、Norrsken VCなど(TechCrunch)
M&A
- Wiz - クラウドセキュリティで急成長するデカコーン。Googleが$32B全額現金による買収。Googleの過去最大の買収案件に (TechCrunch)
[国内]
- NodeX - IoT × セキュリティで社会課題を解決。プレシリーズAで6億円を調達。投資家はDNX VenturesおよびITOCHU Technology Ventures(PR Times)
- モノグサ - 記憶定着のための学習プラットフォーム「Monoxer」の開発・提供。SBI新生銀行、福岡銀行、静岡銀行からの8億円のデットファイナンスを実施(PR Times)
- ハイクリ - アパレル・EC業界の在庫管理や販売戦略の非効率性解消を目指してMD支援AISaaSを開発・提供。プレシードラウンドで資金調達を実施(PR Times)
IPO
- TalentX - リファラル採用サービス『MyRefer』、採用MA(マーケティングオートメーション)ツール『MyTalent』、採用メディア作成支援ツール『MyBrand』からなる採用DXプラットフォームを提供。2025年3月18日に東証グロース市場へ新規上場。初値時価総額 56.5億円(日本経済新聞)