身体にしんどさを感じたら、マッサージやサウナといったボディケアに行く。では、メンタルが疲れた時のケアは?
ビジネスの場でしか解消できないような悩みを解消する、ということはコーチングがもたらす大事な価値のひとつかもしれません。
コーチングの効力に気づき、社内制度として設けるだけでなく、社員が社員にコーチングを行なう「内製化」も実現しているのが、営業DXサービス「Sansan」やインボイス管理サービス「Bill One」を手掛けるSansanです。
今回は、社内制度としてコーチングを内製化する中で尽力されてきた三橋新さんと、実際にコーチングを受けて変化を実感した久米志穂子さんを招き、コーチングがもたらした変化などについて伺いました。
三橋さんはSansanの29番目社員として、社歴は約13年。9年ほど前からコーチングを学びはじめ、今では社内コーチを務めています。久米さんはBill One営業部で、西日本の営業組織立ち上げを行ない、現在は大阪、名古屋、福岡という3拠点の管轄をするマネージャーとして活躍されています。
聞き手は、カスタマーサクセスの責任者として事業成長を牽引した経験を持ち、現在はグロース支援体制の構築などをサポートする、ALL STAR SAAS FUNDパートナーの神前達哉です。
(※この記事はPodcastをテキスト化し、編集・構成したものです。ぜひ併せて配信版もお聞きください!)
リピート数やクチコミの多さから、定着していった社内コーチング制度
神前:社内でコーチング制度を確立していった背景と、それを内製化しようと考えた経緯から伺えますでしょうか。
三橋:大きく3つのきっかけがあります。そのひとつは、僕自身が強みを生かして「何者かになりたかった」という思いです。Sansanが掲げるバリューズに「強みを活かし、結集する」があるように、社員おのおのが自分の強みを生かして会社に貢献していく価値観を持っています。そこで、「僕の強みは何なのか、どう貢献できるのか」を考えたかったんです。その手段としてコーチングに出会えました。
また、Sansanはいわゆるベンチャー企業ですので、期待以上の目標数値を積み上げながら、基本的には常に限界に挑戦していきます。ただ、誰もが大きな壁をスムーズに越えていけるわけではなく、現場で苦しんでいる社員もたくさん見てきましたので、彼らにも貢献したかったんです。
そして、会社は明確な課題には打つ手を講じるサイクルを進めているものですが、まだ課題になっていないことや、その可能性と伸び代については、どのように扱っていくのかがあまり意識されていませんでした。その点についても、コーチングはぴったりハマりました。
神前:スタートアップは、どうしても売上やROIなどの近視眼的なコミュニケーションが発生しがちですが、そこで一度立ち止まってポテンシャルにも目を向けたかったと。ただ、社内の説得は難しそうですね。どのような効果があることを示されたのでしょう?
三橋:いいですね、単刀直入に難しい問いです(笑)。
それに答える前に、僕の背景から伝えさせてください。コーチングはまだ一般的になりきっておらず、会社内でもマネージャー以上が受けるようなものと捉えられていると思います。また、外部のコーチングを受ける場合は一定の費用がかかってきます。
ただ、僕は当時、現場のみなさんに届けたいという気持ちがあったから、コーチングの内製化をしようと考えました。そこでの費用対効果は最も悩ましく、エンゲージメントの相関などから数値的な解を求めようとしたこともありますが、なかなかつかめなかったんです。
それでも今、続けられている一番の理由は、端的に言うと「リピーターや口コミの多さ」に尽きます。僕としてはコーチングの効果を言葉にはできるのですが、それだけでは何か言い切れないところもあります。でも、一度受けた人が「もう一回受けたい、仕事に寄与する」と続けてくれるので、その量や平均的な回数が効果として証明できるのでは、と思います。
SaaS特有の連携の多さに着目し、チームコーチングもスタートすることに
神前:三橋さんは、社長の寺田親弘さんに対しても、マンツーマンのコーチングを実践されたそうですね。
三橋:やりました。正直、一番怖い相手でしたね(笑)。当時は僕自身もコーチとして経験量がなく、未熟でしたし、そこで「必要ない」と判断されたらと不安で。そこから自分の殻を破って、「まずは体験してもらおう」と拙いながら実践しました。帰りのエレベーターで「話してすっきりした」と言われたので、肌感覚として悪くはない評価はもらえたのでしょう。
神前:CEOにコーチングしに行き、コーチングの魅力を伝えるというのは、三橋さんのすばらしい推進力だと感じます。ブログなどでも、パーソナルコーチングに加えて、チームでコーチングしていく重要性について語られているのを拝見しました。チームコーチングや社内で実践されている社内施策「コーチャ制度」の概要を、ご説明いただけますでしょうか。
三橋:社内では、個人向けのコーチング「コーチャ」と、チーム向けのコーチング「コーチャチーム」があります。両方とも「受けたい人が自由に受けられる」というのが共通しています。そこで僕に相談がきて、状況に合ったコーチングを実践していく流れになっています。
個人向けコーチングは、「強みをもっと生かしたい」「業務で困っている」「キャリアをもっと考えたい」といった色々なテーマを取り扱います。チーム向けコーチングは「チームとして、どんな課題や未来を描いて、それにどうチームとして向かっていくか」というテーマを扱います。
神前:最初から両方の制度が存在したのでしょうか?
三橋:まずは個人コーチングで向き合った社員が、勇気や元気を取り戻してチームに戻ると、チーム内の関係性やパフォーマンスに影響を与えているケースが多々あったんです。個人コーチングでは安全な関係性を構築し、そこでは自身の可能性に溢れた本音が語られるのですが、組織に戻るとそのチーム内の人間関係や評価などの力関係、経験年数などによる違いから力を発揮しきれない状況をなかなか本人起点で変えることができない状況があり、そこでチーム自体にも関わっていく必要があるのでは、とチームコーチングへ進化した感じですね。
神前:なるほど、関係性の質を高めていくところが、チームコーチングのポイントだと。
三橋:そうですね。上司とメンバーの関係性も、メンバー内でもベテランと新人の関係性があります。当社のようなビジネスモデルですと、営業、インサイドセールス、CSの連携といったチーム間の関係性も。チームによって変わる課題に向き合っています。
スタートアップ“あるある”にも効く、社内コーチングの活用
神前:チームコーチングの具体的な進め方を教えていただけますか?
三橋:だいたい「最低でも、一回当たり2時間から3時間で、3回の実施」を勧めています。
よくやるのは、チーム内の関係性を高めるために、まずは相互理解から。Sansanの場合はストレングスファインダーとエニアグラムの情報を社員ごとに公開しているので、それらを共有しながら、強みや苦手を知っていきます。
そこから先はチームによって課題感が違いますが、「チームとして何を成し遂げたいのか」というビジョンを決めていったり、「そもそもチームの課題とは」を語るために「KPT(Keep、Problem、Try)フレーム」を使って顕在化を試みたりします。
神前:ありがとうございます。実際にコーチングを受けている側として、久米さんにもお話を伺わせてください。ご自身がコーチングを利用されようと考えられた背景は、どういったものだったのでしょう?
久米:私は前職でマネージャーがコーチングの資格を取っていまして、コーチングの有用性を知ってはいたんです。入社前に、Sansanにもコーチングやコーチャー制度があることは認識していて、タイミングが来たら活用しようと思っていました。
私が携わっているBill Oneは当時、新規事業として立ち上がりはじめたときで、会社からも高い期待値が課され、なおかつ立ち上げ当初は、どれくらいの数字を目標として定めるべきかが見極められてもいない時期でした。それまでは定められた目標を達成することが営業としての存在意義だと思ってきましたが、新規事業ともなると妥当性のある目標数値の算出が難しくて。そのハードルの高さから、モチベーションの置き方に悩んでしまったんです。そこで、三橋さんにヘルプを頼みました。
当時は本当に忙しくて、自分のことを考える暇も全くなくて。「このまま過ごし続けていいのか」といった疑問も湧いた時に、改めて時間をちゃんと設けて、自分のことを考えようとしたのも理由のひとつですね。
神前:本当に「スタートアップあるある」と言いますか……新規事業も含めて、未知の領域に挑戦していく中での不安、予測不可能な出来事の連続に、コーチングは久米さんにとってどういった存在になっていましたか?
久米:当初は、心の安らぎみたいな捉え方で依頼したところもありましたが、今になって振り返ってみると、「自分のやるべきことをシンプルにするための時間」だったかなと思っていて。混沌として整理がつかないまま三橋さんに全部吐き出して、そこから進むべき道筋が立ってくることで、「これに取り組めばいいんだ」とすっきり走り出せましたから。
神前:社外のコーチに依頼する選択肢もあったと思いますが、社内コーチだからこその良さも感じましたか。
久米:やはり新規事業は状況の変化も早いので、外部に伝えるのは難しいですね。それを近くで知っている人に相談できるのは、解像度が高くなると言いますか、自分の実体験を話す上でも重要だったと思っています。
まずは「全てを聞き切る」ことからはじめる
神前:三橋さんは、コーチング後の久米さんの変化をどういうふうに感じました?
三橋:変化どころの話じゃないな、っていう感じです。当時掲げたものは全て実現していってるので「本当にすばらしいな」と。忙しい中でも「重要度が高く、緊急度の低いテーマ」をどう扱っていけるかが大事だと思うのですが、コーチングセッションの時間で、強制的にそれと向き合えるのは大事な価値だと改めて考えさせられます。
神前:どういった点に気を付けながら、コーチングをされてましたか?
三橋:みなさん、気持ちも頭の中も、いろいろなものがあふれているので、まずは「全てを聞き切る」ことを意識しています。感情はポジティブ/ネガティブ両面に目を向けて、ポジティブであれば「どんな意思があるのか、何を求めているのか」、ネガティブは「何が障壁で、それを作り出しているのは何か」を聞く。事柄よりもマインドに関することが中心です。
神前:逆に「これは絶対にしない」と心がけていることは?
三橋:決めつけをしないこと、評価や判断の目を持たないことです。僕も人間ですから、ついしてしまう時もありますが……「それがいいね」や「いまいちだね」となるべく言わないように、と。
神前:久米さんご自身のパフォーマンスがコーチングによって取り戻されたことで、久米さんのチーム全体にはどのような変化があったのでしょう?
久米:自分のやるべきことの最優先事項が、Bill Oneの拠点立ち上げだったんです。その後、成果が出せるようになると私にもチームができていきました。そこでチームとして「今度はどの方向へ進もうか」と思った時に、三橋さんに「個人ではなくチームとしてのコーチングをお願いします」と依頼しました。
三橋:そのコーチングは断続的に実施しましたね。Sansanの特徴でもあり、特にBill One事業の特徴でもありますが、急成長で人がどんどん増えたり、チームが分かれたり吸収されたりすることもよくあります。だから、変化し続けるチームに対して断続的に関わっていくスタイルなんです。
相手の課題を明確にさせ、そして解決の方向へと“誘(いざな)う”
神前:コーチングにおいて「振り返りのポイント」が難しいように感じています。たとえば、「コーチングによって、ARRがどれぐらい伸びるか」といった定量的な成果の説明がつかないケースも多いですよね。コーチングを継続したこと、実施したことによる価値はどのようなところに設定されているのでしょうか。
三橋:課題を明確にできたかどうか、だと考えます。課題が明確になれば、当事者たちは問題解決のためのアクションを起こせます。また、ツールなどを使ってチームの問題・関係性を可視化すること、特にチームの関係性を見えるようにすることも大切であり、最も難しい課題でもあります。
僕のようなコーチは、チームで認識できていない潜在的な問題点に気づき、フィードバックすること、できることに価値があると考えますね。
久米:日々、同じチームで仕事していると「盲目的に見えない部分」が結構出てきます。現場のミドルマネージャーの方は「うんうん」となるのではないでしょうか。
以前、三橋さんにチームコーチをしていただいた時、あるメンバーが遠慮して自分の本心を出せていないように感じていました。その課題は私も認識していたのですが、「どうやって引き出してあげたらいいのか」の答えが見つかっていなくて。
そのメンバーは、もともと潜在的には人前で立って話すのが得意だったのですが、どこかでブレーキをかけていた。それを三橋さんが、うまい仕掛けで気持ちを引き出してくれた。第三者からの視点で言っていただくことでの効果を実感しました。
神前:その「うまい仕掛け」はどういったことだったんですか?
久米:「誰かに意見を求める際には、最初にその人にコメントを求める」というムーブを起こしてくれましたよね。
三橋:それまでのパターンとして、チーム全体に問うと意見が出ない状態が続いていたのですが、話を振ってみると必ず意見を言える人だったんです。「なんだ、しっかり考えを持っているし、話も面白いじゃないか」と。それで結果的に、その方がムードメーカーのようになっていきましたよね。
久米:ええ、今ではチームに欠かせないムードメーカーです。ただ、「最初にその人にコメントを求める」というのはマネージャーの立場からすると、プレッシャーをかけているようにも、贔屓をしているようにも捉えられてしまいます。冷静に考えてみると、この役回りは私にはできず、三橋さんのようなコーチだからこそ機能したんだろうな、と。
三橋:やっぱりメンバーとマネージャーの関係性は、どうしても評価者と被評価者ですから、力関係は拭いきれません。そこに僕みたいな人がフラットに入り、フラットに関われるところは利点ではないでしょうか。
やはり、マネージャーの主要な焦点は事業であると考えられます。多くの場合、8割から9割が事業に向けられ、組織については見えにくく、打ち手も見えづらく、緊急性が低くなってしまいます。その中で、意識的にチームに1か月に1度、1時間半から2時間ぐらいの時間を割いて、メンテナンスをしていくことが大切だと思っています。この取り組みが、事業に良い影響を与えることができるのでしょう。
助けを求めない=事業の成長を妨げている可能性もあるということ
神前:スタートアップで働く方や経営者がコーチングを取り入れようと思っても、リソースの問題をはじめ、まだ30人から40人のフェーズでは価値を実感しきれないと感じてしまう課題があるのでは、と思っています。もし、そういう方々に向けて、三橋さんからアドバイスをするとしたら?
三橋:2つの観点から伝えると、まずは自分自身で受けてみて、その効果を実感することが大切だと思います。ここ数年、コーチングサービスが増えているので、気軽に受けることができるはずです。自分自身に向き合い、話を聞いてもらうことで、どのように自分が変わっていくかを体験することが重要だと思います。
次に、自分が受けた体験を、メンバーや仲間にも返していくことができたらいいですね。コーチングの技術は難しいため、習得のために1年半程度の時間がかかることもありますが、まずは相手の可能性を信じて「聞き切る」ことが重要です。近くにいる人からはじめてみることで、まずは一歩を踏み出せるのではないでしょうか。
神前:ちなみに……不躾な質問ですが、「良いコーチを選ぶポイント」はありますか?
三橋:難しいですね。まずは直感的なフィーリングやフィット感が大事です。ロジカル思考な方であれば、同じくコーチもロジカルに進めてくれる方でないと合わないでしょう。
あとは「きちんと意見をくれる」のもいいコーチの条件かもしれません。というのも、コーチングは人のためになれますから楽しくて嬉しいのですが、相手にとって喜ぶことだけをやったりしているのは、僕からすれば「足りない」コーチです。
コーチは、時には嫌われるかもしれないけれど、率直なフィードバックをすることも大事です。受け取ってもらえるのかはわからないけれど、気づきを与えて、本人が伸びる可能性を広げてあげるのも、コーチの役割ではないでしょうか。
あとはそうですね、限界に達した時にコーチングを受けてみるといい、と思いますね。うまくいっている状態が続いていれば、全然、無理して受ける必要はないかもしれませんし。
久米:限界に達するくらいでコーチングの良さを知って、それなら「限界に達する前により良くするためにはどうすればいいんだ?」と、より前段階でコーチングを依頼できるようになりますよね。私の実体験でも、そう感じます。
三橋:そこに乗っかると、コーチングを受けると「問いかけられて、考える」というサイクルが生まれ、自分自身の問いについて考えるようになっていくんです。だから、自然とコーチングから離れていくのが理想的だと思っています。自己内省力が高まったり、気づき力が上がって、距離を置けることはとてもいいことだと思います。
コーチングがまだ広がっていないのは、日本人のマインドとして「協働して一緒にやっていくこと」が少ないせいかもしれません。個人の責任でやりきることが美しいと思う傾向があるというか……それに、ベンチャー企業のマネージャーたちは、負けず嫌いな人も多いので、助けを求めることが負けたように感じられるマインドを持っているのでしょうか。
このような考え方は、究極的には事業の成長を妨げている可能性だってあるかもしれません。そして、もうひとつのポイントは「正解があると思っている世界観」と「正解がないと思っている世界観」ではスタンスが異なることです。正解があると思う場合は自分自身で行なえば良いですが、正解がない場合は、自分だけでなく協働することで可能性は広がり、深さも増していく。そういった視点を持つことも大切です。
役職者が弱みをさらけ出すことで、チームの関係性が良くなる
神前:コーチングは、ティーチング、カウンセリング、コンサルティングといった、コミュニケーションの一種だと感じています。そこで久米さんに、メンバーの方と普段のコミュニケーションで、コーチングのエッセンスをコミュニケーションに取り入れている実践例があれば伺ってみたいのですが、いかがでしょうか。
久米:Sansanでは社員がストレングスファインダーを受講しており、それを基に三橋さんに解説してもらい、自分自身の強みや特徴を共有して、相互理解を深めるための場があります。これはファーストステップとしてよく行なわれることです。
また、各個人の特性を生かした上で、プロジェクトにおいて、「この人に任せた方がよさそう」とか、「新しい発見があるかもしれないから、挑戦的だけれど能力を考慮した上で任せてみよう」といったように、実際の現場でもストレングスファインダーをベースにした判断ができていると思います。
神前:相互理解はキーワードになると感じました。スタートアップでも意外とそのための時間を割いてないような気がしていまして。毎月のようにメンバーが増えるのであれば、意図的に時間を取っていかないと、個々人の強みや課題がわかりません。相互理解と心理的安全性をないがしろにすると、その上にコミュニケーションが積み上がっていかないでしょう。
三橋:あとは、前にも言った通り、チームの関係性と協働関係について、KPTのフレームワークを使って振り返るのはとても良いと思います。具体的には、KPTのKは「Keep」の略で、チームが続けたいことや良かったことを付箋に書き出していきます。僕らはGoogleのJamboardを使うこともあります。Pは「Problem」の略で、チームが課題や違和感を出し合い、最後のTは「Try」の略で、アクションプランを立てます。このフレームは誰でも使えるもので、エンジニアチームでも毎週振り返りをしています。
関係性や目的によっては、このフレームを適用する方向性は異なるかもしれませんが、関係性を重視する場合ならお勧めします。たとえば、違和感は普段は言いづらいことが多いですよね。僕らもリモート環境になった際に、そういった声が出やすい仕組みを作ったりもしました。特に中途入社の方ほど、違和感を抱いていたりします。それを聞ける機会としてもKPTフレームが有効だと思います。
久米:「強みをアウトプットする」という文化は、当社の中では浸透していて、違和感なく行なわれています。でも、弱みに向き合う機会はあまりなくて。それで、バリューズの「強みを活かし、結集する」を実現するためにも、コーチャチームを体験していたメンバーから「弱みを披露する場を作りませんか?」という提案がありました。
その場で披露される弱みは評価に関係するものではないですし、ただ知ってもらうだけです。それでも非常に有意義なものでした。弱みが明らかになることで、その人が苦手なことがわかり、それに対してサポートできる人たちが見つかったり、コミュニケーションが明確になったりしたのです。その場の心理的安全性を担保できれば誰でも実施できるはずです。
それこそ自己開示が苦手そうな役職者から、盛大に弱みをさらけ出していくことが場作りにおいては重要だと、やってみて思いますね。
三橋:役職者の方がさらけ出すのは、一番にインパクトがありますね。新しく入った人がマネージャーに萎縮するのはありがちです。そういう人でも苦しんだ過去があり、失敗を越えてきたことが語られるだけでも安心感をもたらす。それは、すごくチームの関係性に影響しますね。
やっぱり世の中が混沌としていて、ビジネスも正解がわからない状況なので、ミドルマネージャーの方は、一人きりで向き合わなくていいということは、強く伝えたいなと思いますね。コーチ含めてメンバーにも頼っていいし、さらけ出していいし、そこで何か協働してやっていくことが多分これからのマネジメントにとってすごく大事なんじゃないかなと。そこで生まれる関係性を元に、最大の成果を生み出す、それがこれからの理想のマネージャーの在り方なのではないでしょうか。