スタートアップにおける広報の重要性は高まる一方、人材不足やノウハウの欠如といった課題も顕著になっています。そこでALL STAR SAAS FUNDとkipplesの共催で『SaaS PR集中講座』を全4回に渡って開催しました。
講師は、Sansanでマーケティング&広報機能の立ち上げに従事され、現在は創業したkipples代表として広報、マーケティング、新規事業の支援や、コミュニティ作り、官民連携促進を中心に活動する日比谷尚武さんが担当。
SaaS企業の広報が必須で持っておきたい知識を、「概論編」「広報組織の立ち上げ編」「広報実務編」「リクエスト編」に分けて展開しました。この講座でお話しした内容をまとめた記事はシリーズで公開中です。下記の記事もぜひご覧ください。
今回は「広報実務編」がテーマ。前編に続き、具体的な実務を円滑に進めるためのポイント、そして記事後半ではメディア編集長をゲストに迎えたトークセッションの内容も掲載します。ぜひ前編と併せて読み、広報実務の理解にお役立てください!
Point 5:ツール作成とメンテナンス
「ツール作成」のフェーズでは、どういった内容を、どういった素材で伝えていくかを検討します。根底にあるのは「メディアの方に取材したいと思ってもらうにはどうすべきか」という考え方です。
その前提に基づくと、取材したくなる企業には上記のように2つのポイントがあります。
1つ目が左脳的な要素だとすれば、2つ目は右脳的な要素です。これらの要素の掛け合わせが、取材される企業には備わっていると思います。そして、取材時には自分たちの伝えたい内容を、いかに表現するかが求められていくのです。
では、基本的なツールを一つ取り上げると、まずは「プレスキット」。
メディアの取材を受ける機会が増えてからでも遅くはありませんが、ファクトブックや各種素材を用意し、かつ簡単に提供できるようにしておくのは、最低限の用意として早いに越したことはないです。併せて、メディア専用の問い合わせフォームを設けておきましょう。
これらは自社が「メディアフレンドリー」で情報提供をする意思がある姿勢を示す意味でも有効です。たとえば、メルカリさんはとても丁寧に用意されていますし、Sansanもしっかり備えている一社です。(参照:メルカリ、Sansan)
「このテーマを聞くならこの会社」と思ってもらえる仕掛け
メディア向けのファクトブックに載せるべき内容は、営業資料や投資家向け資料とも異なってきます。ボリュームや内容は企業によってまちまちですが、最初はコンパクトに作って、取材を重ねるごとに「よく聞かれる内容」を盛り込むなどしつつ育てていきましょう。これもコンタクトリストと同じく、後々で作ろうとすると、重い仕事になりがちです。
公開されていて参考になる資料としては、キャディさんの採用者向けの会社紹介資料は、アレンジするとメディア向けにもなりますね。最近は、いろんな会社が採用を意識した会社説明資料を上手に作って公開していますから、項目や見せ方は参考にされるといいのではないでしょうか。
ツールを作る以外の有効な手段として、社内で「スポークスパーソン」を設定するのもいいでしょう。各事業担当者だけでなく、「働き方」というテーマで語れる人、エンジニア組織や技術に関して語れる人、キャリアが異色なので転職ネタに強い人……といったように、いわゆるCxO人材以外だけでなく、タレント社員によるスタートアップ化です。
社外の方であっても、ヘビーユーザーとしてサービスの良さを語ってくださる方とのコミュニケーション、アンバサダーやエバンジェリストの認定といった方法も、スポークスパーソンによる発信戦略の一つといえます。
今はコロナ禍で少し難しくなりましたが、メディアの方々を集めて、専門的なテーマに対する勉強会を開催し、レクチャーの機会を提供する手もあります。その勉強会自体が記事化されることもありますし、「このテーマや分野であれば弊社にご相談ください」といったメディア向けの認知形成にもなります。
最近は一般的になってきましたが、「業界カオスマップ」を公開することで、その業界の中心プレイヤーとして印象に残り、その業界の話題を欲しているメディアに注目されやすくするという手段もありますね。
カオスマップの発展形として、「業界白書」のようにシンクタンクが手掛けるようなレポートを作り、その業界の第一人者であることを示す技もあります。いわゆる「ソートリーダ—シップ戦略」です。マネーフォワードさんは、そういった点で非常に上手に取り組まれていますね。特定の技術領域や業界をたばねる団体やシンクタンクを作って、自社のキーパーソンを顔役に据え世の中に発信を続けることで、メディアが特集を組む時に声がかかるようにしておくのです。
特定の領域における「カンファレンス」を主催することも、オンライン開催できるようになってきたことで増加傾向にあります。特定の領域において、自社がきちんと真ん中にいることを示せる方法ともいえます。
業界内で、もしくはトピックの中で「話を聞くならこの会社だな」と信頼してもらうための手法はさまざまです。
Point 6:SNSやオウンドメディアの運用
WebやIT系の企業だけでなく、SNSやオウンドメディアの活用も戦略の一つです。
いわゆる記者の方に自社媒体に書いてもらうだけでなく、広告やオウンドメディア、SNSなも使い分けることが大切です。それらは独立させず、情報の連動性をもたせて、どこかに露出したものが他でも連動して露出していくような設計、それによる広がりを考えましょう。
メディアに掲載されることで発信の範囲も広がり信憑性も高まりますが、内容やタイミングがコントロールできるわけではありません。その点、オウンドメディアでは自分たちの好きなタイミング、内容で発信することが可能です。
この事例で有名なのはメルカリさんの「メルカン」などのオウンドメディアです。基本は採用者向けに社員や自社の取り組みを発信していますが、公共政策に関して、現行の政策や法に対してどのように考えているか、といった内容も発信しています。それを見た外部メディアから取材が申し込まれたり、登壇依頼につながったりという効果が出ているといいます。
大企業の例だと、IBMが「mugendai」という広報オウンドメディアをかなり早い段階から始めて、今でも更新し続けています。有名なところではシャープさんのSNSも会社のファンづくりや認知につながっていますよね。もっとも、ここまでの運用ができるのは並大抵のことではないので参考程度に(笑)。
Point 7:リスクマネジメント
最後に、広報がリスクマネジメントについて考えるべき局面について。誰もが対面するような課題ではないのですが、昨今はスタートアップも炎上や情報流出といった問題を契機に、広報が矢面に立つケースもままあるので、予備知識として知っておいてください。
起きうるリスクを常に予測し、それがいざ顕在化した際には、どういった発信をするのか。その準備も、広報の仕事の範疇であると僕は考えています。リスク対応のために、まず意識しておくべきポイントは3つあります。
1:迅速性と正確性の両立
2:ステークホルダーの不満や期待の把握
3:経営陣の危機管理への適切な理解と投資
1と2はリスク対応時の動きにつながり、3は全体的な組織運営にも関わってきます。
従業員によるSNSへの不適切な書き込み、データ改ざん、製品偽装、個人情報の漏洩、役員のプライベートスキャンダルなど、ベンチャー企業にとってのリスクマネジメントが発生する頻度と、その損害の相関を整理した資料も公開されていたりします。決して他人ごとではなく「実は我が社でもあり得るかも」という目線で見てもらうのがいいでしょう。
ただ、広報ができることは、本質的な課題解決というよりは、問題が起こったあとの対応を、この分野のプロフェッショナルと共に進めることです。起きてしまったダウントレンドは上場していれば株価に、急成長中なら事業の成長スピードに跳ね返ってきます。それらを少しでも和らげるためには、早いうちから手を打つのが肝です。
自社の中でどういった問題が起こる可能性があるか、リスクがあるかを知っておく。いざ起きたときには、どういう対応を取るか。経営陣などを交えてシミュレーションしておく必要があるのです。SNSの炎上対策や、SNSを運用する際の注意点などについても書かれているハンドブックが日本パブリックリレーションズ協会から出版されているので参考にしてください。
DIAMOND SIGNAL・岩本編集長に聞く「スタートアップとメディア」
日比谷さんによる7つのポイントは、まさにSaaS PRが踏まえておくべき大切なことばかりでした。ここからは、講座内で催された「DIAMOND SIGNAL」編集長 岩本有平さんとのトークセッションを抜粋してお届けします。
岩本さんは現在、ビジネス書に強い出版社で知られるダイヤモンド社が運営するメディア「DIAMOND SIGNAL」で編集長を務められています。スタートアップを中心にした新産業に取り組む人々を紹介するメディアとして、1年あまり運営を続けてきました。またご自身は、「CNET Japan」の編集記者や「TechCrunch Japan」で副編集長としての経験をお持ちです。
日比谷:今日、岩本さんにお越しいただいたのは、僕の講義で頭でっかちにならず、生身のメディアをイメージして広報活動をしてもらいたいと思ったからなんです。そこで、メディアの方からお話を聞ける時間を設けようと。メディアとスタートアップの関係がどう変遷してきたか、今どういうふうに広報は臨めばいいかを話せたら嬉しいです。
岩本:よろしくお願いします。実務の話は、日比谷さんの講座でバッチリだと思います。広報さんから、あのようにアプローチしてくださったら、ありがたいですね。
日比谷:まずは、スタートアップの扱われ方の変化は、岩本さんから見てどうですか?
岩本:十数年前には、もともとスタートアップを取り上げるメディアがそれほどなく、テック系のオンラインメディアか、一部の新聞社系メディアがカバーするくらいだったんです。“スタートアップ広報”という仕事も、それほど確立されてはいませんでした。
だから、その頃はメディアと共催で勉強会をしてみたり、メディア側から広報さんへ「こういう内容なら記事にしやすい」と伝えたりと、広報と記者がコミュニケーションを取りながら作り上げていくところもありました。今は環境も成熟してきて、そういったやり取りは昔よりは減ってきたとは思います。一方で記者と広報の関係が、悪い意味「なあなあ」になってしまっている部分も見受けられるのが実情です。
たとえば、「(内容や社会的な文脈を無視して、機械的に)資金調達をするので、プレスリリースを先に送りますから、このタイミングで記事にしてください」みたいな……。
日比谷:やり取りが形骸化してしまっていると、、。
岩本:他にも、広報の業務が、とりあえずプレスリリース配信サービスに登録する、ブログやnoteの準備をするといったように、全体的に「型化」してきている印象はあります。
一方、僕たちとしては「スタートアップが資金調達する」というだけの内容では、もうニュースにはならない時代に変わってきてはいるんです。たとえば、先日のSmartHRさんといった規模感や注目度であれば別ですけれど。
(社会的な意味、業界的なインパクトがない)資金調達の発表“だけ”のニュースは、ページビューなどの数値も奮わず、僕たちとしてはコンテンツとして出す優先順位をどうしても下げざるを得ません。つまり「世の中の盛り上がり」と「業界の盛り上がり」に温度差が出てきていると言えるのかもしれません。
DIAMOND SIGNALでも速報ニュースではなく、さらに価値あるコンテンツを作ろうと動いています。企業や技術の深堀る、働く人にフォーカスする、マーケットの今を伝えるといった観点が記事になければ、メディアも評価されないと考えているからです。「スタートアップ」という言葉自体、以前ほどの特異性を持たなくなり、今は一般企業と同じように認められてきたと考えています。
一方で、スタートアップ専門、特化型のメディアにははコミュニティを通じて、取材先とのクローズドな関係を作ろうとする流れがあると思っています。
僕たちもそういったものの必要性も考えていますが、まだ考えがまとまっていません。情報収集がしやすくなっても、その情報を(スタートアップコミュニティから経済のメインストリームという意味で)外側へ向けて伝えていくところに課題が出るのではないかとも思うからです。DIAMOND SIGNALはスタートアップを中心に据えるビジネスメディアへ立ち位置を寄せていきたいと考えているのですが、そのバランス感覚は今も模索しています。
自社の立ち位置や社会的意義を語れなければならない
日比谷:若い年代の社長が資金調達したり、一気に上場企業へ駆け上がったりというスタートアップの姿が世の中で珍しく、人目を引いた時期もありました。それを扱う記事は数字も取れ、社会的な意義もあったけれども、その存在が一般化するにつれて、メディアとしても「伝える意義」や「社会的な観点」を説明できないといけなくなってきたのですね。
岩本:昔は「ある会社がスマホアプリを作った」というのがニュースになっていたくらいですから。でも、今はアプリでプロダクトを出すの当たり前。資金調達のスキームも理解されてきたときに、ただ「資金調達をした」というだけの内容ではニュースにはなりづらくなってきた……というのが正直なところでしょう。プレスリリースで書ける内容以上に、プロダクトや技術、ビジネスモデルや市場環境、さらには起業家の思いや熱意、社会的意義などを今まで以上に伝える必要があるのではないでしょうか。
日比谷:広報の観点からすると、今はメディアでどういったニュースが盛んなのか、類似するマーケットや類似する領域での大企業の動きはどうか、といったことをある程度はわかったうえで、自社の立ち位置や社会的意義を語れなければ、メディアに取り上げてもらいにくいのでしょう。要は、世の中の人に興味を持ってもらえないわけです。
岩本:そのとおりですね。経済週刊誌も、スタートアップといえどもビジネス的なインパクトはあるのか、会社が若いというだけで勢いに飲まれていないか、などをシビアに見るようになりました。僕自身もテックメディア、スタートアップメディアを経験してきて、その変化を感じています。
スタートアップはDX文脈でポジティブに転じた
日比谷:旧来の大企業を相手にしていたような編集部の方々、あるいは大企業にいる取材対象の方々は、スタートアップの記事に対して、どういったリアクションを抱いているものですか?
岩本:まだまだ「甘さを感じる」というツッコミが多いです。たとえば、スタートアップには決算の開示義務はないわけですが、多くは外部からお金を集め、赤字でもプロダクトをすごいスピードで作り、結果を作るモデルですよね。ただ、それを「赤字の中小企業」のフェーズと見る人もいるということです。
そういった会社がポジティブな話だけを出してきて、自分たちの輝かしい面だけを見せることには懐疑的な声もあり、議論を呼ぶこともあります。僕自身はスタートアップをよく見てきましたから、そういったスタートアップの露出については違和感はありません。「前年度比何%増」という相対的な数字や、売り上げを公開せずとも、それ以上の情報をどう取材で得るかというのがスタートアップをカバーするメディアの仕事でもあると思っています。ただ、業界の外を出れば、前述のようにスタートアップを見ている人たちもいる、というのは事実です。
一方で、「DX」のような文脈で、特に大企業の人たちからスタートアップがポジティブに捉えられています。(スタートアップと大企業で分断するのではなく)対話できる経営者の発信は、とても好意的に受け入れているようですね。たとえば、LayerXの福島(良典)さんといった存在が、両者をつなぐコミュニケーションの発信をしていると感じます。
やはり業界内や自社内だけでなく、「業界外」や「社外」を向いている人たちには大企業も興味を示しますし、大企業が興味を示すものには、スタートアップ特化の媒体だけでなく、大手のビジネス系メディアも興味を抱く。そういった流れは少しずつ生まれていると思います。
日比谷:そういった意味だと、 この講座の主宰であるALL STAR SAAS FUNDの支援先はBtoB SaaSが中心ですし、企業向けにDXの文脈でサービスを提供しているところも多いです。ターゲットが世の中である以上、その世の中の興味や言葉で自社を語れないと、メディアやその先にいる読者ともコミュニケーションできないですものね。
岩本:そうだと思います。BtoB SaaSこそ、資金調達だけではニュースになりづらいですし、プロダクトも日々劇的に変化するようなものではないから、その更新ニュースも刺さりづらい。
わかりやすい例なので再度挙げてしまいますが、SmartHRさんが大きな金額を集めるという発表は「資金調達の理由」「次世代のスタートアップへの提言」「初めてとなるARRの発表」「ユニコーン化」といった、ちゃんと“ニュースになるもの”を仕込んでいたんですよね。
BtoB SaaSでプロダクトの「一本足打法」だとPRは難しいはずが、世の中の文脈、足元の数字、ハウツー的なものまでセットで出すことで、うまく発信が設計されていた。よくできているな、と思いました。
日比谷:確かに。リリースも改めて見ると、よく練られていますし、メディアの方々へのコミュニケーションも個別にきちんと進められていたのでしょう。
メディアと広報が協力して課題へ向き合う世界に
岩本:プレスリリースを起こしただけの短信ニュースは誰でも書けるようになってきています。PR TIMESがシェアされるようになったのは、この数年の変化だと感じています。冗談半分ですが、速報系のニュースメディアは「PR TIMESとnoteにどう向き合うかが問題だ」とよく言ってるんです(笑)。
ファクトはPR TIMESで、エモーショナルはnoteで、企業は自分たちで発信できるようになってきましたからね。今までだと速報記事を出してくれる媒体がなければ、情報の露出が難しかったかったわけですが、最低限のPR施策は自社でもできるようになった。メディアがそれと同じことを追いかけてしまう意味はなくなりつつあるのではないでしょうか。
SIGNALの話から少し離れますが、業界特化のメディアの世界から、ビジネス週刊誌を出す会社に移って学んだことの一つに、業界ごとの担当制というのがあります。それぞれの担当が一つの業界紙のように、特化した領域で横断的に情報を見ています。ある企業を取材する際、その企業単体を取材してニュースにするのではなく、競合関係やマーケット全体など、いろんな高さから情報を俯瞰して評価をしなければいけません。
特定の企業1社だけを取材して記事にするだけでは価値が生まれないことも少なくないですし、また、業界にとっての評価だけでなく、経済や社会全体の中でどんな役割を担うのか、そしてポジティブな面だけでなく、課題もセットで伝えないといけなくなってきていると思います。
日比谷:スタートアップもその前提を共有して、自分たちを褒めてくれるようなメディアとだけつき合うのではなく、メディアからの批判にもちゃんと受け答えできるようにしておくことは、求められていくでしょうね。それも「世の中への登竜門」なんだと思います。
岩本:そういう意味では、広報の成果指標も見直しがあってもいいのでしょうね。今どき、メディアへの掲載件数をKPIにしている企業はそうそうないかもしれませんが……
日比谷:いや、結構多いですよ(笑)。
岩本:そうですか。あとは「広告費換算」というふしぎな指標も……
日比谷:確かに個人的には、広告費換算は指標に据えるべきではないと考えています。ただ、広告換算費だけを盲信しているなら問題ですが、指標の一つとしては理解できなくもないのです。もっとも、広報活動は金銭的価値だけに転換できないところがあることは、引き続き、経営者やマネジメント層には理解してもらわなければいけませんが。
岩本:「この広報は何百万円分の価値になったんですよ」なんて口説き文句を使うPR会社、結構ありましたね(笑)。おそらく、それもフェーズによるのだと思います。
日比谷さんの資料にもありましたが、最初の業界内認知を得る、投資家へリーチするためのエビデンス作りとして、プレスリリースを起こしただけのような短信記事でも、露出するのが大事になるフェーズもあると思います。ただ、リリースを記事の体裁にしたものだけを載せても、届く範囲はどんどん限られていっているように思います。
僕らメディアも、広報の方々も、「フィルターバブル」にどう立ち向かうを考えなくてはいけない局面にあります。スタートアップは狭いコミュニティです。もちろんその中に情報を届けて、業界の注目を集めることにも意味はあります。特に採用や調達などの面では顕著ですね。ですが、そこに閉じることなく、そのスタートアップがコミュニティの外でどう見られて、どう評価されているのかを知り、そして何をどう伝えていくべきなのかを考えるべきではないでしょうか。
ぼくはよく「人格」という表現を用いますが、メディアを人間として捉えて、どのような信念で評価も批判もする存在なのか、その結果としてどういった記事を出していくのかを考えないといけないと思っています。その考えは良し悪しではなく、僕らが生き残るためにも必要です。
そういった実情を理解してくれる企業でなければ、今後はコミュニケーションも取れなくなってしまうのではないか、と感じているところではあります。
kipples(キップルズ)代表 日比谷 尚武(@naotake_hibiya)
「人と情報をつなぎ、社会を変える主役を増やす」をテーマに、セクターを横断するコネクタとして活動。広報、マーケティング、新規事業、コミュニティ、トライセクター関連を中心に活動。一般社団法人at Will Work理事、一般社団法人Public Meets Innovation理事、Project30(渋谷をつなげる30人)エバンジェリスト、公益社団法人 日本パブリックリレーションズ協会 広報副委員長、ロックバーshhGarage主催、他。https://kipples.jp/
SPECIAL THANKS TO:
- 今回、講座の内容を構成するにあたり、壁打ちやレビューに協力いただいた 小金丸さん(Facebook)、武田さん(Facebook)にお礼申し上げます。(日比谷)
- 「SaaS PR集中講座」という名前を決める時に相談にのっていただいた皆さま、フィードバックをくださった宮地(@MasaeMiyachi)さん、お忙しい中ご協力いただきありがとうございました。
- 実務編でゲストとしてお越しいただいたDIAMOND SIGNAL編集長 岩本有平さん(@yuheiwmt)さん、ご登壇いただきありがとうございました。
- 「SaaS PR集中講座」に参加してくださった皆さま、フィードバックや暖かいメッセージをいただきありがとうございました。
- 「SaaS PR集中講座」の企画から講師、記事作りまでたくさんご一緒させていただいた日比谷さん、ありがとうございます。これからも引き続きよろしくお願いします!