直近のわずか1年で従業員数が3倍以上に増え、2023年4月にはシリーズCで38.5億円の資金調達を発表したhacomono。
ウェルネス産業向けオールインワン基幹システム「hacomono」を提供する彼らの顧客は、開始当初はフィットネス業界が主でしたが、現在ではスクール業界や公共運動施設にも拡大。業種ごとに求められる課題解決のために、現在も開発を進めています。
今回は、hacomonoに投資家としても伴走するALL STAR SAAS FUNDのマネージングパートナー・前田ヒロが、CEOの蓮田健一さんとCOOの平田英己さんをお迎えし、その成長の秘訣を伺いました。
その要因は「蓮田さん自身のミッションへのこだわり」「マネージャーの成長にフォーカスした組織づくり」「平田さんが加わることで生まれた経営のリズム」という3点が大きかったと言います。
COO採用の進め方から権限移譲のやり方まで、1年間の成長を振り返りながら語ってくださいました。また、COO採用のタイミング、社長がコミットする必要性、さらには従業員が急増しても組織が壊れなかった理由など、貴重な経験談もお届けします。
記事の前半では、COO採用の背景やお互いがどのような点に注目していたのか、後半では権限委任の方法やシリーズB〜Cの資金調達に向けた会社づくりや組織づくりの話題にも触れていきます。
(※この記事は「前田ヒロ Startup Podcast」にて配信された音声をもとに、抜粋・再構成したものです。音声版もあわせてどうぞ!)
時はシリーズB。「CEO、いつまで兼務するのか」問題に直面していた
前田:hacomonoは順調な成長を遂げてきたと思うのですが、そんな状況の中で、蓮田さんがCOOを探さないといけないと思ったきっかけは何ですか。
蓮田:色々なことが積み重なった結果ですが、大きかったのは権限移譲の課題です。2021年の後半くらい、社員数が10名から50名規模へ拡大していった頃、私自身が営業のマネージャーも兼務していて、プロダクトにも口を出していました。1on1する人数もどんどん増えていきますし、全社ミーティングでも毎回会社の方針を話すのは自分自身でした。
人事コンサルの金田宏之さんとも「50人の壁、100人の壁、150人の壁などの課題が出てくるから準備をしよう」と話していましたが、私自身がその準備にも当たっていたんです。
ただ、SmartHRなどの成長を初期を見ている金田さんは、その経験から「現状、蓮田さんがしている仕事は、本来はCEOのする仕事ではない。SmartHRでは、そこをきちんと役割分担する中でチームで経営をしている。蓮田さんのリーダーシップの強さがこれから先、弊害になる可能性がある」といったフィードバックを頂いていました。
前田:2021年の後半というと、シリーズBの投資を受けたあたりですね。ALL STAR SAAS FUNDも加わった時期なので覚えています。
蓮田:そうですね。新規引受先の一つであるCoral CapitalパートナーのJames Rineyさんと、2021年11月17日にランチをする機会がありました。彼から「hacomonoはどうなの?」「今の組織の課題は何なの?」といった質問が出てきました。いかにhacomonoを大きな会社として羽ばたかせられるか、海外の投資家が本気で参加するような会社にできるか、といった観点を考える中でも、やはり経営チームの役割分担の問いに触れていって。
「蓮田さんがいつまで全部見るの?いつまで営業のマネージャーをやるの?もし蓮田さんがそこを抜けたら、どんな課題が出る?」といった問いをいただいたんです。それを受けて、試しに2週間から1ヶ月、自分が現場に出ない期間を設けてみようと真剣に考えました。COOやCxO、VPのラインで経営を伴走できる方を探そうと思ったのがその頃です。
前田:具体的にCOOを探さないといけないと感じた出来事があったのですか?
蓮田:特定の事象があったわけではないんです。お客さまが大手企業を含めて増えはじめた頃で、組織を見切れなくなってきたことが大きかったですね。
前田:蓮田さんが振り返ってみて、COO採用の基準として設けるべきポイントは何だと考えますか?
蓮田:hacomonoは、ミッション・ビジョン・バリューや理念経営を大切にしているか、社員一人ひとりの成長や働きがいを大事にしているか、といった価値観を重視してきましたから、そこにフィットすることが重要です。そして、人事に興味を持っているかどうか。キャリアなどのスペック以上に、チームマネジメントやピープルマネジメントに関する価値観のすり合わせが欠かせないと考えていました。
また、ちょうどSmartHRの宮田昇始さんが代表を変更されたことを目にして、「COOが場合によってCEOも担えるかどうか」も裏の評価基準として入れてはいました。苦難にも立ち向かえる人間性や相性といった面ですね。
前田:蓮田さんと平田さんが最初に出会ってから参画まで、どれくらいの期間でしたか?
蓮田:半年もないでしょうか。4、5ヶ月くらいです。
平田:計4回の面談を行ない、オファー面談が4回目だったと思います。
蓮田:面談について振り返ると有効だったと感じたのは、CEOが採用に時間をしっかり確保して、マインドセットを持って向き合うこと。社外エージェントを含めて、採用に関わる人とのコミュニケーションも積極的に取り組んでいました。上位レイヤーの方は、すぐにキャリアチェンジができるタイミングではない方も多いので、直接会うのは大切です。
CEOとCOO、それぞれが面談で見極めようとしていたこと
前田:平田さんは、最初の面談ではどのような点を確認しようと?
平田:最初の面談を含め、その後のリサーチでも簡単なデューデリジェンスを行ないたいと考えていました。オーソドックスな3C分析をもとに、会社の事業内容、成長性、マーケットの競合といった考察を終えることを目標にしていました。
健さん(蓮田さん)との面談は、いうならばデューデリジェンスでいうところのマネジメントインタビューです。面談時に内部データを見せていただけるとのことで、売上など細かい数字まで見て検証しようと。会社の成長性に関する質問をぶつけるつもりでしたし、上から目線で恐縮ですが、返答から健さんの潜在能力や人間性を一生懸命に見極めようともしていました。
デューデリを行なう一方で、自分とのフィット感も重要視しました。デューデリは客観的に会社が良いかどうかを判断するものですが、それ以外にも、個人としてのフィット感を見極めたかったんです。具体的には、他の経営メンバーとの相性や、自分が活躍できる余地があるかどうかを見ていましたね。
実際に、経営メンバーに会って好印象でしたし、自分が活躍できる余地もあると感じました。例えば、P/Lを見せてもらったときに「hacomonoのマーケティングに対する広告費」についても私見を述べさせていただき、うんうんと納得してもらいまして。その瞬間に、自分にも活躍の余地がありそうだなと。
ただ、他の会社からもオファーをもらっていて、最後まで迷っていましたが、「自分が楽しそうに働けるかどうか」を考えることでhacomonoに決めました。他社も魅力的でしたが、hacomonoのメンバーの顔を思い浮かべたり、会議室で議論している様子を想像したりすると、楽しそうということを感じさせてくれたのがhacomonoで、それが最後の決め手だったと思います。
蓮田:リアルで会うことが大切だと思っていたので、一度会社に来てもらいましたよね。オフィスが想像以上に狭かったことに、おそらく驚かれたことでしょう。
平田:「この壁の裏側にまだオフィスが続いてるんだろう」と思ったら、全然そうではなくて。ハッと振り返ると、健さんが「そこまでしかないんだよね」って、申し訳なさそうな顔をしていたのをよく覚えています(笑)。
蓮田:それでも、早い段階で等身大の姿を知ってほしかったんです。経営や組織の課題、マネジメントの課題などを早い段階で共有しようと意識していました。英さん(平田さん)の人事への興味やチームのマネジメントスタイルは、直接的に聞くわけではないですが、エピソードを引き出そうと考えていました。
前田:平田さんの回答で印象的だった点は何ですか?
蓮田:彼が150人ものマネジメントをしてきた中で、優秀人材が揃うエリート集団のマネジメントではないスタイルを持っていることが印象的でした。若い人を育てたり、経験を与えたり、新しい人がジョインしたときの業務の覚え方といったエピソードが多かったんです。コンサルから転じた楽天での経験が、hacomonoにも生きるだろうと感じました。
平田:健さんの話で、飲み会のエピソードを聞かれた意味が今、初めてわかりました(笑)。「自分で飲み会を主催すると仲の良い人しか来ないので、元気の良いメンバーに声をかけて企画してもらうようにしている」と言うと、すごく興味を持ってくれたんです。
未経験の権限移譲、タスクよりもコミュニケーションからはじめた
前田:平田さんの入社後、蓮田さんが権限移譲を行なう際に、意識した部分やプロセスについて教えてください。
蓮田:私自身も初めてのことだったので、「自分が逆の立場だったらどう思うか」を考えました。得意な領域でタスクレベルの細かい指示をされるのは嫌でしょうから、そういったことは意識して避けました。また、英さんが会社に入ってきたことで、周囲が良くも悪くも注目するだろうと思い、最初は人間関係の構築を優先してもらおうと。
最初の頃はコミュニケーションを重視していましたし、特に初期は今後ビジネス全般を見ていただく中で、「私の顔色をうかがったり、言いなりになったりするような遠慮はしなくていいよ」とすり合わせていましたね。
平田:入社当初は、外部からの客観的な視点を生かすことを意識しました。基本的には順調に伸びている会社で、成長もしていましたが、まだ改善できる点がある。今あるものを是として受け入れてしまうと、半年から1年たつと、自分も客観視ができなくなっていくだろうと感じていました。最初の違和感こそ大切に、気になったことはメモに残しましたし、何かしらの話を聞いたときにも「良い点と悪い点」を考えるように心掛けました。
前田:キャッチアップのためには、どのように取り組みましたか?
平田:大きく分けて2つで。一つには、財務データや数字を通して会社を理解することに時間を割きました。もともとM&AやP/L管理の経験がありましたし、数字を使って会社を見ることも好きでしたから、トップダウン型のアプローチとして適するかなと。もう一つは、全員に1on1で話を聞いて、会社の中を理解しました。仕事内容や困っていること、趣味などを含めてですね。こちらはボトムアップ型のアプローチだったといえるでしょう。
前田:細かな点ですが、レポートラインは急に変更されたものですか?
平田:実際には、なし崩し的に切り替わりました。4月に入社して、すぐに全ての指示を出せるわけではないですからね。最初は健さんと一緒にミーティングに出て、二人で進める感じでした。
蓮田:そうですね。英さんが現場メンバーと話し、解像度が高まったときに、二人で役割分担をしていくようなイメージです。私は、エンタープライズ営業、デザイン、ブランディングについては引き続き見て、それ以外は英さんにその頃から任せるようになりました。
平田:役割については、言語化することが大事だと思ったんです。自分が担当する範囲と、健さんが引き続き担当する範囲を、明確にメモに書いて共有したのを覚えています。ただ、独自性が高い部分、引き継ぎが難しい部分は健さんにお願いしました。
入社後2ヶ月ではじめた「全社ミーティングのバトンタッチ」
前田:平田さんがこれまでのキャリアで培った考え方や手法は、どれくらいhacomonoに持ち込み、どれくらい捨てたのでしょうか?
平田:簡単に言うと、半分くらいです。hacomonoの良さを大切にしたくて、私のやり方や一般的な方法を取り入れると、hacomonoの良さが失われることがあると思いました。その判断軸で取り入れるかどうかを決めました。
前田:特に意識できたhacomonoの「残したい良さ」とは?
平田:2つあります。一つは、プロダクトドリブンであることの良さ。プロダクトが強いがゆえに、それを残せるプロセスや数字の見方は意識しようと思いました。もう一つは、MVV経営が進んでいること。モチベーションに関しては、給料や評価ではなく、MVVに共感しているところが大事だと考え、それを生かすようなピープルマネジメントやガバナンスの方法を意識しました。
前田:権限移譲のプロセスを振り返って、変えたい点やフィードバックはありますか?
平田:入社後すぐに採用面接や事業計画の策定に巻き込まれたことは、正直に言うと、もう少し会社のことを知ってからのほうがやりやすかったと思います。ただ、その混沌とした状況を駆け抜けてきたからこそ、早くキャッチアップできた面もあります。矛盾していることを言うようですが。
蓮田:私は、早い段階で会社の悩みや課題に触れ、話すべきテーマのコンテキストについて、お互いの考え方を理解できたのは良かったです。どんな考え方をしているのかをすり合わせ、暗黙知の理解が進められたことですね。
あとは、2ヶ月ほど経ってから、全社ミーティングで英さんに話してもらうようにバトンタッチしたのは、すごく良かった。英さんの登場機会を増やすことのメッセージ性は強かったですし、英さんも数字面ばかりではなくて、そもそも聞いていて面白い話をしてくれるんです。「英さんって面白い人なんだ」という認知が取れたというか。たぶん、話もめちゃくちゃ仕込んで臨んでましたよね?(笑)
平田:そうですね。前職のときから無茶振りに耐えて、みんなの前でスベることにも強いメンタルで臨めるように鍛えられてきましたから(笑)。
2022年、CEOの仕事を「ミッションの実現」に絞った
前田:ここからはhacomonoの2022年を振り返っていきましょう。急成長していて従業員も3倍に増えると、おそらく壊れるものも多いんじゃないかと思うんです。実際にどんなものが壊れて、どういう対策を打たれましたか。
平田:言うなれば「あうんの呼吸」みたいなものは壊れてきたと思います。お互い言わなくてもわかるようなコミュニケーションが多かったんですが、組織が大きくなると通用しなくなるので、合意形成や情報共有の場、全員で経営していくリズムを重視しています。具体的には、チームごとにウィークリーや月次で振り返り、次の期間に何をやるのかを決める。会社が大きくなってもうまくいっているのは、そういうリズムができているからでしょう。
蓮田:他のチームが見えづらくなったり、CEOとの距離が離れたりするのはもちろんあるはずですが、200人まで来る過程で「良いもの」を残しながら組織を拡大できているという印象はあります。会社が好きなメンバーも多いですし。
この1年で私自身の仕事の仕方や時間の使い方が大きく変わった中で、CEOとしては「ミッションの実現に必要なことは何でもやろう」と決めました。役割分担が進んで、メンバーからも相談しやすくなったと思いますし、私が現場に口出しすることがあると、「そのチームはCEOから指摘されないといけないくらいに弱い状態だ」と感じられていることがバロメーターになっています。役割分担は、この1年で大きく進みましたね。
前田:ありがとうございます。先ほど、CEOの仕事として「ミッションを実現すること」に絞ったという話がありました。実際に、時間はどのように使われているんですか?
蓮田:1年間の計画を立てて、月ごとに動き方を決めています。2年後、3年後についても会社をどうすべきかといった観点から高い目標を据えています。ヒロさんをはじめとする投資家や起業家からお話を聞いてアンテナの感度を高めたり、ウェルネス業界に関わる人脈を増やしたりしています。
参考記事:コーチングの必要性は「シリーズB以後」に訪れる──実践知を社内に広めたhacomono 蓮田CEOの記録
定量的な指標は持ちやすいからこそ、定性的なメッセージを考え抜く
前田:大きく壊れずに来られた要因というか、ある一定の基盤があったから、それは実現できたということでしょうか。
蓮田:それで言うと、人事は大きいです。早いタイミングから人事やミッション・ビジョン・バリューを重視していました。もちろん、数字や事業、プロダクトを伸ばすのは大事ですが、会社自体の方向性や評価制度にも初期から力を入れていたので、人が増えることの不安や心配はあまりなくなりました。
前田:早い段階から人事に力を入れられたとのことですが、これから同じフェーズを迎えるスタートアップにアドバイスをするとしたら、どのような点を重視すべきでしょうか?
蓮田:スタートアップは定量面のPDCAはやりやすいと思うんです。SaaSならT2D3をはじめとしたさまざまな指標がありますよね。その分、定性面のメッセージを研ぎ澄ますことが重要だと思います。
特に採用を含めて、レッドオーシャンでも優秀な仲間を集めたり、長く働いてもらったりしようとするならば、働く意義を明確に伝えることが最も大事になってくる。より初期の段階で定性的なメッセージを考え抜いて、社内に発信していくことです。その延長で、ミッション・ビジョン・バリューを決めたり、カルチャーや人事制度を作らないと、連動しなくもなるでしょうから。
前田:ミッション・ビジョン・バリューの整合性を意識されているともいえますか?
蓮田:そうですね。
平田:200人になっても組織が崩れなかったのは、マネージャーを中心としたピラミッドの組織構造ができたことも大きいでしょう。そのためにはマネージャーの成長が重要で、目の前の課題解決と同時に、将来の成長を考えていくようにしています。時には「今回どのように対応したら、3ヶ月や6ヶ月後に今のマネージャーが成長できるか」を考えて、目の前の課題の最適化より優先させることもあります。
やはり、現在のhacomonoの組織はマネージャーが中心のピラミッド構造で、そのマネージャーが強いかどうかで全体の強さも決まると捉えています。だからこそ、マネージャーの育成と成長に、時間と悩みを費やしているんですね。
マネージャー育成の2つの柱
前田:マネージャー育成は本当にどの会社にも出てくる課題です。平田さん自身はどのようにマネージャー育成に取り組んでいますか。具体的なプログラムのようなものを構築しているのか、それとも1on1を通してコーチングしているのか。どのような形ですか?
平田:1on1、Slackでのコミュニケーション、大きなミーティングなど、いろいろな場所がありますが、意識しているのは2つです。1つ目は、マネージャーが強いオーナーシップを持てるようになること。弊社では「ラストマンシップ」と呼んでいることもありますが、責任感、オーナーシップ、ラストマンシップを持てるようにしていくこと。そのために、細かいことにあまり口出しをせず、彼らに責任を持ってやってもらうことをお願いしています。
2つ目は、彼らが考えることで付加価値を出せるようにすることです。私が細かいタスクまで指示を出すと、彼らはただ手を動かすだけになってしまうので、どういうフレームワークや視点があれば自発的に考えられるのかを、私は常に懸案するんです。結果として、マネージャーの考える力が上がっていくことにコミットできればと。
前田:マネージャーの部下から、マネージャーを飛び越えて、平田さんに直接的なフィードバックが来たときは、どのような対応をされていますか?
平田:まずは謝ります。私の指導が行き届いていなくて、本当に申し訳ありませんと。これは本心でもあります。その後、どうしようかと一緒に考えていきます。できれば一緒に考えていく解決の方向性を、マネージャーが自ら関わることによって解決できるところに持っていくようにしています。しかし、それを優先しすぎると、課題の解決ができなくなってしまうので、可能な範囲で両方を求めていく感じです。
前田:勉強になります。もし、2022年をやり直せるとしたら、もう少し早くやっておきたかったこと、変えておきたいことはありますか。
平田:「こうすれば良かった」と思えるプロジェクトやプロダクトの細かい話はたくさんあります。あとは、CxOの中で役割分担をきれいにしてしまったことで裏目に出たケースもあります。そういったところはもう少しやりようがあったはず。役割分担をしたものの、誰かのバックアップを私がする、もしくは私のところに誰かにバックアップしてもらうといったことができたら、漏れがなかったりして良かったのかな、と思います。
コアコンピタンスには制定できるフェーズがある
前田:ありがとうございます。それでは、カルチャーについてお聞きしたいと思いますが、蓮田さんが先ほどお話ししたように、組織や人事面で力を入れられており、特にカルチャーへのこだわりが強いと感じています。規模が200人程度になったとき、カルチャーを強化するための取り組みは何か進められましたか?
蓮田:まさに今取り組んで、議論を進めているところです。去年、コアコンピタンスを作る取り組みが、自分の中では良かったと感じています。特に、英さん主導で進められたマネージャー巻き込み型の方法が、後から見て非常に良かった。会社の強みや戦略の柱を言語化し、カルチャーを大事にする姿勢を共有しました。今後どうやって勝つべきかも含め、自分自身の整理にも繋がり、今までのMVV経営から一歩進んだものになりましたね。
前田:コアコンピタンスは、どのようなタイミングで取り組むべきでしょうか?最初から取り組むべきものなのか、ある程度規模が大きくなってからか。
平田:一般的にはまず戦略の柱をしっかり作ることが良いと思います。そのフェーズが終わったからこそ、普通の会社らしく戦略の柱としてコアコンピタンスを作ろうと議論したんです。
それまでのhacomonoは、目の前のプロダクトを全力で作り、全力で売ることで伸びていくステージでした。また、中長期的なことを考えても、議論できるメンバーがいなかったり、蓮田さんが一人で決めたほうが良いという状況もありました。しかし、会社として大きくなり、組織も強くなったため、普通の会社らしい中長期計画や戦略の柱を作れるようになったといえます。その手応えを昨年の夏頃に得たので、中長期的に伸ばしていきたいものに、全員が強く合意できていきました。
具体例として、私たちのコアコンピタンスの一つは「ブランドを大事にしよう」ということです。みんなは感じていましたが、どれくらい大事なのか、どの程度のお金を使っても良いのかわからない状態でした。しかし、コアコンピタンスの一つとして全員で合意すると、安価で打っていくものではなく、プロダクトドリブンで、なおかつ顧客体験が良いというブランドを作っていくことの価値に全員が合意できた。
それが基準となって会話が収束しますし、全体の戦略の方向性もぶれなくなると思っています。それだけに重要な議論だったと感じています。
FinTechと「スマートウェルネスシティ構想」を次の柱に
前田:今後のhacomonoが目指していること、実現したい世界観は、どんなものですか。
蓮田:口癖のように言っているのは、日本を代表する伝説のバーティカルSaaSを作ることです。これから新しい事業やお客さまの満足度向上の取り組みのためにも、SaaSならではの月額提案の良さを残しつつ、さまざまなビジネスモデルに挑戦していく予定です。
具体的には、大きなテーマが2つあります。1つ目はFinTechで、お客さまの店舗の売上だけでなく、スタッフへの支払いや購買、採用などの領域でインフラ作りに取り組み、お客さまの経営をレベルアップさせたり、トップラインを上げたりすることを目指しています。
2つ目は「スマートウェルネスシティ構想」と呼んでいるもので、特に地方を中心に高齢化や少子化が進む中、ウェルネス産業が日本の将来の課題に対する価値が非常に高いと考えています。スマートシティ化が進む中で、ウェルネスを取り入れたスマートシティ構想にどこまで関与できるかを考えています。
現在のお客さまは大手フィットネスクラブですが、親会社は電鉄系や不動産、レジャー施設や公共施設の運営委託企業、自治体、プロスポーツチームなど多くのステークホルダーがいます。決済や会員管理、予約システムのプラットフォーマーとして、まちづくりの中で彼らと連携し、日本の社会課題を解決していくことが「スマートウェルネスシティ構想」です。
この過程で新規事業や第2、第3のプロダクトを生み出すことが、今後のhacomonoの非連続な成長に繋がると考えています。
平田:hacomonoが今後やりたいことは、やはりウェルネス業界全体への貢献です。フィットネスクラブや運動スクールといった領域のDXが進み、働いてる人たちの快適さを向上し、通っているお客さまがより気持ち良く運動できるといった効果に繋げていきたい。
たとえば、私は家の近くでパーソナルトレーニングに通っているのですが、予約が取りにくくて……一人のユーザーとしてhacomonoを入れてくれないかな、と思っています(笑)。予約やキャンセルがスムーズになり、スタッフとのコミュニケーションなどのサービスクオリティが向上すれば、ウェルネス業界全体のお客様もより楽しくなるでしょうから。
前田:最後に、スタートアップで挑戦する方々に対して、お二人からメッセージをお願いします。
蓮田:採用に関するメッセージになりますが、若い方にはhacomonoは挑戦の場所であり、素晴らしいメンバーが揃っており、変化の連続であるため、自身の成長に繋がる良い環境だと自負しています。ぜひ、その観点から私たちのことをウォッチしていただいて、一緒に働く仲間として考えてもらえたら嬉しいです。
経験者や実績のある方々には、今までの力をもとに、hacomonoが目指す未来は、日本の社会課題の解決や次世代に繋がります。われわれの子ども世代や孫世代に繋がるような事業を残せる、社会のインフラを作れる事業に、ぜひ知見や力を生かしてくださったらと思います。
平田:採用については蓮田がお話ししましたから、私はhacomonoのシステムを利用しようと検討しているフィットネスクラブや店舗、アライアンスを検討している方々に伝えたいことがあります。
hacomonoはウェルネス業界に貢献することを強く思っており、良いプロダクトや戦略を準備しています。現在、まだ期待に添えない部分があるかもしれませんが、半年後や1年後にはそれを上回るものを提供できているはずです。hacomonoをすでにご利用いただいているお客さまは今後をどうぞお楽しみに。まだ使う必要性を感じていないお客さまも、半年後や1年後に、ぜひもう一度hacomonoのプロダクトをウェブ上でチェックしていただけるとうれしいです。