SaaS企業のお手本、セールスフォース・ジャパンのインサイドセールス、森岡優香さんの一日に密着しました。営業成績、マインドともにトップのパフォーマンスを発揮している森岡さんに、毎日の活動で重視していることを聞いてみました。
これぞ、「インサイドセールスの完成形」と言えるようなロールモデルの一つだと感じました。
──セールスフォース・ジャパンのインサイドセールスは、どういった組織体ですか?
営業プロセスをマーケティング、インサイドセールス、フィールドセールス、カスタマーサクセスに分けるThe Model型の組織です。
インサイドセールスは、SDRとBDRで成り立っています。SDRはインバウンドリードへの対応を行い、BDRはアウトバウンドを担います。どちらもフィールドセールスへパスできた案件数や金額が目標です。
私は、現在はSDRチームに所属しています。
──SDRのKPIはなんですか?
私はSDRのミッションを「フィールドセールスとお客様へより良い提案を届けること」だと考えています。実際のKPIとしては、商談化件数、受注件数を追っています。
セールスフォース・ジャパンでは、商談を8つのフェーズで管理しています。
中でも、インサイドセールスが重視しているのはフェーズ2(顧客のニーズを把握し合意する)です。アポイントでお客様のお役に立てるかどうかを意識することで、フィールドセールスにも温度感の高い商談機会を提供できます。
ここで、フェーズ1を追ってしまうと、アポイント数だけを意識してしまいがちになってしまうのです。
──森岡さんの一日の活動スケジュールを教えてください。
朝一、午後一、夕方の時間帯はお電話が繋がりやすいので、集中的に架電します。カレンダー上でも「架電の時間」としてブロックしています。
その他の時間は、架電先の確保、メール対応、一緒に活動しているフィールドセールスとの1on1などにつかっています。
──架電は一日に何件を目安にしていますか?
平均すると30コールしています。ただ、架電件数よりも、コネクト(顧客候補とリードを見極めるための有効な会話)件数を意識しています。毎日、8〜10コネクトを目指しています。
いまは相手方も在宅勤務が多いため、メールでのコネクトもカウントしています。目標のコネクト数を達成できれば、日々1〜2アポイントを獲得できます。
──活動を振り返る際の指標は?
アポイント数が足りなければ、その週のうちに取り戻すようにしています。
1日だけの未達なら確率の問題の場合もありますが、未達が連続したときは活動先の選定や活動社数が少なくなっていないかを見直します。
──活動先の選定が重要そうですね。その管理はどのように?
SalesforceのToDo機能を使って、架電先のリストを作成しています。
一日の架電目標は30件ですので、次の日のToDoに最低でも15件は確保できた状態で、その日の業務を終えます。お電話がつながらないこともあるので、再架電などを含めて30件達成できるだけのToDoを持つようにしています。
ToDoの件名にも工夫をしていて、「A:xx月アポ取れそう、Pardotへご関心あり」のように記載内容をルール化しています。最初のAはアポイント取得の温度感を表す「電話の優先度」、次にアポイントの時期や架電の内容を記載します。再架電する際に会話記録をゼロから振り返る手間をなくしています。
──どのような架電準備をしていますか?
新規リードであれば10分くらいの準備時間を取ります。企業ウェブサイトだけでなく、Wantedlyやリクナビといった媒体も確認し、採用情報と顧客接点を必ず掴むようにしています。
採用情報が載っていれば、新規営業が多いのか、ルート営業なのかといったスタイルや取り扱い商材の魅力がまとめてあるので必ずチェックします。
これらの情報を見ながら、架電企業の商材、顧客の流入経路、マネタイズを考えて、最低でも提案する観点を2つお伝えできるように準備します。
また、お電話相手の名前をGoogle検索して、インタビュー記事やLinked in、SNSも見ます。アイスブレイクのタネになるのです。ラポール形成ができ、親しみを持っていただきやすくなります。
──お電話がつながったときは何を意識していますか?
だいたい5〜10分ほど会話することが多いです。お客様の温度感次第ですが、当日の期待値と提案観点だけは最低限合意して終話するようにしています。
インサイドセールスの重要な役割として、見込み客の育成(ナーチャリング)があります。ある企業にお電話したところ「インサイドセールスに興味があり、社内で体制を整えている最中」とおっしゃったので、少し相談に乗るような形でのお話になったことがあります。
当時は「時期尚早」でアポイントはいただけなかったのですが、その後も定期的にインサイドセールスに関する情報をメールでご案内しておりました。そして、そのメールの返信からアポイントに繋がり、受注に至ったという経験があります。
フィールドセールスは受注確度の高い案件を追いかけますが、インサイドセールスはこのように見込みのお客様の温度感を高めることも大切だと実感した出来事でした。
──日々の活動を管理しているダッシュボード、見せていただけませんか!
メインのダッシュボードは、こんなイメージです。
当日のCall数、有効会話数、アポイント獲得数をメインに、それぞれ週と月の数字も表示して、達成までの進捗を確認します。
自分の活動先となるリードの保有状況や、メールの活動も可視化させて、しっかりできているかをチェックします。
一日の始めと架電タイムが終わるごとに最低1回は見ているので、1日4回はこのダッシュボードで自分の活動が正しく行えているかを確認します。
他にも、SDRチーム全体で見ているダッシュボードもあります。
「定量でパフォーマンスを証明する」というタイトルにあるように、定量で活動を管理すること、一日単位ではなく時間単位で修正をかけていきます。
──詳細な活動管理ですね。数字の目標はどのように立てていますか?
月初に、これまでの活動の傾向から分析して、今月の目標数字を立てます。最終的な商談化数から逆算して、一日の架電数や有効会話数にまで落とし込みます。
──フィールドセールスとはどのように協業していますか?
私が担当しているフィールドセールスは3名おり、週1回で15~30分くらいの1on1を実施しています。活動状況の共有や、その月に求めてているアポイントの内容などをすり合わせます。たとえば、新規顧客をたくさん欲しいのか、温度感の高いアポイントに絞りたいのかは、メンバーによっても異なります。
インサイドセールスもACVを見て活動しますので、フィールドセールスが契約を達成するために必要なパイプラインを意識することが重要です。
──ミーティングで取り上げるテーマは?
週1回で行うチームミーティングでは、数字の振り返り、その月の注力ポイント、メンバーからのナレッジシェアを行っています。
マネージャーとの1on1も週1回で、数字の振り返り、翌週のプランといった数字面の話と、中長期的にはフィールドセールスとして立ち上がるための行動計画や商談同席時の経験を振り返っています。
──セールスフォース・ジャパンはSales Enablementの仕組みも有名ですね。どういったトレーニングが行われていますか?
特に役立っているのは、ビジネスフレームワークの講座です。SWOT、5C、SWOT、アンゾフのマトリクス、AIDMAなど、考え方をたくさん学びます。架電準備の際に網羅的な提案観点になっているかといったチェックに実際に活用しています。タイムマネジメント講座など、より毎日の業務に特化した講座もあります。
まとめ
セールスフォース・ジャパンのインサイドセールスは、詳細に活動計画と管理をしていることがわかりました。The Modelの組織構成そのものはもちろん、インサイドセールス一人ひとりの活動も、目標から毎日の架電数まで逆算して徹底されています。
これからインサイドセールスを立ち上げるSaaSスタートアップでも、この逆算の考え方を意識して活動計画を立てていきたいです。