■「今週のSaaSxAIニュース」ピックアップ!

AIスタートアップの新しいリスク曲線:急成長と急衰退の理由
Clouded Judgement「Clouded Judgement - 3.28.25 - The New AI Risk Curve」の一部を日本語で紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
AIスタートアップは、従来のSaaS企業よりも急速に成長している一方で、「フォールス・スタート」(一見成長軌道に乗ったように見えても、その後減速し収益が減少するケース)も増えています。Clouded Judgementの記事では、過去のオンプレミスからクラウド、そしてAIへの技術進化の流れのなかで、起業のハードルは急速に下がっています。しかし同時に、競合他社が追いつけないほどの成長速度(「エスケープ・ベロシティ」)を達成するための基準も高くなっています。その上、企業が大きく成長した後でも、常に市場シェアを奪われるリスクにさらされ続けることを示唆しています。
これは投資家にとって、持続可能な成長・競合優位性の確認がかつてないほど難しくなってきていることを意味することにもなります。
効率的な時間の使い方を考える「リーダーシップの縦軸×横軸」
Gaurav JainのMedium「Mind Boxing: How Leaders (Should) Spend Their Time (The 6 Box Framework)」の一部を日本語で紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
リーダーシップの役割は複雑であり、様々なスタイルや背景、アプローチが存在します。この記事では企業のリーダーが時間を最適化し、最大の価値を生み出すための「マインドボックス」フレームワークを紹介しています。
リーダーシップの3つの縦軸(3P)
- 人(People)
- 組織の基本的な構成要素
- 信頼と帰属感のある環境を提供する
- コーチ、メンター、タスクマスター、問題解決者などの役割を担う
- チームの成長、評価、説明責任を管理する
- プロセス(Process)
- 効率性と有効性のバランスを取る
- 最適なリソース活用を確保する
- チームが正しい方向に進んでいるか確認する
- 実行の障害を取り除き、自動化を推進する
- KPIやメトリクスで効率性を監視する
- プロダクト(Product)
- 実際のニーズを解決する最高の製品を構築する
- 顧客のニーズと要望に注意を払う
- 競争に勝ち、市場でリードする方法を探る
- イノベーションを続け、顧客基盤を拡大・維持する
リーダーシップの2つの横軸
- 戦略(Strategy)
- 多くのリーダーにとって最も弱い領域
- 長期的な視点で組織の方向性を考える
- リソース戦略、スキルギャップ、長期的なロードマップを計画する
- チームの強みを生かし、弱みを減らす方法を考える
- 戦術(Tactics)
- 日々の実行と結果の達成に焦点を当てる
- 現状の優先事項に対応する
- チームのブロック解除や方向性の提供を行なう
- 顧客エスカレーションや緊急の意思決定に対応する
どうやってボックスフレームワークを使うのか?
- 6つのボックスに時間をどう配分するか決定する(例:戦略70%、戦術30%)
- カレンダーやTODOリストを見直し、時間配分に合わせて調整する
- 定期的に配分を見直し、役割や事業ニーズの変化に対応する
誰もが一緒に働きたいと思う“優れたマネジャー”になるには?
Tobias CharlesのMedium「How to Be a Manager Everyone Wants to Work for」の一部を日本語で紹介したものです。全文はリンク先をご覧ください。
Mediumで話題になった記事。“良い人であること”に頼らず、メンバーが「このチームで一緒に働きたい」と感じられるような、“優れたマネージャー”になるための8つのポイントを解説しています。
- 重要なことを立ち向かう勇気を持つ
- 言葉よりも行いを大切にする
- 自分へ奉仕する前に、まずチームに奉仕する
- 明確かつ頻繁にコミュニケーションする
- オープンマインドで居続ける
- グループのみならず個人も大切にする
- 挑戦的だが達成可能な基準を設定し、全員が実現できるようサポートする
- 一貫性と透明性を保ち続ける

AIファースト時代でもソフトウェアベンダーが成功し続ける3つの理由
20VC with Harry StebbingsのYoutube「Jake Saper, GP @ Emergence Capital: "We Sold Salesforce Early and Lost Out on Billions"」を日本語で紹介したものです。全内容はリンク先をご覧ください。
AIツールの進化により、コーディングはかつてなく速く、低コストになりました。それでも、ソフトウェアベンダーはこれからも必要とされ続けます。SalesforceやZoomといった有名企業への投資で知られる米国の著名ベンチャーキャピタル「Emergence Capital」のJake Saper氏が、20VCのポッドキャストでその理由を3つ挙げています。
- 提供されるのはコードだけではない「専門知識」
ソフトウェアベンダーのプロダクトを購入することは、単にプログラムコードを手に入れることではありません。それは、多くの顧客事例を通して磨き上げられた、ベンダーが持つ独自の知見や専門知識を得ることでもあるのです。 - AIでも解決できない「メンテナンス」の課題
AIによってソフトウェア開発が容易になったとしても、完成後の「メンテナンス」という課題はなくなりません。Saper氏が指摘するように、多くの企業はまず「自社開発」を試みますが、継続的なメンテナンスの大変さに気づき、結局は「購入」という選択に戻ることが多いのです。 - 顧客が求める「信頼と説明責任」
おそらく最も重要な点が、お客様は「信頼できる相手」、つまり問題が起きたときに責任をもって対応してくれる存在を求めているということです。サービスの品質保証、安定稼働(ダウンタイムのなさ)、充実したサポート。これらは自社開発ではなかなか得られない安心感です。Saper氏の言葉を借りれば、お客様はベンダーに対し「きちんとサービスを提供し、システムを安定稼働させ、困ったときにはいつでも対応してくれる」という信頼感を求めているのです。
AIがソフトウェア開発を誰にでも可能にする「民主化」を進める世界だからこそ、ソフトウェアベンダーが提供する「専門知識」「継続的なメンテナンス」そして「万が一の際の説明責任(=信頼性)」などの価値が、これまで以上に重要になるのかもしれません。
■ 資金調達ニュース
[海外]
バーティカル
- Fleetio - 企業向け車両最適化・管理SaaS。Elephant VC、Goldman Sachs Alternativesなどから$450Mを調達し、車両メンテナンス認証プラットフォームを提供するAuto Integrateを買収(Investing.com)
- Rogo AI - 金融アナリスト・投資家向けAIアナリスト。評価額$350Mで$40Mを調達。投資家はThrive Capital、Khosla Venturesなど(The Information)
- Nanoprecise - IoTセンサー技術と人工知能および機械学習を組み合わせたAI搭載のエネルギー中心の予知保全ソリューション。シリーズCで$38Mを調達。投資家はYaletown Partnersなど(PR Newswire)
- Inspiren - 高齢者ケア業界向けのケアプランの改善、入居者の安全性向上などのAIソリューション。シリーズAで$35Mを調達。投資家はAvenir、Primary Venture Partnersなど(Yahoo! Finance)
- Arcade - ジュエリーやホームグッズのデザイナー向け生成AIデザインツール。シリーズAで$25Mを調達。投資家はTesla元CFO Zach Kirkhorn氏、Bullpen Capitalなど(TechCrunch)
- Lumber - 建設現場のワークフォースマネジメントAI。シリーズAで$15.5Mを調達。投資家はFoundation Capital、Carbide Venturesなど(Yahoo! Finance)
- Brisk - 学校の教師や生徒がクロームの拡張機能を使って約40ものAI機能を提供するAIネイティブなEdtech SaaS。Bessemer Venture Partners、Owl Venturesなどから$15Mを調達(TechCrunch)
- DeepIP - 弁理士向け特許ドラフティングAI。シリーズAで$15Mを調達。投資家はResonance、Headlineなど(Yahoo! Finance)
- Sympera AI - 銀行のリレーションシップ・マネージャーが顧客のニーズや優先事項に基づいてオーダーメイドのソリューションやアドバイスを提供できるようにする「銀行特化AIエージェント」。シードで$10Mを調達。投資家はNyca Partners、Viola Venturesなど(Yahoo! Finance)
- BuildVision - 建設業界特化のクラウドネイティブな調達プラットフォーム。Norwest Venture PartnersなどからシリーズAで$10Mを調達(Yahoo! Finance)
エンタープライズ
- Island - 高度なセキュリティ、ITおよびネットワーク制御、データ保護などが可能なエンタープライズ向けブラウザSaaS。Post Money $4.8Bの評価額のシリーズEで$250Mを調達。投資家はCoatue、Sequoia Capitalなど(CTech)
- Buynomics - 機械学習と行動経済学を応用し、価格設定、プロモーション、商品ポートフォリオを高精度で最適化する。シリーズBで$30Mを調達。投資家はForestay Capital、Anais Venturesなど(Yahoo! Finance)
- doinstruct - 従業員のコンプライアンストレーニング特化AI。シリーズAで€16.5Mを調達。投資家はHV Capital、Creandumなど(SaaS News)
- Jolly - 航空会社のマイル制度のように従業員が職場でポイントをためる機会を提供するワークフォース最適化SaaS。シリーズAで$16.5Mを調達。投資家はFoundation Capital、Carbide Venturesなど(Yahoo! Finance)
- Hakimo - 既存の物理セキュリティシステムを監視し、リアルタイムで脅威を検知するAIセキュリティエージェント。シリーズAで$10.5Mを調達。投資家はVertex Ventures、Zigg Capitalなど(VentureBeat)
ソフトウェア開発支援
- n8n - 「フェアコード」を活用したAIネイティブなワークフロー自動化プラットフォーム。評価額€250Mで€55Mを調達。投資家はHighland Europe、Sequoia Capitalなど(TechCrunch)
- Browser Use - AIエージェントがウェブサイトをより「読みやすくする」ツール。シードで$17Mを調達。投資家はFelicis、SV Angelなど(TechCrunch)
- Kosli - ソフトウェアデリバリーのGRCソリューション。シリーズAで$10Mを調達。投資家はドイツ銀行のCVC Heavybit、Defined Capitalなど(Yahoo! Finance)
ハードウェア×AI
- Dyna Robotics - 元DeepMindの研究者Jason Mah氏による、一度に1つの作業をマスターするAI搭載ロボット。CRV、First Round Capitalなどから$23.5Mを調達(FinSMEs)
- Rerun -ロボットなどのフィジカルAI特化のAIプラットフォーム。シードで$17Mを調達。投資家はPoint Nineなど(TechCrunch)
- Contoro Robotics - トレーラー・コンテナの荷下ろし特化のAI搭載ロボット。シリーズAで$12Mを調達。投資家はAmazon Industrial Innovation Fund、Doosanなど(Yahoo! Finance)
ヘルスケア
- Amboss - 臨床医や看護師に治療や診断に関する実用的な提案をするヘルスケア特化コパイロット。Kirkbi、M&G Investmentsなどから€240Mを調達(Yahoo! Finance)
- Navina - 臨床医がより個別化された患者ケアを提供できるよう、リアルタイムでデータからの患者インサイトを提供するAIコパイロット。シリーズCで$55Mを調達。投資家はGoldman Sachs Alternativesのグロース・エクイティなど(CTech)
- Layer Health - MITからスピンアウトした、医療診断記録の非構造データをLLMを活用してレビューするAI。シリーズAで$21Mを調達。投資家はDefine Ventures、GV(Google Ventures)など(mobi health news)
サイバーセキュリティ
- GetReal - AIによるディープフェイクメディア検知サイバーセキュリティAI。シリーズAで$17.5Mを調達。投資家はForgepoint Capital、Ballistic Venturesなど(TechCrunch)
フィンテック
- Mendel - 企業の支出管理SaaSを提供する「メキシコ版Ramp」。シリーズBで$35Mを調達。投資家はBase10 Partners、PayPal Venturesなど(TechCrunch)
- Rain - ステーブルコインを利用したグローバルなカード発行プラットフォーム。Norwest Venture Partnersなどから$24.5Mを調達(Finextra)
その他
- Nexthop AI - クラウド企業向けに世界最大の次世代AIインフラを提供。Lightspeed Venture Partners、Kleiner Perkinsなどから$110Mを調達(Yahoo! Finance)
- Yutori - マルチモーダルAIの研究をしていたMeta元幹部らが設立した個人向けデジタルタスク自動化AIアシスタント。シードで$15Mを調達。投資家はRadical Ventures、Felicisなど(Yahoo! Finance)
[国内]
- キャディ - 製造業AIデータプラットフォームCADDiを提供。長期デットとエクイティを合わせたシリーズCエクステンションで総額91億円を調達。投資家はAtomico、SMBC-GB グロース1号投資事業有限責任組合、Minerva Growth Partnersなど(PR Times)
- ドライバーテクノロジーズ - 物流・輸送事業者向けに、AIとDXを活用した保有車両の稼働率向上のためのマッチングソリューションを提供。シリーズAで5.5億円の資金調達を実施。投資家はヤフー元社長の小澤隆生氏率いるブーストキャピタル、ごうぎん Skyland Next Fund、京都フィナンシャルグループ傘下の京都キャピタルパートナーズなど(PR Times)
- ネクスタ - 製造業向け生産管理クラウド「SmartF」を提供。2.2億円のデットファイナンスを実施(PR Times)
- リーガルテック - 知財特化型AIリーガルテックソリューションを提供。累計3.8億円の資金調達を発表(PR Times)
- ハイクリ - アパレル業界向けに在庫消化日数予測、売れ点数の予測、適正価格の提案などのMD支援AI SaaSを開発・提供。資金調達を実施したことを発表(創業手帳)