BtoB SaaSの成長を大きく支えるエンタープライズへのセールス。実現をしたければ、その組織構造や慣習といった「ならでは」の要素を理解し、攻めていかなければなりません。
そこで、BtoBセールスのプロである向井俊介さんに、ALL STAR SAAS FUNDでは、投資先企業の方へ向けた勉強会を実施しました。向井さんはAppAnnieから独立後、ALL STAR SAAS FUNDのアドバイザーとして参画し、支援企業をセールス面からサポートしてくださっています。
「今回、僕が解説するアカウントプランニングは、売りやすいところに売るための考え方ではなく、買うべき人たちに売りに行くための考え方です。難易度は高いですが、より難しいほうについて知っていきましょう」
勉強会の内容より、一部を抜粋・再構成し、記事として共有します。セールス担当者はもちろんのこと、今後は大企業にも進出していきたい展望を持つ起業家・経営者の方々にも、この解説は基礎として持っておくべき内容になったと感じます。
エンタープライズセールスは「一本釣りの遠洋漁業」
ちょっと耳の痛い話からします。みなさんの会社やサービスは、買うべき人に届いていないことを前提にしてください。特にエンタープライズセールスでは。買うべき人に届いていたら、インバウンドで問い合わせが来るはずです。事実として、届いてないのであれば、自分たちから攻めなければいけない状態です。
あるいは、「売れやすいところ」にはすでに届いている。自分たちで課題や問題を認識し、能動的に探している人には広告やコンテンツ、ウェビナーという機会を通じれば届くのです。彼らは、良くも悪くも放っておいても売れてしまうといえます。
エンタープライズは、自ら釣りに行かなければいけません。ナーチャリングして、育ってきたら食べるような養殖の漁業ではなく、「一本釣りの遠洋漁業」が基本的なスタンスです。
届いてない人にピンポイントで届けに行く、というマインドを強く持ちましょう。それがエンタープライズのセールスであり、必要なことの一つがアカウントプランニングなのです。
「関係者の多さ」がエンタープライズならではの特徴
エンタープライズビジネスは「人探しの旅」ひたすら人を探し、会い、会話をしていく。
エンタープライズならでは特徴として、売り物にもよりますが、とにかく関係する人が多いことに尽きます。「根回し」や「社内政治」も人が多いから起きるわけです。エンタープライズビジネスは「人探しの旅」です。ひたすら人を探し、会い、会話をしていく。
ですから、実際の営業活動としてはSMBとミッドマーケットも中身は同じです。ただ、人が多いからこそプランニングが異なるのです。アカウントプランとは「人探しの旅」をうまく進めるための計画のことです。そう言われると、少し心理的なハードルが下がりません?
ガチガチに固めた社内用の資料を作る必要もないし、いろんな情報を詰め込みすぎた数十ページにわたる資料も不要です。人探しをしていく中で、必要なものを適宜アップデートをしていながら、極力シンプルに考えていくのが秘訣です。「エンタープライズは人探し」だというシンプルな本質を、常に頭の隅に置いておきましょう。
アカウントプランは具体的に大きく2つのことをやります。
1:公開情報の読み込み
2:組織図作り
枝葉で膨らませてもらう分には構いませんが、最低限これだけ努めれば、エンタープライズセールスは可能です。
「公開情報の読み込み」でやるべきこと
まずは、公開されている情報を集めます。「業界情報」はターゲットアカウント業界の近況、業界の競争環境、規模、業種、市場規模、成長の状況、黒船企業の到来度合いなどを、業界地図や会社四季報、リサーチファームのレポートをもとに収集します。
「企業情報」はエンタープライズになるほど、上場企業になるほど、公開されていることが多いので入手しやすくなります。最近のニュースや記事などもGoogleアラートを使って、ちゃんと忘れずに目を通しましょう。
そして「人の情報」は、「公開情報」と同様のソースを含めて調べつつ、名前が特定できればSNSをはじめとして、個人的にどういった発言や活動をしているのか、誰とつながっているのか、といったところもチェックしていきます。エンタープライズは情報戦なんです。
大事なのは、そのあとに「想像する」こと。売り手の立場ではなく、お客さん側になりきるような努力をすることが大事
大事なのは、そのあとに「想像する」ことです。思考するときのスタンスとしては売り手の立場ではなく、お客さん側になりきるような努力をすることが大事です。この会社が直面している問題は何で、それはなぜ解決していないのか。もしくは、株主に対して、中期経営計画で謳わざるを得ないほど難易度の高いものなのか。それが解決しなかったら、この会社にとって何がまずいのか……そういうことを想像するんです。
なぜ想像が大事かといえば、お客さんとの会話を実りあるものにするためです。「想像する」で挙げたようなことを商談で尋ねたことがある人もいるかもしれませんが、これってお客さん側からすると、質問攻めにされるのと同じです。尋問って思い浮かべるだけでも、うんざりしてきませんか(笑)。
オープンクエスチョンで「何が問題ですか?」と聞くことは、お客さん側からすると質問の意図が不明瞭で「何が聞きたいのかわからない状態」です。あやふやな情報だけ渡して会話を終えたり、「それっぽいこと」を言って乗り切ったりするんです。それは本能的に行われる回避行動ですが、そういうふうにさせないためにも、まず自分で想像するのが大事。
アカウントプランを立てる上でも、「こういうことに困っているであろうから、こんなふうにコンタクトしたほうがいいのではないか」と発想できます。情報を集めるだけでなくて想像することを怠らずに。
「組織図作り」でやるべきこと
組織図作りでは、組織の形、役割、序列を書き入れますが、中でも「形」を重要視します。部署名から役割を推測したうえで、どの部署の立場が強そうか、どの部署がどこへレポートをするのか、LoB(Line of Business)、コーポレート、社内委員会の関係はどうなのか、といったことをホームページから見られる組織図を元に考えていきます。
ホームページの組織図の並び順で部署名や序列に関してもわかりますし、忖度の世界というのは事実として存在します。ツリーが横に伸びる組織図なら、基本的には上から順番に立場の強い部門が並びます。そこで、自分たちがアプローチしたい部署名が出てきたときには、なるべく上位にある組織を攻めることで営業活動が効率的になり、ネクストアクションが定まりやすいのです。
ただし、ホームページ上の組織図をスクショして、パワーポイントなどに貼るのはご法度。理由は明確で「人の情報」が入っていないからです。まずはシンプルに組織の形、役割、序列の箱を書き、人の情報を加えます。氏名、役職、属性、社内力学は、最低限入れ込みましょう。
人の情報に関しては、可能な限り、特定の誰かにフォーカスしていきましょう。役員であれば、いつ役員に上がったのか、前任では何を担当していたのか、どういったKPIやKGIを持っていそうか。LoBなら基本的には売上を伸ばすところが多いでしょうから、当該企業において「売上」は何を指すのか。
あるいは商社あたりに顕著ですが、体育会系の先輩・後輩の関係性は永遠の物語になりますから、そういった間柄も把握したいところ。意思命令の系統やレポートラインといったものも人の情報として記載していきます。つまり、15分そこらでは組織図は作れないのです。
アカウントプランは常にアップデートする
ここからは、いよいよアカウントプランの制作です。プランはアップデートすることが前提です。ぼくはスライドを複数枚作って、まとめていくことが多いです。
最初のページには、資料の変更履歴をわかるようにしておきます。他にも、企業概要、沿革といったターゲットアカウントのプロフィールをまとめますが、大きな変更がないところなので、ホームページのスクリーンショットを活用してもいいでしょう。
一つ言葉として覚えておいてほしいのが「ACV Ceiling」です。要は「この会社には年間いくら売れそうか」という見込みで、勢いで決めてよいです(笑)。その根拠をマネジャーから問われても、「この規模でこれくらい従業員がいるなら可能だろう」といった見立てが構いません。セールスがこのアカウントプランを元に活動していくときに、このACV Ceilingに具体的かつ大きな数字が掲げてあると、気合いの入り方が変わりますからね。
またACV Ceilingを達成するために、どういったプロダクトを提供すべきかを書きます。ここまでは随時のアップデート対象になると思います。
アカウントプラン、まずはこれらだけ作ってください。あとは情報が入ってきたら、常にまめまめしくアップデートします。Googleアラートで毎朝当該企業のニュースが飛んでくるようにしてるなら、その情報から更新すべき箇所をクリッピングしていきます。
あるいは、買うべきプロダクトを一旦決めておき、それを裏づけるためのストーリーが緩いようならば、それを根拠づけるための情報を探しにいかなければなりません。自分でニュースサイトや企業情報を検索しながら得ていくわけです。これが、すなわち情報への「アンテナが高い」という状態です。
常にターゲットアカウントに、どうやってサービスを買っていただけるようにするのかを常に考えながら、語るべきストーリーを補足できるような情報を求めていく。すると、流れてくる情報に対する感度も高くなるので、アンテナに引っかかるんです。
アカウントプランができたら、いよいよセールスです。アウトバウンドをするときに大事なポイントは、大まかに5つありますから、それらを解説していきましょう。
アウトバウンドのPoint1:決済者とは異なる「EB」の存在に注目する
第一に考えるべきは「EB」について。Economic Buyer(エコノミックバイヤー)は決済者とは別です。営業を長くやっているほどに、提案中のプランのちゃぶ台返しは本当に起きるのだと経験するものですが、それもEBの合意を得られなかったために起きるのです。
「決済者が営業活動にとってのラスボスである」と思いがちなんですが、決済者の他にEBがいることをまずは踏まえておきましょう。EBはすべての企業に存在し、ほぼ全てが経営に携わっています。でも、意思決定者ではなかったりします。
意思決定と決済は日本語的には同じような意味ですけれど、EBとは「拒否権」を持っている人なんですね。EBが意思決定者を兼ねていることはありますが、そこは見極めていく必要があります。
上場企業の場合は、「役員会議」がEBになるケースがあります。取締役は株主の代理ですから、会社の資金は勝手には使えず、株主への報告義務もある。役員会議を開き、議事録を取り、合議して決済するプロセスに乗らなければなりません。
アウトバウンドのPoint2:チャンピオンをとにかく仲間に引き入れろ!
そこで、2つ目のポイントです。役員会議がEBならば、とにかく鍵はチャンピオンが握っているということです。似たような意味で、BtoBセールスに就く人ではコーチという言葉も出てくるでしょう。簡単に整理すると、購買への影響力の有無でわかれます。
購買への影響力があるというということは、EBである役員会議への影響力がある、という意味です。エンタープライズの場合は、購買に影響力があり、権力がある人がチャンピオンですから、すなわち「役員」である人間です。チャンピオンをとにかく仲間につけないと、役員会議は攻略できないのです。
チャンピオンとは、みなさんの代わりに内部で営業活動をしてくれる人。根回しをしてくれる人。有益な情報を流してくれる人。競合を排除してくれる人、プロセスをすっ飛ばしてくれる人……と、ひたすらプラスでしかない存在です。チャンピオンである時点でみなさんの味方なので、その方を探すところがアカウントプランでも大きなウェイトを占めます。
では、どうやって探すか。まずは公開情報や組織図から当たりをつけます。誰がみなさんの味方になってくれるのか、会社のビジョンに共感してくれるのか。みなさんが提供しているビジネスによって生まれる便益や価値を最も追求しそうな人は誰なのかを、組織図の役割、課されている職務や責務みたいなものを頼りに、当たりをつけていくのです。あとは他者へ聞くしかありません。
チャンピオンとの関係性は継続的に保ちましょう。たとえば、契約していただいたあとに「イベントへ登壇してほしい」と思ったとき、お願いできるような仲になっておく。損得感情が発生しないような関係を築くことに意識を向けるのは、案件を確実に決めるだけではなく、カスタマーサクセスの観点でも重要です。
アウトバウンドのPoint3:トップダウンとボトムアップの挟み撃ち
エンタープライズセールスは「挟み撃ち」の活動です。いわゆるABM(Account Based Marketing)ですね。トップダウンとボトムアップの両方からのアプローチが大事です。
フィールドセールスはチャンピオンを求めて旅に出て、それが釣れたらマネジャーないしは経営陣をぜひ同席させて関係構築を計ります。スタートアップのみなさんであればなおさらです。まずは信用をしてもらえる会社であることを経営陣から話していただく。
最終的には、特に現場に使ってもらわなければサービスは成り立ちませんから、その人たちから「こんなの要らない、面倒くさい」と言われたら解約されてしまいます。だからこそ、マーケは認知もリードも取るらなければいけません。そこで、ハイレベルな人のリードを取れないからといって、フィールドセールス側が文句を言ってはいけません。現場のリードをどんどん取るのもボトムアップの活動として大事なんです。
そして、インサイドセールスは、ミドルマネジャーや中間管理職、現場の人たちと信頼関係を作るためにアプローチをしていく。これは仲よくして情報を得るためにも欠かせません。マーケと組んでしっかりボトムアップから広めていくのを強くおすすめします。
あくまで、中間管理職の人たちに売りに行かないでくださいね。権限がないから買えません。それならば、誰に売ればいいのかを特定するためにも、味方を増やして教えてもらいましょう。
基本的にお客さんは売り込まれることを何よりも嫌います。ただ、「この人の提供しているものを、俺の上司の上司の上司の人が買ってくれたら楽になるのでは?」と思ってもらえるような話をしていくと、協力がもらえる可能性が高まる。とても人間くさいコミュニケーションなんです。
アウトバウンドのPoint4:問題と課題の違いを知り、まずは課題を特定
僕からセールストレーニングを受けたことがある方は、何度も口酸っぱく言われてきたことかもしれませんが、「問題と課題の違い」と「ゴールとニーズの違い」はとても大事なので、あらためて伝えていきますね。
問題とは「ゴールを達成しなければいけない状態、あるいは達成できていない状態」です。ところが、お客さんと話すと「うちの課題は……」なんて言ったりするものだから、セールスはいきなり「売りモード」になりがちです。
「弊社では、営業担当の活動量が増えないと受注も増えないとおっしゃっている企業さんに、量ではなくて質の部分を高めるソリューションを提供してまして……」
みたいに。それでは売れないのは理由があって、お客さんはその問題を解決する、つまりはTo Beに到達するために、現況、人員、仕事、施策といった進行中の懸案が、ゴールの達成につながるかどうかは、専門領域でないからわからないことが多いのです。
例に挙げたセールスのように、ゴールを聞いたら自社プロダクトが合いそうだと勧めてしまうけれど、それ以前にお客さんはお客さんで問題を認識して頑張っているわけです。それを知らずにいきなりソリューションの話をしても、相手からすると「いろいろすでにやってるところだし、今進めているものと一体どちらがいいんだ?」と頭で考えてしまう。
まずは現状と問題とのギャップを一緒になって顕在化させ、お客さんの「課題」を特定することが先決
そうではなく、まずは現状と問題とのギャップを一緒になって顕在化させ、お客さんの「課題」を特定することが先決です。
これが20年前なら、課題もお客さんの中で特定できていたのです。なぜなら、誰もが同じことをやるべきだったからです。Eメールさえ社内で浸透せず、あらゆる部門で紙資料からの切り替えが図られるところでしたからね。一様にIT化へ舵を切るタイミングだったので、今後の課題も明確でした。
けれど、今は何が本当に正しく、何をベンチマークにして、どういう方向へ進んで、何をやってけばいいのかが、わからなくなっている。一方で、他社の成功事例や失敗事例含めて、情報ばかりが先行して入ってもくる。
結局は現状と問題とのギャップで「何をすべきかわからない」というのが、今の時代のお客さん側の状態であることを前提として知っておくと、課題を一緒に特定しにいくコミュニケーションが必要になるわけです。その課題の裏にあるのが、いわゆる「ニーズ」です。
お客さんの口から出てくる話は、往々にして問題であり、課題ではありません。セールスがすべきことは、まず売りに行くことではなく、お客さんの課題を特定し、自覚させること。特にエンタープライズのボトムレイヤーの方々とお話するときの基本スタンスとして、心に留め置いてください。
アウトバウンドのPoint5:お客さんの困りごとを解決する会話
お客さんの困りごとを解決するための会話「話が進まない」とか「音信不通になる」とかって、セールスであれば、よくあることです。その理由の一つが「課題の勘違い」であるケースです。
セールスは口に出さないまでも、頭のどこかでは「売りたい」と思っているせいで、つい営業トークに終始することがあります。
たとえば、「弊社は原因Aを解決する、解決策Aというサービスを提供しています。そのサービスの特徴が……」と資料を見せる。この考え方は、まずみなさんの頭に「売り物=解決策」が前提としてあり、それが問題にも効くというトークです。言わば、売り物起点のアプローチになっています。
この論法においては「原因A=課題」にフォーカスしているわけですが、すでにここに勘違いが起きていますね。あくまで「原因」であって「課題」ではありません。
もし、お客さんが「確かに唯一の原因Aを解決すべきだとわかっているし、あとはそのためにも解決策が必要だ」と思ってくれたなら、そのトークでも売れるかもしれません。しかし、そういったお客さんなら、すでに当該サービスを買っているでしょう。解決策Aをマーケティングも含めて訴求すれば売れる、つまりは「売りやすいお客さん」なのです。
しかし、エンタープライズあるいは「買うべき人に売る」という戦略では、これでは売れません。まずは、お客さんである見込み顧客の困りごとを起点にして考えるのが、とても大事になってきます。
エンタープライズは「人が多い」ことが難しさだと初めのほうにお伝えしましたが、いろんな立場の人が関わっています。だからこそ、シンプルにお客さんたちと会って、対話をしましょう。その中には会話や議論もあります。特に必要なのは議論です。
組織図のようにイメージするとわかりやすいのですが、最上位には「EBの困りごと」があります。エンタープライズの場合なら「経営者の困りごと」が当てはまるでしょう。これは上場企業ならば公開情報から容易に読み取れます。ただ、上場企業に限らず「経営者の困りごと」って、継続的な利益の創出であることが多いです。
それが解決しない原因として、「部門ごとの困りごと」が出てきますが、ここで原因Aに対して解決策Aを当てにいっても売れません。なぜなら、その解決策の選定こそが部門長ないしは事業部長、そしてEBの役割であるからです。「EBの困りごと」を解決するのが原因Aにひもづく解決策Aだけのはずがないのです。
EBがみなさんのサービスを買ってくださるには、原因Aを解決する解決策Aという見せ方だけでは、優先順位が下がって当たり前です。だからこそ、原因A、原因B、原因C……といったそれぞれの原因に対し、すでになされている対策と、そこに紐づく課題を洗い出したうえで、みなさんのサービスが複数の課題に対して貢献できることを伝えなくてはなりません。
EBから見たときに、その複数の課題を解決できるサービスとして映ったとき、優先順位が上がり、購入の意思決定を推し進められます。
たとえば、「対策Aに関しては、すでにタッグを組んで新しい取り組みを始めている情報があるから、軸足を置いている可能性がある。それだけ事業インパクトが大きいからだろう。では、なぜインパクトが大きいのか?」と仮説を立て、それをお客さんに当ててみる。対策Aの中身を伺いながら、さらに対策Bや対策Cについても公開情報から深堀りする。
これまでどんな対策をしてきて、その理由は何であるかを、まず聞いていきます。そして、議論です。
「今まで聞いた対策だけでは不足があるように思います。大変失礼ながら指摘させていただくと、プロダクト、UI/UX、マーケと取り組まれても、エンゲージメントが足りていないのではないでしょうか。LTVを伸ばし、一人当たり購入数を上げるための施策に触れられていないようですが、何か施策は打たれていますか?」
こんなふうに話すためには、当然にセールス側にも知識が欠かせません。必要なのは、売るための会話ではなく、お客さんの困りごとを解決するための会話です。特にエンタープライズでは大切になりますが、セールスはこの目線を持ってもらいたいと思います。
As Isに共感し、To Beを信じ切って、議論する
常に意識しなければならないのは、お客さんはみなさんのサービスを買うことは手段であって、目的化してはならないことです。お互いが「サービスを契約することは手段である」と無意識にも一致させ、目の前の「人」に寄り添うこと。売って終わりではなく、売ったあとに困りごとを解決できたか否かというスタンスに立たないと、絶対に議論ができません。
結局、相手も人間です。そして、みなさんも人間です。この部分で通じ合わなければ、問題を起点にした対話なんて、できるはずがないのです。その意義の部分が薄まると、非常に売りにいく。「売れれば目的が達成される」と思っていたら、永遠に達成できないでしょう。
仮に売れるとしたら、とても賢いチャンピオンが目の前に登場するケースだけです。
営業活動をしていくときにも、「なぜ、この会社にプロダクトを売ろうとしているんだろう。なぜ、CEOのメッセージにこんなに自分が反応しているんだろう。なぜ、自分は転職してまでこのサービスを広めようとしているんだろう」と、自問自答するところに、あなたが売るための根っこがあったりするんです。
特にこのご時世、お客さんはググって簡単に情報へリーチできます。それにもかかわらず問題が存在しているのは、お客さんが何をしていいか、わかっていないからです。セールスがそこを助けるためには、As Isの状況に共感し、To Beに対して信じ切らないといけない。そうでないと、感情がこもらず、売るための嫌な会話になってしまうからです。
今日、僕が言った内容を愚直に行えば、成果は実ります。ぜひ信じていただければと思っています。そして、余裕が出てきたら、アカウントプランには他にもいろんなテクニックがありますから、手を伸ばしていってもいいでしょう。でも、まずは今日の内容をベースに据えて取り組んでみてください。