SaaSスタートアップを成長させていくには、優秀なマネージメントチームを作ることが大事です。しかし、時間や予算の兼ね合いから、複数のVP(ヴァイスプレジデント)を一挙に採用するのは難易度が高いものです。
そこで、VPの採用にあたっては適切なタイミングがあり、部門における優先順位があることを踏まえておくといいでしょう。
まず、VPを採用するフェーズにある企業は、以下2点の期待を寄せているはずです。
- 事業成長に伴い、VPの管轄部門をスケールさせること
- 創業メンバーでは手が出せなかった課題を解決すること
そこから鑑みるに、スタートアップでVPクラスを雇うタイミングとは、
- 既に該当部門に社員がいる
- しかし、創業メンバーがこのまま管轄していたら課題が起きる(あるいは片付かない)
と、なります。
前提として、創業メンバーは経験がないゆえにVPを採用することで、課題を丸投げしてしまいたくなると思いますが、まずは自ら頑張ってみることが大事です。なぜなら、実際にVPを採用したときにも成果を評価しやすくなるからです。
その上で、いざ採用に乗り出すことに決めたとします。VP候補者の多くは、入社初期には実際に手を動かす役割を期待されていることもありますが、基本的には管轄部門のスケールに主眼が置かれます。
そのため、管轄予定の部門に社員がいない場合は、まだVPを雇うタイミングにはありません。たとえば、営業や経理担当者がいないにもかかわらず、VP of SalesやVP of Financeを雇ったとしても、彼らの入社後に実際に手を動かすメンバーを採用しなくてはなりませんから、結果が出るまで時間がかかってしまう場合が多いのです。
したがって、VP of Salesならば「2人の営業メンバーが既に予算を達成している」、VP of Financeは「すでに経理担当が採用できている」など、一定の成果と課題が見えた後での採用が大切です。
また、VPクラスの採用は早すぎても危険を伴います。VPクラスばかり採用してしまったのにもかかわらず事業が追いつかないと、頭でっかちな組織になってしまいますから避けたいところです。
そこで採用においても優先順位を決めるのがオススメです。最も良いのは「創業メンバーが担当してみたが、スケールするための課題に直面している」部門から優先度を高めるこ。
前述のVP of Salesなら「2人の営業メンバーが予算を達成したが、大企業向けの営業経験がないため、今後のスケールに不安が残る」というタイミングです。VP of Marketingなら「定期的に毎月50リードをインバウンドで獲得できるようになったが、今後はテレビCMを打ってスケールさせたいが、社内に経験者がいない」というのも理由になります。
これらの条件を踏まえ、スタートアップにはVPを採用していく「理想の順番」があると考えます。
- VP of Engineering:最初に大事になるのはプロダクトの開発です。3〜5人ほどのエンジニアを採用し、資金調達が済み、これからエンジニアチームをスケールしていくというタイミングで雇い入れましょう。
- VP of Sales:売れるプロダクトができたら、今度は営業です。まずは創業メンバー自身で営業し、その後に2名の営業メンバーを雇い、マネージメントしましょう。創業メンバーが自ら売る経験は、採用した営業メンバーの販売が奮わない場合に「プロダクトが悪い」という結論を避けることができます。また、営業メンバーを2名雇うのは、売れないときに問題の所在を可視化しづらくなるからです。2名雇うことで、その事態を回避しやすくなるでしょう。2名の営業メンバーが成果を挙げることができたら、VPを雇って次のフェーズへと駒を進めていきます。。
- VP of Customer Success:いよいよ顧客が増えてきましたね。まずは創業メンバー自らが顧客と対話し、フィードバックを直接受け取ってください。顧客の満足度がある程度高まったタイミングで、カスタマーサクセスのメンバーを雇い、営業メンバーの増員に合わせて、VPも雇いましょう。
- VP of Marketing:インバウンドから契約受注までのサイクルが問題なく行われるようになれば、次はリード数のスケールが課題になります。まずは創業メンバーが直接担当し、自身ではスケールできなくなったタイミングでVPを雇いましょう。
- VP of Finance:会社がスケールのフェーズになり、予算配分などの重要性が増したタイミングで採用を検討しましょう。気をつけなければいけないのは、あくまでVP of Financeには「会社のスケール」を求めることです。経理メンバーは事前に採用しておき、VP採用後の影響力を最大化させることに注力しましょう。資金調達をしている会社であれば、シリーズB前後がオススメのタイミングです。
- VP of Product:プロダクトに関しては、できるだけ創業者メンバーが直接管轄していきたいところです。VPクラスの採用は、競合との競争激化や、複数プロダクトの提供タイミングなどで検討しましょう。
他にもVP of HRやVP of Operationといった役職もありますが、ここからは各社の課題によって優先度が変わってきますから、今回は上記6つのVPに絞って優先順位をつけました。
ちなみに、上記6つの優先順位ですが、以前に回答した「各ステージごとのCEOの時間の割き方は?」を併せて読んでいただくと、より解像度が高まりますよ。