このツールを定義することは難しい。Notionは、半ば苦し紛れのように「万能ツール」や「生産ツール」と呼ばれる。ただ、俯瞰して見ると、言い得て妙でもあり、そうとしか呼べないともいえる。つまり、それこそが、Notionの魅力なのだ。


世界中で、熱心なユーザーを増やし続けるNotion。高まるのは愛情だけではない。2020年4月には約54億円を調達し、大胆な発展を見せる。今回は、共同創設者であるIvan Zhaoさんに、前田ヒロがその成り立ちや組織運営などを聞いた。



Notionは、京都で再生した


前田:今日はお時間をいただき、ありがとうございます。


Ivan:こちらこそ、ありがとうございます。実は、Notionは日本で生まれたんですよ。


前田:早速、興味深いですね。特にプロダクトやデザインについての考え方を伺えるのを楽しみにしてきました。では最初に、IvanさんやNotionが、日本からどんな影響を受けたかを教えてもらえますか。


Ivan:会社を立ち上げて3年ほどして、資金がなくなって困っていたんです。理由は、間違った技術基盤の上に構築していたから。あれは、たしか……そう、GoogleのWeb Componentsでした。最終的に成功したReactではなくね。そこで私と共同設立者のSimonは、全員を解雇して会社をリセットすることにしたんです。


そしてしばらくの間、京都へ移住を決めました。京都は二人とも日本に行ったことがなくて、いつも「いつか行きたい」と思っていたからです。ご存知のように、私たちがいたサンフランシスコは生活費がとても高い街です。それに比べれば、日本でも京都は安価に住める。


サンフランシスコのアパートは人に貸し、私たちはAirbnbで拠点を借り、一度も行ったことのない国で仕事をしてみようと。しばらくそういう生活をしながら、Notionブランドを最初から構築したんです。だから、Notionブランドは何年も前に、京都で再生したといえます。




ビジネス面でも、日本はSaaSとソフトウェアのマーケットでは、米国に次ぐ世界で2番目の規模です。ビジネスを構築するためには、文化、ネットワーク、そしてエコシステムを理解できる人が「現地」にいないとだめなんです。イギリスやアメリカみたいに、法人を立ち上げて終わりにするわけにはいきません。私たちも最近、日本でセールスとマーケティングの担当者が加わりました。


Notionを採用してくれている日本の大企業やコミュニティーも多くいますから、日本で組織を立ち上げて、より良いサービスを提供すべき時と考えています。


前田:京都が与えた影響について、もっと知りたいです。プロダクトやコンセプト、会社の構築なども、日々の暮らしなどから影響を受けましたか。


Ivan:「細部へのこだわり」でしょうか。何にでも職人技のようなものがある。日本で仕事をする前から、たしかに細部へのこだわりはありました。でも、京都のような街に住んでみると毎日が感動です。シンプルな生活で、ペースも速いわけではありません。誰もがとても丁寧に暮らしている。


私たちの住まいの隣に木造のお店があって、みんなとても真面目に暮らしています。こうした小さな木造のお店を、プロダクトに反映したいと思っています。職人技はプロダクトチームの一部です。この点については、繰り返し強調していますね。


もう一つの影響は、ホスピタリティーです。ソフトウェアをサービスと考えるんです。ホスピタリティーはサービスに繋がります。プロダクトを提供するというだけではなく、サポートやセールス、カスタマーサクセスなど、人間が関わる部分もサービスの一つです。


そして、それを単なる「取引」と見るのではなく、ポジティブに感じてもらうためにはどのようにアプローチしたらいいのか、と考える。たとえば、ホテルで歓迎されている気分になるには?フルサービスで、受け手が頭を何も悩ますことがないようにするには?どうしたら、それをソフトウェアで実現できるのか。


レストランや航空業界などは、近しいホスピタリティーを実現しています。でも、ソフトウェア業界は、未だにそうなっていないのです。


前田:本当にそうですよね。


Ivan:だから、やることは、まだまだあるんです。


「誰でも使えるプロダクト」がNotionのアプローチ


前田:ブランドの再生は、どういったプロセスを踏んだのですか。何からはじめました?


Ivan:最も大きな転換は、京都へ行く前で起こりました。言わば、NotionはXcodeバージョンから「Microsoft Officeバージョン」へ転換したんです。きっかけは、誰もが積極的な構築アプリを欲しがっているわけではない、と気づいたことから始まりました。


ほとんどの人が、目の前にある問題を解決したいと思っています。そして、問題解決のために、一般的に最もよく使われるのはMicrosoft Officeです。これらのツールは、基本的に何十年も前から変わっていません。


私たちは今日、高級なMacBook Proを使って話しているわけです。これは2000ドルのデバイスですが、世界中の何人が全ての機能を完全に利用できているでしょうか。そんな人は少数ですよ。世界のほとんどが、いまだにMicrosoft Officeに頼っています。


では、このデバイスの本当の力を、もっと多くの人に利用してもらうにはどうしたらいいのか。それは、ソフトウェアツールを作成すること。これこそ、私たちの会社の中心になるテーマなんです。そこで、誰でも使える、もっと良いものを創ろうと考えました。「誰でも使えるプロダクト」がNotionのアプローチと方針であり、今でも変わりません。


前田:プロダクトについて考えている時には、特定のユーザーを設定していたんですか。特定のタイプの人とか、あるいは役割とか。


Ivan:いえ、かなり一般的(な人物像)といえます。学生から企業まで、誰もがMicrosoft Officeを使っているみたいにね。私たちがもっと進化して、ビジネスの形が整ってくると、ユーザー自身がNotionを前進させていきます。


そもそも、ビジネスセンスを盛り込んでプロダクトを作ることは、考えられていなかったわけです。ビジネスについては「強制的に考えさせられた」といえるでしょう。さらに、ペルソナやコアな利用ケースを、今は「果たすべき仕事」として考え始めています。


前田:面白いですね。Notionが日々進化しているのは素晴らしいことです。


Ivan:初期の頃は、こんなアイデアはなかったんです。ビジネス的な思考だって、未だに持てていなくて、今でも毎日、学んでいます。


Notionの成長曲線を支えるコミュニティ


前田:先ほどの「ホスピタリティー」や「細部へのこだわり」といった価値観を組織にはどのようにアピールしたり、社員に守ってもらったりしていますか。


Ivan:難しい問題ですが、適切な人材を新しく雇うのが最も簡単なことですね。


Notionの企業バリューとしては「クラフトマンシップ」を定めています。私たちは、これを「スピードを伴った品質」と呼んでいます。スタートアップ企業のように迅速に前へ進むけれども、品質は損なわない。この二つのバランスを取るのは常に難しい問題です。


このバランスのために、犠牲にしてもいいと思っているのは「プロダクトの数」ですね。数は少なくしても質は良くする。それがいい結果に繋がります。


前田:良い質をどのように提供し続け、維持しているのですか?


Ivan:これも難しい問題ですね……。


前田:すみません、難題ばかり投げかけて(笑)。


Ivan:リリースする機能は全て利用するようにします。私たちはNotionの組織を、Notionで管理しているんです。Notionでは外部とのコミュニケーションは電子メールしか使わず、社内コミュニケーションはSlackです。それ以外は、ほぼすべてNotionで実行されています。


重要な機能は数週間かけて世に出します。弊社にはプロダクト機能を試したい方々との非常に大きなコミュニティがあり、日本もその中に含まれます。それらすべてが役立つのです。


それから、自分たちに正直であること。目にしたら、触れてみて、使ってみる。もし、ダメなら、ドローイングボードから、もう一度トライします。開発スピードとのバランスをみなくてはならないこともありますが、それよりも「質」を大切にすることはよくあります。


前田:プロダクトに対する意見を、コミュニティから聞くための戦略はありましたか。


Ivan:「Notion Pro」と呼ぶアンバサダープログラムがあるんです。新型コロナウイルスのパンデミックの前、そして最中も、世界中のアンバサダーがオフラインやオンラインでNotionのイベントを計画し、実施してくれていました。


しばらく前に韓国市場に参入したのですが、これは主に2人のNotion Proの尽力のおかげでした。彼らの助けがなければ、あれほどスムーズに参入できなかったでしょう。いや、そもそも参入できなかったかもしれません。このプログラムを、今はもっと広げようとしているところです。


もう一つ、このプログラムは意識的に実行したことですが、TwitterやRedditなどのソーシャルメディアを使うことですね。大企業が見えないようなことに気をつけました。ユーザーに直接話しかけ、フィードバックを真面目に受け止めることで、プロダクトを構築しているツールメーカーと考えてもらうようにするんです。


こうした努力が、すべてコミュニティ育成に役立っていると思います。


前田:プロダクトに対しても強いビジョンがあり、品質基準を非常に高く設定していますよね。プロダクトや機能を構築するとき、固執する点と、柔軟にする点を、どのように捉えていますか。


Ivan:一般にもよく適用されていると思いますが、社内で使っているフレームワークとして

「この決定は後戻りできるものか、できないものか」というポイントがあります。


これまでの後戻りできない決定とは、プロダクトの権限管理の設計が一例です。パートナーにはNotionを無料で提供するといったことをしてきました。そういう決定には、非常に慎重になります。固執する品質については、社内ならばリクルーティングが挙げられるでしょう。誰かを雇うのは後で変えることが非常に難しいので、しっかりと考えるべきです。


一方で、マーケティングのページを少し変えるような決定は、ほとんどがやり直せる。UIインターフェースも、いつでも変えられるので、すぐに実行しても良い。むしろ、ほとんどの決定は後から変えられると思います。


複数のソースから生まれたツール


前田:Notionがいま掲げているストーリーや、目指す先について聞かせてください。


Ivan:私たちが「印刷」という媒体を手に入れたのは、500年に一度の出来事。人間が「言語」という媒体を扱うようになったのは1万年に一度の出来事です。コンピューティングの世界では、200年ごとに新しい媒体が出てきています。ソーシャルメディアは、おそらく10年に一度という感じですよね。


こうして500年のような単位で物事を考えようとすると、すごく特別なんです。なので、一般の人々までは、コンピューティングの媒体の機能を享受するには長い時間がかかります。たしかに、プログラミングを習うように教育することはできます。いまでは多くの人がプログラミングをしていますよね。素晴らしいことですが、もっと多くの人が使えるようにするためにできることは、たくさんあります。


その一つは、この媒体のためにより良いツールを作って、より多くの人がものづくりに参加できるようにすることです。それこそがNotionで、その存在を目指しています。


前田:面白いですね。もう一つ、Notionで特に興味深いコンセプトが、すべてブロックのようになっている点です。フィールドやエレメントを追加するたびに、シートやドキュメントに、まるでブロックを加えていくようになっている。このコンセプトを考えるきっかけになったものは?


Ivan:複数のソースのある、レガシーなんですよね。ソースが何だったかは、はっきり覚えていないのですが。


初期のコンピューティングシステムでは、Smalltalk、つまりXerox Altoが実行されていたものを使っていました。現代のオブジェクトやプログラミングは、それがベースになっています。Notionではすべてがブロックで、これらのブロックにアクションを追加できるんです。つまり、複数の要素を選んで、それらを動かしたり、複製したりね。Web Componentsから派生した別の系統もあります。これはNotionの基盤になった技術です。


また、ユーザーが必要なピースを選び、デベロッパーはそれらを組み合わせ、独自のソフトウェアにするのは、ソフトウェアをパッケージとして流通させる方法の一つです。そこからも派生しているので、Notionはオリジナルのアイデアというわけではありません。こうしたアイデアを組み合わせて、多くの人が使える機能を、どうやって設計するかなんです。


それらすべてが機能すると、Notionの現代的なブロックフレームワークになります。


前田:きっと、今も膨大な機能追加リクエストが、世界中から届いているのではないかと思います。どの機能を追加し、拒否するかについて、いかに優先順位は決めるんですか。


Ivan:それは非常に難しいですよね。まだ答えが見つかったとはいえません。


Notionは多くが個人ユーザーです。一方で、多くの大企業やスタートアップでも使われています。それぞれが求める機能がありますから、バランスを取るのが難しい。直感や推測に頼る部分が大きいですね。でも、まずは人々の話に耳を傾ける態度が大切です。


Notionには、Twitterやその他のサポートシステム、セールスコールなど、外から入ってくるリクエストにタグ付けするシステムがあります。誰から、どんなリクエストがあって、連絡して来ているのか、といった数百のエントリーを保管する社内データベースです。


毎日、毎週このリクエストを集計して、毎週のタグ数と傾向を確認しているんです。そうして、マーケットが何を求めているのかを知ります。ボトムアップのやり方ですね。方や、トップダウンとしては、私たちの「Microsoft officeのようになりたい」という希望と、マーケットに求められるものの間に、継続的な葛藤が生まれています。


非常に曖昧な答えですが、トップとボトムから両面にアプローチする以上に、良い方法はないと思います。


前田:最近、直面した困難などから、新しく採用した考え方はありますか。


Ivan:顧客からのフィードバックで何を実行するかという話では、企業からのリクエストとのバランスをどう取るべきかが問題なんです。「もし、この機能を構築してくれるなら某企業にNotionを採用できます」なんて言われたりもする。Notionの発端ともなった小規模チームからのリクエストもあります。個人はもちろん、ベースとなる顧客層が広いわけです。


これらのバランスを取るのは非常に難しい。今、まさにセールスチームを構築中です。セールスチームが企業向け機能を規模の大きい顧客に提供します。強力なチームになるまでには少し時間がかかるでしょう。プロダクト、そしてプレイブックについて学ぶ必要がありますから。


エンタープライズ向け機能は、タイムラグも発生します。これから2ヶ月後ぐらいには、プロセスへの導入が開始できると思います。SMBとエンタープライズでの利用ケースとのバランスをとりながら、タイムラグを考えるのは、かなりのチャレンジですね。


グローバルマーケットの一部として、どのように販売すべきか。それがNotionのような一般的な目的で使用されるソフトウェアを扱う時の課題です。ジェネラルに使われるNotionのようなソフトウェアを構築するには、難しい点も多いです。


前田:とても多いでしょうね。


Ivan:でも楽しいですよ。いや、そこが楽しいところなんです。


求める人材の資質に「誠意」は外せない


前田:どの要請を採用するかについては多くの議論があるんでしょうね。意思決定については、委員会やチームがあるのですか。


Ivan:Notionはまだ小さく、およそ20名の社員がプロダクトに携わっています。弊社が雇用するエンジニアのほとんどが、プロダクト中心のスタッフです。社員のデザイナーは全員エンジニアでもあり、プロダクトのビジネスセンスもあります。誰もがプロダクトを理解しており、その方向性について意見を持っています。


もちろん、私はみんなの意見のまとめ役となります。20人から30人を超える会社を、どのように運営していくかを、今だに考えているのです。


前田:雇用プロセスにもかなり関わられているようですね。どういった資質を求めているのですか。


Ivan:はい、全員の面接をします。会社のバランスを考えながら、目的ごとに異なる人材を求めています。たとえば、エンジニアに関しては、プロダクトセンスのある人を求めます。


資質では、「フィードバックはギフト」がわかることです。Notionはとてもダイレクトな文化を持つ企業なので、互いに学べるようにフィードバックをしています。そして、「専念できる人材」であることも大事です。ホスピタリティーを持ち、手仕事のように、自らの仕事に専念する姿勢はチームにも感染します。


最後は「誠意」ですね。Notionには誠意を測るテストがあるんです。取り下げのできない多くの決定事項と同じで、誠意はユーザーからの信頼に関わります。信頼を一旦でも失えば、取り戻すのは非常に難しい。


そこで、「その決断が、ニューヨークタイムズの一面に掲載されても良いのかどうか」と考えて、多くの意思決定をします。良くないと思ったのであれば、もう一度考え直す。


採用時には、これらのバリューを候補者に当てはめていきます。もちろん、彼らの才能面も重要です。経験、スキル、エンジニアとしての才能など、基準は下げないようにしています。会社が大きくなれば、基準も上げますが、難しいところです。経験とスキルを持った候補者は限られていますからね。基準を下げることは簡単ですが、そうはしないように。


前田:「ニューヨークタイムズの一面」を想定するアイデアはいいですね。大きな意思決定時に面白いアプローチでした。


Ivan:これは私が考案したものではなくて、(決済サービスの)Stripeや、サン・マイクロシステムズも用いるアプローチです。「誠意」を考えるのに、良い方法だと思いますね。


前田:あと、Notionで一つユニークだと思ったのは、すべてのチームメンバーが「自分の似顔絵」を持っていることです。どのソーシャルメディアを見ても、全員がそれをプロフィール写真の代わりに使っています。何か意図があるんですか。


Ivan:私は大学で、写真にたくさん励みました。自分のキャリアとして、ビジュアルアートフォトグラファーになることも考えていたんです。結局はソフトウェアを手掛け、デザインとエンジニアリングを仕事にするようになりましたけれど。


写真において、顔は見せずに他の部分を見せると、実はかえってその人を連想しやすくなるものなんです。なので、Notionのアイデンティティとなるブランドページや、採用ページの一部では、実際の顔写真の使用は避けています。そうすると、閲覧者とプロダクトの間に距離ができます。


アバターとしての存在は見えますけれど、実際の顔は見えない。すると、採用ページなら、自分がNotionで働いているところをイメージしやすい。そのほうがうまくいくと思います。ただ問題があるとすると、ゆっくりではあるものの成長している会社ですから、私たちのイラストレーターは、必死です(笑)。


人の顔を描くということは、オンボーディングの時に必要になっています。会社のアイデンティティに統一感を作り出すことができますからね。露出やカラーがうまく合っていない写真を撮っても、単に「写真が並んでいるだけ」という感じしかしません。イラストとして描けば、統一感が出ます。線の太さも調節できますし、背景色も自在です。


セールスやサポートのメンバーというだけでなく、ブランドとしてのNotionと話しているという感覚が持てます。


もう一つ、正式には語られない会社の価値観として、ホリスティックでいることがあります。ほとんどの問題は、どこかにつながっています。ホリスティックに考えるにあたって、ベストの解決法とは何なのか。


私の考えとしては、どんなソリューションでも、本当のイノベーションとは、芸術と科学、それ以外の次元を組み合わせることだと思います。そうすれば、ベストな結果が見つかるんです。


たとえば、デザイナーを雇うときにはプログラミングもできる人を探します。エンジニアとしての考えも理解できれば、技術的な制限もわかりますからね。ソリューションをデザインする時、それがあまりにも困難であれば、一旦異なる技術スタックに振り分けて、もっとプログラミングしやすいものを見つければいいですし、その逆もありますよね。


制約のより多くの部分を理解できれば、より簡単でもっとホリスティックなソリューションを持つことができる。Notionではそう信じています。


私は6ヶ月ごとに脱皮する蛇のようなもの


前田:Notionというプロダクトは、みんなからとても愛されていると思うのです。TwitterやYouTube、私の周囲を見回してみても、それがわかります。このプロダクトが、これほどのエネルギーと愛情を集めるのは、なぜだと思いますか。


Ivan:たっぷりの愛情を注ぎ込んでいますから。プロダクトのクオリティも良いものです。内容を薄くしすぎることなく、なるべくシンプルにするようにしています。そして、ブランドもいいのです。もっと多くのアートをブランドに取り入れ、単にソフトウェアというだけでなく、人間味のあるものにしたいですね。それらが、熱心なNotionユーザーがコミュニティでの愛情を生み出しているのだと思います。


ツール作成でいえば、最後のポイントは「柔軟性」です。プロダクトがオープンエンドなものなので、ユーザーはそれぞれの目的に応じて利用できます。そしてみんなに公開する。イメージは、レゴです。自由に組み立てられ、参加者は自分たちが作ったものをYouTubeなどで互いに見せ合います。そこにはプライドがあり、創造性と補完関係にもあります。


ツールメーカーとしては、ラップトップを開いて、日々直面する問題を解決する。そうしたら、人に見せたくなります。そこから、他者とのやりとりが始まるんです。


前田:そうですね。よくわかります。Notionの素晴らしいタスク管理プロセスは、ほとんど芸術作品ですから。あとは、CEOとしてのお考えも聞きたいです。実行するのに努力が必要だったこと、社員と様々な仕事をいかに管理するのかなど、お話しくださいますか。


Ivan:CEOとしての努力は、たくさんあり過ぎますね。全く新しい会社の運営方法や、プロダクトの構築を学ぶのは、6ヶ月ごとに脱皮する蛇のようなものです。私自身で言えば、プロダクトのデザインと構築から少しずつ、会社のデザインと構築へと転換していっています。これは大きな転換です。


それと同時に、プロダクトに深く関わる事ことで、より多くの価値を生み出せます。今でもそこは変わりません。たくさんのプロダクトをデザインする、とてもハンズオンなやり方です。社員の指導をしながら自分のやるべきことに集中する、というバランスの取り方ですね。私よりも才能のある人々に、私のアテンションを振り分ける。会社をホリスティックに設計し、運営していても、こうした異なるレベルの抽象的な部分は変わっていきます。


これも難しい課題で、まだより良い答えは見つかっていません。


前田:最後の質問です。希望あふれる起業家、特にソフトウェアマーケットの起業家に対して、学んでほしいことなどあれば、メッセージをください。


Ivan:まず、ソフトウェアの構築に関しては、日本はまだ経験が浅い。ですが、職人技やサービスに関するホスピタリティの精神といった素晴らしい強みが数多くある。その点を、ソフトウェア構築にも反映させ、日本のソフトウェアプロダクトでも、さらに示してほしいと思います。日本はごく自然にそれを達成できるでしょうし、どのように達成されるのかについては、とても興味があります。


前田:本当にそうですよね。自分たちの本来の価値観に戻って、技術やソフトウェアの構築にも組み込むべきですね。ありがとうございました、素晴らしいインタビューでした。おまけとして、Notionでお気に入りのユースケースがあれば教えてください。


Ivan:私の個人的な使い方なんですが、私は「SAKE(お酒)」のデータベースを作っていますよ。まだ試飲していないものを、写真に撮影し、保存しています。今ではワインやビールにまで発展しているんです。

(編集=ALL STAR SAAS FUND 構成=長谷川賢人)

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