SaaSを提供する成功企業の多くで取り入れられている「1on1」ミーティング。社員との信頼関係を築き、成長を促進し、目標の達成度をすり合わせられるパワフルなマネジメントツールです。ただ、1on1の効果を正しく得るためには気をつけるべきポイントがあります。
ALL STAR SAAS FUNDでは、投資先の経営者へ「1on1改善プログラム」を行っています。今回はその経験から、経営者が陥りがちな1on1の言動に焦点を当て、ミーティング時間30分でも最大の効果を出すための方法を解説します。
そもそも、1on1では何をすべきなのか
そのそも1on1とはどんな時間なのか、前提を振り返ってみましょう。
誰が:上司と部下が一対一
いつ:週1~隔週に30分程度の短いサイクルで定期的に
目的:部下の成長を促進する時間
チームの進捗確認や、半年に一度の評価面談とは異なり、高い頻度で行われます。
一番に大切なことは、マネージャーが欲しい情報を得るための時間ではなく、部下の悩みや考えを引き出し、育成するための時間であるということです。
1on1改善プログラムでしていること
上記を理解していたとしても、1on1を経営者やマネジメント層が自力でブラッシュアップしていくのは、実は時間がかかるものです。そこでALL STAR SAAS FUNDでは「1on1改善プログラム」を提供しています。経営者とメンバーの1on1を録画し、チェックして「Keep(続けること), Problem(やめること), Try(挑戦すること)」のKPT法の観点からフィードバックを行います。
1on1改善プログラムを重ねてくると、経営者が1on1で誤りがちなことが見えてきました。そこで、よく見られる間違いを4つ紹介します。
経営者が1o1でよく起こす間違い4つ
1. アイスブレイクが少ない
経営者は、すぐに進捗確認やキャッチアップに入りたがる人が多いようです。しかし、話しやすい空気を作り、信頼関係を構築することが、効果的な1on1を行うためには重要なのです。一週間の出来事、家族や趣味の話題など、パーソナルなコネクション作りの時間を持つようにしましょう。1on1の冒頭では必ずアイスブレイクを入れ、時間が余った場合は最後にも行うとよいです。まずは経営者自らが仕事以外のテーマで自己開示していくことが秘訣です。
2. 発言量が多い
経営者はミッションに対して熱量が高く、常に会社のことを考えて過ごしています。そのため、自分のパッションとアイデアをついつい語りたくなってしまうもの。しかし、1on1の目的の一つは、部下の成長と思考の整理であり、それを実現するためには経営者は聞き手にならなくてはいけません。概ね話す割合は、部下が全体の7割、経営者が3割を目指しましょう。
3. すぐにTeachingに入ってしまう
様々な業務や役割の経験がある経営者は、部下が悩んだり考えたりしている時に、すぐにやり方や答えを教えてしまいがちです。答えを教える前に、コーチングで考えを引き出し、整理する機会を設けましょう。
コーチングでは、以下の技法と質問を試してみてください。
- 部下が話した内容を要約して「くり返す」、または「言い換える」
- (答えを話す前に相手に考えさせるため)数秒の沈黙を入れる
- 「うまくいった/いかなかった理由は何だと思いますか?」
- 「今、一番重要なことは何ですか?」(ポイントを絞って考えてもらう)
- 「あなたなら、この課題にどんな判断をしますか?」
- 「あなたがコントロールできることは何ですか?」
- 「最初からやり直せるなら/もっと時間/リソースがあったらどうしますか?」
4. フィードバックを求めない
相手からのフィードバックをきちんと受け入れる態度を見せることは、信頼関係の構築でもポイントです。
経験値の多い経営者相手に、まっすぐなフィードバックができる人はそう多くはありません。経営者から、自らに対するフィードバックを求める質問を、定期的にしていきましょう。そして、フィードバックに対しては自分をかばったり言い訳をしたりせず、受け入れて次のアクションやコミットを示すことが大切です。