価格交渉って、SaaSを経営していると、必ず頻繁に起きることですよね。
ここで大事にすべきなのは、2つの「理解」です。「自社にとって、譲れるもの/譲れないものは何か?」と「顧客にとって、譲れるもの/譲れないものは何か?」を、まず把握しておかなくてはなりません。その代表例は以下の通りです。
すべての点を最大化しようとすると交渉事は上手くいきません。自社にとって大事な点と顧客にとって大事な点を明確にすることで、お互いにとって「大事なもの」が組み合わさった提案につながる可能性があります。
たとえば、あなたの会社にとっては「複数年契約」と「キャッシュフロー」が譲れないものであるときに、顧客が価格交渉をしてきたとします。
一見は、どうやら単に「価格を下げたい」と言ってきているかに思えますが、顧客としっかり話してみると、様子が違うようです。
顧客は、あなたのプロダクトを長期的に使いたいと考えているが、顧客にとって大事なのは次回の決算に向けてP/L上のインパクトを下げたい、ということだとわかりました。そうなれば、顧客にとって必要なのは、「中長期での総コスト」です(月割りで計算した際の数字がP/Lのインパクトになるため)。
その場合、あなたは次のような提案をしてみましょう。「複数年契約の前払いをお願いできるのならば、割引率を高めますよ」と。
契約金額だけを見ると価格は下がっているように見えますが、この提案が実現できれば、あなたにとっては譲れない「複数年契約」と「キャッシュフロー」を保ったまま、お互いにとってWin-Winな交渉となります。
顧客からの交渉において、「譲れるもの/譲れないもの」をさらに深めるためには、以下の質問を自社内で検討すると、考えがまとまりやすいかもしれません。
- いま、自社の顧客数は何社なのか
- 交渉されている会社の売上は、全体の何割を占めるのか
- 他の新規導入企業の成長率はどうか
- (交渉者が既存顧客だった場合)同価格帯の他の会社と比べてフィードバックはどうか(同じほど満足しているのか?あまり満足していないと感じているか?)
- (既存顧客だった場合)この会社は導入後、どれくらい継続利用してきたのか
- (既存顧客だった場合)この会社での使用率はどうか
- (既存顧客だった場合)この会社がサービスを解約したら、彼らは他に選択肢があるのか
これらを考えることで、何が導き出せるかというと、次の2点に集約されます。
- この会社を維持(または獲得)すること、あるいは失うことは、自社にとってどれほど大切なのか
- この会社に対して、どれほどの交渉力を、自社が持っているのか
もし、維持(または獲得)がそこまで大事ではなく、こちらの交渉力が高いのであれば、強気で臨んだほうがいいかと思います。
維持(または獲得)は大事だが、交渉力に劣る場合は、多めに割引する代わりに「ケーススタディをもらう」「複数年契約を打診する」などを交渉することもできるかと思います。
交渉事はケースバイケースが多いので、「これが正解!」というのはお伝えしづらいのですが……考え方のフレームワークになれば嬉しいです!!