SaaSの魅力に「KPIのわかりやすさ」がある。さらに、指標となるベンチマークやリアルな戦術といったノウハウも、オープンに広まってきている。ところが、数字や戦術だけに着目していると、気づかぬ落とし穴に陥るのも、SaaSの面白さであり、怖いところだ。
今回はアメリカで起業し、「社員間の表彰(リワード)」プラットフォームを手掛けるFondの福山太郎さんに、ALL STAR SAAS FUNDのマネージングパートナー・前田ヒロが「SaaS経営」についてインタビューしたPodcastを、テキスト版に編集してお届けする。
福山さんは2012年にSaaSスタートアップを開始。創業期含め、PMFも二度経験するなど、成功と失敗の両面を肌で感じ取ってきた。それらの学びから、PMFで押さえるべきポイント、THE MODELの捉え方、社長の役割、経営戦略についてなど、さまざまなトピックスを明かしてくれた。
まずは「3人に愛される製品」をつくる
前田:Fondを始めてから、さまざまな成功と失敗を経験してきたと思うのですが、特に覚えている失敗からの学びを、まず教えてもらえますか。
福山:一つはPMFを探っているときに、「1000人に好かれる製品よりも、3人に愛される製品のほうがよい」という気づきを得たことですね。
前田:それに気づけたのには、きっかけがあったのですか。
福山:単価と解約率に表れてきたと思います。顧客の抱えている課題が大きければ大きいほど、解決したときに感謝される度合いも大きい。そうなれば、感謝に比例して単価は上がりますし、解約率も下がる。「単価が高く、解約率が低いSaaSは成長しやすい」という持論から見ても、「好き」ではなく「愛される」製品を作れることが大事なんだ、と。
Fondは2012年に福利厚生サービスの「Perks」を始め、2015年に日本で言うピアボーナス型のリワードビジネスを展開したので、実はPMFを2回行っているんです。
これはPerksのときの反省ですが、他のSaaS成長企業を横目にすると、どうしても成長率を気にかけてしまい、多くの人に好かれるプロダクトを作ろうとしてしまう。すると、顧客からの熱量がそれほど高くなくても、できるだけ広めることに注力しすぎるんです。
結果として、あまり単価が上げられず、解約率も高くなる時期がありました。ですから、2015年からは反省を踏まえて、どれだけお金を払ってもいいから導入したいと思ってもらえるような、「愛されるプロダクト」をいかに作れるかを重視してきました。
前田:PMFを探すプロセスで、絶対に考えるべきポイント、確認するべきポイントは?
福山:「顧客とできるだけ会う」のは本当に大事です。Perksを始めた2012年の頃、ぼくは英語がそれほど話せなかったせいもあり、顧客と会うよりもExcelを見る時間が長かった。それだと顧客からの声は聞けないし、社員を通じての間接的なフィードバックだけだと、本当の課題がどこに潜んでいるのかがわからないまま、進まなければいけなくなります。
それを「顧客と会って話をして、質問をし続ける」という姿勢に変えたのは、今につながる大きな役割を果たしているのではないかと思います。たとえば、「売上トップテンの顧客と過去半年に何社会ったか」と問われて、「1社か2社」ではまずい。PMFもGo-To-Market-Fitも顧客ありきのものですから、トップは初期段階こそ顧客と関わるべきだと思います。
“Excelの罠”にはまらないための「4つの成長レバー」
前田:特にSaaS経営者は「Excelを見る時間が増える」という罠に陥りやすいと感じています。おそらく、Excelを見るべきフェーズと、そうではないフェーズがあるんですよね。どうすれば、“Excelの罠”にハマらずに済むでしょうか。
福山:Excelを見ながら「ここを2倍にしたら2倍成長できる」といった計画立てを、僕自身も何度か犯してしまったのですが、そうすると「成長レバーの順序」を見失ってしまう。会社の成長にあたっては、レバーがいくつかあると思うのですが、僕なりにインパクトの大きい順で言うと、市場、製品、戦略、戦術の順番だと考えています。
前田:市場選びこそが最大のインパクトを生むとなると、どのように市場選びはすべきだと考えますか。
福山:結論から言うと小さすぎる市場は問題ですが、大きすぎるのも問題です。大きな市場のほうが攻めやすそうに見えますが、戦略を練るフェーズにおいては、僕は市場はできるだけ小さく、明確にすることをゴールに設定したほうがいいと思っています。大切なのは、ゴールとなる市場で自社が圧倒的なリーダーである状況を、どれだけ作れるかです。
やりがちな間違いとしては、見込みのある市場が10あったら、全てに攻め入っていくことで売上が大きくなると考えること。僕の場合は、10ある市場のうち、最も刺さるところに集中します。
たとえば、Fondのリワードビジネスが狙ったのは病院です。病院で、シカゴにあり、大企業であると絞ると、20社ほどしかありません。そのうちの10社がFondを使ってくれるようになると、11社目、12社目の営業が有利に進むんです。結果的に、その市場を独占する可能性も高まります。次に、シカゴの隣の街で同じ状況を繰り返していき、結果的に全市場でリーダーになっていく戦略です。
同じ10社の顧客を得るのでも、シカゴで1社、ニューヨークで1社、ロサンゼルスで1社といったように、既存顧客から「次に得られる顧客」への影響が最大化されない状態は、とても危険だと思います。
前田:うまく市場を定義し、独占できる市場を積み上げる。そのなかで、企業評価額100億円や1000億円を目指していく、という戦略なんですね。
福山:相対的に難易度が低い「小さな市場の独占」を積み重ねたほうが、トータルの難易度が低いという考えです。さらに言うと、リードを獲得した段階で勝率の高さもわかりやすくなります。リードが来ているのはシカゴか、ニューヨークか。業種は病院か、銀行か。従業員は3000人か、1000人か……そういった質問だけで、勝率の高いリードが見えてくる。
そこまで来ると、どの市場では勝てて、どの市場ではまだ勝ててないのかも明確になってくるのではないでしょうか。
THE MODELにも罠がある。戦術から考えてはいけない理由
前田:4つの成長レバーは「市場、製品、戦略、戦術」でした。戦術は最後だ、と。
福山:最も危険なのは戦術から入ってしまうことです。さまざまなブログや記事で言及されるように、「BtoB営業でSDRが一日で電話すべき回数」や「営業マンの鉄板の予算」など末端の数値がフォーカスされがちですし、コンシューマーなら「ボタンは黄色でなくて赤のほうがコンバージョン高い」といったことも含まれます。
でも、見込みのない市場にいて、顧客にあまり刺さっていないプロダクトを作り、戦略も的が外れていたとしたら、今ある数字が1.2倍になってもインパクトは生まれません。
前田:戦術ということで、THE MODELについても話しておきたいです。日本でもほとんどのSaaS経営者が取り入れようとしているモデルだと思いますが、採用にあたって意識すべきポイントは何だと考えますか。
福山:そもそもTHE MODELは「売り上げを拡大する仕組み作り」だと捉えています。自社内のワークフローをできるだけ細分化し、数字で可視化して、マネジメントを促進させるのがキモだという解釈ですね。
会社、特にスタートアップにとってのフェーズには3段階あります。まずはPMFがなされ、次にGo-To-Market-Fitを経て、最後にスケールがくる。この順番は不可逆だと思っています。THE MODELによる細分化はスケールにおいてはよく機能しますが、PMFやGo-To-Market-Fitを図るところでの優先順位は高くないと思っています。
たとえば、「来期は売上を3倍に、再来期も3倍に」と目論んだ場合、そのための成長レバーは「単価×受注数×営業マン」の掛け算になります。ここでPMFもGo-To-Market-Fitもあやふやなままだと、単価の上げ方はまだ曖昧で、受注数も有限なところがあると考えると、残るは営業マンの増員を検討するしかない。
そういう会社が多いのではと思いますし、Fondにも似たような時期がありました。資金調達はできて、お金がいっぱいあるけれど、仕事の全時間が採用に充てられてしまい、結果的に「採用計画は達成したけれど、売上目標は未達」となったり。
アメリカならレイオフとなるわけですが、日本ではそうもいかないですよね。だからこそ、PMFとGo-To-Market-Fitのフェーズでは、あまりKPIドリブンな経営ではなく、顧客からの定性的なフィードバックや「愛され感」をキャッチして、売り方は正しいか、戦略と合致しているか、顧客満足度は高いかといったことにフォーカスするといいでしょう。
前田:それはFondの成長でも実感できたことですか。
福山:そうですね。PMFしたとき、経営会議ではKPIがあまり議題にならなかったのですが、半年、1年と経って見直してみると、すべてのKPIがよくなっていた。それは戦略が合致し、顧客からも愛されていたからこその結果です。KPIはあくまでも結果をトラックするもので、THE MODELには適するフェーズがある戦略の一つですから。
社長の役割は大きく3つに分かれる
前田:PMFやGo-To-Market-Fit、THE MODELの採用など、社長の舵取りが重要だと改めて思わされますが、「社長の役割」について意識している点はありますか?
福山:僕は英語の“Clarity”と表していますが、まずは「進むべき方向性の設定と浸透」でしょう。それから「人材集め」と「キャッシュを枯渇させないこと」も社長の役割です。
方向性はあくまでトップが決めるべきで、各種のKPIはサポートでしかありません。KPIから入って戦略を立てようとすると、どこかで崩れてしまうと思うんです。例えば、狙うべき顧客を「大企業か、SMBか」をボトムアップで決めてもらおうとしたら、社員は自分が担当しているほうを選んでしまうはず。戦略ありきのKPI設定になっていないかは、僕もよく注意しています。
方向性から戦術への落とし込みでいうと、Fondではプロダクトについては僕がまだ見ていて、営業や開発は他の役員に任せていますね。
前田:戦略と戦術への落とし込みについて、具体的をぜひ伺えると。
福山:FondがSMBから大企業向けに切り替えた際に、「大企業でも従業員5000人から1万人のセグメントに絞ろう」と決めました。次に、主要顧客を病院に絞りました。これで戦略が明確になって、具体的な戦術に進めます。マーケティングなら、「ホスピタル」といった病院関連の広告キーワードを使う、病院関連者が集う展示会に出る、ランディングページにも病院向けソリューションと記載する、ページにも既存顧客の病院ロゴが並ぶ……。
プロダクトとしても、病院関係者が使っているツールのリサーチが始まります。アメリカだと病院に対する満足度調査があり、診察を受けた患者の満足度が高いと、サービスを提供した看護師や医師を中心に助成金が配られる仕組みがあるんですね。それなら、そこと連動して高い評価を受けた人にリワードも自動で送られる仕組みを作ろうというアイデアが出る。
ただ、細かなアイデアの一つひとつはトップが全て見切れない。そこで活きるのがトップの決める「方向性」なんですね。方向性が出されていれば、メンバーは具体的にすべきことを打ち合わせできる。これが「戦略ありきの戦術」の落とし込みの一例といえるでしょう。
前田:方向性や戦略の「良さ」はどこに宿ると考えますか。
福山:そもそも「戦略とは何か」を考えたいですね。僕は「最も効果的に目的を達成するために、リソースをどこに割くのか」だと定義しています。たとえば、ARR10億円のためには何をして、何をしなければ最速でたどり着けるのか。それを明確にするのが大事。
前田:なるほど。「方向性の浸透」も大事だと思うのですが、工夫されていることは?
福山:耳にたこができるくらい伝えるのは、やっぱり大切です。毎週の全体会議、Eメール、会社のポスター……何でもいいんですけど伝えまくる。その上で、仕組みへの落とし込みが重要ですね。
たとえば、会社の方向性である「大企業への導入を進める」を浸透させたければ、採用面接の審査項目に「この候補者は大企業にマッチするか」という質問を入れると、フィードバックする社員がその質問に向き合うわけですね。そこでまた、浸透に一歩近づいていく。
Fondが扱うピアボーナスは、会社の方向性に応じた行動を取った人を評価する仕組みですから、同じように社内でも評価されるような仕組みもできています。
前田:面接プロセス、普段のコミュニケーション、OKRなど、いろんなとこに方向性が表れている感じですね。
福山:これも現場主体よりはトップが能動的にやるべきことだと思います。あとは意思決定のときも、「方向性に合致しているのか」という質問を投げてみる。それら一つずつの落とし込みで、浸透度は変わっていくのではないでしょうか。
成功企業に共通する「3つのフレームワーク」の組み合わせ
前田:では、方向性が定まり、いよいよ戦略を考えるフェーズになった、と。「良い戦略」を取りたいものですが、考える際の要素やフレームワークはありますか。
福山:成功している会社を見ると、これから挙げる3つのフレームワークのうち、少なくとも一つは秀でていることが多いようです。
まずは、プロダクト・リーダーシップ。圧倒的な良いプロダクトでもって顧客に選ばれている。わかりやすい例はAppleですね。
次はオペレーショナル・エクセレンス。オペレーションの過程で優れた仕組みを持ち、提供価格を下げることで、顧客に支持されます。たとえば、コンビニエンスストアや1000円ヘアカットといった業態です。
最後がカスタマー・インティマシー。日本ではあまり馴染みがないようですが、いかに顧客と親密な関係を築けるか、です。アメリカなら靴屋のザッポスが当てはまります。ザッポスはカスタマーサポートの圧倒的な顧客体験で、親密な関係を築いているのは有名な話です。
顧客目線で選ばれる理由を見ても、この3つのどれか、あるいはコンビネーションだと思うんですよね。そうすると、どれが会社にとっての望むべく軸なのかを、あくまで顧客目線で考えるのが大事です。
みんな、プロダクト・リーダーシップをかっこいいから選びがちなんですけれど、顧客が買う具体的な理由を見て、その強みにが最も活きるかたちの会社を築くことが、戦略として大事なキーではないでしょうか。
前田:なるほど。今挙がった自分たちの「強み」は、どういうふうに決まっていくのでしょうか?チーム構成なのか、偶然の産物なのか、あるいは初めから決めるのか。
福山:理想としては、市場に入る前から考えることですね。競合企業と同じ戦略を取ってしまうと、その戦略を凌駕しないといけないですから、難易度は高くなる。戦略のキモは「戦わないで勝つ」にあると僕は思っています。
とはいえ、市場に入り、プロダクトが出来てから見つめるケースも多いはずでしょう。そのときは、最初の顧客ができたときに、「なぜ、そもそも自社を選んでくれたのか」をインタビューしてみたり、自分たちで考えてみたりすることも大切です。
「なぜ、顧客は自社を選んでくれたのか」と「今後、自社はどうなりたいか」を合わせた戦略を作ると、必然的に採用すべき人、狙うべきマーケット、書くべくブログのテーマ、取りうるべきマーケティングのアプローチ……と全てがパズルのように明確にハマっていくんじゃないかなと。
そして、3年から5年のスパンで会社がどうなりたいのかを考える。「なぜ、5年後に顧客が競合ではなく自社を選んでくれているのか」について思いをめぐらすのもいいでしょう。そのためには、どのようなプロダクトのロードマップで、どんな人を採用する計画を経れば達成できるのか。これも、わかりやすい戦略の描き方です。
Amazonはプロダクトを作る前にプレスリリースを書く、という話にも通じますね。
採用計画を立てる前に見直したい、2つの課題感
前田:戦術に落とし込めるメンバー集めも重要だと感じましたが、採用でポイントに置いていることはありますか?
福山:基本的には、社員が10人前後でARR1億以下なら、できるだけトップダウンでやるほうが早く決まるし、方向性も明確に出るはずです。
その上で権限移譲していくにあたって、2つの質問をしなくてはいけないでしょう。一つが「採用で解決したい課題は、会社にとっての優先順位トップ3に含まれるのか」です。優先順位トップ3も入らなければ、なるだけ自分のハンズオン具合も下げ、既存のメンバーに任せていく。2つ目は「その課題はCEOが直接解決できるのか」です。
つまり、トップ3に入っていて、CEOが解決できない場合に、経験者を雇って権限移譲をしていくのが大事なんですよね。社内に「変化」を起こして、進むべき方向性へのスピードを速めるのがゴールになってきます。
前田:今の考え方を聞いてると、「社長の長所やスーパーパワーは何か」を意識して、得意ではない部分を権限移譲で解決してもらう感じですかね。
福山:そうです。特定のバックグラウンドがあるファウンダーは、どうしても自分を過小評価しすぎるきらいがあると思います。「営業出身だからプロダクトはわからない」とか、「エンジニア出身だから営業はわからない」とか。
でも、顧客の目線からしたら、ビジョンがあり、プロダクトを全て理解していて、細かな説明までしてくれるファウンダーが来社してくれるのは、かなり大きな要素になり得るわけですよね。だから、最初はできるだけ言い訳をせず、とりあえずやってみるのも大事。自分の限界がきて、初めて他の人にお願いする順番にしないと、後に現場で起きていることもわかりにくくなりますから。
前田:権限移譲でおすすめできる順序は、あるでしょうか。
福山:まずは開発した製品を創業者が売りに行き、自分で最初の10社を得てくる。10社もあれば、一人でさばけなくなるので、そこで初めて営業マンを採用します。個人的には、営業マンは2人採用したいですね。もし、うまくいかなかったときに、失敗の原因が「売る人」と「製品」のどちらなのかが明確になりやすいので。
営業すると顧客が増えてくきますから、創業者は顧客満足や契約更新、アップセルといった管理を担うようになるので、そこがさばけなくなったときにCSを雇い入れたり、役員が必要になってきたりします。ここまで来るとスケールのフェーズに入ってきますから、マーケティング、財務人事、最後がプロダクトではないかと、僕は考えます。
前田:最後がプロダクトなんですね。
福山:やはり、プロダクトの全てを理解できる人は、最初からいるファウンダーであるという理由が大きいです。それに、スケールのフェーズで社内外から上がってきたプロダクトのリクエストに対して、主張する人は当然に自分の意見を優先したいでしょうから、優先順位を決めづらいんです。
ファウンダーないし社長は、社内外の誰に対しても「NO」を言いやすい役割ですから、本当の優先順位を決めやすい。方向性とロードマップの差異を最も少なくできる意味でも、プロダクトは最後まで管轄に持ち続けたほうがいいと思っています。
今日から30日連続でブログを書けるか。まずはそこからだ
前田:もし、これからSaaS経営者が起業しようとしていたら、ぜひ持ち帰ってほしいアドバイス、あるいは日本へ浸透させたいアドバイスがあれば、ぜひ教えてください。
福山:まずは「最低でも10年コミットできますか」という問いです。特にSaaSは時間のかかるビジネス。最初の売り上げが立つまで1年かかる会社もざらですし、ARR1億円までさらに数年かかるのも珍しくない。ある程度の規模にいくまで10年以上はかかるとすると、実は「創業者の飽き」こそ会社がつぶれる理由の一つだと思うんです。
もう一つは、「顧客との時間を楽しもう」ですかね。顧客と話して、フィードバックをもらって、ちゃんと感謝される。「ありがとう」という声を直接受けるのは、自分のエネルギーに変わります。そういった意味では、顧客と話すことを楽しめない事業ならば、手がけいほうがいいのではないでしょうか。
前田:「最低でも10年はコミットできる」という覚悟を、確かめる術はありますか。
福山:やりたい事業のドメインが決まったら、そのテーマでブログを1日1つ書き、それを30日続けられるかどうか。つまり、本当に興味のあるインダストリーなら、そのことについてブログを毎日書くことは、それほど苦ではない。逆にパッションがないと、30日連続で書くのって大変なんですよね。
前田:10年のコミットを考えると、フィジカルでもメンタルでも「長く続ける」ための工夫もいるかと思います。心がけていることなどは?
福山:一つは仲間作りですよね。社員数が増えていくと、自分では面接できないときもあるかもしれないんですけど、自分がどんな人と働きたいかを決めておいて、それに合致しない人はスキルセットがどれほど高くても、できるだけ採用しない。「自分にとって譲れないものは何なのか」も絶対に面接では聞いてもらう。
そうやって合う人が集まれば、結果的にカルチャーが強くなっていくでしょうし、メンタル面でも長続きするんじゃないかなというふうに思います。
やっぱり月曜日の朝に「またメンバーと打ち合わせできるんだ」と楽しみに思えるのか、「またあの人たちと話さなきゃいけないのか……」っていうテンションになるのか。特にメンタル面では、大きく差が出るんじゃないでしょうか。